3度目のヨーロッパ、2度目の独り旅(2016年)の思い出を振り返る。
今回はオーストリアのハルシュタットでの滞在をサクッと要約し、印象的な出来事をシェアしようと思う。
筆者が初めてヨーロッパを独りで旅したのは2014年の初旬。あの時の驚きや発見は今でも鮮明に覚えている。
今回の旅では、ヨーロッパの面白さや基礎知識に絞ってお届けする。無駄な話は極力省いて、ガイドブックには載っていないこと、実際に見たものや感じたことに焦点を当てる。
前回の記事はこちら。
3度目のヨーロッパ、2度目の独り旅(2016年)の思い出を振り返る。今回はチェコのチェスキークルムロフ地区での滞在をサクッと要約し、印象的な出来事をシェアしようと思う。筆者が初めてヨーロッパを独りで旅したのは2014年の初旬[…]
ハルシュタットで奇跡が起きた
今回は、『世界一美しい湖畔の町』 と名高いオーストリアのハルシュタット(世界遺産)で、まさに奇跡としか思えない出来事が連続発生した話をしようと思う。
いや、マジで。
自分で振り返っても「え、運命って本当にあるんじゃね?」と思わざるを得ないほどの出来事が続いたのだ。
そんなわけで、一言でまとめると「人と人との出会いって、ほんま奇跡なんやな〜」という話になる。
特に旅人界のカッコよすぎる代表みたいなスロヴェニア人女性・Ninaとの出会いは、筆者の旅観をガラリと変えるほどのインパクトを残してくれた。
ハッピーアクシデントも絡みつつ、お互いの旅に対する価値観を語り合う時間は、今でも色褪せない思い出だ。
とはいえ、
とツッコみたくなる人もいるかもしれないので、先に次の目的地ザルツブルク編の記事を貼っておく↓
3度目のヨーロッパ、2度目の独り旅(2016年)の思い出を振り返る。今回はオーストリアのザルツブルクでの滞在をサクッと要約し、印象的な出来事をシェアしようと思う。筆者が初めてヨーロッパを独りで旅したのは2014年の初旬。あの[…]
グダグダ語らないよう努力する所存ですが、まあ旅の話ってのはだいたいグダグダするものなので、その点はどうかご容赦を。
Hallstattの位置
ハルシュタット(=Hallstatt)はオーストリアの中北部に位置し、ドイツやチェコもすぐそこという絶妙な立地の町。
あのモーツァルトの故郷・ザルツブルクからも電車でたったの2時間!
この距離感ゆえに、観光客の多くは日帰りorせいぜい一泊で訪れる。
…というか、そもそも町がめちゃくちゃ小さい ので、実際1日もあれば余裕で制覇可能なのである!
ただし、景色の美しさに魅了されすぎて、気づけば何時間もぼーっとしてしまう可能性もある。
Hallstattは世界遺産
ハルシュタットは世界文化遺産に登録されており、登録名は
「ハルシュタット・ダッハシュタイン・ザルツカンマーグートの文化的景観」
である。
ザルツブルクの東南に位置するザルツカンマーグート地方はオーストリア帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が別荘を設け、映画『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台にもなった景勝の地。
なかでも真珠にたとえられるハルシュタット湖畔の美しい町ハルシュタットと、ヨーロッパアルプスの最東端の氷河を抱き、湖の南に連なる約2,995mを最高峰とするダッハシュタイン山塊が世界遺産に登録されています。
(出典:ハルシュタット/オーストリア)
まあ一文で表現するなら、ハルシュタットは、湖に映るアルプスの絶景と、中世から続く可愛らしい街並みが自慢の村──つまり、インスタ映えのために生まれたような世界遺産と言えるだろう。
Ninaとの出会い
では旅人Ninaとの出会いからお話ししよう。
これは旅の話というより、運命の話だ。
いや、ちょっと大げさかもしれないが人との出会いというのはまさに奇跡の連続なんだなと、この日しみじみ実感することになる。
Goodbye ヴィクトリノックス
※チェスキークルムロフ地区
2016年4月13日、筆者はチェコのチェスキークルムロフを旅立つことにした。
ここは"世界一美しい町"なんて称される場所で実際、石畳の町並みはため息が出るほど素敵だった。
そして次に向かうのは、これまた"世界一美しい湖畔の町"と名高いオーストリアのハルシュタット。
旅の始まりは朝早く、ホステルをチェックアウトするところから始まる。
筆者は高台にある鉄道駅を目指し、約40分間「おれ体力あるぜ」と無駄に頑張って休憩なしで登りきる。
(いや、めちゃくちゃしんどかった)
4月半ばのヨーロッパはすっかり春で、汗だくになりながら駅に到着。
ああ、これでチェスキークルムロフともお別れか…。
駅にはWi-Fiなんて洒落たものはないので、iPod ClassicでSunset Swishの「マイペース」 を流しながら、ただひたすら電車を待つ。
お、電車が来た。
ふぅ、ようやくだぜ。
そして電車に乗る直前に気付く。
「ん、キャップがない…?」
筆者、絶望する
そう、2週間前にスイスのジュネーブで購入したばかりのVictorinoxのキャップ(約4,000円)が忽然と姿を消していたのである。
置き忘れた場所は…あの石橋か。
写真を撮るためにキャップを外し(ツバが邪魔なため)、そのまま…?
電車に乗るか、キャップを取りに戻るか。
ユーレイルパスを持っていたので次の電車でも問題はない。
でも、あのキツい坂道をもう一度往復するのは、たとえ大木大樹であっても尻込みするだろう。
筆者「…諦めるか。」
結局、キャップは取りに戻らず、電車に乗ることにした。
結果的に、この選択が運命の出会いにつながるとは、当時の筆者は知る由もなかった…。
駅には出発のベルが鳴り響き今すぐにも電車の扉が閉まらんとするところだった。
結局キャップ帽を取りに帰ることはやめ、ハルシュタットへ向かう電車に乗った。
電車は、読み方すらわからない駅をただ無情に通り抜けていく。
筆者「シュタイナッハ・アードニン…?いや、何語?」
大学時代に学んだドイツ語を駆使してもどう読めばいいかわからない。
もう後戻りはできない。
悔やまれる、筆者の赤と黒が基調のヴィクトリノックスのキャップ帽よ。
わずか10日間の付き合いだったとは、悲しい、悲し過ぎるぞ!!!!
