西洋建築を理解するための前提概念

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筆者は以前、ギリシャ建築やゴシック建築などの西洋建築を解説する記事を書きました。

筆者の中ではあれでも丁寧に書き上げたつもりで、ある程度満足してはいたのですが、最近更にもう一冊「西洋建築様式史」という参考書を手に入れました↓

前のテキストではギリシャ建築をスタートとしていましたが、本書ではギリシャ建築の基になった建築様式として【古代メソポタミア建築・古代エジプト建築】を紹介しており、またギリシャ建築なども前書と異なる視点で書かれているので、そちらも紹介した方がより皆さんの理解度が増すのではないかと思い新たにこちらの記事を書くことにしました。

つまり、

筆者
最後まで読んでって♡

ってことです(笑)

はじめに

皆さんは普通、本の見開きに書かれてある「はじめに」とか「本書を執筆するにあたって」などの筆者の冒頭の挨拶や紹介を読まれるでしょうか?

「あんなページ誰も読んでねーよ(笑)」

「ひたすら関係者にお礼を述べるあのページね( ˘ω˘ )」

「本編に関係ないから無視してますが?」

なんて言葉が聞こえてきそうですが、筆者的には「あれは読んどいた方がいい」と思っています。

なぜならあの部分こそ、その本を読む前提知識が記されているからです。

以下に本書【西洋建築様式史】の「はじめに」の部分を記しました。

結構深いことが書かれてあるので是非読んでみて下さい(∩´∀`)∩

長文が苦手な人は、クリックせずに読み進めてください。

「ヨーロッパの建築は皆おなじに見える」

「いや、確かに国々で建築は違って見える」

こうした旅行者の感想は、前者については、例えば西洋(人)という概念でヨーロッパ諸国を大雑把にとらえた場合に、同質性に目が向けられることと似ていよう。

» 続きを読む(クリックで開く)

しかし、いったん各国の違いに注目してみるならば、人種による伝統や文化の相違が歴然としてくるように、建築の世界も各国で相当異なって見えてくる。

われわれは視覚的に、まず様式によって建築を識別する。

したがって、西洋建築史へのアプローチは、ひとつの様式でくくられる建築群に共通する概念と、各国(地方)における建築の相違を理解することから始まるであろう。

ここでは、様式史による時代区分にしたがいながら、各様式の概念、様式の伝播の事情、そして各国における様式の扱い方の違いに視点を置き、西洋建築史を古代オリエントからはじめて、現代のポストモダンまで記述している。

様式は最初から完成された姿で現れるのではなく、時代を経て工夫がなされてひとつの型が出来上がり、生き物のように盛期を迎え、やがて衰退していく。

様式は、常に新しい様式に取って替わられるが、その移行期には前の様式を引きずっている。

また、ひとつの様式が各国に行き渡るまでに世紀単位の年月がかかり、その間に、様式は、それぞれの地方の伝統と融合したり建築材料を異にしたり、そこに建築家の独創と施主の好みが加わることで変形されていく。

このように、様式はヨーロッパ諸国において同一歩調を取ることはなく、様式それ自体が変わるとともに、それぞれの国(地方)で様相を大いに異にするものなのである。

といって、様式が厳然と存在していることに変わりはない。ひとつの様式の名のもとに、その中で実に多様な展開がなされているということである。

本書は、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、そしてアメリカの建築史を専門にするものが集まり、それぞれ専門分野別に執筆してまとめたものである。

とかく、西洋建築史の用語はカタカナが多く、一般的には難解であることを考慮して、できるだけ平易に記述することを心掛けた。

すでに海外旅行が日常化し、建築についても建築ウォッチングがあちこちで行われるようになってきた今日、絵画を見るように、本書が、都市という大きなキャンバスのなかに立つ建築を、「三次元の絵」として鑑賞できる手引きになることを願う。

堀内正昭

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ということで、上に書かれてあることの中で筆者が特に重要だと思える3点を紹介します。

※本文中に「とかく、西洋建築史の用語はカタカナが多く、一般的には難解であることを考慮して、できるだけ平易に記述することを心掛けた。」とありますが、めちゃくちゃ難しかったです(笑)

あれでわかりやすくしたつもりなのか・・・。

西洋建築はどれも一緒に見えてどれも違う

筆者
ゴシック バロック ロマネスク?
いや、全部一緒やん。

西洋建築を勉強する以前、筆者もそう思っていました。

そんな無学のまま5回にわたりヨーロッパを訪れ30ヵ国以上を歩き続けました(←超後悔(゚Д゚;)

例えば、「ギリシャ建築」と「ロマネスク建築」が違うのは何となくわかる↓

でも同じ建築様式で比べると全て違うように見える↓!

西洋建築はどれも一緒に見えますが、勉強してある特定の流れをつかむと「あれ、これはローマ的やん」とか「これはロマネスクとゴシックの中間時代にできたもんやな」などが分かるようになります。

様式毎に共通する概念と相違点

例えばゴシック建築を例にとってみますと、ヨーロッパには本当に数多くのゴシック建築物が存在します。

が、一つとして同じ建築物はありません↓

そのゴシック建築という様式にはある概念が共通しています。例えば、

・より高く

・より明るく

・より軽やかに

です。

ゴシック建築の特徴として一般的によく言われる、

㋐フライング・バットレス

㋑リヴ・ヴォールト

㋒尖頭アーチ

の3つの外見的特徴は、あくまで結果なんです。

それらを「発明するに至った概念」を理解する方が重要です。

また同じゴシック建築でも、ドイツとイタリアとフランスではそれぞれ違います。

それらの国や地方ごとの相違点も理解するのが重要です。

建築は生き物と同じ

様式は最初から完成された姿で現れるのではなく、時代を経て工夫がなされてひとつの型が出来上がり、生き物のように盛期を迎え、やがて衰退していく。

いやーいい言葉ですね、わたくし、この一文にかなり感銘を受けました。

建築とは、時代を経て徐々に無駄がそぎ落とされたり、新たな技術や考え方が付加&発明されたりして一つの様式として確立されていくのです。

なので「これこそまさにバロック建築だ!!!」と言えるような建築物もあれば「え、これは…ルネサンスとバロックが混ざったような・・・なに建築なんだ!」というような建築物もあります。

例えば、下の2つの建築物は非常によく似ていますが、それぞれ「後期ルネサンス建築」と「初期バロック建築」に分類することができます。

(↑後期ルネサンス建築)

(↑初期バロック建築)

時代的には「ルネサンス建築→バロック建築」という流れなので、後者(初期バロック建築)はつまり「ルネサンス建築が衰退し、バロック建築が完成する移行期に建てられたもの」ということです。

つまり図解すると下図のオレンジ色の時代に建てられたということになります↓

このように、建築様式の移り変わりはグラデーション状なのです!!

これを理解せずに、下図のような時代区分で建築様式を捉えていると、西洋建築を本当に理解することは一生できません↓

建築物は生き物のようなもの!!

人類と同じで、建築様式にも「誕生直後」、「幼年時代」、「少年時代」、「青年時代」、「中年時代」、「老年時代」が訪れるということを忘れないように!

おわりに

ということで、今回は「西洋建築を理解するための前提概念」というタイトルで、西洋建築を学ぶ前の段階のお話をしました。

上記の内容は「西洋建築様式史」からの抜粋ですが、もう一つの参考書である「西洋建築の歴史」に書かれてあった前提概念も共に理解して頂ければ、さらに理解が深まると思います。

ですので合わせてこちらもお読みください↓

(タイトルは難しそうですが、書いてあることは非常に単純です)

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