⑧【ゴシック建築】フランス・ゴシックの一貫性【6/6】

この記事を読むのにかかる時間: 3

ヨーロッパを旅する前に知っておくべき西洋建築の知識として、今回はゴシック建築について説明します。

» 恒例の挨拶(クリックで開きます)

※明言しますが、西洋建築の勉強をしてからヨーロッパに行けば無学で行くより100倍楽しめます。

筆者
5回にわたってヨーロッパ30ヵ国以上を完全無学で周ってきた筆者が言うので間違いありません(笑)

※「この部分がわかりにくいです」とか「これはどうなんですか?」などの質問やコメント等ありましたら遠慮なく下部のコメント欄からお問い合わせください!

» 折りたたむ

本記事は「フランス・ゴシックの一貫性」を解説しています。

フランス・ゴシックの一貫性

この章の特に重要な点を挙げると以下の2点になります↓

この記事のPOINT

➀ゴシック建築が複雑な理由

②フランス・ゴシックの一貫性

それぞれ解説します。

➀ゴシック建築が複雑な理由

ゴシック建築は、他の建築様式に比べるとかなり不明瞭な枠組みであると言わざるを得ず、特に後期ゴシックは各地のそれまでの建築様式と複雑に絡み合いながら発展したので、包括的に

筆者

これがあるからドイツのゴシック様式だ!

というように述べることは不可能なんです。

なぜならゴシック建築はおよそ250年に渡って発展し変化し続けていたからです。

イギリスにはイギリス風のゴシック建築が、

フランスにはフランス風のゴシック建築が、

ドイツにはドイツ風のゴシック建築があります。

それを踏まえた上で一応(あくまでそういう傾向があるということですが)各国のゴシック建築の特徴を記します↓

フランス&ドイツ

参考書曰く、西正面に双塔を立てるのがフランス&ドイツゴシックの特徴だと。

まあこれはわかりやすいですね

イギリス&イタリア

参考書曰く、イギリス&イタリアは西正面に双塔を立てず、シンプルにまとめることが多いんだと。


ミラノ大聖堂

これがシンプルですか…?

シンプルの定義を教えてくれ\(゜ロ\)(/ロ゜)/

イギリス&ドイツ

参考書曰く、イギリス&ドイツは複雑なパターンをもつリブヴォールトを発達させた、と。

これもわかりやすい!

②フランス・ゴシックの一貫性

というように、各国で一応の傾向はあるものの明確に区分できないんです。

しかし、フランスの中心地パリにおいてのみ、初期から後期に至るゴシック建築の一貫した発展の状況を確認することができるので、最後にそれを紹介します↓

初期ゴシック『サン・ドニ大聖堂』

下の写真をじっくりご覧になってから読み進めてください。

パリの近郊に位置するサン・ドニ修道院(※現在は大聖堂に昇格)は、フランス王家の庇護を受ける由緒正しい修道院で、院長のシュジェールは「最初のゴシックを生み出した」とされており、建築史上特に重要な人物とされています。

写真を見て「お、ちょっとロマネスクっぽいな」と思った方、ナイスです。

確かにアーチは尖頭アーチではなく半円アーチですし、窓も小さいし・・・

厳密に言うと「ロマネスクの面影を色濃く残している」って感じです。

しかし一たび堂内に入ると、そこはもうロマネスクとは全く異なる世界が広がっています↓

リヴ・ヴォールトの天井と線状要素、そして壁面に敷き詰められたステンドグラス、尖頭アーチのトリフォリウムなど完全にゴシック様式です。

※ステンドグラスは文字が読めない人のために、聖書の内容を「絵で」わかるように作られました。

外観はロマネスク、内観はゴシック

このからくりを説明します。

サンドニ大聖堂(当時は修道院)自体は、五世紀に創建されました。

しかしシュジェールによって内部(内陣)のみ再建され、1144年に完成したのがこのゴシック様式でした。

尖頭アーチもリブ・ヴォールトも小規模ながら周辺各地域でひっそりと用いられていたのを、シュジェールが思い切って全てまとめて採用したのでこのサン・ドニ大聖堂が初期ゴシックと呼ばれます。

盛期ゴシック『アミアン大聖堂』

↑1220年に創建されたアミアン大聖堂は、最も完成されたゴシック建築と呼ばれています。

先程のサン・ドニ大聖堂と比べて、建物外観の装飾も多く線状要素も多用されています↓


アミアン大聖堂のペーパークラフト

がっつりフライング・バットレスも確認できますね。

そして中に入ると↓

ロマネスク建築とは程遠い内観

リヴ・ヴォールトと尖頭アーチの連続

まさにTHE GOTHICって感じです

盛期ゴシックでは高さよりも軽さを追求しました。

ロマネスクよりは高くても後期ゴシックよりは低め、とにかく全体の無重量感を極限まで追求しました。

後期ゴシック『ストラスブール大聖堂』

ストラスブール大聖堂は1176年の着工から資金不足などを経て1439年にようやく完成しました。

初めはロマネスク様式で建設していたところに、ゴシック様式を身につけた職人の一団が訪れ、急遽ゴシック建築が導入されたらしいです。

なので職人到着より先に造られていた内陣はロマネスク様式が色濃く残っています。

筆者
筆者はストラスブールも行ったことあるんですが、
当時は西洋建築なんて興味0だったので一瞥もせずに次の街へ行きました(泣)

後期ゴシックでは線状要素は当たり前、軽く見せるのはできたから次は軽く見せながら高さを追求していきました。

ストラスブール大聖堂は1647年から1874年まで世界一高い建物だったようです。

その高さ、なんと142m!!

↑この高さにもなれば、外側は勿論フライング・バットレスで支えられています。

堂内はと言うと、

これだけでは正直、後期ゴシックかはわかりませんね。

後期ゴシックでは、もはや外観の構造的な改革には興味を示さず、末端の装飾部分に関心が向かっていきます。

一般的にフランス後期ゴシックの特徴として、フランボワイヤン式のトレーサリーが挙げられます。

フランボワイヤン式とはいわゆる「火焔式」と呼ばれる、炎がボワっとしている感じのトレーサリーのことです↓

見てください、この炎が燃え盛るような装飾を。

基本的にフランスの後期ゴシックは、装飾がめちゃくちゃ複雑です↓

ゴシック建築を見て周ったらとても楽しいフランス旅行になると思いますよ(^ω^)


ということでゴシック建築編終了です!

では次に、ルネサンス建築のお話に入っていきたいと思います↓

関連記事

ヨーロッパを旅する前に知っておくべき西洋建築の知識として、今回はルネサンス建築について説明します。 [show_more more=恒例の挨拶(クリックで開きます) less=折りたたむ color=#0066cc list=[…]

また、西洋建築のトップに戻りたい方はこちらから↓

関連記事

ヨーロッパ約30ヵ国をバックパッカーとして旅をしていたある男がいた。 帰国後、その男は徐々にある大きな後悔に頭を抱えるようになった。 なんで西洋建築を勉強して行かなかったんだ と。 西洋建築を勉強した[…]

広告
最新情報をチェックしよう!