ロマネスク建築

超わかりやすい!【ゴシック建築】ヨーロッパを旅する前に知っておくべき知識

はじめに

RYOです

各建築様式の少し詳しい部分まで掘り下げようという狙いで、今回はゴシック建築について説明します。

※明言しますが、西洋建築の勉強をしてからヨーロッパに行けば無学で行くより100倍楽しめます。5回にわたってヨーロッパ30ヵ国以上を完全無学で周ってきた僕が言うので間違いありません(笑)

参考文書:「西洋建築の歴史~美と空間の系譜~」

↓こちらを前提に話を進めますので、まずはこちらを読んでください↓

【西洋建築】建築様式の種類と風土による建築様式の違い

記事中の線の色について↓

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より理解を深めるために、ロマネスク建築編を先に読まれることをお勧めします↓

超わかりやすい!【ロマネスク建築】ヨーロッパを旅する前に知っておくべき知識

では始めます。

ゴシック建築

ゴシック建築

まずゴシック建築の概要を説明します。

ゴシック建築は、12世紀中頃にフランスで生まれ16世紀初頭まで続いた、ロマネスク建築の潜在的な可能性を極限まで追究して創造された建築様式

です。

ゴシック建築は、ロマネスク建築での課題だった「高くできない」「大きな窓を開けれない」の問題を見事にクリアしました。

ゴシック建築の革新

ゴシック建築の特徴で、ロマネスク建築に見られなかった外見的特徴として

交差リブヴォールト

ゴシック建築

尖頭アーチ

ゴシック建築

フライング・バットレス

ゴシック建築

の三つをただ挙げるブログや本が多いですが、(間違いではないにしろ)著者曰くそれは「教科書的ではあるが、いささか時代遅れ」とのことです。

本質を見ていないとの事なんです。

見分け方を知って「あーこれはロマネスク建築だな」とか「お、尖塔アーチがあるからゴシック建築か」などと、建築様式だけを見分けられても「だから何?」って感じですよね。

重要なのは

ロマネスク建築からゴシック建築へはどういう技術革新があり

どういう表現に主眼を置き

どういう過程でそうなったか

を知ることです。

上記の三つの特徴はあくまで結果であり、発明に至る過程を知ることが大事です。

その中で、著者が挙げている革新の本質は

線状要素と重量感の排除

で、ロマネスク建築が部分と部分の組み合わせで構成されているのに対し、ゴシック建築は全体的に統一されているのが特徴です。

ロマネスク建築の課題

ではここで(ロマネスク建築編でも書きましたが)ロマネスク建築の課題についてみていきましょう。

ロマネスク建築の一番の問題はヴォールト天井でした。

ヴォールト天井、覚えてますか?トンネル型の天井↓のことですよね。

ゴシック建築

こんな感じ↑です。

ヴォールト天井を採用したことによって起きた問題は推力をどう支えるかでした。

ゴシック建築

この場合、上に載るアーチは黒い柱を横に倒そうとする力(推力)が働きますよね?

柱が細いと

ゴシック建築

こうなるか

ゴシック建築

こうなります。

横に広がろうとする力(推力)をどう支えるのか?

ローマ建築とロマネスク建築の場合、壁を厚くする↓ことによってこの問題を解決しました。

ゴシック建築

なのでどうしても分厚い壁で造られたイカツイ見た目↓になってしまいます。

ゴシック建築

当然この場合、強度的に壁に大きな窓を開けることはできませんし、高ければ高いほど不安定なので壁を高くすることもできません。

なのでロマネスク建築完成後、次のステップとして出てきた問題は

いかにして壁に大きな穴(窓)を開けるか

いかにして高い塔を作るか

いかにして重量感のない建物にするか 

でした。そこで編み出したのが

交差リブヴォールト

尖頭アーチ

フライング・バットレス(飛び梁)

でした

『壁で支える方式』から『骨組みで支える方式』へ

以上のように、ロマネスク建築の課題点を克服して完成されたのがゴシック建築です。

では「交差リブヴォールト」「尖頭アーチ」「フライング・バットレス」のそれぞれの機能を見ていきましょう。

壁で支える方式を捨てて、骨組みで支える方式を得たことがゴシック建築完成の大きなポイントになります。

交差リブヴォールト

交差リブヴォールトは、交差ヴォールトの稜線上にリブを取り付けて補強したもので、ゴシック建築時代に発明されました。

ゴシック建築

交差ヴォールトの発明で、天井の重さを柱で支えられるようになりました。

この写真の場合↓↓

ゴシック建築

リブが付いて無いので天井の重さはそのまま両側の壁と分厚い柱で支えることになります。

しかし交差ヴォールトだけでは強度不足なんです。

この天井の✖になっている部分に重さが集中するので、ここを補強する必要があります。

ゴシック建築

リブ↑を取り付けると、リブが繋がっている柱で重さをもたせることができるので、そのぶん壁を薄くすることができます。

柱さえ頑丈なら壁は薄くてもいいのです。

壁で支える方式から骨組みで支える方式へ

尖頭アーチ

交差リブヴォールトによって天井の強度を上げることができました。

しかしその柱にアーチを付けようと思うと、重さがアーチの柱にかかって(推力によって)再び倒壊する可能性があります。

この問題を解決したのが尖頭アーチです。

※頭が尖っているアーチ

ゴシック建築

さあイメージしてください!

