はじめに
今回は『世界一美しい湖畔の町』と呼ばれるオーストリアのハルシュタット(世界遺産です)でまさに奇跡としか思えない事が連続して起きた話をしようと思います。
いつ振り返っても思うのはこれです
人と人との出逢いってやっぱり奇跡なんだなー
ぼくはこの町で理想的な旅人であるスロヴェニア人のNinaと出会い、ハッピーアクシデントを経て、お互いの旅に対する価値観など色々と話し合うことができました。
その経験はその後のぼくの旅観を変えてくれたので、そうなるまでの様々な軌跡を想い出として残しておきたいと思います
なるべくグダグダしないように努めますので予めご了承ください。
Hallstattの位置
ハルシュタットはオーストリアの中北部に位置し、ドイツともチェコとも近い町です。
かのモーツァルトの生まれ故郷であるザルツブルクからも電車で2時間くらいの距離なので日帰り旅行又は一泊くらいで多くの観光客が訪れます。
正直、町自体は非常に小さく一日あれば余裕で周れます
Hallstattは世界遺産
ハルシュタットは世界文化遺産に登録されており、登録名は「ハルシュタット・ダッハシュタイン・ザルツカンマーグートの文化的景観」です。
ザルツブルクの東南に位置するザルツカンマーグート地方はオーストリア帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が別荘を設け、映画『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台にもなった景勝の地。
なかでも真珠にたとえられるハルシュタット湖畔の美しい町ハルシュタットと、ヨーロッパアルプスの最東端の氷河を抱き、湖の南に連なる約2,995mを最高峰とするダッハシュタイン山塊が世界遺産に登録されています。
(https://www.hankyu-travel.com/heritage/austria/hallstatt.phpより引用)
Ninaとの出会い
では心惹かれた旅人Ninaとの出会いについて少しお話します。
まあ奇跡というと大げさですが、人と人が出逢うというのはやはり奇跡の連続なんだなと気付かせてくれた出来事でした。
帽子を見捨てる
という事で、おれは2016年4月13日の朝に世界一美しい町と呼ばれる石畳が素敵なチェコの【チェスキークルムロフ地区】↓
を出発し、世界一美しい湖畔の町と呼ばれる【ハルシュタット】へ向かった。
※そうです、ぼくは世界一好きなんです(いや、たまたま)
この日、朝早く宿を出て駅へと向かう。駅は高台の上にあるので長い坂道と階段を「おれ体力あるぜ」と見せつけんばかりに休憩もせずに上りきる。
もう4月の半ば、すっかり春である。暑い!
そして電車に乗る直前に気付く。
あれ、帽子が無い!!!
そう、2週間前に本場スイスのジュネーブで買ったばかりのVictorinoxのキャップ帽(4,000円くらい?)を宿に置き忘れてきたことに気づく。
取りに帰るかめっちゃ迷った。一応ユーレイルパスを持ってるから電車自体は一本見逃しても問題ない。
しかし迷っている時間はない。駅には出発のベルが鳴り響き今すぐにも扉が閉まらんとするところだった。結局取りに帰らずにハルシュタットへ向かう電車に乗った
読み方の分からない駅をいくつも通り過ぎる
もう後戻りはできない。悔やまれる、おれの赤と黒が基調のヴィクトリノックスのキャップ帽よ。わずか2週間の命だった・・・
オーストリアにはヨーロッパアルプスが走っているので、車窓は非常に美しいの一言に尽きる
いやー何時間見ても飽きませんねー
(「一生見ても飽きない」と言おうと思ったけどそれは言い過ぎと思いやめました。)
同じ車両に乗っていた女の子
車内は非常にガラガラだったが、ある瞬間にふと気付いた。
通路隔てた隣の四人席に一人で座って本を読んでる女の子、どこの子やろ?
