ギリシャ建築

超わかりやすい!【ギリシャ建築】ヨーロッパを旅する前に知っておくべき知識

はじめに

RYOです

各建築様式の少し詳しい部分まで掘り下げようという狙いで、今回はギリシア建築について説明します。

※明言しますが、西洋建築の勉強をしてからヨーロッパに行けば無学で行くより100倍楽しめます。5回にわたってヨーロッパ30ヵ国以上を完全無学で周ってきた僕が言うので間違いありません(笑)

参考文書:「西洋建築の歴史~美と空間の系譜~」

↓こちらを前提に話を進めますので、まずはこちらを読んでください↓

【西洋建築】建築様式の種類と風土による建築様式の違い

記事中の線の色について↓

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では始めます。

ギリシア建築(ギリシャ建築)

まずギリシア建築の概要を説明します。

ギリシア建築はギリシア人が紀元前7世紀ごろに発展させ始め、神殿を中心とした単純な構造の中に完璧な調和の美を実現した建築様式

です。難しいですね(笑)

万物の根源は数である。比例的で規則的なものが最も美しい。

ピタゴラス

古代の哲学者ピタゴラスは、万物は数の関係にしたがって成り立つ調和ある存在とし、古典系建築に共通するもっとも基本的な美の概念が「調和」です。

古典系建築とは

※「古典系建築」とは、紀元前7世紀に発展したギリシア建築や紀元前後に発展したローマ建築のような「昔の建築様式」。

以降イタリアのルネサンス期に「あの素晴らしい建築様式をもう一度」として復活したルネサンス建築やバロック建築もギリシア建築やローマ建築の流れを受け継いでいる

特に「比例」などの「数学的なバランスの良さ」を重視しました。

極端な話、↓のような建物が美しく見えないのは数学的に調和していないからだ、という事です。

とか

です。確かに、なんか不格好ですよね・・・

こう考えたら、「美しく見えるように」って結構難しいですよね・・・

※柱同士の間隔や柱の直径、高さ、各部の寸法などを恐ろしい精度で定めていきました。(後述します)

ギリシア建築の三つのオーダー

ギリシア建築、ローマ建築、ルネサンス建築などの古典系建築にはある共通の構造があります。

それがオーダーと呼ばれる、(床から屋根までの)柱と梁を中心とした秩序ある一連のセットです。

要するに柱があってその上に載っている棒(梁)を合わせてオーダーと呼びます。

古典系建築と中世系建築

ギリシア、ローマ、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロックなどの西洋建築は大きく2種類に分けることができます。

それが古典系建築中世系建築です。

その中でもオーダーの有無は古典系建築と中世建築を区別する最も特徴的な要素です。では、古典系建築と中世系建築を外観だけでも、ひとまず比較してみました!!

古典系建築で注目するのはズバリ、円柱です。

全ての建物に丸い円柱が使われているでしょ?