窓の外に広がるのは、オーストリアのヨーロッパアルプス。
4,000m級の山々、頂上に残る万年雪、そして透明度バツグンの湖。
筆者「…この景色を見るだけで、旅してる甲斐あるわ…。」
Google Mapsの地形図を見てもわかる通り、オーストリアにはヨーロッパアルプスが走っている。
つまり、車窓は非常に美しいの一言に尽きる。
ヨーロッパアルプスと言えば山。
本当に美しい車窓なのだ。
日本では絶対に感じることができない4,000m級の山々、そして山頂に残る万年雪が筆者を日常のストレスから解放させる。
そして、そんなことを考えていた筆者の前に、運命の旅人Ninaが現れる。
同じ車両に乗っていた女の子
車内は非常にガラガラだったが、ある瞬間にふと気付いた。
筆者「ん?通路の向こうに座ってるあの子…。めっちゃ可愛いんですけどぉぉぉ!?」
本を読んでいる彼女。
筆者には1ミリたりとも興味がなさそうだ。
知ってる、知ってるよ、このパターン。慣れっこだぜ…。
事前に確認していた予定表で言うと、チェスキークルムロフからハルシュタットまでは途中どこかの駅で一度乗り換えるはずであった。
結果から言えば、乗り換えはする必要が無く一本で行くことができたのだが。
しかし、その駅が近づくにつれ荷物を整理し始める筆者。
一方、例の読書女子は全く動かずにただただ本を読んでいる(くそぉ目的地は別か!!!)
そして駅に到着。
筆者は予定通りに乗り換えるべく、一度ホームへ降りる。
見渡す限り、人っ子一人いない。
人気目的地であるハルシュタット行きの電車に乗り換える人間がいないということはあり得ない。
…これはヤバい。
このままだとハルシュタットに辿り着けない可能性が出てくる。
さっき乗ってきた電車はもう出発する直前。
筆者「あかん!もう一回乗るしかない!!」
慌てて飛び乗る筆者。
…ふと、視線を感じる。
ちらっと見ると、さっきの可愛い読書女子が筆者を見て笑っている(ように見えた)。
「あのアジア人、一回降りたのにまた戻ってきたんですけどwww」
そんな彼女の心の声が、聞こえた気がした。
周りを見渡してもその子以外誰もいないので、筆者は窓を開けて写真を撮ったり車窓に寄りかかって風を感じながら音楽を聴いたりしていた。
傍から見れば変人だったかもしれない。向こうは明らかに、
「なにあの人…」
という、彼女の中で【おもしろい人】50%と【ヤバい奴】50%の間を行き交ってる雰囲気を感じた。
しかしここで一筋の光明が差す。
麻雀漫画アカギの有名なフレーズ「しかし矢木に電流走る――!」みたいな感じだった。
なんと車掌が検札に来た際、彼女がドイツ語ではなく英語で返答したのだ。
その時点で、
筆者「ほう。英語で返事をするあたり、やはり地元の子じゃないのだな」
とストーカーぎりぎりの分析力で彼女が地元の人間ではないと確信する。
オーストリアの公用語はドイツ語。
もし地元の子なら、普通ドイツ語で返すはず。
つまり、彼女も旅人。
(これは…仲良くなれるチャンスかもしれない)
そのとき電車内アナウンスが流れる。
ナヒステ スタツィオン イスト ハルシュタット.
(次の駅はハルシュタットです)
筆者は荷物をまとめる。
すると、さっきまで読書に夢中だった彼女も本を閉じて荷物を整理し始めた。
筆者「やっぱりハルシュタットだったか…」
内心ガッツポーズしながら、筆者は出口付近へ。
すると彼女も筆者の後ろに立つ。
(話しかけようか?いや、がっつくと逆にドン引きされる可能性が。
ちくしょう、話しかけられない。)
心の中で自問自答を繰り返しながら、到着してドアが開くのを待つ。
そして友達になる
筆者「何やってんだ、おれは…!
別にナンパじゃないんだ!
ただ、お友達になれたらいいなって…!」
そしてついに、電車のドアが開く。
…その瞬間。
「Hi, nice to meet you!
Where are you from?」
めっちゃ可愛い笑顔とともに、彼女から話しかけてきたぁぁぁぁ!!!
自分の運の良さにも感謝している。
ハルシュタット駅到着
彼女に「どこから来たの?」と聞かれた筆者。
筆者「ここは…堂々と!アイム ジャパニーズ!(ドヤ顔)」
…うん、中学英語で堂々と返した。
こういう時は自分が日本人であることに感謝する。筆者の経験上、アニメやラーメン天ぷらのおかげで日本に対して良い印象を受ける人の方が圧倒的に多いからだ。
なんとなく仲良くなれそうな雰囲気を感じながらも平静を装い、一緒にフェリー乗り場へと向かう。
ハルシュタット駅(上の地図右側)から湖を挟んだ町の中心部へ行くにはフェリーに乗る必要がある。
片道2€、往復4€だった。
今後も値上がりする可能性があるので最新情報(こちら)を要チェック。
筆者「フェリー代ケチりたい人は、湖をぐるーっと歩けば町まで行けますよー」
が、もちろん 筆者は2€を支払いフェリーへ。
フェリー乗り場に向かう
2€のボート代を払い乗船すると、5~10分くらいで対岸のハルシュタットの町に着く。
フェリーに揺られながら、筆者は彼女の名前を聞く。
しかし、発音が全くわからずカタカナにすらできない。
筆者 「え、ちょっと紙に書いてくれる?」
ちょうど筆者のポケットに折り畳まれて入っていたチェスキークルムロフの地図を渡す。
すると彼女がそこに「NINA SENEGAČNIK」と書いてくれた。
筆者「…見たことない記号が入ってるんですけど。」
カタカナ読みすれば 「ニーナ・セネガチュニク」 だが、たぶん発音は全然違うと思う。
また、チェスキークルムロフの地図を見た彼女が目を輝かせた。
Nina「えっ、ここ行ってきたの!?私もめっちゃ行きたい場所なの!」
早くも打ち解けれそうな雰囲気に密かに心躍る筆者。
やはり共通点を多く持つことは恋愛かんけ友人関係の構築に有利である。
筆者「チェスキークルムロフ、めっちゃ可愛い町だったよ。絶対行った方がいいよ!」
と無意識にマウントを取っていたかもしれないことを今になって後悔する。
そして、ここからハルシュタットでの奇跡の旅が始まるーー。
ハルシュタット到着
ハルシュタット。
「世界一美しい湖畔の町」と言われる場所。
しかし筆者、湖畔の景色を楽しむ余裕なし!
なぜなら、今はNinaと一緒にいるからだ!!!
この状況以上に筆者をワクワクさせることはこの世にない!!
ウキウキしながら、Ninaと一緒に"”City Info"(観光案内所)へ向かい、ハルシュタットに関するパンフレットをゲット。
この時、Ninaが筆者に唯一知っている日本語を披露した。
筆者「おお!日本語知ってるの!?」
Nina「日本語を勉強している友達に教えてもらったの!」
筆者「どんな言葉なんだろう…?」
Nina「××××××××××××××」
筆者「な、なんと!!!!!」
Nina「てへっ♡」
Ninaが知っていた唯一の日本語、それは後で紹介しよう。
さて、貧乏バッパー(バックパッカーの俗称)にとって、水や空気と同じくらい大切なものがある。
それは——
Free Wifi!!!