もちろん向こうは全く俺のことなど気にせずに本を読んでいる。そう、そんなことは今までに幾度となくあった。もう慣れっ子だ
事前に確認していた予定表で言うと、途中どこかの駅で乗り換えるはずであった。結果から言えば乗り換えはする必要が無く一本で行くことができたのだが。
しかし、その駅が近づくにつれ荷物を整理するおれ。停車すると同時に一度降り、どこのホームから乗り換え便が出ているか探す。どれだけ探しても閑古鳥しか鳴いていない。
乗ってきた電車はもう出発する直前だった。
とりあえず頭の上にはてなマークを乗せながら再び列車に乗るおれ。それを見て少し笑っているその女の子。
コイツ一度降りたのにもっかい乗ってきた(笑)
そんな感じだ。
周りを見渡してもその子以外誰もいないので、俺は窓開けて写真撮ったり風を感じながら音楽を聴いていた。
傍から見れば変人だったかもしれない。
向こうは明らかに
なにこの人…
という、彼女の中で【面白い人】50%と【ヤバい奴】50%の間を行き交ってる雰囲気を感じた。
と言うか、大体その電車に乗ってる時点で旅行者が訪れそうな行先はハルシュタットしかないという事から、お互いにハルシュタット駅で降りることは既にわかっていた。
車掌が検札に来たときも彼女はドイツ語ではなく英語で返事をしていた。その時点で「ほう、やはり地元の子じゃないのだな」とストーカーぎりぎりの分析力で彼女が地元の人間ではないと確信する。オーストリアの公用語はドイツ語だからだ。そして思った、同じ旅人同士なら仲良くなれるチャンスがある。
そしていざ
ナヒステ スタツィオン イスト ハルシュタット
(次の駅はハルシュタットです)
というドイツ語のアナウンスが聞こえ荷物を整理し始めた時、その子も本を片付け始めたようだった。
※大学時代ドイツ語を勉強していたので、それくらいのドイツ語は理解できる。今こそ声を大にして言おう
竹内先生、吉村先生ありがとうございます!!
やっぱりハルシュタットか!
と内心思いながら出口付近に向かい、到着してドアが開くのを待つ。
そして友達になる
出口で到着を待つおれの後ろで立っている彼女を見て、緊張で話しかけれない自分の情けなさをつくづく実感する。「何やってんだ、おれは!」とその時、
Hi, nice to meet you ! Where are you from?:)
と、めっちゃ可愛い笑顔で向こうから話しかけてきた。
※たぶん同じ車両じゃなかったらこんなことは起きなかっただろうと思います。
そんなこんなで一緒に話しながらボート乗り場へと向かう。
上の地図右側のHallstatt Bahnhof(ハルシュタット駅)から左側のHallstattの町に行くには、片道2€のフェリーに乗る必要があります。
2€のボート代を払い乗船すると、5~10分くらいで対岸のハルシュタットの町に着く。
ボートで教えてもらった彼女の名前がこちらである。
NINA SENEGAČNIK
見たこと無い記号が含まれているが、日本語読みすればニーナ・セネガチュニクとなる。
しかし実際は少し発音が違うと思われる。名前を書いてもらう際、チェスキークルムロフで手に入れた地図しか持っておらず仕方なくそれを渡した。
すると「え!ここ行ってきたの???私もめっちゃ行きたいところなの!!!」と早くも打ち解けれそうな雰囲気に密かに心躍るおれ。
ハルシュタット到着
世界一美しい湖畔の町やのに湖畔を見ることも忘れて、ウキウキしながらNinaとinfoに行ってハルシュタットに関するパンフレットをもらう。
この時、日本語を勉強している友達に教えてもらったという唯一の日本語を俺に披露した。それは後で実際の動画で紹介しよう
そして貧乏バックパッカーにとっては水や空気と同じくらい大事なもの、Free Wifiを探す。
お、ここら辺に飛んでんな!
wifiの電波を無意識に感じ取れる俺はとりあえずベンチに座りFree wifiの電波に囲まれながらお互いの自己紹介を始めた
自己紹介
ほとんど自己紹介をしていなかったので、まずは相手の情報を聞き出す。敵を知り己を知れば百戦危うからず、だ。
彼女の名前はNina(可愛い名前)
生まれも育ちもスロヴェニア(え、どこ?)
瞳の色は緑(初めて見た)
年齢が同じで誕生日は一ヵ月違い(まじ?)
テントや寝袋、バーナーを持って旅をしている(ん、、、?)
ハルシュタットでも宿を予約していないので、テント場を探さないといけない(は、、、?)
