RYOです
今回は西洋建築を学ぶ上での基本中の基本、一見建築には直接関係なさそうな、しかし重要な基礎知識を先に書いておきます。
単にギリシア建築、ローマ建築、ゴシック建築などを学ぶよりも建築様式の種類や風土の特徴を頭に入れている方が理解しやすいと思いますよ(´っ・ω・)っ
建築様式の種類
そもそも建築様式とはどういうものなのか?
一言で言うと「特徴」です。
難しく言えば「特定の作品や作品群に固有の芸術表現上の特徴」とも言えます。
例えば「あーこれはギリシアっぽいな」とか「お、これはバロックやな」とかを決定付けるヒントです。
知ったかするとこういうことになります(笑)
今回紹介するのは主に8種類です。
※本参考書では古代メソポタミア建築、古代エジプト建築、初期キリスト教建築、ビザンティン建築の4種類については言及されておりません。
成立した順に列記していくと↓
- ギリシア(建築/以降省略)
- ローマ
- ロマネスク
- ゴシック
- ルネサンス
- バロック(ロココ)
- 新古典主義
- リヴァイヴァルシリーズ
です。
一般的に、
古典建築:ギリシア建築とローマ建築
中世建築:ロマネスク建築とゴシック建築
近世建築:ルネサンス建築からリヴァイヴァイル建築まで
と分類されます。
今回はわかりやすさ重視なので大きくまとめています。
各建築様式の詳しい説明は別記事で書いておりますので、そちらをご参照ください。
風土による建築様式の違い
『西洋建築の歴史』の著者は、
「その土地の風土が建築様式に大きな影響を与える」
と考えています。
一見すると難しいですが、まあ当たり前のことです。
雨が多い日本、雨の降らない砂漠地域、平均気温の高い赤道直下、平均気温の低い北極圏。
すべての地域で同じ建築様式なはずがありません!
これが大前提です。
その上で、主に西洋建築は
「地中海世界に起源をもつ古典建築の系統」
「アルプス以北に起源をもつ中世建築の系統」
に分けることができます。
つまりヨーロッパのアルプス山脈以南以北で西洋建築を大別できる、ってことなんです↓
つまり西洋建築の舞台は㋐アルプス以南の地中海世界と㋑アルプス以北との2種類に分けて考える必要がある、ということです。
㋐アルプス以南の地中海世界
では、地中海世界(アルプス山脈以南)の風土の特徴を羅列します。
早い話、地中海世界がどれだけ過ごしやすく気持ちの良い地域なのかを説明しています(笑)
・年平均気温は東京より4度高い
・年降水量は東京の四分の一
» 続きを読む
・アテネ(ギリシャの首都)の年日照時間は東京よりも800時間多い
・1年のうち237日が日の出から日没まで雲一つない快晴に相当(笑)
・アテネの年間晴天日数は年300日を下らない
・ギリシャは温暖で太陽の光にきわめて恵まれた地域
・湿度も少なく、大地は乾燥し、大きな森林は育ちにくい代わりに雑草が繁茂せず害虫が発生しにくい
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まあ一言で言うと「とっても過ごしやすい風土」という事です。
筆者もギリシャやイタリア、いわゆる【アルプス山脈以南の地域】に何度も行ったことありますが、確かに冬でも夏でもほぼ毎日晴れていました(笑)
2022年7月31日に撮影しましたが、この明るさでもう20:30です。
夜の8時半ですよ!!(´⊙ω⊙`)
次で紹介するアルプス以北の気候とは正反対です…
陽光は物体の表面に光と影という強い対比を生じさせ立体感を際立たせ、また地中海世界では空気が乾燥しているので、遠くからでもモノの形がはっきり見えます。
なので単純な建築物ほど存在感が増します↓
とにかく「なるほど〜」とだけ思ってもらったら十分です٩( ”ω” )و
㋑アルプス以北
では次に「アルプス以北の風土」について説明致します。
アルプス以北世界の風土の特徴を羅列します。
※これらは7度にわたってヨーロッパ中を旅した筆者も超納得しました(=゚ω゚)ノ
※早い話、アルプス以北の世界がどれだけ鬱になりそうな、テンションが上がらない地域なのかを説明しています(笑)
・アルプス以北の風土は陰鬱
・6月から9月までが夏で快適、一部曇り
» 続きを読む
・冬は長く、非常に寒く、風が強く、ほぼ曇り
・10月も半ばを過ぎる頃から鉛色の雲が重く垂れこめる
・10月のパリの平均気温は東京より6度低いので、すでに冬間近
・12月のパリの月平均日照時間は東京の四分の一
・朝は9時頃から明るみ始め、夕方の16時ごろにはもう暗くなり始める
・太陽の高度が低いので、たまに陽が差しても弱々しい
» 折りたたむ
などなど、一言で言うと「テンションが全く上がらない風土」です。
冬にアルプス山脈以北を旅していると、ほんとに時間がもったいないんです( ゚д゚)
なぜだかわかりますか?
朝9時まで辺りは暗いので朝の行動開始時間が遅くなりますし、それに夕方16時には暗くなってくるので宿に戻る時間も早くなるからなんです。
つまり長時間をホステルで過ごすことになるのです(´⊙ω⊙`)モッタイネェ
↑2017年12月29日にドイツとフランスの国境沿いの街Offenburg(オッフェンブルク)で撮影しました。
ほぼ真夜中のような暗さですが、実はもう朝8時です(笑)
それに陽が差しても弱々しいので、冬のヨーロッパの薄暗がりの中ではものの輪郭がはっきりせず、個々のものそれ自身の性格や立体性が不明瞭になり色彩は鈍り全てが抽象化されます。
また、当時のアルプス以北のヨーロッパの大地の大半は森で(今では想像できませんが・・・)、森は獣や盗賊、妖精など得体の知れない魔物が潜み、一度迷い込んだら二度と生きて帰れないと考えられていた恐ろしい空間でした。
また、森は湿気を蓄えるので頻繁に霧を発生させ見通しを一層悪くします。
アルプス山脈以南の建築に比べて、外見の存在感よりは建物の中に入ってからの内装を重視しなければならなかったのです。
なのでアルプス以北の建築は、抽象性と内向性、神秘性が表現されています。
おわりに
まずは基本情報として、建築様式の種類と風土による建築様式の違いを述べました。
この本、西洋建築の勉強をしたいなら是非とも一冊持っておくべきだと思います↓
初めて読んだ時は、
は、なにこれ。
むず過ぎ
と思いましたが、読み進めていけば徐々に理解できるようになりますよ(^ω^)
特に筆者のブログの内容はこの本がメインなので、ブログと共に読み進めていけば
・わかりにくいけど詳しい(本書)
・わかりやすいけど大まか(当ブログ)
の両方の視点から理解できると思います!
また、ギリシア建築やゴシック建築など、これらの風土の違いを知っていればより理解が深まると思います。
上記の内容は「西洋建築の歴史」からの抜粋ですが、もう一つの参考書である「西洋建築様式史」に書かれてあった前提概念も共に理解して頂ければ、さらに理解が深まると思います。
ですので合わせてこちらもお読みください↓(タイトルは難しそうですが、書いてあることは非常に単純です)
筆者は以前、ギリシャ建築やゴシック建築などの西洋建築を解説する記事を書きました。 筆者の中ではあれでも丁寧に書き上げたつもりで、ある程度満足してはいたのですが、最近更にもう一冊「西洋建築様式史」という参考書を手に入れました↓ […]