ゴシック建築

普通のアーチだと上から力がかかると推力が増すので倒壊の危険性があります。

しかし尖頭アーチにすると、推力が弱くなり上からの力がそのまま黒い柱にかかります。

なので、柱さえ頑丈なら天井を高くしても壁に大きな窓を開けても大丈夫!

壁で支える方式から骨組みで支える方式へ

フライング・バットレス(飛び梁)

そしてゴシック建築の最も重要な革新がこのフライング・バットレスです。

通常、塔が高くなればなるほど推力は増し、建築物として不安定になっていきます。

ゴシック建築

しかし塔を高くしても柱を横から支えるものがあれば安定します。

それがフライング・バットレス(別名「飛び梁」)です。

ゴシック建築

フライング・バットレスは、ヴォールトの横圧を受け止めそれを控え壁へと流します。

ゴシック建築

このフライング・バットレスの発明により、身廊壁は荷重支持機能から解放され、薄くて高い、しかも大きな開口部のある身廊壁が可能となりました。

ゴシック建築

教会堂の外周部には、ピナクルと呼ばれる小尖塔をいただいた控え壁が、フライング・バットレスを受けるために林立しています。

ゴシック建築

あたかも針葉樹の森のような外観ですが、これは内部空間を実現するために、構造の仕組みを全て建物の外部に露出させた結果なんです。

壁で支える方式から骨組みで支える方式へ

ゴシック建築の無重量性

先述しましたが、ゴシック建築の革新の本質は線状要素と重量感の排除です。

線状要素とは「シャフトや小円柱などの丸くて細長い棒状の要素」です。

ゴシック建築

ゴシック建築はロマネスク建築と違って線状要素で溢れています。

ゴシック建築

線状要素が多用された理由は重量感の排除です。

ゴシック建築で用いられた、重量感を排除するための方法の一つに「エッジの排除」があります。

エッジの排除

ゴシック建築では、ロマネスク建築のように壁をくり抜き、窪ませ、盛り上げたときにできる直角のエッジがみれません。

※直角のエッジとは「角ばった所」という意味

ロマネスク建築の直角のエッジ↓

ゴシック建築

エッジは、その背後に連なる壁体の体積を、したがって重量を暗示させるがゆえにゴシック建築では徹底的に排除されました。

エッジは重量感を暗示させる!!

ゴシック建築↓

ゴシック建築

ゴシック建築ではエッジは線状要素によって隠されているか排除されています。

ゴシック建築

線状要素の太さ=壁の厚さ?

ゴシック建築で用いられた線状要素は重量感の排除にとても役立っています。

なぜなら、ロマネスク建築ではくり抜かれた開口部に、壁の厚さが素直に現れますが、ゴシック建築では壁の厚さもまた、線状要素によってたくみに隠されているからです。

まあ簡単なので実例を挙げながら説明していきます

ゴシック建築

こちらの写真で説明します。

多くの線状要素がありますが、今回はピア、シャフト、小円柱、トレーサリーの四つを抽出しました。

ゴシック建築

➀ピア:アーチを支えている支柱

ゴシック建築

②シャフト:上部まで伸びる柱

ゴシック建築

③小円柱:トリフォリウムに上下に走る円柱

ゴシック建築

④トレーサリー:窓面(クリヤストリー)を細分割する装飾的な部材

ゴシック建築

我々の眼は、開口部を縁取り、分割する線状要素の太さを壁の厚さとして捉える傾向にあります。

つまり、存在感のあるピアやシャフト、小円柱にトレーサリーを『壁の厚さを代表するもの』として受け止めます。

このようにゴシック建築の身廊壁は線状要素によって編まれた格子状の壁と化しているのです。

これらの線状要素は、重量を支えるには細すぎる外見しかもたないので線状要素の細さに見合った軽さ(重量のなさ)を感じさせます。

また、実際には荷重をほとんど支持しませんが、(目を欺くために)力の流れの正しい道筋とみえる位置にだけ付けられています。

ゴシック建築の展開

ゴシック建築は、13世紀の初期に様式上の頂点に達した後、イール・ド・フランスからフランス各地に、さらにヨーロッパ全土に広まり、その地の伝統と結びついて多様な展開を遂げました。

こうしてゴシック建築は壁といわず天井といわず、全体を覆いつくす線状要素の、織物状の装飾パターンのなかに解体していきました。

1例目↓

ゴシック建築

2例目↓

ゴシック建築

3例目↓

ゴシック建築

4例目↓

ゴシック建築

5例目↓

ゴシック建築

6例目↓

ゴシック建築

また、アーチの形も半円アーチから尖頭アーチ、三葉形アーチ、オジー・アーチ、チューダー・アーチと様々になっていきます。

参考↓

ゴシック建築

例↓

ゴシック建築

(オジーアーチ=玉ねぎ形)