筆者「おっ!この辺、飛んでるな〜…!」
そう、筆者は無意識にWifiの電波を感じ取る特殊能力を持っている(気がする)。
その能力を発動し、電波がありそうなベンチに座る。
筆者「ここなら電波良好や!」
Free Wifiに囲まれながら、筆者とNinaはお互いの自己紹介を始めた。
自己紹介
ほとんど自己紹介をしていなかったので、まずは自己紹介で相手の情報を聞き出す。
敵を知り己を知れば百戦して危うからず、だ。
彼女の名前はNina(かわいい名前♡)
生まれも育ちもスロヴェニア(え、どこ?)
瞳の色は緑(初めて見た!!!!)
年齢が同じで誕生日は一ヵ月違い(え、運命?)
テントや寝袋、バーナーを持って旅をしている(ん、、、?)
ハルシュタットでも宿を予約していないので、テント場を探さないといけない(は、、、?)
年齢が同じで誕生日もめっちゃ近いとあってさすがに向こうも驚いていたようだった。
しかしそれ以上に彼女が、
という話はまさに目から鱗、寝耳に水、瓢箪から駒、つまりめっちゃ驚いた。
噂には聞いていたが、よもや身長155cmの小柄な美人さんがそのような旅をしていることが信じられなかった。
その瞬間、筆者の心にガツーン!!と衝撃が走る。。
確かに、澄み切った青空と心地良い春の風がハルシュタットを包み込み「こんな自然の中で星を見ながら寝れたら最高だろうな」とは漠然と思っていたが、ガチでやってる人が目の前にいるとは…。
宿に荷物を置き散歩
そんなNinaにグッと心惹かれていった筆者。
ハルシュタットの青空同様に筆者の心も晴れ渡っている。
と、その時
Nina「明日、なにか予定ある?」
(これはまさか…おれのことが…好き?)←典型的な非モテの勘違い
とはいえ、こんなチャンスを逃すわけにはいかない!!
筆者、全身全霊の中学英語で答える。

(明日も君と一緒に過ごしたい)
文字にすると不気味なくらい気持ち悪いが、筆者の英語力ではこれ以上複雑なことはどうせ言えなかっただろう。
とりあえず明日も会えることは間違いなさそうだ。
これでこそ旅である。
ここで筆者は確信した。
義務教育を終えた世の中のみんなに伝えたい!

世の中は中学英語で回っている!!!!
恐れずに今すぐ海外へ出ろ!
ベンチでたっぷり語り合った後、筆者の宿まで歩いて5~10分だったこと、2人とも重いバックパックを背負っていたこともあり、筆者が予約してたホテルに荷物を仮置き(←超重要)しハルシュタットの町を散策することに。
お土産屋さん寄ったり湖畔で話したり公園で遊んだり、そして今夜彼女がテントを張るための場所(=テン場と呼ぶ)探しにかかる。

とテン場は無事に確保。
🌱ただの芝生🌱
筆者「まじか、この子、本気だ…!!」
これでテン場もスーパーマーケットも見つかり、お互いの顔には「今日のミッション完了」という安堵の表情が浮かぶ。
しかし同時に「2人でいれるのも残りわずか」と、少し淋しくもなる。
恐らくNinaもそう思ったのだと今になって思う。

なんと嬉しい言葉ではありませんか!
喜びで飛び上がりそうなほどの舞い上がる気持ちを抑えて「そうしよっかな~」なんて話しながらお互い帰途につく。
と、その時は突然やってきた。
突然の嵐
夕方になり、辺りが徐々に薄暗くなる中、太陽が悠然と山の陰に消えていく。

と思い始めた、その瞬間。
突如、ハルシュタットに嵐が襲いかかる。
ズババババァァァァ!!!(←効果音)
そう、まさに嵐である。
つい先ほどまでのポカポカ陽気はどこへ?
「春はあけぼの、やうやう白くなりゆく山ぎわ…」などという言葉がつい出てしまうほど気持ちの良い天気。
そんな春の陽気からの急転直下。
土砂降り、ゲリラ豪雨、暴風雨。
筆者が知る限りのあらゆる悪天候ワードを詰め込んでも表現しきれないほどの大荒れっぷり!
まさにこんな感じの雨だった
「これが本場のヨーロッパの天気ってやつか…」
そんな感傷に浸る間もなく、筆者とNinaはダッシュ!!!
「うおおおおおお!!!」
もはやマラソン大会。いや、命がけの避難訓練。
傘なんて洒落たアイテムは持っていない。
ひたすら走る。宿まで走る。ずぶ濡れで走る、走る、走るううう!!!(←カイジ風)
途中、看板が風で吹き飛び、目の前をシュバッ!!と横切る。(←これガチ)
大雨の中、宿に着くまで5~10分ずぶ濡れになって走り続けた2人は笑いながら叫び合っていた。
これでこそ旅だ!!!
と。
トラブルがあってこそ旅
お互いに苦労を分かち合い、一緒に笑い合える人間と出会ってこそ旅!
旅と旅行では明らかに質が違う
と思っている。
軟球と硬球くらい違う(ちなみに筆者は野球経験ゼロ)
まあ暇だったら一読して感想を聞かして欲しい↓
こんにちは、常に旅人であり続けたいと思っているRYOです。筆者今回は「旅」と「旅行」の違いについて考えていきたいと思います!本トピックは皆さんが明確な答えを持っていないと思いますし、筆者自身誰もが納得でき[…]
↑筆者が3泊したホテル(最終日に撮影)
ようやく宿に辿り着いた筆者とNina。
二人はまるで水に飛び込んだ後のアザラシのようにずぶ濡れだった。
大雨の中でそしてとりあえず雨が止むまでの緊急避難という事で2人で(筆者が予約した)ホテルの部屋に入る。

1人部屋に男女2人
よく考えてみるとトラブルはどこにでもある、まさにこの時がそうだった。
Ninaと初めて荷物を置きに宿に行ったとき、宿の受付の女性にはこう説明した。
この子はテント泊するって事なんで、一時的に荷物だけ置かしてもらってまた帰って来ます。
もちろんこの子はぼくの部屋に泊まらないんで安心してください。
女性スタッフは笑顔で了解し、
「そういう事情なら分かりました、ぜんぜんOKですよ!受付は19時には閉まるのであとは渡した鍵で勝手に入って来てください」
と言われていた。
つまりNinaが筆者の部屋に泊まるとなると、Ninaも部屋代を払わないといけない(←当たり前の話だが)
確か1泊60€(約7,800円)、3日泊まる予定で事前に180€払っていた。
Ninaは一泊60€と聞いて目が飛び出すほど驚き、「やっぱり日本人はお金持ち」「RYOはヒルズ族だね」と言わんばかりの顔をしていたのを今でも思い出す。
この大雨の中に放り出すのもあまりにも気の毒、かと言って勝手にNinaを筆者の個室に招き入れるのも大きなリスク。
Ninaも十分にそれを理解していて「見つかったら終わり」を合言葉にし、ミッションインポッシブルのトム・クルーズばりの慎重さを出して3階の一番奥の筆者の部屋に到達した。
部屋に入るや否や、ふうっと一息ついてお互いのずぶ濡れの服を乾かし始めた。
↑最終日に撮影(筆者の部屋)
ちなみに現在はリノベーションして更に高級感が増した模様↓
(引用:公式HP GASTHOF HIRLATZ)
だが現実は違った。
Ninaはダブルベッドを見つめ、
「……このまま外に出てテント泊?ないない(笑)」
という表情をしていた。
(まあ、そうなるよね)
結果、自然な流れでNinaはそのまま宿泊決定。
隣の部屋から聞こえてくる声
2人で部屋に入ってからNinaがシャワーを浴びるまでの15分間、我々2人は靴や服を乾かしたり、荷物を置いて着替えを出したりしていた。
そして事件は起こる。
Ninaがシャワーを浴びる直前、隣の部屋から官能的な女性の声がanan聞こえてきた。
テレビも付いてない静かな筆者たちの部屋、どうしてもかき消せない声。
何かの気のせいだと思いたかった。
だが、このシチュエーションで「気のせい」はさすがに無理がある。
筆者の頭の中を様々な感情が行き交う。
人間は緊急時には様々な感情を一度に感じると言われるが、まさに蘇ったピクルと出会った瞬間のペイン博士の助手のような感覚だった。
女性のアンアンはずっと続いている。
するとNinaが筆者に静かにささやく。
Nina「隣の部屋の人、犬飼ってるよね?」
筆者 「……え?」
犬?