これらは全てギリシア建築の「柱」に由来しています。

ギリシア建築に由来している、(他にも古典系の特徴はいくつもありますが)だから「古典系」なんです。

中世系建築で注目するのはズバリ、とんがった塔です↓

※ロマネスク建築のみ例外で、まだ新しい建築様式を模索している途中なので中途半端な感じです。

逆に中世系建築には円柱は使われておらず、「柱ー梁」という構造方式が確認できません。

こうしてみると「古典系」と「中世系」の外観の違いは明らかだと思います。

オーダーはめちゃくちゃ重要で、中世系建築と区別されるもっとも特徴的な要素です。

当然、特徴のわかりやすい建物で比較していますがオーダーの有無はとても大切なんです。


さて、ギリシア建築のオーダーの話に戻ります。

ギリシア建築の発展過程で発明されたのが「ドリス式」「イオニア式」「コリント式」の3つのオーダーです↓↓

※オーダーは床から屋根までの一連のセット、と言いましたが主に「柱と梁」を表します。

※ローマ建築時代ではあと2つ「トスカナ式」と「コンポジット式」が加わって計5つのオーダーになります。

・・・。

大丈夫。ちゃんと説明します。

各部分を説明する際に聞いたことのない専門用語が頻出しますが、今後の全ての建築様式に出てくる言葉なので覚えた方が得です。

【解説】ドリス式オーダー

ドリス式(ドーリア式とも呼ばれる)はパルテノン神殿にも使われている最もシンプルなオーダー(円柱と梁のセット)で、紀元前7世紀頃にギリシア本土で発明されました。

まずは円柱の頭の部分、キャピタル(柱頭)と呼ばれる部分を見ていきましょう。

そもそもキャピタル(柱頭)と言ってもドリス式の場合、詳しくは三つの部分に分けられます。

それが「シャフト(柱)」「エキノス」「アバクス」です。

ドリス式の柱頭(キャピタル)は浅い鉢のような形をしたエキノスと、その上に載る正方形のアバクスからなります。

柱(シャフト)の上に鉢、その上に正方形

この時点で【THE 元祖】ドリス式です。

今なら皆さんも見えるはずです↓ドリス式オーダーが。

もう一つ、ドリス式は後に出てくるイオニア式やコリント式とは足元も違います。

柱(シャフト)が石の床(スタイロベート)の上に直接立っています!!これもドリス式の特徴です。

そしてドリス式は溝彫り(フルート)が20本あり、

溝彫りの間は稜線を形成して接しています。

溝彫りとは、つまり、まあ、えぐれている。という感じです。

また、ドリス式の柱は上に行くほど細くなっていきます。


さあこれらを踏まえて、もう一度パルテノン神殿を見たらいかがでしょうか

三段のスタイロベート(石の床)の上には、20本のフルート(溝彫り)が刻まれているシャフト(柱)が載っており、上にいくほど徐々に細くなり、キャピタル(柱頭)はエキノス(鉢)の上にアバクス(正方形)が載っています。

ドリス式のキーワード

・キャピタル(柱頭)

・エキノス(浅い鉢)

・アバクス(正方形)

・スタイロベート(石の床)

・フルート(溝彫り)

【解説】イオニア式オーダー

イオニア式は、パルテノン神殿北側のエレクティオン神殿で使われており、ドリス式から半世紀ほど遅れて小アジア(現在のトルコ)で発明されました。

イオニア式の柱頭(キャピタル)は、左右に広がる渦巻き(ヴォリュート)が特徴です。

これはわかりやすいですね。

ドリス式から半世紀遅れただけあって趣向が凝らされています。

ドリス式と違い、エキノスアバクスも左右の渦巻き(ヴォリュート)に吸収されほとんど見えません。

渦巻きはイオニア式!

また足元もドリス式とは違い下駄を履いています。

床(スタイロベート)の上に柱礎(ベース)、そして柱(シャフト)です。

またイオニア式はフルート(溝彫り)が24本あり、溝彫りの間は平縁を残して形成されています。

溝と溝の間、平らな部分が残ってますね。

先ほどのドリス式ではこの平縁が無いので、稜線で繋がっていると書きました。

また、イオニア式/コリント式の柱は上に行くにしたがって微妙に細くなっていきますが、ほとんど見た目ではわからないくらいです。

イオニア式のキーワード

・ヴォリュート(渦巻き)

・ベース(柱礎)

【解説】コリント式オーダー

コリント式は紀元前430年ごろに、柱頭だけを置き換えるかたちでイオニア式から派生しましたが、ギリシアではほとんど受けれ入れられず、ローマ建築で盛んに用いられました。

コリント式の柱頭は、地中海沿岸地方に自生するアカンサスという多年草の葉をモチーフにした籠形で、イオニア式よりも一層装飾性が強いです。

↑アカンサス

イオニア式の渦巻きが縮小し、エキノス(浅い鉢形)の部分がアカンサスに成長した形態とも見ることができます。

足元も溝彫りも柱の太さもイオニア式と同じです。

コリント式

・アカンサス(多年草の葉)

3つのオーダーのまとめ

ではここで3つのオーダーのまとめを載せておきます。

ドリス式イオニア式コリント式
発明された年代紀元前7世紀ごろドリス式から半世紀後紀元前430年
柱頭の様子
キャピタル
鉢と正方形
(エキノスとアバクス)
渦巻き
(ヴォリュート)
多年草の葉
(アカンサス)
柱の足元
ベース
柱礎なし柱礎あり柱礎あり
柱の溝彫り
フルート
20本24本24本
溝彫りの間稜線平縁平縁

以上の3つのオーダーを用いて作られたのが、あのコロッセオです。

コロッセオは古代ローマの円形劇場で、ギリシア建築を模範として造られました。

よく見ると、一階にドリス式、二階にイオニア式、三階にコリント式が使われています。

コロッセオの詳しいことはローマ建築編で見ていきます

【解説】エンタブラチュア

これらの他にも、「エンタブラチュア」なども是非知っておいて欲しいワードです

エンタブラチュアとは柱頭(キャピタル)の上に載る部分全体です。

下の画像を見ながら理解を深めてください。

エンタブラチュアは三層に分かれており、柱頭の直ぐ上に載るのが梁の役割を持つアーキトレーヴ(E)、アーキトレーヴの上が装飾帯のフリーズ(D)、そして屋根の軒にあたるコーニス(C)があります。

