こんにちは、寝袋に関しては自称プロであるRYOです。
今回は"人生の良き友"である、寝袋のお話をします。
寝袋を購入する際、理解できないくせに一応スペック表に目を通しますよね(笑)
- 表面はボックス構造採用
- 760フィルパワーのダウンを900g使用
- 生地の厚みは40デニール
このように意味不明な要素が羅列されていると思います。
実際に筆者が購入した寝袋のスペック
(´⊙ω⊙`)ショウキカ?
ですよね。
- フィルパワー
- デニール
- 内部構造
など、どれも非常に重要な数値にも拘らず完全に購入者の独学に委ねています。
名前も知らない誰かの忖度レビューを過信して「お、この寝袋は温かいらしい(´っ・ω・)っ」と思って買ってから後悔する、そんな失敗だけは絶対にしてはなりません。
ということで、今回はそんなスペック表を読み解き自分が求める寝袋を買えるようになって頂きたいと思います。
北極圏の町ロバニエミの駅舎で寝袋を広げて寝ようとする筆者
実は筆者、愛用していたナンガの寝袋(上写真オレンジ)を自宅の洗濯機の設定ミス(=高温乾燥)で殺めてしまい、失意のなか新たな寝袋を買うことになりました。
バックパッカーとして世界30ヵ国を共に周り、厳冬期登山などの過酷な環境で幾度も命を救ってくれた寝袋でした(ノД`)・゜・。
数々の想い出が蘇ります。
奥さんよりも長い付き合いでした(´Д⊂グスン
まあそんなこんなで、上位互換であるナンガのオーロラ900DXという寝袋を代わりに購入したので、ここらへんで一度寝袋の基礎知識についてまとめようと思い立ったわけです。
長くなるので前後編の2部制にしたいと思います。
では始めます!
①寝袋の中身の違い
そもそも寝袋の中身を大きく分けると、ダウンシュラフと化繊(かせん)シュラフとに分かれます。
- ダウンシュラフ
- 化繊シュラフ
ダウンとは羽毛🦆のことで、化繊とは主にポリエステルを指します。
自然が作った天然ダウンと人工的に作られた化学繊維、それぞれメリット・デメリットがあるので簡単にご紹介します。
ダウン
(出典:「ダウン(鳥の羽)」について。)
ダウンシュラフは化繊に比べて価格が高く繊細ですので、子どもがダウンシュラフの上で飛び跳ねていようものなら筆者はきっと叫びます。
と。
しかしそのぶん軽量でコンパクトです。
とにかく繊細に扱いましょう。
ダウンシュラフは水に濡れると一時的に保温力がダウンしますが、メンテナンスを怠らなければ40~50年は使えます。
鴨は氷が張るほど冷たい水の中に潜って魚を獲るのですから、そのダウンが軽くて暖かいのは当然ですよね。
後編の「⑤生地の厚み」でも紹介しますが、羽毛にもいくつか種類があることを頭の片隅に置いておいてください↓
タグとか見たらわかりますよ。
↑こちらの場合、10%は芯のあるフェザーが入っているってことになりますね。
だから生地の厚みも大事だよね、「生地の厚み」編ではまあそんな話をします(・ω・)ノ
では化繊の説明に移ります。
化繊
ダウンシュラフに比べて価格が安く多少タフに(手荒に)使えますが、そのぶん大きくて重いです。
化繊シュラフならラーメンの汁をこぼしても、子どもが上でプロレスしていてもあまり気にしません(笑)
しかもダウンと比べてメンテフリーで水濡れに強いです。
ってことで比較表を作成しました、参考にして下さい↓
ダウンシュラフ | 化繊シュラフ | |
金額 | ✕ | ○ |
サイズ/重量 | ○ | ✕ |
メンテナンス | ✕ | ○ |
耐水性 | ✕ | ○ |
さて、ダウンシュラフと化繊シュラフの大まかな違いは理解できましたね?
次は➁寝袋の暖かさの秘密を説明します。
②寝袋の暖かさの秘密
では続きまして、暖かい寝袋の特徴をお教えします。
ずばりそれは、自分の身体と外気との間にある空気の層が分厚ければ分厚いほど暖かい寝袋と言えます。
とにかく空気の層の厚みが大事なんです!!!
