⑧【ゴシック建築の無重量性】重量感の排除とは?【4/6】

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ヨーロッパを旅する前に知っておくべき西洋建築の知識として、今回はゴシック建築について説明します。

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※明言しますが、西洋建築の勉強をしてからヨーロッパに行けば無学で行くより100倍楽しめます。

筆者
5回にわたってヨーロッパ30ヵ国以上を完全無学で周ってきた筆者が言うので間違いありません(笑)

※「この部分がわかりにくいです」とか「これはどうなんですか?」などの質問やコメント等ありましたら遠慮なく下部のコメント欄からお問い合わせください!

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本記事は「ゴシック建築の無重量性」を解説しています。

ゴシック建築の無重量性

この章の特に重要な点を挙げると以下の3点になります↓

この記事のPOINT

➀線状要素と重量感の排除

②エッジの排除

③線状要素の太さ=壁の厚さ?

それぞれ解説します。

➀線状要素と重量感の排除

本当に大事なことなので何度も言いますね↓

ゴシック建築は、ロマネスク建築の欠点である「低い、重い、暗い」をなんとか克服することに心血を注ぎました。

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↑こちらの記事でも軽く述べましたが、ゴシック建築の革新の本質は線状要素重量感の排除です。

線状要素とは「シャフトや小円柱などの丸くて細長い棒状の要素」のことです。

後で詳しく解説しますが、要するに「角ばったところを減らしてゴリゴリ感を無くした」ってことです。

・・・。

筆者

まだわからなくても大丈夫です(笑)

今覚えて欲しいことは2つです↓

  1. ゴシック建築は線状要素で溢れている
  2. 線状要素は重量感を排除する

とにかく「線状要素を多くすればするほど内部はスリムに見える」ってことなんです。


テキストの一部

「使えば使うほど内部を軽やかにできる技術」

そんな魔法のような技術が線状要素ですが、ゴシック建築はロマネスク建築と違って線状要素で溢れています↓


見てもイマイチわかりませんよね~、その気持ちわかります。

線状要素が多用された理由は重量感の排除です(←既述)

ゴシック建築で用いられた、重量感を排除するための方法の一つに「エッジの排除」があります。

②エッジの排除

ゴシック建築では、ロマネスク建築のように壁をくり抜き、窪ませ、盛り上げたときにできる直角のエッジがみられません。

ここで言う直角のエッジとは「角ばった所」という意味です。

ロマネスク建築の直角のエッジ↓

エッジは、その背後に連なる壁体の体積を、したがって重量を暗示させるがゆえにゴシック建築では徹底的に排除されました。

エッジは重量感を暗示させる!!

では直角のエッジを排除したゴシック建築をご紹介します↓

どうですか?明らかにロマネスク建築よりも軽やかで優雅な内部ですよね。

それは先ほども紹介した直角のエッジが無いからです。


ゴシック建築には上記のような直角のエッジがない!!!!!

ゴシック建築ではエッジは線状要素によって隠されているか排除されています↓

先ほど言っていた「線状要素=シャフトや小円柱などの丸くて細長い棒状の要素」とは、まさにこれのことだったんです。

今なら明らかですよね↓

軽やかさが全く違います。

③線状要素の太さ=壁の厚さ?

(ここまでしつこく説明してきたのである程度理解はされていると思いますが)ゴシック建築で用いられた線状要素重量感の排除にとても役立っています。

なぜなら、ロマネスク建築ではくり抜かれた開口部に、壁の厚さが素直に表れますが、ゴシック建築では壁の厚さもまた、線状要素によってたくみに隠されているからです↓

↑ね?(´っ・ω・)っ

まあ簡単なので実例を挙げながら説明していきます。

↑こちらのゴシック建築例で説明します。

もうあなたの目には無数の線状要素がハイライトされて見えているかと思いますが、今回は特に➀ピア、②シャフト、③小円柱、④トレーサリーの4つを抽出しました↓

➀ピア

ローマ建築編でも出てきましたよね、ピア!

ピアとはアーチを支えている支柱です↓

普通ピアは角ばっている、つまりエッジがあるのでかなり重量感があるはずなのですが、、、。

ゴシック建築のを見てください↓

ゴシック建築ではピアも丸っこくてスリムですよね、これも線状要素です。

②シャフト

シャフトとは、壁沿いに上部まで伸びる柱です↓

この可愛らしいシャフトも線状要素です。

この丸いシャフトは補強には全く影響がありませんが、とにかく軽やかに演出されてます。

③小円柱

小円柱とはトリフォリウムに上下に走る円柱です↓

この小円柱も同様です。

④トレーサリー

トレーサリーとは、窓面(クリヤストリー)を細分割する装飾的な部材です↓

ちなみにGoogleで「トレーサリー」と画像検索したらこんな写真が出てきます↓

まあトレーサリーとはそういうもんです。

ただ単に「クリヤストリーどーん!」じゃなく、あえてトレーサリーとしてクリヤストリーを細分化することにより、さらに軽やかさが演出されてる気がしますよね。

これら全て線状要素です(о´∀`о)


さて、我々の眼は開口部を縁取り分割する線状要素の太さを壁の厚さとして捉える傾向にあります。

つまり、存在感のあるピアやシャフト、小円柱にトレーサリーを『壁の厚さを代表するもの』として受け止めます。

このようにゴシック建築の身廊壁は線状要素によって編まれた格子状の壁と化しているのです。

これらの線状要素は、重量を支えるには細すぎる外見しかもたないので線状要素の細さに見合った軽さ(重量のなさ)を感じさせます。

実際に天井を支えている柱はトンデモナク太いのですが、線状要素を多用することで目を欺いて「あんなか細い柱でこの教会の天井を支えてるんだ~」感を演出してるんです。

また、実際には荷重をほとんど支持しませんが、(目を欺くために)力の流れの正しい道筋とみえる位置にだけ付けられています。

ゴシック建築の凄さはこういった「いかに軽く見せるか」を追求したところだと筆者は思います。

一点忘れてはいけないのが、内部は超軽やかで優美に仕上げていますが、一歩外に出ると外観はフライング・バットレスちゃんでゴリゴリにサイボーグされていることです↓

ゴリッゴリのサイボーグなんです↓

しかしそれでいいんです。

教会で重要なのは信徒が典礼(=ミサ)を行う内部なんですから。

これは初期キリスト教建築時代からのテーマなんです。


では次に、ゴシック建築の展開についてお話したいと思います。

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