年齢が同じで誕生日もめっちゃ近いとあってさすがに向こうも驚いていたようだった
しかしそれ以上に彼女がテントや寝袋をもって自給自足の生活をしながら旅をしているという話はまさに目から鱗、寝耳に水、瓢箪から駒だった
噂には聞いていたが、よもや身長155cmの小柄な美人さんがそのような旅をしていることが信じられなかった。
確かに、澄み切った青空と心地良い春の風がハルシュタットを包み込み「こんな自然の中で星を見ながら寝れたら最高だろうな」とは漠然と思っていた。
宿に荷物を置き散歩
そして明日何か予定ある?と聞かれたので、二つ返事で
I want to spend with you tomorrow.
とこれまた中学英語で返事する。とりあえず明日も会える事は間違いなさそうだ。これでこそ旅である。義務教育を終えた世の中のみんなに伝えたい
世の中は中学英語で回っている!!!!今すぐ海外へ出ろ
※本文言を信用する事によって生じたあらゆる不利益または損害に対して、当方は一切責任を負いません。
ずっと話していた例のベンチから俺の宿まで歩いて5~10分だった事、二人とも重いバックパックを背負っていた事もあり、予約してたホテルに荷物を置いて散歩を開始する。
お土産屋さん寄ったり湖畔で話したり公園で遊んだり、そして今夜彼女がテントを張るためのテン場探しにかかる。
あ、ここにする!
とテン場は無事に確保。これでテン場もスーパーも見つかり、お互いの顔には安堵の表情が浮かぶ。
しかし同時に「2人でいれるのも残りわずか」と、少し淋しくもなる。恐らく向こうもそう思ったのだと今になって思う。
もし夜にテントまで来てくれるなら温かいミルクくらいご馳走するわ
・・・。
なんと嬉しい言葉ではありませんか!「そうしよっかな」なんて話しながらお互い帰途につく。
と、その時は突然やってきた。
突然の嵐
もうそろそろ解散かな
そう2人が思い始めたまさにその時、突然の嵐がハルシュタットを襲う(←これマジです)
そう、まさに嵐である。
つい先ほどまでの青空はどこへ?「春はあけぼの、やうやう白くなりゆく山際・・・」などという言葉がつい出てしまうほど気持ちの良い天気。しかし突然
天の底が破れたような雨、土砂降り、ゲリラ豪雨、滝のような雨
強風、突風、暴風、爆風
おれが知る全ての表現を用いてもまだ足りない自然の猛威、嵐が来た!
これでいいのだ!
傘なんてもちろん持っていない二人は大雨の中宿まで走る。走る。走る。
どこかの店の看板が風に押され引きずられ、目の前を通り過ぎ道の向こうへ消えていく。
しかし二人は笑顔だった。大雨の中、宿に着くまで5~10分ずぶ濡れになって走り続けた二人は笑いながら叫び合っていた。
これでこそ旅だ!!!
と。
トラブルがあってこそ旅
お互いに苦労を分かち合い、一緒に笑い合える人間と出会ってこそ旅!