暖かい寝袋はこんな感じです↓
「収納時はコンパクトに、使用する時はなるべく膨らんで欲しい」
そんなわがままな願いを叶えてくれるのがダウンシュラフなんです(・∀・)カセンジャムリ
実は空気って断熱性が非常に高いのです。
こちらの表をご覧ください↓
(特にアルミニウムと乾燥空気の数値)
(出典:空気がトップレベルの断熱材!?)
上の表によると空気はアルミニウムの約1,000倍も熱を伝えにくいのです。
温度をほぼ一定に保てる魔法瓶も、容器の間に真空層(=乾燥空気の10倍熱を伝えにくい)があるからこそなのです↓
(出典:魔法びんの秘密)
ということで、暖かい寝袋を図にするとこんな感じです↓
この断熱性能が高い空気の層が、外部の冷気を跳ね返すのです!
ダウンがしっかりと広がって生地を上下に押し広げています。
分厚いロフトがあるとダウンの間で保持する空気の量が増え、空気の層が厚くなり、結果的に暖かい寝袋になります。
背中の部分の断熱層は実際は潰れますが…
逆に寒い寝袋を図示するとこうなります↓
空気の層が薄いと断熱性能も低く、結果的に寒い寝袋になってしまいます。
重要なのはロフト(空気の層の厚み)
ダウンシュラフの場合、ダウンの質や量によってこの膨らみ度合などが変わってきます(/・ω・)/
詳しいことは後ほどご紹介致します。
では次に③使用温度域について説明します。
③使用温度域
寝袋がどれだけ暖かいか、それを示すのがEN(ヨーロピアン・ノーム)の数値です。
買おうと思った寝袋のカバーやタグにこんな表記があるのを見たことありませんか?↓
ヨーロピアン・ノーム(EN)とは、寝袋の暖かさを数値化したヨーロッパの統一規格です。
ヨーロッパの統一基準、です。
今までモンベルやナンガ、イスカなどの寝袋メーカーは独自に、
「これは-△℃までいけまっせ!!」
と規定していましたが、自社に有利な条件で実験を行っていたりと「本当にその温度でも使えるのか」は寝袋愛用者の中でも長年議論が尽きませんでした。
しかしENの統一規格のおかげで、同じ基準で複数ブランドの寝袋の暖かさを比較できるようになったのです。
ENが規定する3つの温度
ENでは以下の3つの数値を規定しています↓
COMFORT:一般的な成人女性が寒さを感じることなく寝ることができる温度域
(一般的に女性は男性よりも寒さを感じやすいので約5℃程度高く使用温度を算出している)
LIMIT:一般的な成人男性が寝袋の中で丸くなり、8時間寝られる温度域
(これよりも低い温度は、リスクのある温度域となる)
EXTREME:一般的な女性が寝袋の中でひざを抱えるくらい丸くなった状態で6時間までなら耐えられる温度域
(体は震えを起こすことで熱をつくりだそうとし基礎代謝量が増えるが、この温度域で使用すると低体温症になる恐れがあり非常に危険)
上の説明を読むのがダルイ人はこれだけ覚えてください↓
もちろん個人差がありますのであくまで目安程度にしましょう。
ENの算出方法
ENが数値をどう算出しているか(検査しているか)興味がある方は「続きを読む」をクリックして検査方法をご確認ください↓
» 続きを読む
温度センサーが装備されたマネキンに長袖と足首までアンダーウエアを着せ、スリーピングバックに寝かせてキャンプ用のマットレスの上にのせます。
なんかコワい…
マネキンの内側5箇所の温度が測定され、放熱の度合いを計測します。
計測された温度と実験室の気温を計算式にあてはめて値を算出します。
スリーピングバックの保温性能は単純な中綿の量だけでなく、布地の種類や厚み・ジッパー等にも影響を受けるため、テストではこれらを総合的に判断します。
» 折りたたむ
※床には分厚いエアマットが必要
このENが算出する温度は、あくまで分厚いエアマットの上で寝ている場合の数値です。
そうなんです、どれだけ高性能な寝袋を買っても下に敷くマットレスがショボかったら全て台無しなのです\(゜ロ\)(/ロ゜)/
筆者にも苦い思い出があります、おもしろくない昔話ですが是非聞いてください。
2018年1月某日、筆者はフィンランドの北極圏の町ロヴァニエミを旅していました。
ロヴァニエミは幻想的な北極圏の町でした。
