3度目のヨーロッパ、2度目の独り旅(2016年)の思い出を振り返る。
今回はオーストリアのザルツブルクでの滞在をサクッと要約し、印象的な出来事をシェアしようと思う。
筆者が初めてヨーロッパを独りで旅したのは2014年の初旬。あの時の驚きや発見は今でも鮮明に覚えている。
今回の旅では、ヨーロッパの面白さや基礎知識に絞ってお届けする。無駄な話は極力省いて、ガイドブックには載っていないこと、実際に見たものや感じたことに焦点を当てる。
前回の記事はこちら。
3度目のヨーロッパ、2度目の独り旅(2016年)の思い出を振り返る。今回はオーストリアのハルシュタットでの滞在をサクッと要約し、印象的な出来事をシェアしようと思う。筆者が初めてヨーロッパを独りで旅したのは2014年の初旬。あ[…]
ザルツブルグ滞在記
さて、チェコの小京都ことチェスキークルムロフを旅立ち、アルプスの水と空気を一身に浴びる聖地ハルシュタットを経由し、筆者はついにザルツブルグへと舞い降りた。
気分はモーツァルト、もしくはサウンド・オブ・ミュージックのロケ地に迷い込んだ無名エキストラである。
ちなみにハルシュタットでは、Ninaというスロヴェニアの風をまとった快活な女性と出会い、驚きと笑いに満ちた一日を過ごした。気づけば空手の構えを教えたり、汗だくのタオルを頭に巻かれたり、異文化交流という名のドタバタ喜劇であった。
国際理解とは、案外こんな形で進むものなのかもしれない。
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そして舞台は変わり、次なる目的地はザルツブルグである。
「サルツブルグ」と聞いて「それって塩のバーグ?」と空耳する人も稀に存在するが、安心してほしい。
ここは音楽と歴史とインスタ映えの町である。
……だがインスタ映えスポットがあってもなくても筆者の情熱は変わらない。
丘の上のホステル「Die Stadtalm」
ザルツブルク中央駅に到着。
列車を降りた瞬間、筆者の心には「よし、今日はまったり過ごそう」という甘い期待が広がっていた。
が、その幻想はすぐさま打ち砕かれることになる。
まずは宿へ向かう。
今回予約していたのは、名前からして気品が漂うホステル、その名も”Die Stadtalm(ディー・シュタッタルム)”である。
ドイツ語らしい発音だが、まさかこんなにも物理的に“高貴”な場所にあるとは思いもよらなかった。
丘の上である。
正確には“山腹”と言っても差し支えない。
ホステルへの道のりは、風情ある町並みを抜け、ザルツァッハ川に別れを告げ、次第に人の気配も消えていく。
ん?なんだか町から離れているような…。
「おかしい、宿に向かっているだけなのに、なぜか登山になっている…」
気づけば足は坂道をのぼり、息は次第に荒くなる。
ハアハア(*´Д`)
もうこれは軽いハイキングである。
フウフウ
そして約15分。
汗が滝のように流れ始めた頃、ついにホステルの外壁が見えてきた。
それはまるで城壁。いや、あれは確実に元城か元要塞である。
宿泊施設というより、軽く攻め落とす覚悟が必要なレベルの構えであった。
筆者「…こんな場所にホステルがあるとか聞いてないのだが…」
だがしかし。
登り切った者だけが味わえる景色が、そこにはあった。
懐かしのザルツブルク城、そして遠くに流れるザルツァッハ川が、まるで「よく来たな」と言わんばかりに出迎えてくれた。
そしてついに、筆者は到着した。
登山家でもなければ忍耐強くもない筆者が、己の肉体ひとつで登りきったこのホステル──”Die Stadtalm”である。
友達作るなら一人で旅をすべき
こんな丘の上にあったんかい!!!
心の叫びを喉の奥に押し込み、筆者は平静を装いながらホステルの受付へと足を運んだ。
登山の疲れを悟られぬよう、余裕の笑みすら添えているあたり、自分でもプロの俳優顔負けだと思う。
無事にチェックインを済ませ、部屋に案内される。そこにいたのは、フィリピン人の女性2名。
軽く挨拶を交わし、英語でぽつぽつと会話を始める。最初は順調、互いの旅の話やおすすめスポットなど、それなりに会話も弾む。
しかし──
ある程度、話題を出し尽くしたその時、事態は急変する。
沈黙!
