⑦【ロマネスク建築】古典系建築との大きな違い【4/5】

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ヨーロッパを旅する前に知っておくべき西洋建築の知識として、今回はロマネスク建築について説明します。

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※明言しますが、西洋建築の勉強をしてからヨーロッパに行けば無学で行くより100倍楽しめます。

筆者
5回にわたってヨーロッパ30ヵ国以上を完全無学で周ってきた僕が言うので間違いありません(笑)

※「この部分がわかりにくいです」とか「これはどうなんですか?」などの質問やコメント等ありましたら遠慮なく下部のコメント欄からお問い合わせください!

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本記事は「古典系建築との大きな違い」を解説しています。

古典系建築との大きな違い

この章の特に重要な点を挙げると以下の3点になります↓

この記事のPOINT

➀内部空間が重要

②オーダーの崩壊

③壁を彫って芸術に

それぞれ解説します。

古典建築と異なる中世建築の特徴について考えていきましょう。

➀内部空間が重要

教会堂は「囲われた内部空間にこそ重要な機能と意味がある」ので、当然表現の主眼は内部にあります。

外部はあくまで内部の空間表現の結果として造形されるに過ぎませんでした。

筆者
この点も「外から見ていかに美しいかを究めたギリシャ建築」とは大きく異なりますね

ただし「聖なる場所」への進路を示す扉口(とびらくち=正面玄関)は中世建築でも重要視されたので、独立した外部表現として慎重に作られました。

前回ご紹介したあの図をもう一度出します↓

内部空間で特に重要なのは、ミサの際に信徒が参列する身廊(しんろう)です。

特に身廊の空間限界である身廊壁(しんろうへき)がその空間の特質を決定するので、きわめて重要視された部分でした↓

つまり中世建築では

・外部は扉口

・内部は身廊壁

が最重要視されたってことなんです。

②オーダーの崩壊

久しぶりに「オーダー」と聞いて

(。´・ω・)ん? オーダー?

と思いましたか?大丈夫ですか?

オーダーとはギリシアやローマなどの古典系建築の特徴の一つで、簡単に言うと「柱-梁構造」のこと・・・でしたよね?(;・∀・)

オーダーの大原則からすると、円柱が支えなければならないのはエンタブラチュアであって、円柱がエンタブラチュアの代わりにアーチを支えるということは本来あり得ません↓

エンタブラチュアとは「柱の上に架した梁」のことで、「アーキトレーヴ/フリーズ/コーニス」の三層からなりますよね?

覚えて…ます…か?

「サッパリわからないよ( ˘ω˘ )」って方、ギリシャ建築編を復習してから戻ってきてください٩( ”ω” )و

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オーダーを再解説

とは言いつつ、特別にもう一度説明します(笑)

➀エンタブラチュアとは円柱の上に跨って架けられている梁のことです。

②円柱の上部には柱頭があり、その柱頭の上にエンタブラチュアがあります。

③エンタブラチュアは「(下から)アーキトレーヴ、フリーズ、コーニス」の三層に分けられます↓

④「円柱にはエンタブラチュアを載せる」これがギリシア人が究めた究極の美でした。

ローマ帝国滅亡後、このオーダーという概念が徐々に失われていきました。

それではこちらを見てください↓

一瞬、コリント式オーダーが見えてローマ建築かと勘違いしますが、明らかに中世建築です。

なぜなら円柱の上にエンタブラチュアが無く、エンタブラチュアの代わりにアーチが立っているからです。

このように、中世建築ではオーダーの大原則が崩れ、列柱はアーチを支えるのが一般的になっていきました。

エンタブラチュアからアーチに代わった理由

エンタブラチュアは、柱と柱の間に大きな一本石(モノリス)を架け渡して作られます。

(↑ギリシャ建築の最高峰、パルテノン神殿)

このような大きな石材を切り出し、運搬し、加工するには大きな労力と技術が必要だったので当時のゲルマン人には不可能でした

詳しいことは前回の記事を読んでもらいたいですが、

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要するに文明に触れてこなかったゲルマン人が棚ぼた的にローマ帝国跡地に残っていたローマ建築を真似しようとしたけど、ローマ建築の技術がスゴ過ぎて全く真似できなかった、ということです。

円柱もエンタブラチュアも作れない(´・ω・`)

しかし円柱は加工されたものが帝国領内のあちこちにあり(まあギリシャ建築でもローマ建築でも使われていたので)、都市の衰退によって打ちすてられた建物から取り外して(太さの多少の不ぞろいを無視すれば)複数の建物から運んできたものでも長さを切り整えるなりして高さをそろえるだけで容易に流用できました。

一方エンタブラチュアは身廊の全長に渡ってデザインが統一されていないと見栄えが悪いので、流用は円柱よりも難しかったと考えられています。

こうしてエンタブラチュアは次第にアーチに取って代わられていきましたとさ。

③壁を彫って芸術に

ローマ建築では、壁を作ってから外装としてオーダーを貼り付けました。

ローマ建築編でパンテオンの話はしましたが、

ドームという基礎構造を作ってから、正面にギリシア建築のオーダーをそっくりそのまま貼り付けました。

しかし中世建築では壁そのものを彫刻対象として扱う方向に進みました。

まあ逆に言えば、エンタブラチュアを作る技術がないので高い技術のいらないお手軽な芸術表現が彫刻だったとも言えます。

このように壁を削り、くり抜き、盛り上げることを分節(ぶんせつ)と呼びます。

「壁面分節の開始」と「アーケード支柱の円柱からピアへの転換」は無関係では無いと考えられています。

なぜならば、この転換によって身廊壁は床から天井までが連続した一体の壁となるからです。

↑この彫刻はどんな状況を表しているのでしょうか…。


ではロマネスク建築編の最後、ロマネスク建築の特徴についてお話したいと思います↓

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