旅と旅行では明らかに質が違う
と思っている。どちらが良いとか悪いとかではなくて、質の違い。軟球と硬球くらい違う(ちなみに筆者は野球歴0年)
まあ暇だったら一読して感想を聞かして欲しい↓
(最終日に撮影)
そしてとりあえず雨が止むまでの緊急避難という事で部屋に入る。
一人部屋に二人
よく考えてみるとトラブルはどこにでもある、まさにこの時がそうだった。
Ninaと初めて荷物を置きに宿に行ったとき、宿の受付の女性にはこう説明した。
この子はテント泊するって事なんで、一時的に荷物だけ置かしてもらってまた帰って来ます。もちろんこの子は僕の部屋に泊まらないんで安心してください。
女性は笑顔で了解し「そういう事情なら分かりました、ぜんぜんOKですよ!受付は19時には閉まるのであとは渡した鍵で勝手に入って来てください」と言われていた。
つまりNinaが俺の部屋に泊まるとなると、Ninaも部屋代を払わないといけない。確か一泊60€、3日泊まる予定で180€払っていた。
Ninaは一泊60€(およそ7800円くらい)と聞いて目が飛び出すほど驚き「やっぱり日本人はお金持ち」「RYOはヒルズ族だね」と言わんばかりの顔をしていたのを今も思い出す
※ちなみに当時一番安かった宿泊施設がそこだった、というだけの理由。おれにしても破格の高さだと思う。
Ninaも十分にそれを理解していて「見つかったら60€かそれ以上のペナルティ」を合言葉にし、ミッションインポッシブルのトム・クルーズばりの慎重さを出して三階の一番奥の俺の部屋に到達した。部屋に入るや否や、ふうっと一息ついてお互いのずぶ濡れの服を乾かし始めた。
(最終日に撮影)
緊急避難のつもりで入ったが、真っ白なシーツをかぶった広々としたダブルベッドと高級そうなテーブルや椅子、テレビを前に
もう一度濡れた服を着て外に出てテント泊
なんていう選択肢は完全に消え去り結局泊まることになった。というより、初めからそうなることはわかっていた。
隣の部屋から聞こえてくる声
(ここから↓の話もマジです)
二人で部屋に入ってからNinaがシャワーを浴びるまでの15分くらいの間に靴や服を乾かしたり、荷物を置いて着替えを出したりしていた。
そしてNinaがシャワーを浴びる直前、隣の部屋から官能的な女性の声が聞こえてきた。絶対にしてる、テレビも付いてない静かなおれらの部屋、どうしてもかき消せない声。俺の頭の中を様々な感情が行き交う。人間は緊急時には様々な感情を一度に感じるというが、まさに蘇ったピクルと出会った瞬間のペイン博士の助手のような感覚だ(←わかる人いるんかな?)
するとNinaが俺に静かにささやく
隣の部屋の人、犬飼ってるよね?
え。お、おう、、、犬、、、?うん、確かに犬の鳴き声だ
と自分に言い聞かせたが、完全に犬ではない。しかし彼女は本当に犬だと思い込んでいる。
「ここって犬飼ってもいいんかな?」と訊くと「ううん、たぶんダメだと思う」って真面目に答えてきた。
あれが動揺を咄嗟に隠した演技だったなら、彼女はきっとハリウッド女優になれる、それくらいの自然さ。そんなこんなで一件落着
"my boy"は彼氏、"my girl"は彼女
彼女に「先にシャワー使ってもいいよ」と言い、おれはとりあえず心を落ち着かせた。何の興奮から心を落ち着かせたかは未だにはっきりとはわからないが、とんとん拍子で緑の瞳を持つ可愛い白人女性と二人きりでホテルに泊まるという状況、まさかその時に隣の部屋から怪しい声が聞こえてきたという事実に頭がパニックになっていのは間違いなさそうだった。
これがその晩撮った唯一の写真である。
これは二人ともシャワーを浴びてお互いの旅の話をしている最中に撮った気がする。机の上にはNinaが持っていた世界地図が置かれ、テレビからはドイツ語が流れ、おれはHとロゴの入ったお気に入りの比叡山高校時代の短パン(体操服)をはきながら、時にはお互いの好きな音楽を流して感想を言い合ったり、ドイツ語で簡単な会話を練習したりした夜だった。
結局おれがシャワーを浴びて出てくると「RYO…この声、犬じゃなかった(((;゚;Д;゚;)))カタカタカタ」と完全にパニックになっているNina。テレビを付けて曲でも聞こうと提案し、無事に気まずい雰囲気も回避
話している時に一つ忘れられないNinaの言葉があった。
My boy is also living in Maribor.
この"Maribor(マリボル)"というのは彼女の母国スロヴェニアで首都リュブリャナに続いて2番目に大きな都市のことである。
正直"My boy"という表現は聞いたことが無かったが、咄嗟に思いついたのが彼氏か息子。しかしMy boyfriendではなくMy boy。
結局は彼氏だったのだが「マイボーイで彼氏」「マイガールで彼女」、勉強になった。この表現は知らなかった。
さすがに寝るときは警戒したのか、ベッドの端っこで寝るNina。それでもダブルベッドなので十分広々と寝れたようだった。
朝食バイキング
翌朝起きるとNinaも目が覚めたところだった。とりあえずの予定は朝食バイキングである。
ホテル自体の質の高さから予想できる朝食バイキングの質の高さにワクワクさせられる。メロン?キャビア?和牛?