屋根はほとんど崩れてしまって確認できませんが、本当はこの上に三角形のペディメントが載ります。

※もう少し細かく各部が分けられますが、一応これくらいにしておきましょう

ここまでのキーワードまとめ

では既に出てきた、ギリシア建築編で特に覚えて頂きたいキーワードをおさらいしますのでもう一度ご確認ください!

POINT

・オーダー(柱と梁の一連のセット)

・ドリス式(キャピタルはエキノス(浅い鉢)とアバクス(正方形)が構成されている)

・イオニア式(キャピタルは渦巻き形のヴォリュート、足元にはベースがある)

・コリント式(イオニア式とほぼ一緒、キャピタルはアカンサスの葉を模してある)

・エンタブラチュア(柱の上に水平に載る石材)

・ペディメント(神殿の上によくある三角形)

オーダーと調和

(ギリシア建築の最高傑作と言われるパルテノン神殿)

オーダーを全体的な統一感を保ったまま完成するには、オーダー各部の寸法の釣り合いが重要です。

柱の径と高さ、柱礎の幅と高さ、柱頭の大きさ、それらを含めた円柱の全高、アーキトレーヴとフリーズの高さ、コーニスの高さと出、それらを含むエンタブラチュアの全高などなど・・・

こうならないために↓

これら各部をいかにバランス良く統一感を出すか

細部と細部、細部と部分、部分と部分、部分と全体。

ギリシア人「これらを比例の連鎖で関連付けなければならない・・・なんせ、比例が最も大事なんだから」

これこそギリシア人が究めたものでした。

モドゥルスという単位

ギリシア人が用いた単位にモドゥルスがあります。

柱の底部の直径(ときに半径)を1モドゥルスとして、建物各部の寸法はその整数倍あるいは分数倍として定めました。

※今更ですが、柱は石柱を積み重ねて作られています

例えば、スタイロベート(床)から柱頭までの全高は

ドリス式円柱の場合:4~6.5モドゥルス

イオニア式円柱の場合:9モドゥルス

コリント式円柱の場合:10モドゥルス

を標準としました。

このようにオーダー各部の寸法は全てモドゥルスを単位として定式化され、全てが調和する(一番美しく見える)ように作られたのがギリシア建築。

つまりその定式にしたがって並べて積み上げただけの恐ろしく型にはまった建築なのです。

しかしギリシア建築はただただ定式にしたがって量産されたのではないのです。

実際にギリシア建築の全歴史を通じて同一の形、同一の比例をもつ作品は一つも存在しないのです。

リファインメント(視覚的矯正)

(ドリス式ギリシア建築)

ギリシア人は理想の比例を見いだすべく洗練に洗練を重ねましたが、追究はそれだけにとどまりませんでした。究極の調和を実現するために、彼らは独自の方法を編み出しました。

それがリファインメント(視覚的矯正)です。

ギリシア建築家はたとえば、スタイロベートを完全な水平でなく中央部分をわずかに盛り上がるように湾曲させ、外周に沿った列柱を内側にわずかに傾斜させました。

このリファインメントはギリシア盛期のドリス式神殿に顕著に認められます。

アテネのパルテノン神殿では正面30.88mに対し約6cm、側面69.5mに対し約11cmの盛り上がりをもち、円柱の内側傾斜は、円柱の全高10.43mに対して約6cmです。

完全に水平なスタイロベートは中央が窪んでいるように見えるし、完全に垂直な円柱は外側に傾斜して見えるのでその錯覚を矯正するために調整が行われたのでは?と考えられています。

建築史上最高の施工精度を誇るギリシア神殿『1mmの100分の1の精度』

こちらの写真は1824年にアテネのパルテノン神殿を模して建てられたドイツにあるヴァルハラ神殿です。

※実は僕も一度行きましたが、そん時は「へー」としか思わずちょっと寝てすぐ帰りました。モッタイナイ!!!