そう、いわゆる「間(ま)」である。
旅人なら誰しもが一度は遭遇する、あの気まずい数十秒──否、数分。
筆者「さて、そろそろ外出の準備でもするか…」
と立ち上がり、軽やかにバッグをまとめ、リュックを背負いながら “See you later~” などとカジュアルに挨拶を添えようとした。
が、その瞬間──
彼女たちの会話がタガログ語(と思われる)で突然爆発。
止まらない、マシンガンのような勢いで、筆者の“See you laterゾーン”はあっけなく封鎖される。
筆者「え? え、いま出たら、まるで無言で消える人みたいになっちゃうやん…」
当然、筆者も人間である。異国の地とはいえ、無言で部屋を出て行くのはちょっと気まずい。
が、待てど暮らせど彼女たちの会話は一向に終わる気配がない。
「いや、普通気づくやろ!?」と内心で突っ込みながら、筆者は数分間、部屋の片隅で“隙間”を探す羽目に陥る。
が、結局その隙間は永遠に訪れなかった──。
筆者、無言で退室。しょんぼりではない。だが、若干の敗北感を抱えつつ、扉を静かに閉めたのである。
ここで思った。
やはり一人旅がいい。
独り旅同士なら、沈黙すら共有しながら何とか会話を繋ごうと努力するものだ。
「俺もついてっていい?」とか、「一緒に行く?」とか、そういうノリが自然と生まれる。
だが、友人と一緒に旅している者たちは違う。会話に詰まったら、母語でばーーーっと話せばOK。周囲とのバランスなど気にしない。
結果、筆者のような“旅路の孤狼”には割り込む余地がないのである。
結論。
そういうグループ旅の人たちとは、ちょっと距離を感じてしまうのだ。
残念ながら、彼女たちとの心の壁はザルツブルクの城壁よりも厚かった。
ホステルからの景色はおススメ
先ほど、
「なんでこんな歩かなあかんねん!!!!」
と叫んだ筆者であるが、実のところ、その苦労は無駄ではなかった。
なぜなら、このホステル、景色がバチくそに良いのである。
どうだ、この眺め。
こんな風景を目にしてしまえば、そりゃあ汗まみれで丘を登ってきたことすら忘れる……いや、忘れはしないが、少なくとも報われた気にはなる。
これが“ご褒美景色”というやつである。
どうだ、泊まりたくなっただろう?(笑)
このホステルでは、後にいくつかの出会いが待っていた。
- アルゼンチン人のマニュエル(男)
- ロシア人美女のマリア(女)
- アメリカ人のスカーレット(女)
- アメリカ人のアレックス(男)
筆者が友人になった皆、やはり共通して「一人旅」である。
そう、これが実に重要なポイントである。
なぜなら──全員、初対面なのに妙に話が合うのである。
そして自然に笑い合い、共通の“あるある”で盛り上がれる。
その“あるある”とは?
「え、こんな高台にホステルあるなんて聞いてないんですけど?(笑)」
これに尽きる。
全員が声を揃えて言った。
いや、叫んだと言ってもいい。
「こんなん、予約ページに書いとけや!!」と。
──高台にあり、そこそこ登ります。正直ちょっとしんどいです──
そういう素直な注意書きが一言でもあれば、こちらも心の準備ができたというもの。
だが、そんな説明はなかった。
予約ページにあったのは、素敵な風景の写真と「自然に囲まれた落ち着いた環境」というふんわりした言葉だけである。
結果、世界各国から集まった孤独な旅人たちが、息を切らせながら同じ道を登り、同じように文句を言い、そして同じように笑い合ったのだ。
これこそが、バックパッカー旅の醍醐味ではないだろうか。
苦労を共にした者にしかわからぬ、謎の一体感──
「丘を登った者だけが見られる世界」が、確かにそこにはあった。
オーストリアでクラシックコンサート
さて、タガログ語を背中に背負いながら外の空気を吸いに出た筆者は、まず腹ごしらえをすることにした。
なぜなら──
この日は、ザルツブルクが誇る世界遺産ミラベル宮殿で開催されるクラシックコンサートに参加する予定だったからである!!
しかも事前に予約済み。
Experience the spirit of the Salzburg music tradition. The M…
モーツァルトの故郷で、ガチのクラシックを生で聴くという贅沢。
気合いしかない。
…が、その時の筆者には、まだ重大な事実が見えていなかった。
そう──
そのコンサートは、思った以上に「フォーマル」な催しだったということを。
とりあえず山を下る。
そう、あの丘の上ホステルから市街地へ行くには、毎回ちょっとした登山がセットになっているのだ。
筋トレやハイキングに興味のある方には是非おすすめしたい宿である。
そして筆者が目指したのは、ザルツブルクの伝説的ガッツリ飯屋、Bärenwirt(発音?知らん)。
この店、とにかく「盛り」がすごい。
肉の山がそびえる料理を前にして筆者はこう思った。
「コンサート前にこの量…服に匂い付かんかな?」
いや、正確には──
食べ終わってから思ったのだが。
遅い。
筆者が注文したのは、見た目の9割が肉、残りの1割がジャガイモと人参という“肉の主張が激しい一皿”であった。
黒い容器に入っていたもの──
それはつまり、筆者の服に吸着するお肉のエッセンスである。
美味しさのあまり無心で完食。
その結果、筆者の衣服は完全に「肉の香りをまとう者」となった。
そしてふと、冷静に考える。
「この格好でクラシックコンサート……行ってええんか?」
ヨーロッパの上品な夜に、肉の香りで突入していく日本人バックパッカー。
これが文化的ミスマッチというやつである。
だが、空腹を満たした代償なら仕方ない。
「お肉の余韻をまとって聴くモーツァルト」これはこれで、逆にレアな体験ではなかろうか。
宮殿のクラシックコンサートにドレスコードは無い?
