【おもしろい豆知識】真っ赤なスープ『ボルシチ』はロシアの料理ではない

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ボルシチ、それロシアちゃう。ウクライナや。

「ボルシチ」と聞いて、どんな料理を思い浮かべるだろうか。

真っ赤なスープに野菜ゴロゴロ、肉がドン、で、ちょっとピリ辛っぽい…

そんな“見た目勝負”のシチューである。

だがしかし、ここで全国の料理認識に一石を投じたい。

ボルシチは――ロシア料理ではない。

ではどこの国の伝統料理か、という話になる。

ルーマニア?ウクライナ?ポーランド?バルト三国?ベラルーシ?カザフスタン?コーカサス三国?

そう、正確にはウクライナの伝統料理である。

(※言っとくが「諸説あり」とは書いた。突っ込まれる前に逃げ道は確保してある)

ボルシチの正体

では、なぜボルシチは「ロシア料理」の座に居座ってしまったのか?

その理由はだいたいこうだ。

ソ連という巨大な連邦国家が昔あって、ウクライナもその一部だった。

で、「ソ連=ロシア」みたいなざっくりイメージが世界中に広まったせいで、ウクライナの料理も、建築も、文化も、ぜ〜んぶロシアのモノ扱いされた。

完全に、である。

つまり、ボルシチは長年「料理界のアイデンティティ盗難事件」に遭っていたわけである。

本当にロシアの隣国のウクライナは気の毒である。

ビーツこそ主役

ところで、あの情熱的な赤色は何のせいだろうか?

唐辛子か?
いやいや、ボルシチは見た目の割に辛くない。

トマトか?
それも違う。色は近いが、主役ではない。

正解は、そう――ビーツである。

そう、あのクセがすごい赤紫の根菜だ。
ビーツをたっぷり使うことで、あの“映える”スープが完成するのだ。

しかも驚くべきことに、「ボルシチ」という言葉そのものがスラヴ語で「ビーツのスープ」を意味するらしい。

完全にビーツありきである。

ビーツがなければ、ただの野菜スープである。

ウクライナの大地は野菜の宝庫

ウクライナは「ヨーロッパのパンかご」とも呼ばれる、農業大国である。

広大で肥沃な土地、そして穏やかな気候――ボルシチだけでなく、他の野菜もバンバン育つ。

だからこそ、家庭料理としてビーツたっぷりのスープが生まれたのは、ごく自然な流れと言える。

国旗そのものが豊穣を表すウクライナ

こちらがウクライナの国旗であるが、その国旗の意味を考えたことがあるだろうか?

この国旗、青空の下に広がる金色の小麦畑を表している。

デザインも意味も素晴らしい国旗だと感心している。

原発事故と“もしも”の話

余談だが、ウクライナ北部にはチェルノブイリという原発がある。

1986年にあの有名な事故が起きた場所だ。

だが、最大の被害を受けたのは意外にもお隣のベラルーシだった。

風向きの問題で、ベラルーシの大地がダイレクトに被爆したわけだ。


チェルノブイリはベラルーシとの国境に近い

もしウクライナの農地全体が高濃度に汚染されていたら、「ボルシチ文化」そのものが地上から消えていたかもしれない。

考えただけでも恐ろしい。

おわりに~ボルシチを見たら、ウクライナを思い出せ~

ボルシチはロシア料理ではない。

ウクライナ料理である。

ビーツが主役で、色が派手で、栄養もあって、意外と優しい味をしている。

次にボルシチを食べるときは、ぜひその赤いスープの向こうに広がる、ウクライナの大地と歴史、そしてビーツへのリスペクトを思い出してほしい。

……とはいえ、筆者はサワークリームをドバドバ入れてしまう派である。

どうか許してほしい。

以上。

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