⑨【図解でわかる】初期ルネサンス建築の解説【3/7】

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ヨーロッパを旅する前に知っておくべき西洋建築の知識として、今回はルネサンス建築について説明します。

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※明言しますが、西洋建築の勉強をしてからヨーロッパに行けば無学で行くより100倍楽しめます。

筆者
5回にわたってヨーロッパ30ヵ国以上を完全無学で周ってきた僕が言うので間違いありません(笑)

※「この部分がわかりにくいです」とか「これはどうなんですか?」などの質問やコメント等ありましたら遠慮なく下部のコメント欄からお問い合わせください!

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本記事は「初期ルネサンス建築」を解説しています。

初期ルネサンス建築

この章の特に重要な点を挙げると以下の2点になります↓

この記事のPOINT

➀捨子養育院(spedale degli innocenti)

②ロマネスクにもゴシックにもない革新

それぞれ解説します。

➀捨子養育院

まず最初期のルネサンス建築は、ブルネレスキによるフィレンツェの
「捨子養育院(spedale degli innocenti)」(1421~1445)とされています。

※「すてごよういくいん」と読みます。

捨子養育院(spedale degli innocenti)↓

ルネサンス建築最初期の特徴として、

円柱が支える半円アーチとその上に載るエンタブラチュアの組み合わせ

が挙げられます。

早速ちんぷんかんぷんですか?(^ω^)ダイジョウブ

こちらをご覧ください↓

例えば柱の一本を例にとってみましょう↓

柱と梁の間にアーチが挟まれています。

今まで見たことのないヤバい組み合わせになっていると思いませんか?

皆さんはオーダーの大原則って覚えてますか?

柱の上に梁、です↓

なのに初期ルネサンス建築では柱の上にアーチです。

無茶苦茶です。

この建物は広場に面した下階をアーケードとし、上階を平滑な壁面とするファサード(建物正面)構成が特徴です。

ここでぇぇ、柱頭の種類を当てるクーーイズ‼

柱頭に興味のある方だけ読んでみてください!

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では復習ですが、この柱頭(キャピタル)は何式キャピタルでしょうか?

チ、チ、チ、チ・・・。

タイムアップ!!

正解は、柱頭にアカンサスの紋様があるのでコリント式です。

読者
アカンサスの紋様と渦巻きが両方あるからコンポジット式じゃないの!!?

と思った方、鋭いですね。

でも違います(たぶん)

参考書にはコリント式とコンポジット式の明確な見分け方は書かれていないので、あくまで筆者の感覚で見分け方を紹介します。

コンポジット式柱頭の渦巻きはコリント式と比べてよりハッキリと水平に彫られています。

しかしコリント式柱頭はあくまでアカンサスという植物を模倣しているので、渦巻きが(あたかも稲穂が垂れるように)水平では無いのです。

実際どうかはわかりませんが、筆者はそんな考察をしながら柱頭を眺めています。

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ということで、捨子養育院の構成アゲインです↓

円柱と半円アーチによるアーケードは、古代末(ローマ建築以降)から中世初期(ロマネスク建築頃)にかけてよく用いられた形式ですが、特にフィレンツェを中心としたトスカナ地方ではこの伝統が強く残り、ロマネスク建築の全期間を通じて用いられ続けました↓

一般的にロマネスクやゴシック建築では円柱ではなくピアを、ゴシック建築では半円アーチではなく尖頭アーチを用いていました。

つまり捨子養育院のアーケードは、この地方のロマネスク建築の伝統を受け継いでいると言えるのです。

筆者的には「いや、そもそもローマ建築を模範として始まったはずやのにロマネスク建築も参考にしてるやん。そこは徹底せえよ」と思いました(´っ・ω・)っ

②ロマネスクにもゴシックにもない革新

初期ルネサンスの代表例である捨子養育院、前章の最後にちょっとディスりましたが、捨子養育院のファサード(建物正面)にはロマネスクにもゴシックにも無い革新があるのです↓

それが、

➀コリント式の円柱

②下階と上階を分けるエンタブラチュア

③四角い枠付きの窓

④その上に載るペディメント

です。

「これらはいずれもローマ建築で既に使われていた要素だ」と参考書には書かれていますが、確かにそうでした。

↑確かに「コリント式円柱」も「エンタブラチュア」も「枠付きの窓」も「ペディメント」も全てローマ建築のパンテオンで使われていました。

つまり初期ルネサンス建築家は既にローマ建築で使われていた要素を混在させてまた新たな表現を作り出したのです。

これこそがローマ・ロマネスク・ゴシック建築にもなかった初期ルネサンス建築独自の革新であるということなんです。

↑➀半円アーチのゆったりとしたスパン、➁アーチの明瞭な縁取り、③ほっそりとした円柱が作り出す軽やかなリズム感、そう言われれば急に立派に思えてきました(笑)

今更ですがエンタブラチュアとかペディメント、わからない人にちょっと説明します。

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簡単に説明します。

くどいですけど、単純接触効果で徐々に覚えていきます。

エンタブラチュアとは円柱の上に載っている梁(はり)のことで、上階と下階を分けるものです。

ギリシア建築の場合、この円柱の上に載っている横に長い石の柱です。

ローマ建築にもエンタブラチュアは存在します↓

(パンテオン内部)

凱旋門にもエンタブラチュアがあります↓

ギリシャ建築でもローマ建築でもオーダーと言えば、円柱とエンタブラチュアが必ずセットで使われていました。

そしてペディメントとは、屋根の近くにあったり、入口や窓などの開口部の上にあったりする三角形の壁面のことです。

↑パンテオンの神殿正面にあるドデカイ三角形、こいつがペディメントです。

↑窓の上にあるコイツも小規模なペディメントですね。

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では捨子養育院のファサード(建物正面)に戻ります。

確かに下階には円柱の上にエンタブラチュアが走り、その上の壁面に窓がありペディメントが載っています。

しかし『円柱と円柱が支えるエンタブラチュアの一連のセット』がオーダーなので、円柱の上にアーチを架けてその上にエンタブラチュアを載せるのはオーダーとは呼べません。

つまり初期ルネサンス建築は、古典系建築の基本中の基本「オーダー」の原則から外れているのです。

これが最初期のルネサンス建築の特徴です。

筆者
オリジナリティを出そうとし過ぎて、大原則を破ってしまった哀れな建築様式なのです(笑)
※筆者の個人的な見解であり、特定の人物・建築様式を誹謗中傷する意図はございません

では中期ルネサンス建築の解説に移ります↓

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