ミラベル宮殿には思いのほかあっさり到着した。
ただし、敷地が広すぎるがゆえに入口探しで軽く迷子になるという副イベント付きでだったが。
気合を入れて「さあ、行くぞ(`・ω・´)ゞ」などと自分に言い聞かせ、いざ入り口へ。
するとそこには、本日のクラシックコンサートの紹介パネルが設置されていた。
…が。
その写真を見た瞬間、筆者は硬直した。
は!?( ゚Д゚)
ひえぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっ!!!! (;・∀・)
掲載されていた写真は、予約時に見たものとはまるで別物。
当時の予約ページ
当初の印象では、「まあこれくらいなら普段着でいけるやろ、周りにもいっぱい人いるし」というノリだったのに、実際は──
フォーマル界の頂点に君臨するレベルのドレスアップ集団がそこにいたのである。
ちなみに筆者が参考にした某日本語サイトには、こう書かれていた。
ヨーロッパのコンサートは日本人が思っているよりも遥かに庶民的なもので厳格なドレスコードなどは特にない
うん、嘘やわこれ。
たしかに「公式な」ドレスコードは無かった。
だが、空気という名のドレスコードは確実に存在していた。
入口に立つと、スタッフに
「こちらはチケットが無いと入れませんよ?」
と軽くジャブを入れられる。
筆者がサッとチケットを提示すると──
(え…まさかこの人、出席者!?)
という顔を一瞬したが彼女もそこはプロ。
動揺を瞬時に抑え、慌てて態度を改め、
「大変失礼致しました。こちらへどうぞ。」
となったのである。
この時の筆者の服装は、チェスキークルムロフで購入した40Lのデイバッグに、上下長袖長ズボンという──
完全に浮浪者スタイルだった。
別に汚い服というわけではなかったが、モテない理系の大学生が男しかいない謎の講義に着ていく服、と言えばわかるだろうか。
そこからが地獄だった。
コンサートが始まるにはまだ時間があり、筆者は前室に通された。
コンサートホールの隣の前室では、
貴族の末裔みたいな人々が、
コートを脱ぎながら軽やかに白ワインをたしなみ、
スーツとドレスでキメた男女がスマートに会話を交わしていた。
筆者は自分の出立ちがあまりにも恥ずかしくなり、ガヤガヤしている前室は素通りして誰もいない演奏会場の座席に着いた。
演奏会場
そして演奏会場から前室を覗きながら
「誰か…俺と同レベルの民、いないのか……」
と心の中で下界の民を探していた。
──そして奇跡が起きた。
一人、全く空気が読めてない、ドレスコードを完全に無視した赤ロンティを着た頭髪の薄い男性がいるではないか。
扉の向こうが前室(筆者は演奏会場にいる)
その瞬間、心が震えた。
「仲間……いた!!!」
演奏中に写真を撮ることはもちろん不可能なのでここでは出てきた直後にメモした感想を載せようと思う。
(前略)
汗流して丘の頂にある宿に着いて着替えて肉の盛り合わせ的なん食べて、さあコンサートだ!!!
モーツァルトが生まれた街の実力やいかに。
日本で予約してたけど、写真見たら震えたわ( ̄O ̄;)
あれ?思てたんと違う
胸に薔薇つけたタキシードの男性。
真っ黒のドレスを着こなす美女。
素晴らしい演奏が2時間。
In Mirabell Gardens, Schloss Mirabell, Salzburg, Austria.
April 17, 2016
演奏が始まると、筆者は最前列付近の席に座ることになった。
周囲はほぼ全員、着飾った紳士淑女。
にもかかわらず、そこに空気の読めない緑のデイバッグ男が混じっている。
これはもう「空気の暴力」と呼んでも過言ではない。
ちなみに演奏中、ほぼ最前列に座っていた筆者は、大きな楽器(ハープ?)を弾く美しい女性がちらちらこっちを見てくるのをヒシヒシと感じ取っていた。
開演直前に日本人女性3人組も入室してきたが、緑バッグの浮浪者スタイルの筆者は気まずさMAXゆえに話しかけられず、ただうつむき気味に挨拶もせず沈黙を貫いた。
演奏は素晴らしかった。
…が、余韻に浸る間もなく筆者は逃げるようにその場を離れた。
同志たちの待つ、あの丘の上のホステルへ──。
ホステルは友人をつくる場所
ホステルに戻ると、部屋には新しい顔ぶれが揃っていた。
まさに旅の醍醐味といえる瞬間である。
- アルゼンチン人のマニュエル(男)
- ロシア人美女のマリア(女)、
- アメリカ人のスカーレット(女)
- アメリカ人のアレックス(男)
さて、話をスムーズに進めるため、ここで筆者の泊まった部屋のざっくりとした構造図を提示しておこう。
※ABCは二段ベッドを表す。
このように、通路を挟んで左右に2段ベッドが向かい合って並び、筆者は右下のベッドBの下段に位置した。
その筆者の上にマニュエル(アルゼンチン代表)、隣接するベッドAの上段にはマリア(ロシア代表)が寝るという配置である。
一見するとただのベッド配置図に過ぎないが──
この配置が、後に事件を引き起こす引き金となるのだ。
マリアとマニュエルが「上段ズ」として並ぶ形となっている点に注目してほしい。
筆者はこの時点では特に気にしてはいなかったのだが。
だが後ほど、このベッド配置が笑いを巻き起こす鍵になることなど、筆者は知る由もなかったのである──
(続く)
ヨーロッパの公園で筋トレは普通
ヨーロッパにおいて「公園で筋トレする」という行為は、もはや挨拶代わりである。
そこらの一般人のおっさん連中ですら、散歩ついでに鉄棒にぶら下がり、スクワットで膝を壊す勢いでトレーニングしてから家路につく。そんな世界線である。
