超わかりやすい!【バロック建築】ヨーロッパを旅する前に知っておくべき知識

はじめに

RYOです

各建築様式の少し詳しい部分まで掘り下げようという狙いで、今回はバロック建築について説明します。

※明言しますが、西洋建築の勉強をしてからヨーロッパに行けば無学で行くより100倍楽しめます。5回にわたってヨーロッパ30ヵ国以上を完全無学で周ってきた僕が言うので間違いありません(笑)

参考文書:「西洋建築の歴史~美と空間の系譜~」

↓こちらを前提に話を進めますので、まずはこちらを読んでください↓

【西洋建築】建築様式の種類と風土による建築様式の違い

記事中の線の色について↓

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一般的な強調は
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※「オーダー」や「エンタブラチュア」、「ペディメント」と聞いてサッパリわからない人は、以下の記事を先に読んで頂いた方が理解しやすいと思います。

超わかりやすい!【ギリシャ建築】ヨーロッパを旅する前に知っておくべき知識

超わかりやすい!【ローマ建築】ヨーロッパを旅する前に知っておくべき知識

では始めます。

バロック建築

バロック建築

まずバロック建築の概要を説明します。

バロック建築は、反宗教改革を原動力として誕生し、民衆の心を掴むために絵画、彫刻、建築が混然一体となって典礼を劇的に盛り上げることに力を注いだ豪華さが売りの建築様式

です。

豪華にしなければならなかった背景

上で「豪華さが売り」と書きましたが、なぜ教会を豪華にしなければいけなかったのか。

説明します。

この頃、贖宥状(しょくゆうじょう)という天国に行けるチケットを販売して金儲けを始めたローマ・カトリック教会を痛烈に批判したルターによって宗教改革が始められました。
宗教改革は16世紀のヨーロッパで強力に展開され「このままのキリスト教会でいいのか」と、民衆に教会の腐敗に批判の眼を向けさせました。

※この頃のキリスト教会は本当に腐っていた

ルターは「人間が正しい道を歩んでいるかどうかを判断するにあたって重要なのは典礼ではなく聖書だ」と主張しました。

典礼(てんれい)とは

典礼(=ミサ)とは教会で行われる儀式のことで、ミサは信仰生活の中心であり、そこへの出席は信者の義務です。

例えば毎日曜日に教会で賛美歌を歌ったり、神父の説教を聞いたりとかです。

なので「え、あなたミサに出席してないの?あーあー、敬虔なキリスト教徒とは言えないわね(笑)残念!」という雰囲気がありました。

しかしルターは、教会で行われる儀式に律義に毎回出席することよりも聖書の教え通りに生きる事こそが大事だと考えました。(おれもそう思う)

この宗教改革によって、カトリック教会からプロテスタントという宗派が現れました。

「このままでは大勢のカトリックがプロテスタントに改宗してしまう・・・( ゚Д゚)」

ピラミッド構造の最上位に位置するカトリック教会の幹部たち、かなり焦りました(;´・ω・)

ここにおいてカトリック教会は、民衆の心を掴み、感覚に訴え情感に直接働きかけるような演出によりミサを劇的に盛り上げる演出が必要だったのです。

信者を逃さないために・・・

バロック建築の特徴

そもそも「バロック(baroque)」という言葉は「ゆがんだ真珠」を意味するポルトガル語に由来し、とんでもなく豪華な装飾を皮肉られてこう名付けられました。

後期ルネサンスのマニエリスムにおいてはオーダーの扱いに知的工夫が凝らされ、新奇性や意外性が追及されましたが、オーダーは平面内にとどまっており、基本的には盛期ルネサンスと同様に静的な性格(後でわかります(笑))が保たれました。

しかしバロック建築では、オーダーのモチーフを変形することはあってもマニエリスムのように分解・融解することなく、むしろオーダーに敬意を払いながらその大胆な適用によって力強い動的な表現を創出しました。

