⑥【ローマ建築】オーダー適用のバリエーション(実例)【6/6】

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ヨーロッパを旅する前に知っておくべき西洋建築の知識として、今回はローマ建築について説明します。

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※明言しますが、西洋建築の勉強をしてからヨーロッパに行けば無学で行くより100倍楽しめます。

筆者
5回にわたってヨーロッパ30ヵ国以上を完全無学で周ってきた僕が言うので間違いありません(笑)

※「この部分がわかりにくいです」とか「これはどうなんですか?」などの質問やコメント等ありましたら遠慮なく下部のコメント欄からお問い合わせください!

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本記事は「オーダー適用のバリエーション」を解説しています。

オーダー適用のバリエーション

この章の特に重要な点を挙げると以下の3点になります↓

この記事のPOINT

➀パンテオン

②コロッセオ

③凱旋門

以下、建築作品に即してオーダー適用のバリエーション(実例)を紹介していきたいと思います。

ローマ人は「壁=アーチ構造」の表面に「柱=梁構造」の美学原理であるオーダーを、そっくりそのまま外装として貼り付けました。

例えばこちら↓

これはローマ時代に建てられたパンテオンですが、一瞬

筆者

はあぁ?

ギリシャ人が究めた「柱=梁のオーダー」がローマ建築ではただの飾りとして使われてますやん・・・

と思いますが、違います。

オーダーは、構造体を飾る単なる装飾として適用されたのではなく、オーダーこそが表現の主役なのです。

実際の建物を示しながら説明することで、よりローマ建築の理解が深まると信じています(^ω^)

➀パンテオン

初めに紹介するのは、ローマ皇帝ハドリアヌスの建立によるパンテオン(AD118年~135年)で、下に全体像を示しています↓

ローマ建築で造られた組積造の壁にギリシャ神殿の正面部分を貼り付けていますね↓

(クリックで拡大)

この正面のオーダーは、えーっと、、、アカンサスの葉の文様があるのでコリント式ですね!!

パンテオンの正面にギリシャ神殿のコリント式オーダーをそのまま貼り付けています。

次に内部です↓

↑天井にはローマ人が編み出したドームがあり、

↑中にも、またもやコリント式オーダーです(クリックで拡大)

【解説】ペディメント

ギリシャ建築編でも1~2度出てきた用語ですが、説明します。

ペディメントとは、神殿の上に載ってるでっかい三角形です↓

この黄色点滅の部分ですよね↓

これがパンテオンの中にも数多く使われていますが気付きましたか?

こっちにもあっちにも!!

こんなとこにも、あんなとこにもペディメントが・・・

【解説】ピラスター

よく見ると円柱の他に壁と同化した角柱のコリント式オーダーっぽいのが見えますね?

あれはピラスター(壁付きの平たい柱)と呼ばれるものです↓

↑円柱ではなく角柱のコリント式の柱です↓

【解説】エディキュラ

仁王像みたいなのが立っている部分をエディキュラと呼び、エディキュラの上には三角形のペディメントがあります↓

俯瞰でみるとここです↓

「エディキュラ」は神殿正面を小型・簡略化したモチーフを指します↓

上から「ミニペディメント」「ミニエンタブラチュア」「ミニコリント式円柱」が並んで、完全にミニ神殿が出来上がっていますよね(´っ・ω・)っ

②コロッセオ

次は、ローマ時代の代表的な娯楽施設コロッセオ(AD70年~80年)で、下に全体像を示します↓

ギリシャ建築編のオーダーの解説の際にも書きましたが、コロッセオは四階建てで一階から順に「ドリス式オーダー」、「イオニア式オーダー」、「コリント式オーダー」、「コリント式ピラスター」という構成になっています。

※独立円柱ではなく、壁に半分埋まっている半円柱という事に気をつけてください

コロッセオ一階「ドリス式半円柱」

表面の凸凹が無いので、トスカナ式かドリス式ですが、少なくとも本書「西洋建築の歴史」にはドリス式と書いてあります。

トスカナ式オーダーの項で「ドリス式によく似た柱頭をもちますが、溝彫りがありません。」と書きましたのでトスカナ式とも言えると思います。

どうなんでしょうか・・・。

コロッセオ二階「イオニア式半円柱」

これは完全にイオニア式ですね。

渦巻きも確認できますし、柱礎(ベース)も見えます。

コロッセオ三階「コリント式半円柱」

アカンサスの模様と柱礎

相変わらず表面の溝彫りは確認できません。

コロッセオ四階「コリント式ピラスター」

明らかにピラスターですね。

それにしてもローマ人はコリント式大好きですね(笑)