筆者も例に漏れず、ザルツァッハ川沿いにある鉄棒に向かって一直線。
ここで始まるのは、スイス・ジュネーブで出会ったマッチョ兄貴たちに触発され、旅の最初に立てた目標──
「一日懸垂50回」である。
その時のエピソードがこちら。
3度目のヨーロッパ、2度目の独り旅(2016年)の思い出を振り返る。今回はスイス・ジュネーブでの滞在をサクッと要約し、印象的な出来事をシェアしようと思う。筆者が初めてヨーロッパを独りで旅したのは2014年の初旬。あの時の驚き[…]
言っておくが、これは観光ではない。戦いである。
そして、次なる戦場として選ばれたのが、宿から程近い某公園。
この公園、ただの公園ではない。
筋トレ装備が異常に充実している、まるで「トレーニーの聖地」とでも呼びたくなるレベルの実力派であった。
まず目を引いたのは、ボルダリングウォール。
ちょぼちょぼと出っ張った岩風のアレが、あまりにもナチュラルに設置されている。
ここが特別というわけではない。
ヨーロッパの公園には普通にあるのだ。
「なぜ日本には無いのだ」と嘆いても、誰も答えてはくれない。
さらに、体幹をゴリゴリに鍛えるロープ、懸垂用のはしごバーまで用意されており、これはもう、「筋肉に優しい公園」というよりも「筋肉を追い込む拷問部屋」である。
筆者はそこで、静かにスマホを三脚にセットし、自分の懸垂姿を動画に収めていた。
理由?もちろんフォームチェックのためである。
断じて、見せびらかすためでも、SNS映えを狙ったわけでもない。
…たぶん。
そして、なによりも忘れてはならないのは、公園からの景色。
懸垂していると、ふと目線の先にザルツブルクの歴史的街並みが映り込む。
美しき自然と筋肉の融合──それが、この旅のテーマである(知らんけど)。
ウンタースベルグへ
さて、筋肉をいじめ抜いた後は、いよいよザルツブルク動物園へ向かう。
その前に紹介しておきたい最強アイテムがある──
ザルツブルクカードだ。
このカード、ただの観光パスと思うなかれ。
これ一枚で、ザルツブルク市内の博物館や展示場、さらにはバスで郊外まで行ける交通費まで完全無料!
当然、今回の目的地である動物園の入場料も無料である。
このカード、もはや観光者にとっての魔法の杖である。
持ってない人は魔法は使えない、解散。
Save money like never before! The Salzburg Card gives you fr…
そして、動物園の前にもうひとつ寄り道。
懐かしのウンタースベルグ山へ向かう。
ここは2年前、冬山をこよなく愛する筆者が涙を流しながら登った聖地である。
2年前に訪れた時の写真↓
わたくしは冬山が大好きなのでございます。
ワクワク
ドキドキ
──期待に胸を膨らませながら、バスを降り、ゴンドラ乗り場へ。
・・・。
・・・。
暗い。
なんか張り紙がある。まさか。
「ウンタースベルグ行きのゴンドラは2016年4月11日から5月31日までクローズしております」
は???????
今日4月17日なんですけど!?
クローズして1週間も経ってないやんけ!!!
これは痛恨の一撃。
ポケモンで例えるなら「急所に当たった!」レベルの衝撃。
ウンタースベルグ、また来るからな…
(次は営業日ちゃんと確認してから)
因縁のザルツブルグ動物園
気を取り直して、向かうはザルツブルク動物園。
ここは筆者にとって特別な場所。
なぜなら、人生で初めてライオンの置物に腰を抜かされた場所だからである。
「置物ごときで腰を抜かすな」と思ったそこの君。
ぜひ、現地でこのライオンに出会ってから言ってほしい。
その時のエピソードがこちら。
2014年の驚きと発見の連続だった1ヶ月間を振り返りつつ、今回はオーストリアの古都ザルツブルク滞在について語る。今思えば、右も左も分からない状態でよくそんな大胆な決断をしたものだが、この旅が人生において多くの発見や学びをもたらしたこ[…]
あの時、何も知らずに園内を歩いていた筆者。
ふと目を上げた瞬間、奴がいた──
「うわあああああああああ!!!!!」
まさかの置物にガチ悲鳴。
2年前と変わらず、この動物園の経済状況がとっても気になる。
やはり2年前と何ら変わっていない。
奴はまだそこにいた。
動物園の運営が大丈夫なのかは分からないが、このライオンだけは絶対に残さねばならぬ。
もはやこの園の守護神である。
やはり外国人はいい意味で陽気な人が多い
ザルツブルク動物園を後にし、街へ戻って名物のシュニッツェルを平らげた。
さすがに歩き疲れたのでホステルへ戻る。
途中、「これは一体…?」という謎設備を発見。
汚れた自転車の車輪を洗うための水場と思われる。
実際にそう使ってる人がいたから、たぶんそれで合ってる。
ザルツブルクは土の道もちょこちょこあるからだろう、こういう細かいインフラがヨーロッパってほんと優秀である。
ホステルに戻ると、見慣れた顔ぶれ──四人の同志たちが揃っていた。
のんびりくつろぎつつ、
「まあ、明日この街を去るしな〜」とセンチメンタルモードに入ろうとしていた、その時──
突然アメリカ人のアレックス(おじさん)が猛ダッシュで飛び込んできた。
「おい!!下でビール飲み放題やってんぞ!!!食事代として8ユーロ(約1,000円)払ったら、ビール何杯でも飲んでいいって!」
別に、そんなにビールが好きなわけでもないが、こういうイベントは逃すわけにいかぬ。
というわけで飲みます。
飲みます。
もはや我らは運命共同体である──!