しかし問題はNinaが横にいるということだ。さすがに
ぼくひとりで朝バイキング行ってきます♡
とは言えない。どうしようか考えているうちに彼女の方から朝ごはんをどうするか訊いてきた。一応朝バイキングがあることを告げたうえで二人で町中にあるカフェにでも行って朝食を食べようか、と尋ねると答えはNO
二人で朝食バイキング行ったらいいんじゃない???
と、さも当たり前のことのように訊いてきた。それが出来ないから悩んでいるんだよ?もう二度見では全然足りない、三度見、四度見して彼女の反応をうかがう。
もし見つかったら全部私が責任をかぶるから!!
そういう問題ではない。そう、全くそんな問題ではないのだ。
しかし、あまりにも強く言ってくるので仕方ない。つい昨日に受付の女性と顔突き合わして話し合ってた事も忘れ、二人で食堂へ向かう。一応ミッションインポッシブルの気持ちは継続しており、フードをかぶって俺と時間差で食堂に降りてくる。通路や階段でどれだけ警戒しても、当の食堂の方が100倍危ないことをわかっていない、食堂の横に受付があるからだ。
まさにハイリスク・ローリターンとはこのことだ。
予想通り食堂の内容は申し分ない。「ご自由にお持ち帰りください」とバナナにリンゴにミカンが悠然と並べられている。フレーク類もチョコにプレーンに色々な種類がある。
Ninaもウキウキして皿に食事を盛っている。ようやく食事しようという間際、店員さんが食堂に入ってきた。ヤバいNina!ひとまずトイレに避難した方が良さ・・・
Guten tag!(ドイツ語でおはよう)
軽快に挨拶して食卓に着いた。正直笑顔で話しているのが信じられない
入り口近くの席でゆっくり30分近く話しながら食事を終わらせ部屋に帰る。もちろん帰りもトム・クルーズになりきって三階の部屋まで向かう。もうわけがわからない。
ちょうど食後にトイレに行きスマホを見ると、FBだったかで小学校からの友人がプロのお笑い芸人になったという報告を目にした。暇なら是非チェックしてもらいたい。
芸名は岡田桜井、桜井が俺の小学校からの友人だ。色々とあって中学卒業から成人式まで絶縁状態だったが今は何とか関係が元に戻っている。正直、漫才は何回か観たが面白い。こいつは小学校中学校で学校一のモテ男(実際オシャレで爽やかで勉強もできておまけにサッカー部で運動もできたという神に選ばれた男だった)バカもめちゃくちゃやった親友と呼べる男だった。そんな懐かしい桜井友朗氏に一言言いたい!
関西来いよ!全然舞台観に行けへんやんけ。
とにもかくにも、食後部屋に帰ると部屋のノブには「No Cleaning」の札がかかっていた、部屋にクリーニングが入ると二人分の荷物が目に入るからだ。さすが抜け目がない、実はそこはかとなく彼女の聡明さも見え隠れする
ハイキング
とりあえず荷物を置いたまま、市内にハイキングコースがあったのでケーブルカーを使わずに山の上までハイキングする事にした。
道中では今までにハイキングした山の名前を言い合った。その時Ninaはスロヴェニア最高峰のトリグラウ山(2864m)にも登ったことがあるなどと話していた(←結構スゴイ)
俺が空手やっているということで、何となく空手の突きを真似するNina↓
Ninaよ、もう少し右の引手は上にした方が良いし左手も完全に伸ばし切っていると肘関節に負担がかかり怪我のリスクもある。足ももう少し左右に開かないと前後の動きには強くても左右の動きが弱くな・・・と思っていると、突然彼女が切り出した。
Thank youとYou’re welcomeは日本語ではどういうの?是非教えて欲しい
と。様々な言葉が頭の中を行き交ったが結局選んだのがこれ
Thank you(ありがとう)Arigatou
You’re welcome( ええよ、気にしんといて)Eeyo, kini shin toite
ふむ、やはり関西人ならありがとうはおおきに、どういたしましてはええよかとも思ったが、少し難しい方が良いかなとも思いこれにした。
正直彼女には難し過ぎたかもしれない。
気にしんといてをローマ字表記にすると「Ki ni shi n to i te」となりかなりややこしい。
俺はおれでスロベニア語のおはよう「Dobro jutro(ドブロ・ユートロ)」を何回言われても覚えられなかった。
一応彼女のスマホのメモ帳にローマ字表記し、数回の実践練習をこなす。
結構山の上まで登ってきた。
ここで真剣に考えてみた。
なぜおれは外国人に惹かれるのか?
