【一応わかりやすい】「バブル」の語源になった南海泡沫事件をご紹介

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皆さん「バブル」って聞いたら「バブル崩壊」を連想すると思いますが、今日はその「バブル」の語源になった南海泡沫事件(なんかいほうまつじけん)について説明したいと思います。

先日「AIが変えるお金の未来」という本を読んでいるとビットコインが大暴落した話が紹介されており、その中に南海泡沫事件というワードが登場したのです。

今後銀行は生き残れるのか?など、様々なお金の未来が紹介されていました。

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筆者
多少難しくてつまらない話もありましたが(笑)

では、この南海泡沫事件とはどのようなものだったのでしょうか?

参考にしたのは神戸大学大学院経営学研究科の中野先生の論文です↓

Taro-18世紀イギリスの金融不祥事

南海泡沫事件(なんかいほうまつじけん)

時代は18世紀初頭のヨーロッパ、当時の大国イギリスとフランスはスペイン継承戦争やアン女王戦争などで戦費をばんばん使っていたので、財政的に非常に苦しい時期にありました。

(論文には載っていませんが)後にお話しする内容から推察すると、これはつまりイギリス政府が国債を大量に発行しイギリス国民から大量のお金を借りていたのだと思います、戦争のために。

戦争に勝てばその借金は賄える予定でしたが…

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まあ早い話、大赤字だったんでしょう。

勝てない戦争でしたから。

イギリス政府は借金を(良いように言うと)国民に返済するために、ある画期的な作戦を思い付きました。

ハーレーが南海会社設立

イギリス政府にいた政治家ロバート・ハーレーは、政府が抱えていた莫大な借金を(債権者=国民に)返済するために1711年に南海会社(なんかいがいしゃ)という名前の会社を設立しました。

この南海会社の使命はただ一つ↓

何とかしてお金を儲けて、その利益でイギリス政府の借金を返済すること!!!
でした。

当時のイギリス政府の借金は(現在の僕らにはあまり実感が湧きませんが)、なんと5000万ポンドだったと言われています。

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筆者
ではどうすれば南海会社は莫大な借金を帳消しにできるほどの利益を生むことができるのでしょうか?

その答えが、

奴隷取引を中心としたスペイン領南アメリカ植民地とのアシェント(*)貿易

だったのです。

※アシェント

アシェントとは南アメリカのスペイン植民地へ奴隷を供給する権利のことで、早い話奴隷貿易で莫大な利益を得ようとした、ということです。

南海会社の「南海」とは、南アメリカの海ということ。

南海会社の本業はどうだったのか?

論文によると、南海会社は貿易会社という名目でしたが実際にはほとんど機能していなかったようです。

南海会社がイギリス政府から特権を得たアシェント貿易、つまりスペイン領南アメリカとの奴隷貿易については、もともとスペインがこの広大な地域との貿易の独占権を主張していました。

なので南海会社がそれを無視してスペイン領南アメリカ植民地と貿易を行えば、当時の超大国スペインが黙っていませんよね。

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という事で、この南海会社はそもそも「アシェント貿易で利益を出す」という触れ込み自体超怪しい会社だったことが分かります

(まあ国の借金返すために作られた会社ですからね)

結果的にこの南海会社の収入は、これから説明する保有公債に対して支払われる利息と、引き受け行為に対する代償としての管理費のみでした。

同社は、(初めのうちは)政府から受け取った利息をただそのまま株主に配当するだけの会社だったのです。

南海会社が公債と引き換えに株式を発行する

南海会社は、既に発行されていた公債(国や地方自治体の借金)の保有者に対して額面価額の株式を発行し、株式と公債を交換しました↓

例えば10万円分の公債を持っている人に対して、南海会社は10万円分の自社株式を発行します。

すると公債保有者は公債を南海会社に手放す代わりに南海会社の株主になれるという感じです。

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筆者

ローリスク・ローリターンの公債持ってるよりも

南海会社が利益を上げて株価が上がればそっちの方が儲かるからですね

すると、もともとイギリス政府と南海会社は強烈なパイプがあるわけですから、政府は借金を返す相手が国民ではなく南海会社という構図になりました。

南海会社はお金をもらってその代わりに公債を国に返すわけですから、ここまでは何も問題が起こりません。

しかも南海会社は保有公債に対して年6%の利息と管理費を国からもらっていたようです。

これだけでかなりの額ですが、そのお金の出どころは国民のお金=税金ですからね
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筆者
複利か単利かによりますが、年利6%って言ったら結構ですね