写真の並びで紹介しよう:
- アレックス(アメリカ)←陽気なおじさん
- マリア(ロシア)←美女
- マニュエル(アルゼンチン)←情熱
- スカーレット(アメリカ)←ユーモアたっぷりのしっかり者
- そしておれ(日本)←空気読む係
欧米人たちは基本テンションが高く、良い意味でぶっ飛んでいる。
そのノリが嫌いじゃない自分も、すっかり場に馴染んでいた。
欧米人のナンパ
この夜筆者は、映画とかでよく見る欧米人のナンパの強引さを垣間見た。
さて、事件は起こった。
宴もたけなわになり、みんなが上の階のベッドに戻る雰囲気になったころ──
筆者と同年代のマニュエルがやってきて、言った。
「なあ、マリアを誘って三人でパブに行こうよ~~~!!!!」
もうね、めっちゃしつこい。
こっちは別にマリアに気があるわけでもないし、
ビールもすでにたらふく飲んだし、
できればもう歯磨いて寝たいくらいなのだが(既に23時超えてた)
しかし彼の熱意が異常。
話しているうちに、彼の本音が飛び出した。
マニュエル「なあ、マリアを誘って三人でパブに行こうよ」
筆者「えーパブ?おれ行ったこと無いし別に興味もないわ~。酒も結構飲んだやん」
マニュエル「そんなこと言わずに、さあ!行こう行こう!」
筆者「いや、そんなん2人で行って来いよ!ってかマリアも行くかわからんやろ?」
マニュエル「・・・。わかった、本当のことを言うとな。おれマリアのこと凄い好きになっちゃった…だからどうしてもこれで終わりにはしたくない。協力してくれ!!」
筆者「まあそういう事なら協力はするけど、どうすんのよ?」
マニュエル「悪いけどまずRYOがマリアをパブに行こうって誘って。で、OKなら「おー、マニュエルも行こうや」と誘ってくれ。もしあかんかったらおれが何とかサポートするから」
(あーめっちゃ保身するのね、あなた。まあおれはマリアに恋愛感情無いから余裕で誘えるけどね)
筆者「でもお前近くのパブってどっか知ってんの?昨日着いたばっかしやろ」
マニュエル「実は今日の午前中ずっと探してて、良さそうな所一軒見つけてん」
筆者「そこまで準備してんのに誘うんは俺かい…まあいいけど」
筆者「あーマリア!どうせ暇やろ?これからパブでも行かへん?」
マリア「え、、いや、私もう寝よっかなーと思ってて。やめとく、ありがとうね」
(ほ ら な !)
だが氷河とカオスと情熱の国から来たアルゼンチン代表のマニュエル氏は全く諦めなかった。
マニュエル「えーパブ行くん?めっちゃ楽しそうやん!!マリアーーー行こうよーー絶対に楽しいって」
(マニュエル、あとは任せた)
マニュエル「行こう行こう!!さ、行こう!せっかく知り合ったんだから、ね?行こうよ!絶対楽しいって!早く早く、ほんま行くしかないっしょ!ノリ悪いじゃん、ねーーー」
この粘りに、マリアもついに折れた。
マリア「うん、じゃあ三人でね。ちょっとだけね。」
マニュエル、天を仰いで叫ぶ。
「おっしゃーーーーーーーーーーーー」
筆者の心の声(いや、結局おれも行くんかい)
といった具合で、結局筆者も行くはめに。
字面で読むと「いやいや、そんなおもろい展開もう最後まで見るっきゃないでしょ」と思うかもしれないが、ビール祭りを解散したのが既に夜23時過ぎである。
昼は筋トレもしていたので、早い話まあまあ疲れていたのだ。
そしてマリアが、マニュエルに訊ねる。
「でも、この時間から空いてるお店って…どこか心当たりあるの?」
氷河とカオスと情熱の(…以下略)マニュエルは堂々と言い放った。
「あーそれがね、今日のお昼に散歩してたらたまたま良さそうな店を見つけたんだ。」
18禁のパブへ
※性的な描写はありませんので安心して読み進めてください。
さて、ホステルを出て山道を歩くことおよそ10~15分。
完全に筆者を置き去りにして、マリアにずっと話しかけているマニュエル君。
左マニュエル、右マリア
到着した。
外観からしてヤバい雰囲気ぷんぷん。
「18禁」って書いてあるやん……完全に普通のパブではない。
そんな場所に、
- マリア(初対面)
- マニュエル(恋するアルゼンチン男)
- 筆者(巻き込まれ日本人)
の3人で突入!