※異性としてじゃなく人間として
輪郭?瞳?髪?スタイル?ファッション?
違う。
このノリの良さにこそ惹かれる理由がある。
変な洞窟に落ちていた誰が被ったかわからないヘルメットを普通にかぶれる女の子、バカになれる女の子は素敵だ。
どんなに可愛くても性格が良くても一緒にばかなことをできない女性とは共に人生を楽しめる気がしない、とひそかに読者の女性たちに話しかけていることは内緒である。
少年よ大志を抱け、そしてGirls, be stupid !!
そしてあっという間に頂上に着く。春のハイキング、当然汗をかく。
俺はラーメン屋の兄ちゃんごとく頭に白いタオルを巻いて登山をする。
Ninaに笑われながらもこれが俺という人間だ、嫌なら去ってくれと言わんばかりにどや顔で恥ずかし気もなく振る舞う。
そんな汗で濡れたタオル、頂上に着くなりNinaが俺の頭から取って自分の頭に巻き始めた。
いや、汗で濡れてんで!!!( ゚Д゚)
という制止を振り切り普通に頭に巻き終わり、写真を撮ろうと言ってくる。
この状況が既に信じられないのは俺だけではないだろう。
これがもし日本人の女の子だったらどうだろうか?俺はキャッキャッ言っているNinaの後姿を見ながら考えていた。
くっさーい きっもーい ぜったいむりーー うっわーなんか濡れてるしー まぢむりー セクハラでーす
と言われておしまいだ、と思いながらタオルを取り返した。ハルシュタットの町からハルシュタット駅へ向かうボートは毎日18時前後の便が最終だ。
もうお別れは近い。一応最終便で去るという選択をしてくれたNinaに今更ながら感謝したい。Hvala(スロヴェニア語でありがとう)
山を下りよう
別れの時
Don’t push me.と言われれば押していたかもしれない。
でもさすがにダチョウ俱楽部のノリがわかるとは思えない、と思いながらこの写真を撮った
本当に押して湖にダイブしずぶ濡れになっても笑うくらいのノリがあるかは不明。
遂にその時がやってきた。一度宿に荷物を取りに帰り、再び水上バス駅に向かう。
別れまであと少し、彼女が急にこんなことを聞いてきた。
What do you say in Japanese, “Today is the best day” ? I wanna say it.
それを聞いた瞬間、本当に嬉しかった。この2日間、恐らく俺ら2人が共有していた瞬間はNinaにとってもかけがえのないものだったんだろう(←超楽観主義)
そしてNinaがある一つのスロヴェニア語の文を教えてくれた
Danes je zelo lep dan.(ダーネス ヤ ゼロ リップ ダン.)
そう、もちろん直訳するとToday is really nice day.(最高の日だ)という意味だ。という事でおれも負けずに
Saikou no Hi da.(最高の日だ)
という、使用頻度は少なそうだが気持ちはとても伝わるシンプルなこのフレーズを教えることにした。
最高の日だ。まさに今日この時に言うべき文だと実感した。最高の日だった。
そして最後に
Ninaが唯一知っていた日本語がこれだ。
ワタシ ワ バカデス
いったい誰が教えたのか、なぜこれをチョイスしたのか、どうやって彼女はずっとこれを記憶できていたのか・・・謎だ
帰り道、ある家に目が止まった。これは雑草伸びっぱなしの汚い家ということではない。むしろその逆、とても便利でおれも将来の家はこうしたいと思える代物である。
ヨーロッパには多いのだが、このように木を家の壁面に沿わせて育てることで夏は木が直射日光を遮って涼しいし冬は寒風を防いでくれて暖かいしそして更に虫が嫌がるハーブということで蚊などの昆虫も近寄らないという一石三鳥のメリットしかない環境保全的ガーデニング思想の最終形がこれである。
うむ、将来欲しい!!
