【サバイバル知識】火の3要素と火熾しの方法

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今回はサバイバルで使われる、火の3要素と火熾しの方法を紹介します。

ナショナルジオグラフィック監修の「世界のどこでも生き残る完全サバイバル術」という本の一節から抜粋しました。

火はサバイバルにとって非常に重要だ。

何よりもまず、暖をとることができ体温を保ってくれる。体の中心部の体温調節機能が失われることは、遭難時の主な死因のひとつだ。火のおこし方を知っているかどうかで、生死が分かれるのだ。

火の必要性を評価する際は、ボーイスカウトとガールスカウトが目標とする考えに従えば間違いない。つまり「準備をしておくこと」だ。サン=テグジュペリの教訓に習えば、サハラ砂漠でさえ、気温が危険なレベルまで下がる。また、火にはサバイバルの鍵となる、さまざまな効果効用がある。

火による暖は肉体も精神も癒してくれる。

明かりと煙はかなり遠くからでも視認性が高いため、捜索隊や救助隊に気付いてもらえやすい。明るい炎は、捕食動物や害虫を遠ざける。熱は衣類を乾かし、食物中の寄生虫を殺し、動物性や植物性食料の消化吸収を促す。温かい食物は、体の中心部の体温維持に必要なカロリーを供給して体を温める。火の煙と熱で食物を乾燥させ、保存食を作ることもできるのだ。

火を使えば、粘土質の土を焼いて調理用の鍋を作ることができ、木を堅くしたりとがらせたりして道具や武器を作ることもできる。火でお湯を沸かせば、煮沸した飲料水、医療用に器具の消毒もできるのだ。ただし、注意したいのは、「火は危険でもある」ということだ。放置すれば森林や草原に燃え移り、本来、救うはずだった生命を逆に奪ってしまうことになりかねない。また、燃焼によって発生するガスが換気されず、密閉されたテントの中などに溜まると、酸欠を引き起こすこともある。

火の3要素

火は燃料・空気・熱という3つの要素からなる。

この3つの要素を目的に合うように調節する。空気を多く送り込めば炎が大きくなるので、救難信号に適している。空気を少なくすれば炎は小さくなり、おき火が作れるほか、燃焼時間を延ばすことができる。燃料の種類によって煙の状態も変わるため、黒い煙は昼間の救難信号に適しており、特に周囲が雪や砂の場合に有効だ。白い煙は針葉樹林など黒っぽい木々の中で目立つ。

火をつけるための木の種類

火口(ほくち)と焚き付け(たきつけ)は薪に火をつける材料。

日常的な感じで言えば、初めに火をつける新聞紙や枯れ葉が火口で、本格的に火をつける炭とか石が焚き付け。

カエデ、オーク、ヒッコリー、カバ、トネリコ、ユーカリ、メスキートなどの堅木は燃焼が遅く、おき火になる。

マツ、トウヒ、ヒマラヤスギ、ポプラなどの軟木は燃焼が早く温度も高いので、持続して燃える堅木を着火させる薪の役割を果たす。

火口

火口は、火花に触れて火がつくものであれば何でも構わない。自然の中にあるものでは、からからに乾燥していて、容積に対して表面積の大きなものが適している。木であればカバの樹皮やナイフで表面を羽状に削った小さな木切れなど。そのほか、ゴボウ、ガマの穂綿、コケ、枯れ葉、乾いた草などがある↓

天然の火口が見つからなければ、コットンやポケットの中の糸くずにワセリンを擦りこんで使っても良い。サン=テグジュペリはリビア砂漠に墜落した際、自分の飛行機の折れた翼を、エンジンからくみ出したガソリンで燃やし、もう一方の翼のマグネシウムも加えて、遠距離からでも見える白く明るい炎が上がるようにした。

POINT

火口は、火をつけるためにすぐに燃える自然素材を細かく割いたもののこと。

焚き付け

焚き付けは小枝など、鉛筆ほどの太さの棒状のものがよく、火口を燃やしながら着火する。火口の火がよく燃えたところで、大きな焚き付けを加え、炎を大きくする。火は徐々に大きくしていけば長く燃え続けて十分な火床となり、さらに大きな薪に点火することができる。マツのような軟木は速く燃えきり、カエデのような堅木は燃焼時間が長いことも覚えておこう。