では、先にパブを出た後の感想を見て頂こう。
(前略)
ルームメイトのアルゼンチン人のマヌエルが同じ部屋のロシア美女マリアを落としたい
めっちゃ協力した挙句頼まれしゃーなし、夜中0時前に変なパブに3人で。
そこで、お酒の勢いもあって2人で踊ったりいちゃつき始めた。最終的に、その日初めて会った2人がキッシングーーー
俺、「Ohh it’s great boy!!!」とか言われてひたすらおばちゃんに耳とか舐め回された。
地獄まじで地獄。
さすがに唇だけは死守しました。わしゃ女か!パブ…恐ろしい。
俺、爆音でかかってるロックミュージックに合わせて、何となく体揺らすのが限界。
パブでもしっかり日本人出
本当にもう二度と行きたくないっす。
Apr 19, 2016, 5:01 PM
中では、マニュエルとマリアが酒の力でテンションぶち上がり。
(既にビール祭りでめちゃくちゃ酔ってはいたが)
踊る!笑う!イチャつく!
そして…
キッス♡
パブの中の様子
一方その頃、筆者はと言うと。
筆者はバーカウンターのくるくる回るハイチェアに座りながらマニュエルとマリアの動向をぼんやりと眺めていた。
すると突然、よくわからんおばちゃんが、筆者の隣のハイチェアに座ってきたのだ。
え、誰?( ゚д゚)
そして気まずさを感じながらも会話をすること約10分。
徐々におばちゃんのボディタッチが激しくなり、筆者のほっぺにキスをしたり耳を舐められたりしていた。
地獄
まじで地獄。
めっちゃ嫌なのに拒否するのがコワイ。
交通機関で痴漢される女性が「やめてください、この人痴漢です!!」と言えない気持ちが少しわかった気がした。
これは完全に不同意性交等罪である。
そしてしばらくすると、そのおばちゃんが、ある(本物の)ブロンド美女を呼び、なぜか筆者の隣に座らせた。
突然、極度の緊張が筆者を襲う。
筆者とブロンド美女のイメージ(画像生成AIにて作成)
「ふぁっっっ!!!????汗汗」
一瞬、時間が止まった気がした。
彼女のシャンパンの泡のような髪が、かすかに光を弾き、ほんのり甘い香水の匂いがふわりと鼻をかすめる。
その瞬間、筆者の心臓がドン、と一拍強く跳ねた。
「……っ!」
喉が渇く。呼吸が浅くなる。脳内は真っ白。
普段なら何気なく交わすはずの会話の一言さえ、どこかに逃げていった。
突如として襲いかかる、極度の緊張。
それはまるで、何の準備もないまま、ステージの中央に立たされたような感覚だった。
ブロンド美女を前に完全にフリーズしてしまった筆者に気付いたそのおばちゃんは、筆者の名前や出身国、先ほど会話した内容をブロンド美女に軽く紹介した後に
「あとは若いお二人だけの時間ね♡」
みたいなことを言い残して消えていってしまった。
そこから本当の地獄が始まった。
相手の名前を聞いたり趣味を聞いたりしてみたが、今はなにも覚えていない。
人間、緊張し過ぎると本当に記憶になにも残らないらしい。
2人の会話は全く盛り上がらず、自然にフェードアウトしてったその女性。
そらぁ、できるもんなら口説きたいけども!!
そりゃそうだ。できるものならな。
しかし生物としての完成度が桁違いすぎる。
ライオンと話しているような感覚だった(←常に緊張しているという意味で)
※余談だが、上画像のブロンド美女のモデルは筆者が「世界一の美女」と信じてやまない"Nastya Kusakina"ちゃんである。
彼女と出会って以来、筆者の「美女像」は、ナスティアによって完全に塗り替えられてしまった。以降、他の美女が目に入っても「クサキナ成分が足りない」とすら感じてしまう重症っぷりである。
美は時代を超える。いや、ナスティアは次元を超えるのだ。
しかし、ちょっと聞いてほしい。
中学校の英語の授業で、果たして一度でも「女性の口説き方」を学んだ記憶があるだろうか?
いや、断じてない。
私の脳内に今も残るのは、
「This is a pen.」
「Hi I’m Michael, nice to meet you, Demi.」
「How long does it take from here to the central station?」
……誰やねん、マイケルとデミって。
中央駅への所要時間なんて、口説く以前に道案内やんけ。
これらの英文が、人生のどのタイミングで恋愛の戦場において役に立つというのだ?