いわば、政府に対する国民の債権(お金を返してもらう権利)を南海会社が買い取ったイメージです(この時はまだ全ての公債を買い取ったわけではありませんでした)

もし南海会社が倒産すれば、国は借金を返す相手がいなくなりハッピー、国民は株式がただの紙切れになって大損こくという感じですね。

恐ろしい。

南海会社社長ジョン・ブラントが提出した南海計画

さて、南海会社を設立したのはロバート・ハーレーでしたが、実際に同社の実権を握ったのは(社長になったのは)ジョン・ブラントでした。

このジョン・ブラント社長、ものすごいワルなんです↓

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国から公債に対する利息と管理費をもらい、それをそのまま株主に配当として渡すだけの状態が気に入らなかったんですね、ジョン・ブラントさんは!

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筆者
彼、やっちゃいます

当時ヨーロッパを覆っていた投機ムードの中で、ジョン・ブラント社長はイギリス議会に対して新たな公債転換計画を提出します。

それが南海計画です。

その内容を説明すると以下のようなものです↓

» 続きを読む(難しいと思ったら飛ばしてください)

・総額およそ5000万ポンドにのぼる公債のうち、既にイングランド銀行、東インド会社、南海会社が保有するものを除く部分を南海会社の新規発行株式に時価を基準に転換する。

・南海会社は、転換した公債の額面に等しい株式を発行する権利を与えられる。

・南海会社は、政府の筆頭債権者となることに対して、1727年以降保有する公債全体について年5%から4%への利下げに同意する。

・南海会社は、公債引受権の代償(特許料=上納金)を支払う。

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早い話、政府からすれば↓

➀公債に対してかかる利息が減るわ

②特許料をもらえるわ

③債権者が一本化され公債管理が楽になるわ

といったウハウハなメリットがありました。

では南海会社にとってはどんなメリットがあったのでしょうか?

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筆者

恐らく株式投資に詳しい方はこれを読んで、

「は!まじか?そんなことやっちゃうのか!!?」

となったと思いますが、僕みたいな素人には頭をフル回転させて考えないとその真意がわかりませんでした

ポイントは2つです↓

➀「南海会社の新規発行株式に時価を基準に転換する」

②「公債の額面に等しい株式を発行する権利を与えられる」

ではなるべくわかりやすく解説します。

南海会社が儲かる仕組み

まず話をわかりやすくするため、イギリス国内には3,000万ポンド分の公債が発行されていたとします(まあ大体それくらいの量だったようです)

これらは国民や銀行、投資家が持っているもので、国は公債にかかる金利をそれぞれの持ち分に応じて銀行にも投資家にも、もちろん一般の国民にも全員に払わなければなりませんでした。

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筆者
お金を貸してくれてるので、その分金利を払うのは当然ですよね

これはかなり大変ですよね、全員分のデータを管理してみんなに利息を払わないといけないなんて・・・

イギリス政府大パニック!!!!

そういう事もお見通しの南海会社(ジョン・ブラント)は政府に、

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ジョン・ブラント

市場に出回ってる公債3,000万ポンド分を全部うちで回収するから

3,000万ポンド分の株式を発行する権利をちょうだい

と頼みました。

政府は公債の管理も楽になるし喜んで承認しました↓

南海計画によってイギリス政府は、

公債は全て南海会社の株式と交換しなければならない

という法律を無理矢理通しました。

国旗で知る世界の国々 イギリス
イギリス政府

君たちが持ってる公債は全て南海会社が発行する株式と交換しなさい。

あ、これ法律で決まったから♡

すると、現在公債を持っている人たちは焦ります↓

「大事な現金出して買った公債を、南海会社とかいう会社の株式と交換しなければならない?は、なめてんのか(; ・`д・´)」

この時の南海会社の株価が大体120ポンドくらいだったので、南海会社は3,000万ポンド/120ポンド=25万枚の株式を発行する約束をしたわけです。

つまり世間に出回っている公債を全て自社の株式と交換するには25万枚の株券が必要だったということですね。

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筆者
しかし本当に恐ろしいのはこの「時価を基準に転換する」という部分だったのです

普通は100ポンド分の公債に対して100ポンド分の株式を発行しますよね、当然!