フィンランド式サウナやトナカイのステーキをエンジョイし、その後宿代を浮かすために極寒の中でシュラフ野宿することにしたのです↓
極寒の中でシュラフのみの野宿
ENの限界温度という観点では余裕がありました。
筆者は身長182cmで体重が80kg、わりと筋肉質で常に熱気をまとっているような男くさい暑がりな人間ですが、結局寒すぎて寝れませんでした。
よくよく考えると、あれはマットレスのせいでした(;´Д`)
当時の筆者はエアマットレスじゃなく、表裏が銀色黄色のサーマレストというR値2.2のおもちゃマットを敷いていたのです。
おもちゃマットを持参していた筆者
このかばんの横に付いているのがサーマレストです。
厳冬期ではR値5.5以上が必要とも言われており、R値2.2は春夏秋用だったのです\(゜ロ\)(/ロ゜)/
皆さんも寝袋だけでなく、下に敷くマットについてもお金をかけましょう。
では④FP(フィルパワー)のお話に移ります。
④FP(フィルパワー)
(出典:NANGA/ABOUT THE DOWN)
フィルパワーを一言で表すと、ダウンが膨らむ度合いです。
正式な説明はこうです(が、別に覚えなくてもいいです)
フィルパワー指数(FP)
ダウンの測定基準で「ダウンの強度」または「その圧力に対する反発力」を表すもの。
760FPとは30gのダウンに通常の圧力をかけて実験した際、760立方インチ反発するということ。
FP指数が高いほど良いダウンと言えます。
(NANGA/ABOUT THE DOWNより引用)
冒頭でお話した「ダウン VS 化繊」と同様で、フィルパワーが高いダウンの方が値段は高いですがよりコンパクトになります。
FPが高いダウンほど大きく膨らむので、より空気の層を厚くできて断熱性が増します。
ダウンの質は以下のような感じです↓
購入予定のダウンシュラフのフィルパワー、一度確認してみましょう(・ω・)ノ
例えばあなたの目の前に2つの寝袋があるとします↓
2つの寝袋のダウンが同じフィルパワーの場合、大きい寝袋の方が暖かい寝袋です、ダウンの封入量が違いますからね。
2つの寝袋が同じ温度域の場合、小さい寝袋の方がFPが高いダウンを使っています、よりコンパクトですからね。
フィルパワーと封入量をチェック!
メーカーによっては商品名にある数字がフィルパワーを表している場合と封入量(g)を表している場合があります。
では「ナンガ」と「モンベル」で、どちらも商品名に900が入っている寝袋で比較してみます↓
ナンガの商品名の数字は【ダウン封入量(g)】で、モンベルの商品名の数字は【ダウンのフィルパワー】を表しています。
ちなみに上の場合、使用温度域がナンガの方がだいぶ低いので、モンベル製品は900FPのダウンを使いながら使用量がナンガと比べて圧倒的に少ないことがわかります。
もひとつちなみに、ナンガの場合は商品名の最後に付いているDXとかSPDXとかでダウンの質(フィルパワー)がわかります↓
(出典:NANGA/FILLING MATERIALS)
「DX→UDD→SPDX→ハンガリー産シルバーグース」の順で良質なダウンということです。
おわりに
ということで、前編が終わりました。
③使用温度域の項目でも話しましたが、高品質な寝袋だけを買っても暖かくはなりません。
必ず分厚いエアマットレスも一緒に使いましょう。
スウェーデンの北極圏の町キルナでテント泊した際、地面からの冷気が寒すぎて本当にずっとガチガチ震えて一晩中眠れませんでした。
寝袋とエアマットレスはセット、これは忘れないようにしてください↓
寝袋って決して安い買い物じゃありませんから、スペック表をきちんと読み解いてから納得して買いましょう!
特に厳冬期に使える寝袋を買う人を想定して今回の記事を書いているので、スペックを間違えれば命にかかわることをお忘れなきように(`・ω・´)ゞ
後編では「生地の厚み」や「内部構造」について解説していきたいと思います!
こんにちは、寝袋に関しては自称プロであるRYOです。 本記事は前編(【シュラフの買い方】購入前に知っておくべき寝袋の基礎知識➀)の続きです。 前編記事より引用 前編では、 寝袋の中身の違い 寝袋の暖かさ[…]
ここまでお読みくださりありがとうございました。