【解説】ピア

どんどん新しい用語が出てきますが頑張ってください。

ピアとは、アーチを支えている直方体の脚のことです↓

コロッセオの例で言えば、アーチを支えているこの直方体の脚です↓

アーチを支えているのは半円柱ではなくあくまでピアです。

【解説】アーケード

ここでまた新たなキーワード、アーケードについて説明します。

アーケードとは、背後を通廊としたアーチの連続開口のことでコロッセオには数えきれないくらい存在します。

この歯抜けのように開いている開口部、全てアーケードです。

四階はアーケードとは呼ばず、単に窓が開いているだけですので間違えないように

コロッセオのすごさ

誰が見ても「スゴイ!」と思うコロッセオですが、コロッセオの本当のすごさは建て始めるまでの段階にあります。

ちょっと長いので興味ない人は飛ばしてください!!

» ってことで続きを読む

ギリシャ建築編でも説明しましたが、比例の定式から寸法が決まるオーダーとアーケードの両方を統一的に整合させるのは至難の業です。

アーケードの高さは観客席の勾配などと関連し、外壁にはオーダーが貼り付けられているので、アーケードの高さの調節はエンタブラチュアの高さ、すなわちこれを支える柱の高さの変更を意味し、このことは比例の法則に従って決定されるオーダー各部の修正を意味します。

早い話、作り始めてから「あ、ここの寸法間違ってた」とかが起こってももう変更はできない、つまり統一感のない円形劇場になってしまうのです。

ギリシャ建築編でもしつこく言いましたが、「美しい建物というのは各部の寸法が数学的に調和している」というのが前提概念です。

数学的に調和していないと、

超気持ち悪いへんてこな神殿ができあがるからです。

それに先ほどみたオーダーも半円柱なので、組積造の表層部分と一体的に造られており、一度間違えれば修正がなかなかしにくい(と言うか無理な)構造なんです。

なので古代ローマ人はコロッセオを建造する際、全ての数字に矛盾がないかを何度も何度も確認してから着工を開始したのです。

また、コロッセオの平面は楕円形なので、オーダーが無くとも形態決定のプロセスは相当に複雑なものであると想像できます。

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コロッセオ荒廃の理由

西暦80年に建設されたコロッセオ、2023年現在で既に造られてから1943年の月日が経っています。

厳しい自然環境の中で荒廃していくのは当然じゃん?( ̄д ̄)

と思った方、違います。

きわめて堅牢に造られたコロッセオが今のように荒廃したのは、ある一つの理由があります。

それがルネサンス期の人々による解体です。

ローマ建築をお手本として編み出した「ルネサンス建築」でしたが、当時の人々は新たな教会を建てるためにコロッセオから大理石やトラバーチン(大理石の一種)、石などを切り出してしまったのです。

筆者
コロッセオだけでなくパンテオンもそうで、元はもっと豪華な作りだったんです。

逆に言えば古代ローマ時代から1,000年以上経ったルネサンス時代でも建築材料として使えるほどしっかりした建造物だったのです。[/show_more]

③凱旋門

そして最後に、イタリアの首都ローマにある315年に建てられた古代ローマ時代の凱旋門です。

パリにある凱旋門のモデルになったオリジナルです↓

凱旋門は実用的な建築物では無いので、形態は純粋に美的な観点から決定されています。

【解説】ペデスタル(柱台)

オーダーはまたもコリント式オーダーがそっくりそのまま貼り付けられていますが、通常と違う点としてペデスタル(柱台)が使われている事です。

柱台(ペデスタル)とは柱の下にある背の高いベースです。

もはや柱礎とは別物ですよね↓

この柱台は、エンタブラチュアの高さを調整するのに非常に有用らしいです。

【解説】要石(かなめいし)

さあ、これで最後です。

要石(かなめいし)とは、アーチの最上部に取り付けられた石のことで、全体を固定する役目を持っています↓

さて!

以上をもって下の写真と説明を読んで頂ければ、何となくローマ建築の特徴がお分かりになると思います。

この凱旋門は中央に大きなアーチを、その両脇に半分の大きさのアーチをあけた分厚い壁体に、コリント式オーダーを貼り付けたものです。

中央アーチの高さは、要石(かなめいし)がエンタブラチュアの下端部にちょうど接するように、両側のアーチの高さは、要石が中央アーチの迫元(アーチとピアのつなぎ目部分)の下端部にぴったり接するように決められています。


これにてローマ建築の解説は終了です、お疲れ様でした!

では次に、ロマネスク建築の前に発展した初期キリスト教建築についてお話したいと思います。

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