特に↓

凹凸の強調、うねる曲面、楕円、過剰な装飾、光と影のコントラスト、中心軸の強調、空間的抑揚

これらがバロック建築の特徴になります。

ここにはルネサンスが理想とした規則正しい繰り返しのリズムはなく、躍動の美学が存在します。

実際に実例を見ながら詳しく確認していきましょう

サン・ピエトロの正面

カトリック教会の頂点に位置するローマのサン・ピエトロ大聖堂のファサード(建物正面)をモデルに見ていきましょう。

サン・ピエトロ大聖堂自体は何度も再建されており、その一部としてファサード(建物正面)が1624年にバロック様式として完成しました。

こちらがサン・ピエトロ大聖堂のファサード(建物正面)です。

こちらの図を見ながらバロック建築のファサードの特徴を見ていきましょう。

コリント式大オーダー

まず、ファサードで最も目を引くのがコリント式大オーダーです。

上の写真のように、2階分の高さをもつオーダーを大オーダーと呼びます。

壮大な印象を与える大オーダー自体はルネサンスの発明ですが、配列は全くもって異なります。

中心軸の強調

ミサの重視は、祭壇に向かう中心軸の強調を必然的に招くことになり、それが建物外部にも溢れ出て正面の構成に影響を与えています。

はい、難しいと思います。僕も何度も何度も本を読んでようやく理解できました。

前述した「中心軸の強調」とはどういうことか説明します。

例えば、こういう↑教会があったとします。恐らく手前に見えているのが教会の入り口で、教会の奥には祭壇とかがあると思います。

という事は、信者は入り口から入って真っ直ぐずーっと奥の祭壇↓まで歩いて礼拝することになりますよね。

ではこの教会で最も豪華にしなければならないのはどこでしょうか?

はい、答えは入り口から奥の祭壇までの直線的な部分を最も豪華にしなければいけないですよね?

これが「中心軸の強調」という意味なんです。

礼拝者はみんな入り口から奥の祭壇まで直線的に歩くので、この中心軸(直線)を強調するのが最も大事なんです。

※「信者の眼に触れる部分が最も重要」という意味です(笑)

神殿正面と神殿側面を合体

サン・ピエトロ大聖堂のファサード(建物正面)は大きく2つの構成に分けられます。

それが「神殿正面」と「神殿側面」です。

わかりにくい表現ですが、一緒に確認しましょう。

神殿正面

これは紛れもなく神殿正面ですね。上に三角形のペディメントも載っていますし、「The 神殿」って感じです。

ローマのパンテオン↓と比べても大体同じでしょ?

しかしサン・ピエトロ大聖堂の場合、その玄関の左右を見てみると・・・

神殿側面

大聖堂のファサードには、神殿正面に神殿の側面部分まで貼り付けられています!!

下の図は、ギリシャ建築の最高峰パルテノン神殿を例に用いて「神殿正面」と「神殿正面」を説明しています↓

普通、神殿の正面は上の三角形のペディメントの幅で決まります。

しかしサン・ピエトロ大聖堂の場合、ペディメントの幅以上にもファサードが伸びています。

つまりこのファサードは古代の神殿側面に、ペディメントのある神殿正面を重ね合わせた構図であることがわかります。

これもバロック特有の表現なんです。

もう一度言いますよ?

過去の神殿建築はペディメント(三角形の底辺)の幅で建物がおさまっているのに↓

ローマ建築

バロック建築ではペディメントの幅以上にファサードが延長されています。

段差で中心軸を強調

そしてバロック建築では、中央を強調するために柱列を含む層を前後に重層させる方法を用いています。

前述しましたが、信者が玄関から奥の祭壇まで歩く直線(中心軸)が最も大事なんです。

サンピエトロ大聖堂では、正面中央のペディメントの幅を強調するために段差をつけて↓層自体を前にせり出させています。

しかも正面の端からピラスター→半円柱→3/4円柱→完全円柱というように、どんどん中央に近づくにつれて円柱もせり出させています。

このように、バロック建築はとにかく中心軸の強調に重きを置いたファサードをもちます。

サンピエトロの内部

それではバロック建築の内部を見ていきましょう。

(ローマ、ルネサンス、バロックのような)古典系の教会堂では、内部立面を小割りにするのを好みません。

例えば↓ゴシック建築を例にとってみると、

ゴシック建築

ゴシック建築は聖堂内部を細かく区切っていますよね。例えばトリフォリウムとかクリヤストリー、盲窓といったやつです。

内部立面を小割りにする、というのはそういう事です。

バロック建築の内部

バロック建築に拘わらず、古典系建築の教会堂は単層のオーダーで壁面を大きく分割しその上部を構成するエンタブラチュアによって壁面とドームやヴォールトなどの曲面天井を境界付けることが多いのです。

つまり柱の上のエンタブラチュアが直接ドームやヴォールト天井を支えている構造です↓

装飾が凄くてあまり目立ちませんが、構造自体はとても単純です。

ヴォールト天井

エンタブラチュア

です。これらを踏まえて、サン・ピエトロ大聖堂の内部↓を見てみましょう。

柱、エンタブラチュア、ヴォールト天井は見つけましたか?

一言で「柱」と言っても「コリント式円柱」だったり「コリント式ピラスター」だったり様々です。

もう一枚、サン・ピエトロ大聖堂の内部の写真です↓

アーケードの太いピアに付けられた双柱のピラスターがエンタブラチュアを支え、その上に格間(ごうま)付きのトンネル・ヴォールトを架けています。

※格間(ごうま)とは、天井やヴォールトを覆う正方形/長方形/八角形などの形状のくぼんだパネル(こんなん↓

ローマ建築

この構成はアルベルティがマントヴァのサンタンドレア聖堂(1470年)で初めて考案したものですが、その力強いテンポゆえにバロックでは好んで用いられました。

後期ルネサンスと初期バロック

ここで一つ面白い例を紹介します。

イル・ジェズ聖堂とサンタ・スザンナ聖堂は外見上は非常に似ていますが、特徴さえわかれば後期ルネサンス建築と初期バロック建築で区別することができるんです。

※ぼくも初めは全くわかりませんでした(笑)

イル・ジェズ聖堂↓

サンタ・スザンナ聖堂↓

さあどうでしょうか?

