【図解多め】世界遺産検定1級にも通じる「世界遺産の基礎知識」

この記事を読むのにかかる時間: 7

人間と生物圏計画(MAB計画)

マチュピチュ

(ペルーのマチュピチュ)

人間と生物圏計画MAB計画

環境資源の持続可能な利用と環境保全を促進することを目的に、ユネスコが1971年に立ち上げた研究計画

MAB計画では、保護すべき自然を下記の三段階の区域に分けて重層的に保護しています。

核心地域(コア・エリア)

緩衝地帯(バッファー・ゾーン)

③移行地帯(トランジション・エリア)

世界遺産条約ではこの中から「核心地域」と「バッファー・ゾーン」の概念を援用しています。

MAB計画

例えば、知床世界遺産では2005年の登録時に政府が地元漁民に「遺産登録に伴う新たな規制は行わない」と約束しました。

※つまり「ここは世界遺産だから漁をしてはいけない」などという一方的な法律は定めない、ということですね。

しかし審査したIUCNが海域の更なる保護を求めたのに対し、地元漁民が自ら禁漁区を拡大する措置をとりました。

これは共同管理の典型例として2010年に「世界の6つのインパクトストーリー」の一つに選ばれました。

また、この共同管理の考え方こそ「世界遺産の理念」というよりMABの理念に沿うものといえます。

トランスバウンダリーサイト

タージマハル

(インドのタージマハル)

さて、一度「世界遺産登録の条件」に戻ります。

5つありましたよね、覚えてますか?

➀遺産を保有する国が世界遺産条約の締約国であること

②遺産があらかじめ各国の暫定リストに記載されていること

③遺産を保有する締約国自身からの推薦であること

④遺産が不動産であること

⑤遺産が保有国の法律などで保護されていること

でしたよね?

世界には過去の大国が自分勝手な理由で地図上を定規で線を引くように国境を分けた国が存在します。

文化遺産でも、かつて一つの文化圏であった地域が国境で分断されてしまうことがありますよね。

では、その顕著な普遍的価値のある財産が複数国にまたがって存在している場合はどうなるのでしょう?↓

トランスバウンダリーサイト

例えば裕福なA国と、貧しいB国の国境をまたいで「絶滅危惧種を含む野生動物が多く暮らす地域」があるとします。

このAB両国の考えは正反対です↓

A国:その地域まで開発する必要は無い。野生生物は地球の宝だ!世界遺産に登録して生物を保護しよう

B国:まだまだ貧しい自国発展のためにその地域を開発したい

そんな時に出てくるのが「トランスバウンダリー・サイト」という考え方です。

(※「transは超える」、「boundaryは国境」、「siteは地域」)

トランスバウンダリー・サイト

国境線を越えて多国間に広がる自然遺産を登録する際に考え出されたもので、多国間の協力の下で遺産を保護・保全することを目指している

※強制力は無いので「世界遺産に登録するからそのための法律を作りなさい」とは言えない

シリアルノミネーション・サイト

トランスバウンダリー・サイトとセットで覚えておかなければならないのが、このシリアルノミネーション・サイトです。

(※「serialは連続的な」、「nominationは指名/推薦」、「siteは地域」)

シリアルノミネーション・サイト

文化や歴史的背景、自然環境などが共通する資産を、ひとつの資産として顕著な普遍的価値を有するものとみなし登録するもの。

例えば、フランスのロワール川沿いにはおよそ200kmにわたって130もの城館が点在しています。

美しい城館の立ち並ぶこの渓谷は世界遺産に登録されていますが、130の城館をひとつひとつ世界遺産に登録するわけにもいかないので、シリアルノミネーション・サイトとして「ロワール渓谷」という項目で一つの世界遺産として登録されました。

エコツーリズム

エコツーリズム

(アイスランドのシングヴェトリル国立公園)

有名な観光名所の多くは世界遺産に登録されており、世界遺産と観光は切り離すことができませんよね?

世界遺産登録されると、世界中から人々が訪れユネスコ憲章の謳う「相互理解」と「多文化理解」が促進されます。

しかしその反面、観光客が訪れることによって文化遺産なら地元の人々の生活文化や信仰形態が乱されますし、自然遺産なら外来種やゴミやトイレの問題から手つかずの自然を破壊します。

こうした問題にはエコツーリズムという考え方が重要です。

エコツーリズム

地域ぐるみで自然環境や歴史文化など、地域固有の魅力を観光客に伝えることにより、その価値や大切さが理解され、保全につながっていくことを目指していく仕組み

危機遺産

危機遺産

(エジプトのピラミッド)

危機遺産とは「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)に記載されている遺産」のことです。

世界遺産リストに記載されている遺産が、自然災害や紛争・戦争による遺産そのものの破壊、都市開発や観光開発による景観破壊、密漁や違法伐採による環境破壊などの重大かつ明確な危険にさらされている場合、危機遺産リストに記載されます。

危機遺産リストに記載された場合

遺産の保有国は保全計画の作成と実行が求められます。

その際には、世界遺産基金や各国の政府、民間機関などからの財政的・技術的援助を受けることができます。

世界遺産の顕著な普遍的価値が損なわれたと判断された場合は、世界遺産リストから抹消されることもあります。

例えば、体毛がほぼ白一色で覆われたウシ科のアラビアオリックスは、1972年に最後の一頭が射殺されて野生種は絶滅しましたが、オマーン政府がアメリカの動物園などで飼育されていた10頭を譲り受けて繁殖させました。

その「アラビアオリックス保護区」は1994年に自然遺産に登録され、2年後には450頭にまで増加しました。

しかし密猟などでアラビアオリックスは激減、さらに政府が油田開発のために保護区を90%削減したことで、保護区は世界遺産条約誕生以来初めて、2007年に世界遺産リストから削除されました。

無形文化遺産・世界記憶遺産

ストーンヘンジ

(イギリスのストーンヘンジ)

世界遺産登録の条件にもありましたが、世界遺産登録は不動産のみ可能となっています。

そこで不動産を保護する世界遺産とは別に、口承による伝統や表現、伝統芸能や祭礼、慣習、工芸技術などの無形の遺産を保護する無形文化遺産と、書物や楽譜、手紙などの記録物を保護する世界記憶遺産ができました。

世界記憶遺産は、1992年にユネスコが立ち上げた「世界の記憶」プログラムにより登録されている遺産で、ユネスコではデジタル化技術を用いて保存し、一般への公開も進められています。

代表一覧表と危機一覧表

無形文化遺産は2003年にユネスコで採択された「無形文化遺産の保護に関する条約」に基づき「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表(代表一覧表)」に記載されている遺産で、存続の危機にあるものは別に「緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表(危機一覧表)」が作られています。

※日本からは「人形浄瑠璃文学」や「歌舞伎」「能楽」などが代表一覧に登録されています。

おわりに

さて、これで世界遺産の基礎知識が終わりました。

自分でも驚くくらい結構詳しめに書きましたが、全て記憶する必要はありません。

でも四択の問題でせめて二択に絞れるくらいの理解は必要だと思います。

僕もこれから1級合格を目指していきますが、書き終わった時点で2級の基礎問題はほぼ全問正解できてます。

もちろん、点数が全てではありませんが理解度をはかる基準として世界遺産検定は有効だと思います。

一緒に頑張りましょう(”◇”)ゞ

世界遺産の基礎知識
最新情報をチェックしよう!