ヨーロッパを旅する前に知っておくべき西洋建築の知識として、今回は新古典主義建築について説明します。
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※明言しますが、西洋建築の勉強をしてからヨーロッパに行けば無学で行くより100倍楽しめます。
※「この部分がわかりにくいです」とか「これはどうなんですか?」などの質問やコメント等ありましたら遠慮なく下部のコメント欄からお問い合わせください!
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本記事は「新古典主義の誕生と歴史主義」を解説しています。
新古典主義の誕生と歴史主義
この章の特に重要な点を挙げると以下の3点になります↓
➀新古典主義の誕生
②ヨーロッパ各国の新古典主義建築
③歴史主義
それぞれ解説します。
本記事は、前回の記事を読まれている前提で進めさせて頂きます。
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➀新古典主義の誕生
新古典主義建築は、このようなルーヴルの東側ファサード(上画像)から更に徹底的に非古典的な要素を排除することで生まれます。
たとえば、(まあ画像が無いとあまりピンとこないと思うので気にせず読み進めてください)
➀双柱を単円柱に置き換える
②ピラスターを独立円柱にして壁を後退させる
③柱列の重層を無くしてバラストレードを廃止する
④高い基壇状の階を階段にする
とかです。
もちろん、それらの変化に応じて比例全体の変更も必要となりますが。
ではヨーロッパ各国の新古典主義建築の実例を画像付きでご紹介します。
②ヨーロッパ各国の新古典主義建築
例えばパリのパンテオンが、新古典主義最初の大建築と言われます。
フランスの新古典主義建築「パンテオン」
パリのパンテオンは、十字形平面をもち、交差部にドームを載せています。
「え、パンテオンはギリシャ建築じゃなくてローマ建築じゃないの?」
「新古典主義建築は古典系建築の源流である古代ギリシャ建築を精確に再現しようとしたんじゃないの!?」
と思った方、良い質問です。
しかし整然と並んだコリント式の独立円柱とペディメントからなるファサードの構成、ドーム基部ドラム(円筒部分)の均質な柱列とエンタブラチュアによる構成が、古典古代的な印象を強めています。
↑また内部においても、コリント式の独立円柱が直線的なエンタブラチュアを受け、バロックには無い古典的な空間を創り出しています。
しかしドームもコリント式円柱も、古典的ではありますがギリシア的と言うよりはローマ的ですよね?
ギリシャ建築ではドームは無いし、円柱もドリス式かイオニア式が主でしたから。
↑コリント式円柱は主にローマ建築時代に使われたんですよね( ˘ω˘ )
つい先ほども書きましたが、19世紀初期のフランスは、ナポレオンが古代ローマに心酔していたこともあり、豪華壮麗なローマ的なものを好んだからです。
「ラ・マドレーヌ」
もう一つ、パリには「ラ・マドレーヌ」という古代神殿の外観をもつ巨大な建物がありますが、基壇の存在とコリント式のオーダーがローマ的な雰囲気を醸し出しています。
ローマ人がこよなく愛したコリント式円柱です↓
ドイツの新古典主義建築「アルテス・ムゼウム」
19世紀ヨーロッパの最も偉大な建築家とされるシンケル設計のアルテス・ムゼウム(旧博物館)は、正面にのみイオニア式の列柱を配して両端を袖壁とするきわめてシンプルな外観を持っています。
(↑イオニア式列柱)
ギリシア建築ではコリント式円柱はほとんど用いられず、ドリス式またはイオニア式が主流でした。
なのでコリント式円柱の時点で、それはローマ的と言えます。
筆者の個人的な感想では、円柱表面の溝彫り(フルート)が古典的だなー、なんかいいなーと思います(笑)
なぜならルネサンス建築やバロック建築などの円柱はどれも溝彫りがなく(手抜き?)、表面がツルッツルだからです。
筆者が実際にギリシャで激写した円柱たち↓
溝彫り、カッコいいっす(´・ω・`)
イギリスの新古典主義建築「大英博物館」
ロンドンにある大英博物館も新古典主義建築の建物です↓
ここまで読んで頂いた方なら
「いや、神殿正面に神殿側面を貼り付けてるから古典的とは言えないじゃないか」
と思うかもしれません。
バロック建築編で紹介したアレです↓
これは中央を強調するためでしたよね?
ではここで一度、イタリア・バロック建築の代表例であるサン・ピエトロ大聖堂をご覧ください↓
そしてフランス・バロックの代表例であるルーヴル宮殿東側ファサード↓
では大英博物館↓
どうですか、なにか気付きませんでしたか?
サン・ピエトロ大聖堂やルーヴル宮殿東側ファサードは突出の差がわずかで「両者が合体している」と言えますが、大英博物館の場合は「ハッキリ分かれている」と言えそうだと思いませんか?↓
↑これだけ神殿正面が前に出ていたら、これはもう神殿正面でしょう。
段差の強弱で古典系感を強めるなんてスゴイ発想ですよね。
③歴史主義
そして最後です。
今まで、
ギリシア神殿→ローマ建築→ロマネスク建築→ゴシック建築→ルネサンス建築→バロック建築(ロココ建築)→新古典主義建築
とやってきました。
ここまでずっと、
という風潮がありましたが、ルネサンス・バロック・新古典主義と古典系建築連続の波が治まると
という流れになり、新古典主義建築の次にゴシック建築復活を考えるネオ・ゴシック(ゴシック・リヴァイヴァル)が現れました。
※リヴァイヴァルとは"Revival"つまり「復活」という意味です。
19世紀には新古典主義建築とネオ・ゴシック建築が合体してルネサンス建築やバロック建築までもが再興の対象になりました。
この「過去のあらゆる建築様式をモデルにする」ことを歴史主義と言い、ネオ・バロックの傑作がパリのオペラ座(=ガルニエ宮)で、ネオ・ゴシックの傑作がロンドンのウェストミンスター宮殿になります。
では次に、バッキンガム宮殿はなに建築に属するの?という読者の方の質問について解説したいと思います。
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