薪の代わりには、動物のフン、泥炭、石炭などがある。エンジンオイル、不凍液、タイヤは燃やすと黒い煙が出る。

POINT

焚き付けは少し太めだが、おおよそ大人の親指よりも細いもの。薪は火持ちの良い太い木のことを指す。

悪条件での火のおこし方

ここではいくつかの悪条件での火のおこし方を紹介します。

強風の場合

溝の中、あるいは土手の斜面に穴を掘って換気の穴を開け、その中で火をおこす。

地面が湿っていたり、薄く雪が積もっている場合

積み重ねた石の上、あるいは地面に並べた生木の上に土を敷き詰め、その上で火をおこす。

深い雪の中や湿地の場合

地面から離した台にやぐら状の火床を作り、その上で火をおこす。

雨が降っている場合

防水シート(タープ)で斜めに雨よけを作り、その下で火をおこす。

多少の雨が降っていても火をおこすことは可能だ。支柱となる長い棒とロープ、防水シートで、火をおこす場所の上に斜めに雨よけを作る。地面に近づけ、炎が燃え移らない程度の高さになるように注意する。

太いマツの倒木や丸太を割り、中の乾燥した部分で火床を作る。一度火がつけば、たとえ直接雨が当たっても、樹脂の油分によって燃え続けるからだ。防水シートの下で丸太を手に持ち、中の乾燥した部分から乾いた火口を削り取る。長時間水に浸かっていなければ、丸太の中の部分は乾燥している。焚き付けは、密生した藪の中など、雨に濡れていない場所から集める。

マッチやライターを使わずに火をおこす方法

これらのスキルは、いつ役立つかわからないものであっても知っておこう。

・虫メガネを使って太陽光を火口に集めて火種を作る。

・弓とキリを使って摩擦熱で火をおこす。

・キリを使う要領で、堅木の板の上で軟木の心棒を両手で挟んで回し、火花をおこす。

・火打ち石、火打ち金、メタルマッチ、マグネシウムの着火剤を使う。

・車のバッテリーを利用して火花をおこす。

火をおこす形式

最後に、火をおこすいくつかの形式を紹介します。

Aフレーム

➀:3本の薪でアルファベットの「A」の形を作る。

➁:焚き付けを「A」の横棒に直角になるよう立てかけていき、下には隙間を残しておく。

③:乾燥した小枝、木の葉など、火口を焚き付けの上に積み重ねる。

④:一番下から焚き付けの間を通し、火口に点火する。火口に火がついたら、ゆっくりと焚き付けを追加する。

⑤:空気が通るように隙間を空けながら、徐々に薪を足す。薪は火の勢いに合わせ、追加する。

やぐら式

➀:湿った地面や雪が積もっている場合は、直径が7~10cm、長さが60~90cm、片側の端がフォーク状に分かれた生木を4本、地面に打ち込む。

➁:4本の木の上部にそれぞれ生木の横木を渡し、フォーク状になった部分で横木を固定する。

③:生木の丸太を横木の上に(横木が燃えないように)隙間なく重ねて敷き詰める。

④:生木の丸太の上に、土を10cmほどの厚さにかぶせる。

⑤:土を盛り上げた火床の上で火をおこす。2本のY字型の枝に横木を渡し、そこに鍋をつるし火にかける。

星型

カエデなど広葉樹系の堅木を星形に組むたき火は、長時間燃え続けるメリットがある。

まず、4本の薪を十字に置き、その中心で火をおこす。薪の端が燃えてきたら、中心に向かって寄せて保つ。薪を中心に寄せず離したまま燃やしておけば、徐々に火が弱まり料理用のおきびや炭を作ることができる。また、火をおこしている間は目を離してはならない。火を消す時には必ず火床に水や灰をかぶせ、薪とおき火が冷めるまで棒でかき回す。

ティピー型

※ティピー型とは、ティピーテントに由来します↑

➀:乾いた地面を浅く四角形に掘る。

➁:底面に生木の枝を敷き詰める。

③:細くて乾いた、焚き付け用の枝でティピーを作る。底面の四隅に枝を立て、四角錘の形になるように頂点で組んで、バランスをとる。

④:ティピーの1辺に石を積み、必要に応じて風よけに使う。

⑤:ティピーの底は火口を置くため空洞にしておき、後で火口を追加できるように開口部を残しておく。

⑥:慎重に枝を足していき、ティピー側面の厚みを増していく。

⑦:ティピーの中に乾燥した火口をたっぷり入れる。

⑧:ろうそくがあれば、まずマッチでろうそくに火をつけ、その火を火口に移す。

⑨:必要に応じて火口を追加しながら炎を大きくし、太めの枝に火を移す。全体に火が回るとティピーは大きく燃え上がり、次第に火力が増していく。より長く、激しく燃えるほど、火は高温になる。土台に敷き詰められた枝も最後には燃えてしまうので、火から目を離さないように。

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