「This is a pen.」で相手の心が動いたなら、それはたぶんその人が文房具フェチだったというだけの話である。
英語の教科書にはロマンスが足りない。いや、完全に欠如している。
「いつか使うかもしれないから」と、気を利かして少しくらい甘ったるいセリフを教えてくれても良かったのに……
- 君の笑顔に、今日の天気も嫉妬してるよ。
- 目が合った瞬間、時間が少し止まった気がしたんだ。
- 君がいるだけで、この街が映画みたいになる。
- 声を聞くだけで、知らない音楽が胸に流れる。
- 一緒にいると、何もない日が特別になるんだ。
- 君の名前、心の中で何度も呼んでる。
- その瞳に、ぼくの未来が映ってたらいいのに。
- 出会ってしまったね、って誰かに言いたくなるんだ。
- 君の「またね」で、一日が明るく終わる。
- ただ「好きだよ」じゃ足りないくらい、君が好き。
義務教育でこれくらいのフレーズは教えてもらわないと!!
いや、別に本気で口説くつもりなんてない。
でも、「おっ、このセリフ、意外といけるやん?」って思わせる一言くらい、英語の授業で出してくれてもよかったのではないか?
我々は、英語の恋愛戦においては無防備すぎる。
頼むから、次の学習指導要領には「口説き表現基礎」くらい盛り込んでくれ、日本の英語教育よ。
さて、その後である。
筆者はバーカウンターに腰を下ろし、グラス片手に静かに店内の様子を観察していた。
爆音で鳴り響くロックミュージック。暗がりの中を踊り狂う人々。まるでここだけ時空が歪んでいるかのようなカオス。
そんな中、突如として現れたのが、酔っ払いの「トム・クルーズ似の男」である。
目が合うなりニヤリと笑い、「一緒にナンパしようぜ!」と軽やかに言い放った。
知らんがな。
筆者はその瞬間、悟った。この戦場では身体ではなく、“魂”で戦うしかないと。
体力も気力も、もはや限界。しかしここで崩れ落ちるわけにはいかない。
己の誇りを支えるのは、ほとんど意地であった。
一方で、我がルームメイトであるマニュエルと、その想い人マリア。
お酒の勢いもあり、2人は完全にゾーンに突入していた。
踊って、笑って、イチャイチャして、気がつけばチューの嵐。
いや、キスというよりむしろ”吸引”である。
思い出していただきたい。
彼らは本日のお昼に初対面である。
初対面とは何だったのか。
信頼関係とは、いったいどこに置いてきたのか。
パブ直後の二人
良かったね、マニュエル君?
君は愛を掴んだ。筆者は耳を舐められた。それが今夜の成績表である。
あーあ、フラれちゃった(笑)
パブからの帰り道、マニュエルの肩にはマリアの頭が寄り添っていた。
まるで「旅先で恋が始まる系ヨーロピアン・ラブコメ」のワンシーンである。
ダラダラと坂道を登り、ホステルの目の前の美しい夜景が広がる広場に到着した。
フェンスから見える美しい夜景を前にマニュエルは筆者に言った。
「ちょっと夜景見たいから、RYOは先に中に入ってて?」
と。マリアも完全に同意のご様子。
はいはい、よろしい。存分に青春してくれたまえ。
筆者だけホステルの部屋に戻った、までは良かったのだが。
しかし、世の中には知らなくてもよいことがある。
そしてそれは、まさに“ホステルの窓から見えるルームメイトの恋模様”が該当するのではないだろうか。
部屋の窓から二人の様子がバッチリ見える。
筆者は、歯を磨きながらぼんやりと窓の外を眺めていた。
するとどうだ。マニュエルとマリアの2人が、夜景をバックに、ひたすらにチューを繰り返していた。
まるで映画のワンシーンかと思ったが、残念ながら筆者は観客席ではなく、被害者席である。
その後、シャワーも浴び、二人はほっといてそろそろ寝ようかと2段ベッドの下段に横になった頃、件の2人が帰ってきた。
ここで部屋の再確認をしておこう。
6人部屋に2段ベッドが3つ。筆者は下段、そしてマニュエルとマリアはその真上。
上段である。何度でも言おう、上段である。
2人は当然のように一緒に梯子を上り、ベッドへと滑り込む。
おそらく筆者はもう寝ていると思われていただろうが、筆者の目はギンギンに冴えていた。
理由は単純。ドミトリーにありがちな、安価な二段ベッドの上段というのは、少し寝返りを打つだけでも音が下段にまで筒抜けになるという構造的欠陥を抱えているからだ。
音が下に「こんにちはあぁぁぁぁぁ!!!!!」してくるのだ。
さらに、なぜか心臓が少しドキドキしている自分もいた。…なぜだ。
まもなく、上から聞こえてくる甘ったるい英語でのこそこそ会話──
そして、約10分間にわたるイチャイチャタイム。
だが、ついにその時は訪れた。
~10分ほどのイチャイチャを経て~
(小声で)
男「(ゴソゴソ…ゴソゴソ…)←おそらくマリアの服を脱がそうとしている」
女「やっぱりダメよ!こんな状況ではあり得ないって。」
男「でも、ほら、ぼくのアレがもうこんな感じになってるんだけど…」
女「期待させちゃってほんとゴメンだけど、やっぱりダメ!!」
男「君が好きなんだ、もう我慢できないんだ!!!」
女「それでも無理、さすがにダメ。」
男「え…でも、マジで君としたいぃぃぃ…。」
女「ダメなものはダメ!もう寝ましょ」
男「・・・(´Д⊂グスン」
男女の情事直前という、あまりにも生々しい空気感。
そして舞台は、他人との物理的・精神的距離がゼロに近いという、ドミトリーという特異空間。
そんなシチュエーションで繰り広げられる、甘ったるく湿った声のトーン。
英語で交わされるコソコソ話は、なまじ意味がわかるだけに、想像力という名のアクセルを踏ませてくる。
正直に言おう。
筆者も、心臓の鼓動がいつもより一拍早かった。いや、三拍くらいか。
「なにを聞かされているんだ、自分は」と内心ツッコミながらも、耳は勝手にダンボである。
聞く気はない、でも聞こえる。
むしろ聞こえすぎる。
しかも、すぐ上からだ。
これはもう、ただの盗み聞きではない。ほぼ参加である。
筆者、まさかこんな形で情事の前戯に巻き込まれるとは思ってもみなかった。いや、傍観者ではあるが、精神的には関与度が高い。
ドミトリーとは、かくも人間観察の最前線であり、プライバシーという概念が溶ける実験場でもあるのだ。
マリア、ナイス判断である。
さて、ここで筆者のツッコミタイムである。
マニュエルよ、もし本気で「最後まで決める」気だったのならば、なぜホステルなどに戻ってきたのか?