どこをどう聞いたら犬の鳴き声になるんだ?
とは思ったが、Ninaは至って真面目。
しかし彼女は、隣の部屋から聞こえるアンアンを本当に犬のキャンキャンだと思い込んでいる様子。
苦しまぎれに、
「このホテルってペット同伴可能だったっけ?」
と訊くと
Nina「ううん、たぶんダメだと思う」
って真面目に答えてきた。
(…いや、そこじゃねぇ!!!)
彼女が本気で言っているのか、それとも動揺を隠すための天才的な演技なのか。
もしこれが演技なら彼女は絶対に女優になれる。
筆者はそんなことを考えながら、
「……まぁ、犬ってことにしとくか」
と苦笑いしつつ、その夜は静かに更けていった。
"my boy"は彼氏
彼女に「先にシャワー使ってもいいよ」と言い、筆者はとりあえず心を落ち着かせた。
何の興奮から心を落ち着かせたかは未だにはっきりとはわからないが、とんとん拍子で緑の瞳を持つ可愛い白人女性と2人きりでホテルに泊まるという状況
まさかその時に隣の部屋から喘ぎ声が聞こえてきたという事実に頭がパニックになっていたのは間違いなさそうだった。
↑これがその晩撮った唯一の写真である。
これは2人ともシャワーを浴びてお互いの旅の話をしている最中に撮った気がする。
机の上にはNinaが持っていた世界地図が置かれ、筆者はHとロゴの入ったお気に入りの比叡山高校時代の短パン(体操服)をはきながら、時にはお互いの好きな音楽を流して感想を言い合ったり、ドイツ語で簡単な会話を練習したりした夜だった。
結局筆者がシャワーを浴びて出てくると
Nina「RYO…この声、犬じゃなかったぁぁぁ」
と完全にパニックになっているNina。
テレビを付けて曲でも聞こうと提案し、無事に気まずい雰囲気も回避。
話している時に一つ忘れられないNinaの言葉があった。
Nina「My boy is also living in Maribor.」
この"Maribor(マリボル)"というのは彼女の母国スロヴェニアで首都リュブリャナに続いて2番目に大きな都市のことである。
※日本で言えば大阪かな?
正直"My boy"という表現はそれまで聞いたことが無かったが、咄嗟に思いついたのが彼氏か息子。
しかしMy boyfriendではなくMy boy。
結局は彼氏だったのだが(←そらそやろ)
マイボーイ=彼氏
マイガール=彼女
勉強になった、この表現は知らなかった。
やっぱり旅ってこういう新しい発見があるから面白い。
さすがに部屋の電気が消えたときは警戒したのか、ベッドの端っこで寝るNina。
大丈夫、わたしはジェントルマンだ!!
それでもクイーンベッドだったので、相手も結構広々と寝ることができたみたいだ。
まあ、スペースの取り合いにはならなかったので、ちゃんと寝れる距離を保っていたんだろう。
筆者も、たとえ無意識であっても寝返りの時にNinaの身体に触れでもしたら言い訳できないので、大きく寝返りしたとしても当たらない距離を保っていた(笑)
結果、二人はベッドの両端で寝ることになった。
何かあるわけでもない、ただの一夜の偶然の出会い。
それがまた、旅の醍醐味である。
朝食バイキング
翌朝、そっとまぶたを開けると、ちょうどNinaも目を覚ましたところだった。
カーテン越しに差し込むやわらかな朝の陽光が、彼女の髪にふわりと落ちる。
隣に彼女がいる——ただそれだけで、胸の奥がふわっと熱くなり、心拍数が跳ね上がる。
恋でも、緊張でもなく、ただ確かに「特別な朝」がそこにあった。
だが、そこは24歳のふたり。
ピロートークは甘い言葉でも、深い哲学でもなく——
Nina&筆者「朝ごはん、どうする?」
愛より飯。
夢よりメロン。
今、ふたりの世界を動かすのは、ホテルのバイキングであった。
筆者はと言うと、ホテル自体の質の高さから予想できる朝食バイキングの質の高さに勝手にワクワクしていた。
メロン?キャビア?和牛?
しかし問題がひとつある。Ninaが隣にいるという事実だ。
まさか、
「ごめん、俺ひとりで朝食バイキング行ってくるわ♡」なんて言えるわけがないじゃないか。
それでしばらく悩んでいたのだが、結局、Ninaから朝食バイキングについて訊かれた。
筆者「あ、うん、このホテルには朝食バイキングがあるよ」
そう伝えたものの、心の中では「どうしよう…」とモヤモヤしていた。
そこで、筆者が提案した。
筆者「2人で町中のカフェでも行こうか?」
すると、Ninaはまさかの答えを返してきた。
Nina「うーーんと。NO!!朝食バイキング、2人で行ったらいいじゃん。」
まるで、朝食バイキングに行くのが当たり前のような言い方だった。
それが出来ないから悩んでいるんだよ?