どちらが後期ルネサンスでどちらが初期バロックかわかりましたか?

注目すべきは中央の強調です。

では解説していきます

イル・ジェズ聖堂

まず両聖堂とも下層は五つの柱間からなります。

※「柱間」とは文字通り、ピラスターや円柱の間の壁面のことです

柱間は、ペデスタル(柱の下の土台)で区切っています。

イル・ジェズは入り口両側を除く全てをピラスターとし、それらを二本一組(ペデスタル↓に注目)の双柱にして並べています。

端部から二番目の双柱でピラスターと壁の突出が大きくなっていますが、ピラスターが横に広いため目立ちません。

また、入口の両側だけは3/4円柱ですが、隣のピラスターと対にして双柱の並びに同調させているので中央部の強調は和らげられています。

概して中央部の強調が少ない、なのでこちらは後期ルネサンス建築の建物になります。

サンタ・スザンナ聖堂

しかしサンタ・スザンナ聖堂の場合、両端のみをピラスター、他を1/2円柱、3/4円柱、完全円柱として、中央に近いものほど突出を大きくし、輪郭を明瞭にしています。

※このような柱の扱いはエンタブラチュアにも段状の突出となって現れています。

しかも両端の柱間を絞って、ファサード(建物正面)が横に広がる印象を抑えています。

上の写真の場合、赤丸同士の柱間、緑青の柱間、青オレンジの柱間の幅を比べると青オレンジの柱間が最も狭いですよね。

このように全体が中央への収斂(しゅうれん)を意図した構成が、サンタ・スザンナ聖堂をバロックたらしめているのです。

サン・カルロ大聖堂

サン・カルロ・アレ・カトロ・フォンターネ聖堂(1646年)は小規模ですが独創的な建物です。

まずはファサード!

四本の円柱からなるオーダーを二段に重ねた構成ですが、全体を支配するのはうねりの感覚です。

円柱自身は直線状にありますが、エンタブラチュアと壁は波形に湾曲しています。

うねるエンタブラチュア、これもバロックならではです。

サン・カルロの回廊も同様です↓

次にサン・カルロの内部!

サン・カルロ大聖堂上部のドームは楕円形で、ランタンからの光に照らされた幾何学模様の格間(ごうま)が神秘的です。

円が静的で完結的であるのに対し、楕円は収縮と膨張が拮抗する動的な力を暗示させるからです。

この楕円形というのもバロックから現れ始めた表現方法です。

各地への伝播

以上みてきたように、バロック建築にもサンタ・スザンナ聖堂のように古典的な性格を比較的温存する傾向と、サン・カルロ聖堂のように激しい抑揚を伴う劇的な傾向とが存在します。

古典的な性格を比較的温存する傾向↓

激しい抑揚を伴う劇的な傾向↓

フランスとイギリスは前者(古典的性格)を独自の形で発展させ、宮廷建築と教会堂を中心に、一層古典的性格の強い作品を生み出しました。
※イタリアのバロックに比べると

パリのオテル・デザンヴァリッド↓

ロンドンのセント・ポール大聖堂↓

フランスではやがて、宮廷の愉楽的な趣味を反映し、特に室内空間の表面装飾的な様式として、より優雅で繊細なロココ様式が生まれました。

※ロココ様式↓はバロック様式の装飾を極限まで追究しつつ、重厚さよりも軽快さを重視している

ロココは、フランス語で「岩」を意味するロカイユに由来しており、石や貝殻/サンゴ/植物の葉/花/波といった自然の曲線を取り入れた装飾を特徴としています。

バロック様式↓と比べると、そんなに差があるわけではありません。

ロココ様式の方がいくぶん軽快優美というだけです。

一方で、熱烈なカトリック信仰が生き続けていた南ドイツとスペインでは、後者(派手な方)の傾向をさらに発展させ、神秘的で幻惑的な宗教空間を創造しました。

ドイツのアザム教会↓

いかにもバロック!って感じですね

おわりに

こうしてバロック建築が終わりましたとさ。

ロココ様式はバロック建築とセットで語られることが多いので、今回はまとめました。

バロック建築では、キリスト教信者を繋ぎとめるために過度な装飾を用いてなるべく派手さを目指しました。

このバロック/ロココ様式の反動として生まれてくるのが新古典主義で、ルネサンス期の人々の理解をはるかに凌ぐ正確さと深さをもって復活します。

お楽しみに

超わかりやすい!【新古典主義建築】ヨーロッパを旅する前に知っておくべき知識