あのホステルまでの帰路が、まるで小旅行のようなハイキングルートであることを、まさか忘れていたとは言うまい。
いや、忘れていたのだろう。
酔いと期待と、マリアの横顔にテンションが爆上がりしていたのだろう。
わかる。わかるぞ。
だがな、それが命取りである。
あの道のりを歩けば、酔いなど一瞬で冷める。
加えて空気はひんやり、空は満点の星。
感傷的になるには十分すぎる環境だ。
マリアも途中で気づいたに違いない。
「え、これ冷静に考えたらヤバくね?」と。
結果、シャワーへ。
マニュエルは静かに昇天──いや、就寝。
そして筆者。
もしこの身がマニュエルの立場であったなら、テンションが最高潮に達している間に事を済ませていた──
外で。そう、アオカ…。
……と、いま危うく倫理コードに触れそうなことを口走りかけた。
危ない危ない。
この発言は、思考の中にのみ留めておくべきである。
ともかく、笑うしかない夜であった。
お別れ
翌朝、マニュエルと筆者は昼の電車で次なる目的地へ向かうため、宿を少し早めに出ることにしていた。
二人だけの静かな朝食タイムである。
(全て知っているが)あの夜の顛末が気にならないはずがない。
筆者「昨日の夜どうなった?夜景見てから・・・?(^ω^)」
(そう、筆者は寝ていたことになっている)
マニュエル「Nothing(-_-メ)」
筆者「キスまでしてNothingでは無いやろ!!?なあ、言ってやー」
マニュエル「本当にNothingやねん。。。。ごちそうさま。出る準備しよ」
その表情は、シリアスそのもの。
かなり落ち込んでいるマニュエル。その気持ちは痛いほどわかる。
なにせ、彼は結構本気だったのだ。
旅先の恋ほど熱く、そして脆いものはない。
朝食後、他のメンバーに挨拶し、筆者とマニュエルの二人だけでホステルをあとにした。
グッバイ、ドミトリー。グッバイ、マリア。
おれがマリアにどれだけ惚れたかわかるか?っていう話をしている(笑)
マニュエルはずっとマリアの話をしていた。
筆者も、ハルシュタットで別れたニーナのことで少し心が沈んでいた時期である。
お互い軽く傷心、いや、片方は重症。
失恋談義に花が咲き、再び意気投合。
ただし──
マニュエルは「ガチ失恋」である。
筆者は違う、筆者はまだ余裕を残していた。
……にもかかわらず、同じ目線で語ってきてるのが若干気に入らない(笑)
そうして、落ち込みながらもホーエンザルツブルグ城を観光することにした。
ホーエンザルツブルグ城
この城、12世紀後半に建てられた歴史的建造物であり、ザルツブルグのシンボル的存在でもある。
城壁からの景色は、心をふっと軽くさせてくれる。
ようやく、マニュエルの表情にも笑顔が戻った。
その後、2人でザルツブルグ中央駅まで移動。
電車は違うため、そこでお別れとなった。
「またな」
簡単な一言と、少し長めのハグ。
短くも濃い時間を共に過ごした相棒との別れは、旅における一種の通過儀礼でもある。
マニュエルよ。
忘れるな。お前はちゃんと「Nothing」を経験したのだ。
それはそれで、貴重な思い出である。
スイスのマイエンフェルトへ
ザルツブルクを発ち、次に向かったのはスイスの小さな町、マイエンフェルト。
そう、あのハイジの町である。
列車がアルプスのふもとに近づくにつれ、風景はまるで絵本のように変わっていった。
広がる草原、カウベルの音、澄んだ空気。
本当に「ハイジが走ってそうな山」そのものだ。
ぼんやりしていると、急に「ペーーーータアァァァァァ」と呼ぶ声が聞こえた気がした。
自然は雄大で、静寂すらも心地よい。
ハルシュタットやザルツブルクでの切ない別れも、この町の空気が優しく包み込んでくれる。
旅は続く。
次はどんな出会いがあるのか。
少しだけ期待しながら、筆者は静かな山あいの町を歩き始めた。
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