さて、本記事では、ユダヤ人の“聖なる物語”――そう、旧約聖書という名の一大叙事詩を、なるべく分かりやすく、そしてちょっぴり笑える感じで解説していく所存である。
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さて、遂にこの単元にやってきたかという感じです。 世界を周るうえで必ず知っておくべき知識の一つ、それは宗教の基礎知識で宗教上のルール違反等を勉強せずに世界を旅することは危ないし勿体ないです。 今回はユダヤ教の歴史をわかり[…]
さて、本記事ではユダヤ人の聖書(=物語)である旧約聖書をなるべくわかりやすく解説してみました。 大まかなお話は以下の記事で既に言及していますので、興味があればこちらからご覧ください↓ [sitecard subtitle[…]
本書では、その記事で触れた内容をさらに掘りに掘って、スコップが折れる寸前まで深掘りした構成となっている。
読む際には、その覚悟を持って臨んでいただきたい。
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さて、本記事では、ユダヤ人の“聖なる物語”――そう、旧約聖書という名の一大叙事詩を、なるべく分かりやすく、そしてちょっぴり笑える感じで解説していく所存である。 [show_more more=前置き(クリックで開く) less[…]
ではさっそく、神と人類の濃すぎる関係史をのぞいてみようではないか(”◇”)ゞ
※なお、本記事に登場する写真のほとんどは画像生成AIによる産物であり、「あれ?この人見たことある!」と思っても、たぶん気のせいである。
実在の人物とはほぼ無関係なので、そこんとこよろしく。
イスラエル全盛期を築いたダビデ王とソロモン王
さて、ここで前回のおさらいである。
神の使いである士師サムエルに見い出された30歳の青年サウルが王となりヘブライ王国を建国したが、功績が増すごとにサウルは徐々に謙虚さを失い、ついに自分を見い出してくれたサムエルや神のことまでもを無視し始めた。
そんな中、神はあっさりとサウルを見限り、新たな王となるべき少年ダビデを見い出したのだった…。
ダビデ少年を見い出したラスト・サムエル
ダビデの出現により神から見放されたサウルは、徐々に悪霊に悩まされるようになっていった。
日に日に衰弱していくサウル王を見かねた家臣は、
「琴の音色で癒されてはどうか」
と、竪琴弾きを宮中に招待した。
宮中で竪琴を弾く青年、その正体は!!!!???
そして、その竪琴弾きこそ、ダビデであった。
その音色をいたく気に入ったサウルはダビデを重用し、自分の側に置くようになった。
音楽で出世するとは、なんとも芸術の力である。
さらに、物語は「これでもか!」というくらい少年ダビデに都合よく展開していく。
さらにダビデはサウルの息子ヨナタンと大親友になり、娘ミカルからは好意を抱かれるようになった。
「勇敢でイケメンで音楽もできる」とくれば、まあ惚れるのも無理はない。
ダビデ、親友のヨナタン、その妹のミカル(←実在しない人物たち)
こうしてダビデは、「友情・美女・名声」というRPG三種の神器をいっぺんに手に入れ、勝ち組ロードをひた走ることになる。
投石だけで巨人ゴリアテを倒したダビデ
順風満帆すぎて逆にフラグが立ちそうなダビデ少年。
そんな彼の人生において決定的な転機となる事件が勃発した。
それが、ペリシテ人(※)の大男、豪傑ゴリアテとの戦いだった。
※小アジア海岸から東地中海各地に現れた民族
ゴリアテはペリシテ人の超・重量級ファイター。
小アジアからやってきたペリシテ人の中でも、ひときわ目立つサイズ感。
筆者の脳内イメージでは「名前に“ゴリ”って入ってるし、まあ見た目もゴリゴリなんだろうな」という雑な想像が止まらない。
ゴリアテVSダヴィデ
ゴリアテ「がるぅヴぁうゔゔ!!!!」
ダビデ「なんじゃこのゴリ押し系モンスターはぁぁ!!!」
しかし、武器も鎧も持たぬ少年ダビデ。