心の中で叫びたくなったが、表情には出さず、冷静を装っていた。
すると彼女は目を見開き、まるで映画のヒロインのように言い放った。
Nina「もし見つかったら、全部私が責任をかぶるから!!」
そういう問題ではない。そう、全くそんな問題ではないのだ。
これは正義感とか自己犠牲の美談で解決する話ではないのだ。
タダ乗りがバレた場合、ホテル側が「じゃあ君(Nina)だけブラックリストに入れてあげるね♡」などという温情対応をしてくれるとは到底思えない。
だが、Ninaのあまりに真っすぐな「覚悟」に押されてしまい、筆者はしぶしぶ、いや半ば呆れながらも納得することにした。
たった昨日、受付の女性とフロントで丁々発止やり取りしたことなど忘れたかのように、ふたりは堂々と食堂へ向かった。
もちろんNinaの脳内BGMは「Mission Impossible」のテーマ。
Ninaは念のためフードを目深にかぶり、時間差で階段を降りてくるという用心ぶり。
だが残念なことに、彼女は最も肝心なポイントを理解していない。
このホテル最大の鬼門は、廊下でも階段でもない。
そう、食堂の真横に受付があるのだ。
これはまさしく、ハイリスク・ローリターンの極み。
得られるものはせいぜいスクランブルエッグとカリカリベーコン、失うものは社会的信用と宿泊資格である。
リアル人生ゲーム、ハラハラドキドキが止まらない——
そんなことを思いながら、筆者は黙ってクロワッサンに手を伸ばした。
予想通り食堂のクオリティは申し分ない。
「ご自由にお持ち帰りください」と書かれたプレートの下には、バナナ、リンゴ、ミカンが堂々と鎮座している。
フレークコーナーには、チョコ味、プレーン、果実入りなどが所狭しと並び、ヨーロッパの定番ホテルバイキングとして完璧な布陣だ。
Ninaも朝からご機嫌。皿に料理をどんどん盛り、テンションが隠しきれていない。
筆者もようやく「いただきます」体制に入ろうとしたその瞬間、食堂のドアがゆっくりと開いた。
そこに現れたのは、昨日、フロントでバチバチに会話したあの女性スタッフであった。
(ヤバい!Nina、避難だ!とりあえずトイレにダッシュだ!全力疾走で!)
しかしその瞬間、Ninaが優雅に振り向き「Guten Tag!」と軽快に挨拶しそのまま着席。
いやいやいや、ちょっと待ってくれ。メンタル鋼か君は。
筆者の脳内には「え?この状況で挨拶しちゃう!?スネーク!!!ミッション中だぞ!!!??」とオタオタするスネーク(←メタルギアソリッドの)が浮かぶ。
欧米人であるNina単体ならホテルのスタッフも「ああ宿泊者かな?」と見過ごす可能性はある。
だが筆者のようなアジア人バックパッカーは、オーストリアの静かな田舎町ではかなり目立つ存在。
しかも昨日の昼、筆者はその受付の女性にフロントで堂々と「この子は泊まりませんので」と宣言済みである。
にもかかわらず、今こうして2人並んで朝食をむしゃむしゃ食べていたら…
スタッフの思考フローがこうなるのは明白である。
「あーーーあなた昨日の女の子じゃない!!!」
「これは大問題よ。とりあえず別室に来なさい」
「あとクロワッサンは返してね」
状況は完全に詰んでいる。
朝食バイキングごときで人生詰みたくない。
だが時すでに遅し。筆者は黙ってスープをすすった。
もはやバレないことを祈るのみである。
神よ、我に朝食を、そして奇跡を。
結果、無事に
正直なところ、笑顔で話しているNinaが信じられなかった。
いや、メンタルの構造どうなってるの?アメリカ育ちですか?冷戦中のスパイですか?
こちらはもう心臓が軽くバク転してるんだが。
しかもよりによって入り口近くの席。
スタッフが食堂に入ってきたら秒で目が合う特等席である。
そんなところで「うふふ、そうそう、それでね〜」などと会話をしながら、30分かけて優雅に朝食を楽しむ。
筆者はというと、パンを噛むふりしてただ口の中に収納してるだけである。
味などしない。ただの炭水化物型ストレス吸収装置だ。
食事を終え、ついに部屋へ戻る時間。
当然ながら、帰り道も気は抜けない。
トム・クルーズ、再び出動。
「Mission: Impossible – Hotel Escape」
このミッションに失敗は許されない。通路では音を立てぬよう足音を殺し、曲がり角では壁ぴったんで視界を確保、階段では一段飛ばし+防犯カメラに映らないようにフードを被るという意味不明なアクションをかましつつ、ようやく三階の部屋に到着。
もちろん時間差で、である。
Ninaは先に部屋に戻っている。
筆者は堂々と部屋の前に立ち、扉を開けようとしたところ、「No Cleaning」の札がかかっていた、部屋にクリーニングが入ると2人分の荷物が目に入るからだ。
さすが抜け目がない、実はそこはかとなく彼女の聡明さも見え隠れする。
そして部屋に入りドアを閉めた瞬間、脳内が叫ぶ。
「中学英語しか話せないのにトラブルなってたらどうしてたんだ、おれ!!!」
食べた気がしない。休まった気もしない。
ただただ緊張と困惑が胃に詰まっただけの朝だった。
Ninaはベッドに転がって「美味しかったね〜」なんて言ってるが、筆者の心は今もフードコートに置いてきたままだ。
プロの芸人になった友人
食後にトイレへ行き、ふとスマホをチェックすると、FacebookだったかInstagramだったか、なんとも衝撃的なニュースが目に飛び込んできた。
小学校からの友人が、プロのお笑い芸人になったというのだ。
原口あきまさ・オードリー・スザンヌなどが所属する芸人・タレントなどのマネジメント会社。東京都渋谷区、ケイダッシュステージ…
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色々とあって中学卒業から成人式まで絶縁状態だったが今は何とか関係が元に戻っている。
漫才は何度か観たが、正直、面白い。
無理に褒めているわけではない。本当に笑えるのだ。
あのクソガキ時代を知っている者からすると、「お前がその道に行ったか…」と胸熱な気持ちになる。
こいつは小中学校で学校一のモテ男(実際オシャレで爽やかで勉強もできておまけに当時最新のガラケーを持っておりサッカー部で運動もできたというまさに神に選ばれた男だった)バカもめちゃくちゃやった名友と呼べる男だった。
どう考えても、神に選ばれし者。
バカなことも全力でやるし、周囲を巻き込んで笑わせる。
まさに「陽キャ」という言葉がまだなかった時代の陽キャ筆頭。
これは――ここだけの話だが、
彼の家に、筆者を含む仲の良い中学生男子が5〜6人集まったことがある。
目的はただひとつ。
彼の父親が金庫級の警戒心で隠していたとあるDVDを鑑賞するためである。
友朗、君は今ステージで笑いを取っているが、あの日のあの部屋の空気感、あの奇妙な一体感を超える瞬間はそうそうないぞ。
青春とは、時にバカバカしく、そして尊い。
そんな彼が芸人になったというのは、ある意味必然なのかもしれない。
そんな懐かしい桜井友朗氏に一言だけ言いたい!