パルテノン神殿修復の主任建築家M・コレス博士によると

パルテノン神殿の石材の加工精度はきわめて高く、円柱についていえばドラムの接合面は「平面から1/20mm以上の凸凹をもたず」しかも「1mmの1/100の精度」で密着している

らしいのです。

もちろん髪の毛一本入らない顕微鏡的な驚くべき精度です。

究極の密着

ではどうやって古代ギリシア人はその究極の密着を実現できたのでしょうか?

先ほどのコレス博士の説に基いて説明します。

➀まず滑らかさを検査するための円盤を作る。

⑵この検査用の円盤の表面に薄く塗料を塗り、円盤をドラムの接合面に載せる。

③すると出っぱった部分に塗料が付着するので、この部分を特別の研磨剤で磨く。

④再び塗料を塗った円盤を接合面に載せる。

この方法を繰り返し行っていくのです。

しかし!!!

検査用円盤の表面も完全な平面ではない(1/30mm~1/20mmの凸凹は避けれない)ので、ドラムと検査用円盤が密着してもこのドラムと次に磨かれたドラムは密着しません。

このドラム同士を密着するために次のような方法をとったと考えらえています。

➀検査用円盤を二枚作り、この二枚を1/100mmの精度で密着するように作る

②この二枚一組の円盤の片方をA、他方をBとする

③Aで磨いたドラムの面aはAと密着します。同様にBで磨いたドラムの面bはBと密着します。

④AとBはもともと密着するように作られているので、aとbも密着することになります。

このように、完璧な密着により石材の継ぎ目は裸眼では認識できないほどに完全に消されたのです。

オーダーと石造建築の矛盾

しつこいですが、オーダーとは水平の梁を柱が支えるという構造方式です。

しかしギリシア建築やローマ建築を見て「いや、柱多すぎるやろ!!」って思ったことはありませんか?

柱が多いのにはちゃんと理由があります。なぜなら、本来この構造方式は石造建築には向かないからです。

たとえば、長い板を両端で支えただけの単純なベンチを想像して下さい。

※柱と梁のイメージ図

このベンチに人が腰を下ろすと(重さがかかると)、板は下方にしなります。重い人が腰掛ければ、湾曲が大きくなって板が折れてしまうかもしれません。

ではこれが石のベンチならどうでしょうか?

一瞬「え、石の方が丈夫でしょう?」と思ったあなた、違います。

板が下方に湾曲する際には上側では圧縮、下側では引っ張りの力が働いています。

石は圧縮には非常に強いですが、引っ張りには非常に弱いという性質があり、

逆に木は圧縮も引っ張りも同程度に強いという性質があります。

石の重さは木の6倍なので、石のベンチというのは自分自身の重さで潰れるという危険性を潜在的にはらんでいるのです。

これがギリシア建築やローマ建築の場合、梁の上に載る石材は全部で数十トンあるんですよ?

なのでギリシア建築の神殿には驚くほどの狭い間隔で柱が建てられているのです。

そしてこの圧縮の強さを逆手に取って発展させたのが、ローマ建築のアーチ構造ドーム構造です(ローマ建築編で説明します)

古代文明の底力

ギリシア建築ではエジプトのピラミッドと同じように、切り整えられた石材を積み上げて(切石造という)作られています。これらの石材にはセメントやモルタルなどの接合材や潤滑剤を一切用いず、ただ上から重ねるだけの空積みで行われました。

建築工事で最も労力を要するのが石材の運搬でした。円柱は短い円筒形(ドラム)を積み上げて作られますが、そのドラム1個で5~10t、柱頭は8~9tあります。

最も重いのは円柱と円柱の間に架けわたされる梁(アーキトレーヴ)で、パルテノンでは15tもあります。

エフェソス(トルコ)のアルテミス神殿はギリシア最初の巨大神殿と言われ、そのアーキトレーヴの重さは約40tもありました。

これらの石材を運搬するには木製の大きなドラムで石材の両端部を包み込み、これを車輪として牛に曳かせたというのが一般的です。

また石材を吊り上げたり、所定の位置に移動させたりするには、石切り場で粗く成形する際に表面に突起を残しておき、それをロープで引っかけて吊り上げたと言われています。

おわりに

いかがでしたか?

少しはギリシア建築のことを理解できたのではないでしょうか。

ぼくも、少しでも疑問に思ったことは本で調べながらボチボチ、ようやく書き上がったくらいです(笑)

一応ギリシア建築が西洋建築の基礎なので一番初めに書きました。

詳しいことを言うと、ギリシア建築の前に「古代オリエント・エジプト建築」がありました!

次はローマ建築についてです、楽しみにしておいてください!

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