手にしていたのは…ただの石だった。
が、それだけで十分だった。
ダビデの放った一発の石が、ゴリアテの額にズドン。
巨体は地鳴りと共に崩れ落ち、ペリシテ軍はあっという間に総崩れ。
まさに投石一発、逆転KO勝ちである。
この伝説の戦いが、あのミケランジェロ作「ダビデ像」の元ネタとなっている。
たった一発の投石で巨人ゴリアテを倒したダビデ
ダヴィデ像が左手に持っているもの、それこそが石である。
この快挙により、ダビデの名声はうなぎ登り。
宮廷内での評価もうなぎ登り。
女子人気もうなぎ…
とにかく全部うなぎ状態である。
当然ながら、この状況に耐えきれなくなったのが、かのサウル王。
サウル「あの小僧めぇ…どんだけ人気者なんじゃぁ…!」
さらに追い打ちをかけるように、ダビデはサウルの娘ミカルと結婚。
息子のヨナタンとも無二の親友という、まさに“家族に好かれる系婿”となってしまった。
が、日に日に存在感を増すダビデを見て、サウルの嫉妬心は敵意に変わり、やがて殺意に。
ダビデに殺意を燃やし睨みつけるサウルおじさん
サウル王、ついにダヴィデ暗殺命令を下す。
ヨナタンやミカルの機知により様々な陰謀から逃れるも、サウルの殺意の強さを知ったダビデは逃亡生活を始めてしまう。
ヘブライ王国を去るダビデ
一方、ダヴィデを追いやったサウルだったが、国は不安定な状態に陥り、そこにペリシテ人が戦いを挑んできた。
ペリシテ人との戦を前に、サウルは神に何度も問いかけたが全く応えがない、つまりガン無視されていたのである。
ダビデ「サウル王がこれほど私に敵意を抱いていたとは…もうこの国にはいられない…」
サウル「あのダビデのがきゃぁどこ行きやがった!!?わしから何もかも奪う気か、殺してやるぅ!!!」
ペリシテ人「え、ヘブライ王国もめてんの?じゃあ今こそゴリアテ様の無念を晴らす時ぞぉぉぉ!!!!」
サウル「神!!!どこから守れば良いでしょうか!!?兵の配置は!?こちらの被害はどれくらい…!!?」
神「・・・」
サウル「神いぃぃぃ!!」
困り果てたサウルは、ついに女霊媒師の元へ駆け込む。
最後の手段である。
そこで霊媒師からの衝撃の一言。
あなたと息子たちは明日戦死し、イスラエルはペリシテに敗れる。
そして翌日。
その言葉通り、サウルの息子たちは戦死しイスラエルは敗北した。
これを受けてサウルは自害した。
サウルの死後、ダビデは出身地である南の地ユダに戻り油を注がれた。
※「油を注がれた」=「神に選ばれた」
ダビデはイスラエル最大の部族である南部ユダの王となり、北の部族ではサウルの遺児のイシュ・ボシェトが王位に就いた。
イスラエルは南のダビデ派と北のイシュ・ボシェト派に分裂、内乱が勃発した。
しかしイシュ・ボシェトが部下に暗殺されたことで内乱は終結を迎える。
そしてダビデはミカルと再婚した。
「あなたを永遠に愛することを誓います、イスラエル王ダビデの名にかけて。」
ダビデ「この瞬間のために…私は戻ってきた。」
ミカル「あなたを永遠に愛します、我が王。」
北の部族もダビデを受け入れ、ここでようやくイスラエルが統一されたのであった。
これが紀元前1003年頃と言われている。
さらにダビデは当時エブス人が暮らしていた要塞都市エルサレムを襲撃しエブス人を倒し、エルサレムに王宮を移している。
その後も異民族との戦いに次々と勝利し、ヘブライ王国はどんどん領地を広げていった。
神にも民にも愛されたダビデの"唯一の弱点"
傲慢になり、神に嫌われたサウルに対し、神からも民からも愛されたダビデは、一見すると完全無欠なスーパーマンのようにも見える。
勇気あり、カリスマあり、信仰心も厚い。
まさにパーフェクト王子、スーパーキング・ダヴィデ。
いや、神に愛されすぎて「公式マスコット」状態である。
しかし最大の欠点があった。
それが女性関係のゆるさだった。
ダビデはミカルと二度も婚姻関係を結んだが、どうも王位継承権が目的だったようである(←最低なやつ
というのもダビデは即位して以来、徹底的にミカルを避けている。