関西来いよ!全然舞台観に行けへんやんけ。
» 折りたたむ
ハイキング
とりあえず荷物を宿に置いたまま、市内にあるハイキングコースへと向かった。
せっかくだからケーブルカーなどという文明の利器には頼らず、自らの脚で山の上まで登るという選択をした。ストイックにして、ややマゾ気味である。
登山中、これまでに登った山の名前を互いに披露し合うという、登山者あるあるのマウント合戦が始まった。
そのときNinaがサラッと言い放った。
「わたし、スロヴェニア最高峰のトリグラウ山(標高2864メートル)に登ったことあるよ」
軽い口調だが、実はけっこうスゴイ。
登山界では、ちょっとしたバッジである(←これは言い過ぎ)
話題が転がる中、筆者が空手経験者であることを明かすと、Ninaが何となく空手の突きを真似し始めた。
「Ninaよ、なかなか良いフォームである。ただし、右の引手はもう少し高く、左手は完全に伸ばし切らぬように。肘関節への負担が心配だ。そして足のスタンスも狭すぎる。これでは前後の動きには強くても、左右の動きには致命的な弱さが……」
などと、筆者が脳内で指導モードに突入していたそのとき。
彼女が急に真顔で切り出した。
Nina「ねぇ、Thank you と You’re welcome って、日本語でなんて言うの?ぜひ教えてほしい!」
……まさかの語学質問タイム発動。突如、登山道に舞い降りる語学の精霊。
頭の中を様々な日本語表現が駆け巡ったが、最終的に選んだのは、もっともシンプルかつ日本的なこの一言であった。
Thank you(ありがとう)→Arigatou
You’re welcome( ええよ、気にしんといて)→Eeyo, kini shin toite
うむ。やはり関西人である筆者としては、
ありがとう → おおきに(Ookini)
どういたしまして → ええよ(Eeyo)
の流れが自然かとも思った。
が、あまりに易しすぎても味気ない。
少し難易度を上げることで「教えてやった感」を得ようとした筆者の浅はかさである。
結果、Ninaには少々難しすぎたようである(笑)
「気にしんといて」をローマ字表記にすれば、
Ki ni shi n to i te.
である。小刻みに区切ると、もはや暗号にしか見えない。
筆者も筆者で、スロヴェニア語の「おはよう」(Dobro jutro=ドブロ・ユートロ)を何度教えられてもまったく覚えられなかった。
何度言われても頭に入らない。
ドブロは覚えても、ユートロがすぐ飛んでいく。
おそらく脳内で「ゆーとろ」→「湯トロ」→「温泉」→「入りたい」→「山道しんどい」→終了、というループに陥っていたのだろう。
一応、彼女はスマホのメモ帳に「Ki ni shin to i te」と書き込み、会話方式の実践練習を数回繰り返した。
現場でのアウトプット重視、まさに語学学習の理想形である。
いずれ日本のどこかで彼女が「きにしんといて〜」とドヤ顔で言う日が来るだろう。
そんなことを楽しくやっているうちに、気づけば結構なところまで登ってきていた。
そのタイミングで、ふと真剣に考える筆者。
なぜ俺はこれほどまでに外国人に惹かれるのか?
※異性としてじゃなく人間として←重要!
そのタイミングで、ふと真剣に考える筆者。
輪郭か?瞳か?髪質か?スタイルか?ファッションセンスか?
いや、それらは単なる装飾であって、本質ではない。
このノリの良さである。
変な洞窟に落ちていた誰が被ったかわからないヘルメットを、何のためらいもなく被る女の子。
そういう「バカになれる勇気」こそが、人として最高に魅力的である。
どれほど可愛かろうが、性格が良かろうが、一緒にバカなことができない女性とは、共に人生を楽しめる気がしない。
筆者の周りにいる日本人女性なら、きっとこんな反応になるだろう。
「え、そんなことして何が楽しいの?」
「いやいや、汚いやん。髪の毛汚れるし」
「やりたいなら自分だけやったら?」
筆者はそういう女性を恋人にしたいとは思わない。
少年よ大志を抱け、そして
Girls, be stupid !!
「少女よ、バカになれ」という筆者の名言が今ここで生まれた。
何もかも恐れず、ただ純粋に笑って、愛して、時には無邪気に生きてみて。
誰が何と言おうとも、君が描く世界は君だけのもの。
バカだと言われても、その一歩が誰かを照らす光になると信じてほしい。
春のハイキング、当然汗をかく。
筆者はラーメン屋の兄ちゃんがごとく頭に白いタオルを巻いて登山をしていた。
Ninaに笑われながらも、「これがおれという人間だ、嫌なら去ってくれ」と言わんばかりにどや顔で恥ずかし気もなく振る舞う。
この時のテンションは未だに理解不能である
そしてようやく頂上(とりあえずのゴール)に着いた。
頂上はノルウェーの絶景トロルの舌みたいな感じで宙に飛び出ている。
筆者とNinaもセルフィーを撮ろうという話になった。
すると突然、Ninaがその汗だくのタオルを筆者の頭から引っぺがし、何のためらいもなく自分の頭に巻き始めた。
筆者「え、ちょ待って!そのタオルは…(おれの汗で濡れている!!!)」
筆者の叫びも虚しく、Ninaはそのままタオルを巻き終え、笑顔でこう言った。
※筆者の汗でべたべたになったタオルを頭に巻く女戦士Nina
「写真撮ろう!」
この状況が信じられないのは、筆者だけではあるまい。
これがもし日本人の女子だったなら、どうなっていただろう。
筆者はキャッキャッ言っているNinaの後姿を見ながら考えていた。
ありがとう、Ninaちゃん。
くっさーい
きっもーい
ぜったいむりーー
うっわー
なんか濡れてるしー
まぢむりー
セクハラで訴えます
そう言われて翌日には逮捕状が請求されているだろう。
この時の筆者は逆ミカサ・アッカーマン状態だった。
©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会
おれと・・・一緒にいてくれてありがとう
おれに・・・生き方を教えてくれてありがとう
おれの・・・汚いタオルを巻いてくれてありがとう
参考:12巻:2期12話(37話)
筆者(また進撃の巨人が観たくなってきたな~)
さて、ハルシュタットの町からハルシュタット駅へ向かうボートは毎日18時前後の便が最終だ。
もうお別れは近い。
一応最終便で去るという選択をしてくれたNinaに今更ながら感謝したい。
Hvala!!!!