ゴシック建築

(三葉形アーチ)

複雑なゴシック建築

ゴシック建築は、他の建築様式に比べるとかなり不明瞭な枠組みであると言わざるを得ず、特に後期ゴシックは各地のそれまでの建築様式と複雑に絡み合いながら発展したので、包括的に「これがあるからゴシック!」「これがあるからドイツのゴシック様式だ」というように述べることは不可能です。

なぜならゴシック建築はおよそ250年に渡って発展し変化し続けていたからです。

イギリスにはイギリス風のゴシック建築が、フランスにはフランス風のゴシック建築が、ドイツにはドイツ風のゴシック建築があります。

一応各国のゴシック建築の特徴を記します。

フランス&ドイツ

西正面に双塔を立てるのが特徴

イギリス&イタリア

西正面に双塔を立てず、シンプルにまとめることが多い

イギリス&ドイツ

複雑なパターンをもつリブヴォールトを発達させた

しかし、フランスの中心地パリにおいてのみ、初期から後期に至るゴシック建築の一貫した発展の状況を確認することができるので、最後にそれを紹介します。

初期ゴシック『サン・ドニ大聖堂』

ゴシック建築

パリの近郊に位置するサン・ドニ修道院は、フランス王家の庇護を受ける由緒正しい修道院で、院長のシュジェールは「最初のゴシックを生み出した」とされており、建築史上特に重要な人物とされています。
※現在は大聖堂に昇格

写真を見て「え、これロマネスクちゃん?」と思った方、ナイスです。確かにアーチは尖頭アーチではなく半円アーチやし、窓も小さいし・・・

詳しく言うと「ロマネスクの面影を色濃く残している」って感じです。

しかし一たび堂内に入ると、そこはもうロマネスクとは全く異なる世界が広がっています。

ゴシック建築

リヴ・ヴォールトの天井と線状要素、そして壁面に敷き詰められたステンドグラス、尖頭アーチのトリフォリウムなど

完全にゴシック様式です。

※ステンドグラスは文字の読めない人用に、聖書の内容が絵を見たらわかるように作られました。

外観はロマネスク、内観はゴシック」このからくりを説明します。

サンドニ大聖堂自体は、五世紀に創建されました。
※当時は修道院

しかしシュジェールによって内部(内陣)のみ再建され、1144年に完成したのがこのゴシック様式でした。

尖頭アーチもリブ・ヴォールトも小規模ながら周辺各地域でひっそりと用いられていたのを、シュジェールが思い切って全てまとめて採用したのでこのサン・ドニ大聖堂が初期ゴシックと呼ばれます。

盛期ゴシック『アミアン大聖堂』

ゴシック建築

1220年に創建されたアミアン大聖堂は、最も完成されたゴシック建築と呼ばれています。

先程のサン・ドニ大聖堂と比べて、建物外観の装飾も多く線状要素も多用されています。

フライング・バットレスも確認できますね。

そして中に入ると

ゴシック建築

ロマネスク建築とは程遠い内観

ゴシック建築

リヴ・ヴォールトと尖頭アーチの連続

まさにTHE GOTHICって感じです

盛期ゴシックでは高さよりも軽さを追求しました。

ロマネスクよりは高くても後期ゴシックよりは低め、とにかく全体の無重量感を極限まで考慮しました。

後期ゴシック『ストラスブール大聖堂』

ゴシック建築

ストラスブール大聖堂は1176年の着工から資金不足などを経て1439年にようやく完成しました。

初めはロマネスク様式で建設していたところに、ゴシック様式を身につけた職人の一団が訪れ、急遽ゴシック建築が導入されたらしい。

なので職人到着より先に造られていた内陣はロマネスク様式が色濃く残っているらしい。

後期ゴシックでは線状要素は当たり前、軽く見せるのはできたから次は軽く見せながら高さを追求していきました。

ストラスブール大聖堂は1647年から1874年まで世界一高い建物だったようです。その高さ、なんと142m!!

ゴシック建築

この高さにもなれば、外側は勿論フライング・バットレスで支えられています。

堂内はと言うと、

ゴシック建築

これだけでは正直、後期ゴシックかはわかりませんね。

後期ゴシックでは、もはや外観の構造的な改革には興味を示さず、末端の装飾部分に関心が向かっていきます。

一般的にフランス後期ゴシックの特徴として、フランボワイヤン式のトレーサリーが挙げられます。

フランボワイヤン式とはいわゆる火焔式↓と呼ばれる、炎がボワっとしている感じのトレーサリーのことです。

ゴシック建築

見てください、この炎が燃え盛るような装飾を

基本的にフランスの後期ゴシックは、装飾がめちゃくちゃ複雑です。

ゴシック建築

おわりに

という事で、ゴシック建築が終わりました。

次は古典系建築の「ルネサンス建築」に入ります。

これまでゲルマン人たちが創造したロマネスク建築とゴシック建築でしたが、過去の偉大なローマ建築を手本として始めたルネサンス建築とは一体どのような建築様式だったのでしょう。

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