また、それを裏付けるように、ダビデは約10人の妻を持ち、四十人前後の子どもをもうけているのだ。
浮かれているダビデおじちゃん
まさに古代のリアル一夫多妻制ロイヤルファミリーである。
しかもその中で最大の罪を犯している。
姦淫と殺人である。
家臣ウリヤの妻バト・シェバと不倫したうえ、その夫を戦場へ派遣して前線につくよう命令し、戦死に追いやった。
夫の死後、ダビデはバト・シェバを娶り(めとり)、妻としている。
ダビデが特にお気に入りだった人妻バト・シェバ
ダビデ「この愛は…間違っていた…でも、止められなかったんだ…(言い訳)」
その罪を咎める(とがめる)ように、ここからダビデに次々と不幸が襲いかかる。
- バト・シェバとの間に産まれた子は七日目で死亡。
- 息子たちは近親相姦、強姦、兄弟殺しなどの大罪を犯す事件を起こす。
- さらに息子のアブサロムがダビデに反旗を翻し、イスラエルは内乱状態に。
こうしてダビデは自ら愛する息子を討つことになるのだった。
この悲劇を経て、ダビデは心身ともに衰え、最期のときを迎える。
失意の中、息を引き取る直前にダビデが跡継ぎに指名したのが、バト・シェバとの第二氏ソロモンだった。
ダビデとソロモンの"栄華"はなぜ七十年しか続かなかった?
賢王ソロモン(在位紀元前965~926年)。
彼の名は現代でもたびたび登場する。
たとえば──
・ソロモン王の財宝
・ソロモン王の指輪
──など、いかにもファンタジーRPGで出てきそうなアイテム名である。
だが彼は単なる伝説の存在ではない。
実際にイスラエル王国の黄金期を築いたリアル賢王であった。
そんなソロモンが着手した最大の事業は、エルサレム神殿の建立だった。
かつて父ダビデもこの神殿建設を夢見たが、神はそれを鮮やかに却下。
イスラエルの民と常に歩む神に、座るための神殿は不要
そう告げていた。
しかし神はソロモンの神殿建設は認めたのである。
ソロモンが建立した神殿は贅を尽くしたきらびやかなものとなり、神も大変喜んだ。
周辺各国からは朝貢の列が絶えなかったとも言われている。
だがその裏で、国家崩壊のフラグは着実に積み上がっていたのだった…。
ソロモンは周辺諸国との外交の一環として──いや、あくまで「外交」だと言い張って──妻を700人、側室300人を迎え入れた。
合計女性1,000人という数字に、さすがに神も開いた口が塞がらなかったであろう。
あくまで外交政策として、ですよね…ソロモンさん?
それだけならまだしも、ソロモンは異国の妻たちからねだられ、宮殿の中に異国の神々の像を建て始めた。
だけでなく、自らも拝むようになっていった。
これを神が見逃すわけがない、もちろんぶちギレ案件である。
神「ソロモン、おぬしもか…ふっ、このバカが!!!!!」
晩年、王国は内部からガタつき始め、反乱が発生。
死後、ソロモンの後を息子のレハブアムが継ぐが、従ったのはイスラエル十二部族のうちユダ族とベニヤミン族のみ。
残りの十部族は預言者アヒヤによって王とされたヤロブアムを支持し、イスラエル王国から分裂してしまった。
こうして南のユダ王国、北のイスラエル王国、二つの分裂王国が誕生したのだ。
(出典:神のことばの選り好み)
紀元前926年のこと(らしい)。
世界の歴史まっぷさんの年表にも載っていた。
もう少し拡大してみよう。
上の年表を確認しても、だいたい紀元前926年に「ヘブライ王国」が「ユダ王国」と「イスラエル王国」の二国に分裂していることがわかるだろう。
つまり──
ダビデとソロモンという“神に選ばれた黄金親子”によるイスラエルの栄光は、わずか70年で終焉を迎えることになった。
その後、南北に分かれた両王国は、互いににらみ合い、衰退と混乱の道をたどっていく。
では次ページでは旧約聖書のラスト「バビロン捕囚で再び訪れた、忍耐の時」についてご紹介する。
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