(フバーラ=スロヴェニア語でありがとう)
もう時間もない。さあ、山を下ろう。
筆者「はいチーズ……(どういう教育を受ければ、こんな子に育つんだ)」
このノリの良さ。
それこそが、筆者が欧米人に魅了され続ける、最大の理由なのかもしれない。
別れの時
「Don’t push me!!!!」
そう叫んだNinaであるが、もしこの言葉がなければ、筆者は彼女を湖へ突き飛ばしていたかもしれない。
が、残念ながら(?)Ninaがダチョウ倶楽部の存在を知っているとは到底思えなかったので、そこは自重した。
写真を撮るシャッターを切りながら、心の中でそうつぶやいた。
なお、実際に押して彼女が湖にドボンし、全身ずぶ濡れになったとしても――
果たして彼女は笑っていられただろうか?
ノリの良さの限界点にはまだ謎が残る。
と、そんな軽口も束の間、Ninaがぽつりと呟いた。
「そろそろ行かなくちゃ」
遂に、その時がやってきた。
一度宿に戻って荷物を回収し、再び水上バス乗り場へと向かう。
別れのカウントダウンは、もう始まっていた。
そんな中、彼女がふとこんな質問をしてきた。
Nina「日本語で“Today is the best day”って、どう言うの?」
「I wanna say it.」
──そう続けた彼女の言葉に、筆者はグッときた。
この二日間、共に歩いた時間が、彼女にとっても何か特別なものだったのだと、言葉の端々から感じ取れた。
そしてNinaがある一つのスロヴェニア語の文章を教えてくれた。
Danes je zelo lep dan.
(ダーネス ヤ ゼロ リップ ダン)
そう、もちろん直訳するとToday is really nice day.(最高の日だ)という意味。
もちろん、筆者も負けていられない。日本語でこう返した。
Saikou no hi da.(最高の日だ)
簡単でシンプル。だが、今この時にこそふさわしい言葉だった。
筆者は心の中でそっと繰り返した。
──最高の日だ。
まさにその通り。何の誇張もない、心からの実感であった。
そして最後に、彼女が日本語で唯一覚えていた言葉を披露してきた。
ワタシ ワ バカデス
……誰が教えた。
なぜそれを選んだ。
なぜそれだけを記憶していたのか。
あらゆる謎が交差し、筆者の頭は混乱の極みに達した。
もし彼女にこのフレーズを吹き込んだ日本語教師が存在するならば、一度連絡を取りたい。
(水上バス駅前の駐車場にて)
↑水上バス乗り場
乗り場前で、最後の一枚を撮影。
「じゃあね」と言うにはまだ早い──
そう思っていた矢先、Ninaのハイリスク・ローリターン精神が再び燃え始めた。
Nina「ボートが来るまであと五分くらいあるわ!もう少し歩いて、自分が納得できる角度から写真を撮りたい!」
カメラ好きはこういうところで火がつく。いや、わかる。わかりすぎる。
「そこから撮りたい」が脳内を支配したら、もう止まらないのがカメラ愛好家という生き物である。
筆者はこう返した。
「まるで登山家ジョージ・マロリーが“なぜエベレストに登るのか”と問われて“そこに山があるから”と答えた時のような心境ですね」
いやいや、そんなこと言っている場合ではない。
彼女の荷物を心配そうに見るNinaに、筆者はこう答える。
「もちろん俺が持つに決まってるだろうが!!」
何のために日々鍛えてきたと思っているのだ。今こそ己の肉体が輝く瞬間である。
そして2人でダッシュ。
山中ではなく、港町での本気疾走である。
写真を一枚撮った。
だが、おわかりいただけただろうか。
──今はこんな写真を撮ってる場合ではない。
断じてそんな場合ではない。
写真左側には、本日最終便のボートが、しっかりと姿を現しており、あのボートに乗り遅れるとまたトム・クルーズごっこをしなければならない。
確かに良い角度ではあるが、断じてそんな悠長にカメラを構えている場合ではないぞ、NINA!!
ボート乗り場へ急いで帰る。
ダッシュ、ダッシュ、そしてさらにダッシュ。
太陽はすでに西に傾き、山々を黄金に染めている。
刻一刻と最終便の出発時間が迫る。
なんとかボート到着前に間に合った!!!
ボートに乗る直前、しばし2人は見つめ合う。
──Before Sunrise風の「あなた、素敵だったわ」「またいつか、この場所で」的なやつを交わす。
「的な」が超・重要である(笑)
お互いに強くハグをし合った後、Ninaはそのままボートに乗った。
そう、外国人にとってハグは至って普通なのだ。
別れのハグはもはや自然な流れだ。外国人にとってハグは全く特別ではない。
これは、その後も何度も経験する。
筆者も、後に奥様の母国イタリアで、初対面の親戚や友人たちとチークキス(ほっぺたを近づけてチュッと音を立てるやつ)やハグを何百回もこなすことになる。
そう、欧米人にとって「距離感」はゼロ距離がデフォルトなのだ。
ボートがゆっくりと港を離れていく。
Ninaは、姿が完全に見えなくなるまで、ずっと手を振り続けてくれた。
筆者、心の中でつぶやく。
「ふ……いい夢見させてもらったぜ」
まるで映画のエンドロールのように、静かに幕が降りた。
一石三鳥のプランティングシステム
帰り道、とある家の前で足が止まった。
これは雑草伸びっぱなしの汚い家ということではない。
むしろその逆、実に整えられた美しい家であり、筆者としては「将来、家を建てるならこんな風にしたい」と本気で思える理想の住まいであった。
ヨーロッパには多いのだが、このように木を家の壁面に沿わせて育てることで
➀夏は木が直射日光を遮って涼しい
②冬は寒風を防いでくれて暖かい
③更に虫が嫌がるハーブということで蚊などの害虫も近寄らない
この三拍子が揃った効果、もはや緑の鎧である。
まさに環境保全的ガーデニング思想の最終形がこれである。
筆者「……うむ、これは欲しい」
声に出してそう呟いた。誰も聞いていないのに。
この植物のカーテンとも呼べる仕組みは、冷房や暖房に過度に頼らず、自然の力を活かすという意味では「パッシブ設計」とも呼べるだろう。
エアコンの電気代に怯え、蚊取り線香の煙でむせ、日差しで床が焦げそうな日本の夏を思い出しながら、筆者はその家の前でしばし夢を見ていたのであった。
置き土産
Ninaと別れてからというもの、筆者の心はまるでカラカラに乾いた雑巾のように空っぽであった。
何をしても上の空。
白ごはんに醤油だけかけて2日間を過ごしたような、味気なさ全開の時間だった。
そして、いよいよ筆者自身もハルシュタットを去る時がやってきた。
名残惜しさを抑えつつ、部屋の片づけを終え、パッキングも完了。
あとはテーブルの上に置いてあったパンフレットや地図をまとめてスーツケースに放り込もうとしたその時──それは現れた。
──例えるなら、エンディング後に流れるサプライズの特典映像のように。
どうやらNinaが最後に部屋を出る際に書き残したものである。
しかも、すぐに見つけられないように、パンフレットの間にそっと挟み込んでいたという演出力。もはやこれ、映画である。
(仮に筆者がパンフレットをそのままゴミ箱に直行させていたら──彼女のメッセージは闇に葬られていたであろう。運命に感謝である。)
HAVE A REALLY AWESOME TRAVEL, THANK YOU FOR LOVELY EVERYTHING. Regards, Nina. S.