(水上バス駅前の駐車場にて)
水上バス乗り場(最終日に撮影)
最後の写真を撮り、もうお別れかというその時。彼女のハイリスク・ローリターン精神が再び燃え始める
ボートが到着するまであと五分くらいあるわ!もう少し散歩して自分の納得できる角度からハルシュタットの町を撮影したい
そう、カメラが好きというのも我々の共通点である。カメラ好きなら当然わかるだろう。あそこから撮りたいと思える場所があればある程度ボートが近づいていようがその場所が少々遠かろうが行くしかないというマインドセット。
※登山家ジョージ・マロリーが記者に「なぜエヴェレストに登るのか」と訊かれて「そこに山があるから」と答えたのと同じような感覚である
そして2人で走って撮影スポットに行く。その時に撮った写真がこれだ↓
おわかりだろうか?
こんな写真撮っている場合では無い。完全にそんな場合ではない。写真左側に見えている本日最終便のあのボートに乗り遅れるとまたトム・クルーズごっこをしなければならない。
確かに良い角度ではあるが、断じてそんな悠長にカメラを構えている場合ではないぞ、NINA!!
ボート乗り場へ急いで帰る。走る、走る、そして走る。
ん、ニーナの荷物?
もちろんおれが持っている(笑)頼まれたか自分から提案したかは覚えていないが、とにかくおれが持って走っていたのは事実である
陽はだいぶ西に傾いてきており、山々を金色に染める
もう最終便が出る時間だ。ボートに乗る少し前までお互い見つめ合い「あなた素敵だったわ」「またいつかこの場所で」的な"Before Sunrise"のワンシーンのような言葉を交わし合う。
※この「的な」が超重要。笑
お互いに強くハグし合った後、Ninaはそのままボートに乗った。そう、外国人にとってハグは至って普通だ。
これは、その後も何度も経験する。チークキスですら、友人同士でする。
ボートが出発しお互いの姿が目視できない位の距離になるまで手をずっと振り続けてくれた彼女。
置き土産
Ninaと別れてから心が空っぽなまま2日間を過ごし、おれ自身もハルシュタットを去る時がとうとうやってきた。
パッキングを済まし、ガラスの丸テーブルの上に置いてあるパンフレットや地図などを手にした時に一片の書き置きを発見した。どうやらNinaが最後に部屋を出る前に書き残したもので、わざとすぐに発見できないようにパンフレットの間に挟んでいたようだ。もしかしたら見つけることなく捨てていた可能性もあった。
HAVE A REALLY AWESOME TRAVEL, THANK YOU FOR LOVELY EVERYTHING. Regards, Nina. S.
(あなたも本当に素敵な旅をしてくださいね。全ての素晴らしかった出来事に感謝しています。ニーナより)
この2日間、おれはあるニーナの癖をネタにし常に二人で大笑いしていた。それは何かというと、彼女は何か素晴らしい事があれば何でも"Lovely"と言うことだった。無事に部屋に着いたらラブリー、朝食バイキングを見てラブリー、美味しかったらラブリー、美しい写真を見せたらラブリー・・・とにかく終始何かあればラブリーラブリーラブリーなのだ。彼女には癖になっていたらしく、こちらが指摘するまで気付いてすらいないようだった。Ninaがラブリーと言うたびに笑うおれ、それを見て笑うNina。
この書き置きにLOVELYの文字があったのはそういう経緯もあった
帰国後
一ヵ月の旅を終えて日本に帰国後、色々な人に出会い友達になり笑い合ったことを思い返していた。
その中でも特に二つのことが頭から離れない。
テント寝袋バーナーコッフェルの自給自足旅
Ninaと出会って感銘を受けたこと、それはいかに旅をするかということ
・ホステルの12人部屋に泊まり、地元のレストランで夕食を食べ、夜はバーやクラブに行ってはっちゃける。
・テントで寝泊まりし、ご飯は地元のスーパーで食材を買って自分で調理、夜は誰もいない場所で孤独を楽しむ。