バブルの語源 南海泡沫事件

しかし、「時価を基準に転換する」と決めたことで事態は一変します。

時価とはその瞬間の会社の株価と考えてください

株価は値動きするのが当たり前ですから、毎日株式の値段は変わっているわけなんです。

例えば株価(時価)が200ポンドになった場合、普通は200ポンド分の株式と公債200ポンド分を交換します↓

が、この時は違います。

株価が100ポンドから200ポンドに値上がりした場合、南海会社は100ポンド分の株式を発行して200ポンド分の公債を手に入れることができたんです↓

「100ポンド分の株券」ではなく「1枚の株券」という、「1枚いくら」という設定をしたんです。

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ジョン・ブラント

あーあなたの公債100ポンドですねー

でも今うちの会社の時価は200ポンドだから200ポンド分の公債が無いと交換できないよー

でも渡すのは100ポンド分の株式だけどねー

もっと極端な事を言うと、時価が10倍になったら100ポンド分の株式を発行して1000ポンド分の公債をゲットすることができたんです↓

そして一番初めの話に戻ります。

当時、市場には3,000万ポンドの公債が出回っていたらしいので、25万枚の株券を発行しましたが、もし平均時価が5倍になっていたら5万枚の株式で世間の公債を全て回収できるんです。

これで政府との約束は果たしたことになります

では残りの20万枚の株式はどうするの…?

もちろん投資家・銀行・一般市民に売りつけます!

売って得た利益は全て会社の利益になるのです。

当然ですが、株価(時価)はその株式を欲しい人がいればいるほど上がるので、その株が公債と交換されていけば株がどんどん放出され(表面上は)人気が出ているのと同じなので株価が上がっていきます↓

株式の額面は1枚100ポンド固定でも、時価100ポンドなら100ポンド分の公債と株式1枚を、時価200ポンドなら200ポンド分の公債と株式1枚を交換することになるので交換するタイミングが遅れれば遅れるほど交換できる株式数が減るので、公債を保有している人たちは一気に公債を手放して株式交換を行います。

すると早い段階で株式を購入していた人たちは大儲けできるようになります。

そんな話が伝わると、目先の利欲に目がくらんだ愚か者たちが↓

バブルの語源 南海泡沫事件
愚か者
南の海の貿易がほんまに大成功したんや!!!

とか

バブルの語源 南海泡沫事件
愚か者
おい、なんか知らんけど南海会社の株を買えば儲かるらしいぞ

とか、わけもわからずに一般市民が南海会社の株を買い始めます↓

この裏ではジョン・ブラント社長が様々な株価吊り上げ作戦をやっていたようで、それに乗せられた人たちが最終的にババを引くことになります・・・

同社の株価は1720年1月はじめは1株(額面100ポンド)あたり128ポンドだったのが、3月には最高値で380ポンド、5月には870ポンドにまで上昇し、6月24日には空前絶後の1,050ポンドを記録するまでに高騰しました↓

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筆者

半年で株価が10倍にまで上がりました

まさにテンバガー銘柄です

つまり、早めに株を持っていた人ほど大儲けできたということですよね。

山の頂上付近で「おい、なんか知らんけど儲かるらしい」と言って株を買い始めた愚かな一般市民はその後、大暴落という嵐に巻き込まれます。

当時、南海会社の大成功を見て少なくとも100を超える超いかがわしい多数の模倣者や便乗者(=泡沫会社(ほうまつがいしゃ))を産み出し、それらの全てがこのブームに参加しようとしました↓

この泡沫会社が泡のようにブクブク急増したことが「バブル」の語源になっています。

その後、ジョン・ブラントは政府を動かし「泡沫会社禁止法」という法律を公布させ、泡沫会社はどんどん減っていきました。

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筆者

あのゴリラ

自分の利益のことしか考えてない!!!!!

当然ですが、この法律の目的は「愚かで無知な人たちを投機から保護する」ためではなく、南海会社それ自体の投機独占を確保することにありました。

なぜなら、政府の高官や官僚たちもジョン・ブラントからたーーーっぷり賄賂をもらっていたからです。

結局、同社の株価は7月中は最安値でも950ポンドを維持していましたが、8月に入ると下がり始め、9月に急落しました。

そして12月には最安値で124ポンドとなり、同年1月はじめの株価にほぼ等しい水準にまで暴落しました。

キューバ 歴史
筆者
これがバブル崩壊だったんですね

おわりに

ということで、今回はバブルの語源についてお話しました。

だいぶ長かったですね、反省しています(笑)

株の知識が無い人にはわかりにくかったかもしれませんが、何となくの概要だけでも理解して頂けたら幸いです。

バブルの語源 南海泡沫事件
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