(素敵な旅をしてくださいね。全ての素晴らしかった出来事に感謝しています。ニーナより)
見つけたときの筆者の心境はこうだ。
「ま、マジか……これは卑怯だ(号泣)」
筆者、心の中で5秒土下座である。
しかもこの「LOVELY」という単語。これには特別な意味があった。
なぜならこの2日間、筆者が執拗にツッコミを入れ続けた、Ninaの口癖がまさにこの「Lovely」だったからだ。
宿に無事到着したら「Lovely」
朝食が美味しかったら「Lovely」
いい景色を見たら「Lovely」
筆者が変なポーズで写真を撮っても「…Lovely?」(←若干困惑気味)
もう何でもかんでもLovely。語彙の半分がLovely。
筆者が「ちょ、また出たぞw」と笑えば、Ninaも「え?そんなに言ってる?笑」と気づかず笑う。
2人で何度も爆笑した、たわいのない癖──それが、この別れ際のメッセージにしっかりと刻まれていたのだ。
まるで、「あなたと過ごした時間、その全部が本当にラブリーだったわ」と言っているようである(←ほんまかぃ!!!
筆者「くっ……なんて出来た女なんだ」
思わずそう呟き、パンフレットをそっと胸に抱きしめた。
別れは切ないものだが、こういう心をくすぐる伏線回収をサラッとやってのけるNina、やはり只者ではない。
Lovelyという一言が、こんなにも深く心に刺さる日が来るとは思ってもみなかった──
これもまた、人生のLovelyな瞬間である。
帰国後
一ヵ月の旅を終えて日本に帰国後、色々な人に出会い友達になり笑い合ったことを思い返していた。
その中でも特に2つのことが頭から離れなかった。
自給自足旅
Ninaと出会って感銘を受けたこと、それはいかに旅をするかということ。
・ホステルの12人部屋に泊まり、地元のレストランで夕食を食べ、夜はバーやクラブに行ってはっちゃける。
・テントで寝泊まりし、ご飯は地元のスーパーで食材を買って自分で調理、夜は誰もいない場所で孤独を楽しむ。
正直どちらも魅力的だと思う。
しかし言ってしまえば前者は誰にでもできることである。
筆者も散々やってきたし、早い話お金さえあれば誰にでもできる。
それならば経験として後者を選んでみたいと思うのがバックパッカーの性である
帰国後すぐにテントを買い、寝袋を買い、バーナーを買い、コッフェルを買う。
しかもこれらは登山にも必要なものであるため一石二鳥。
もちろんテントとなれば様々なデメリットがある↓
- 荷物が重くなる
- 人通りの多い場所では張れない
- 荷物を置いて遠出できない
- 雨が降ったら面倒
- 夜中の治安が心配
など挙げだしたらキリがないほど、はっきり言って面倒くさい(笑)
警察に職質される事も多く、地元のヤンキーにビール瓶や石を投げつけられて寝れない夜も過ごした。
しかし、それでもテント泊の魅力はすごい!
恐らくNinaと出会わなければこういう気持ちにはならなかったと思う。
人と人との繋がり
日本に帰国後、もう一つあることを決心した。
スロヴェニア語を勉強しよう
と。
理由は簡単、Ninaとスロヴェニア語で会話するため。
まあ外国語を学ぶのってそもそも非常に楽しいという大前提はあったのだが。
そこでまず日本に一種類しかない、唯一のスロヴェニア語のテキストを買い↓
最低限の知識はラミネートし常に記憶しようと心がける↓
(正直、スロヴェニア語の難易度高過ぎた…)
テキスト内の例題をエクセルで打ち出し定期的に復習する。
そして極めつけがスロヴェニア語の童話を読むこと。
赤ずきんの話
子供用だからと言ってなめてはいけない。
その他、言語交換サイトなどを通じて数人のスロヴェニア人とも出会いネット上でやり取りをする。
しかし適当に何でもかんでも訊くのは相手に対しても失礼。
なので予習・復習は欠かさない。
この翌年である2017年1月後半、およそ10ヶ月間のスロヴェニア語学習を経て彼女が待つスロヴェニアを訪れる。
ハンガリーの首都ブダペストからレンタカーを借りて一週間のスロヴェニア旅、目的地はもちろん首都リュブリャナとNinaが住むスロヴェニア第二の都市マリボル。
しかし直前の直前で結局会えなかったという笑うに笑えない話はまた今度にしよう。
Ninaには会えなかったものの、スロヴェニア語学習の過程で知り合ったKristinaとMonika(以降モニ)とは会うことができた。
2人とも日本が大好きで今でも定期的にメッセージをやり取りしている仲だ。
とりわけモニとは非常に仲が良く、2017年末から2018年始にかけてカタール航空のモニターとしてヨーロッパに行った際にモニにも連絡をした。
イタリア・ミラノに行くと言ったところ、わざわざ夜行バスでスロヴェニアからイタリアのミラノまで来てくれて3日間エアビーで予約した家に一緒に泊まって観光をするという、まさに人が人を紡ぐインフレスパイラル。
(モニとミラノにて 将来的に2人で一定期間旅をする予定(コロナで不明)からの中止決定)
(クリスティーナが経営する美容サロンにて ただで30分のマッサージをしてもらい、その後彼女の実家でご馳走になり泊めてもらった。お母さんにはお土産にワインまでもらった)
Ninaを出発点とし、大勢の素敵な生涯の友人と出会うことができた。
あの日車内でNinaが声をかけてきてくれてなかったら、今の多くの友人との繋がりも無かったでしょう
出会う人全員と上手く交友関係を保てるかは正直わからないが、文化も言語も国籍も何もかも違う2人が出会うとそこには必ずストーリーが生まれる。
外国に出ると確実に自分の中の世界観は広がり、日本という一億二千万人しかいないこの小さな島国から一生出ない、などという奇妙なプライドがいかに惨めでもったいない事かを再確認させてくれる。
おわりに
今回は筆者にしては珍しく、小説めいた構成となってしまった。
だが、これもまた一つの旅の形である。事実、旅とは物語の連なりであり、書き方が多少変わろうとも、そこに真実があれば何の問題もない。
いや、むしろ数多くある旅の記録の中に、こうした少し情緒的な回があっても良いのではないか──そんなふうに感じている。
最後まで目を通してくださった読者の皆様、本当にありがとうございました。
この文章を通して、少しでも旅の空気や人との出会いの温度、何気ない会話の余韻が伝わっていたなら、筆者としてはこれ以上の喜びはない。
さて、筆者はハルシュタットを後にし、次なる目的地――ザルツブルクへと向かった。
静かに、しかし確かに、物語はまだ続いている。
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