正直どちらも魅力的だと思う。しかし言ってしまえば前者は誰にでもできることである。俺も散々やってきたし、早い話お金さえあれば誰にでもできる。それならば経験として後者を選んでみたいと思うのがバックパッカーの性である。
帰国後すぐにテントを買い、寝袋を買い、バーナーを買い、コッフェルを買う。しかもこれらは登山にも必要なものであるため一石二鳥。もちろんテントとなれば様々なデメリットがある。
人通りの多い場所では張れない
荷物を置いて遠出できない
雨が降ったら面倒
など挙げだしたらキリがないほど、はっきり言って面倒くさい(笑)
警察に職質される事も多く、地元のヤンキーにビール瓶や石を投げつけられて寝れない夜も過ごした。
しかし、それでもテントの魅力はすごい!今からそれについて話すと大変な量になるので自粛。
恐らくNinaと出会わなければこういう気持ちにはならなかったと思う。
【未来のバックパッカー必見】海外をなるべく安く旅する方法 ~上級者編~
こちらの記事で紹介していることも全てその延長線上にあることだと思う
人と人との繋がり
日本に帰国後、もう一つあることを決心した。
スロヴェニア語を勉強しよう
と。理由は簡単、Ninaとスロヴェニア語で会話するため。まず日本に一種類しかないスロヴェニア語のテキストを買い
最低限の知識はラミネートし常に記憶しようと心がける。
(これが難し過ぎた・・・笑)
テキスト内の例題をエクセルで打ち出し定期的に復習する。
そして極めつけがスロヴェニア語の童話を読むこと。子供用だからと言ってなめてはいけない。
(赤ずきんの話)
その他、言語交換サイトなどを通じて数人のスロヴェニア人とも出会いネット上でやり取りをする。やはりネイティブから教えてもらうのが一番だ!
しかし適当に何でもかんでも訊くのは相手に対しても失礼。なので予習・復習は欠かさない
この翌年である2017年1月後半、およそ10ヶ月間のスロヴェニア語学習を経て彼女が待つスロヴェニアを訪れる。
ハンガリーの首都ブダペストからレンタカーを借りて一週間のスロヴェニア旅、目的地はもちろん首都リュブリャナとNinaが住むスロヴェニア第二の都市マリボル。
しかし土壇場で結局会えなかったという笑うに笑えない話はまた今度にしよう。
Ninaには会えなかったものの、スロヴェニア語学習の過程で知り合ったKristinaとMonika(以降モニ)とは会うことができた。二人とも日本が大好きで今では定期的にメッセージをやり取りしている仲だ。とりわけモニとは非常に仲が良く、2017年末から2018年始にかけてカタール航空のモニターとしてヨーロッパに行く際にモニにも連絡をした。
イタリアに行くと言ったところ、わざわざ夜行バスでスロヴェニアからイタリアのミラノまで来てくれて3日間エアビーで予約した家に一緒に泊まって観光をするという、まさに人が人を紡ぐインフレスパイラル。
(モニとミラノにて 将来的に二人で一定期間旅をする予定)
(クリスティーナが経営する美容サロンにて ただで30分のマッサージをしてもらい、その後彼女の実家でご馳走になり泊めてもらった。お母さんにはお土産にワインまでもらった)
Ninaを出発点とし、大勢の素敵な生涯の友人と出会うことができた。あの日車内でNinaが声をかけてきてくれてなかったら今の多くの友人との繋がりも無かったと思う。出会う人全員と上手く交友関係を保てるかは正直わからないが、文化も言語も国籍も何もかも違う二人が出会うとそこには必ずストーリーが生まれる。
外国に出ると確実に自分の中の世界観は広がり日本という一億二千万人しかいないこの小さな島国から一生出ない、などという奇妙なプライドがいかに惨めでもったいない事かを再確認させてくれる。
おわりに
今回は僕にも似合わず小説風の構成になってしまいました。
まあ数多くある記事の中でいくつかはこんな感じで書くのも良いかなと思いました。
正直「うわーおれナルシストみたいやな」とか「これ、絶対最後まで読む人少ないやろな」など考え始めたらキリがありませんが、ここまで読んで頂いた方、本当にありがとうございました。