【ヨーロッパ旅行記】フランス、モンサンミッシェル【7/10】

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2015年のヨーロッパ旅、親友と一緒に訪れたフランスの世界遺産モンサンミッシェル

美しい街並みと歴史的な建物が立ち並ぶこの都市で、私たちの旅はどんな思い出を作り上げたのだろうか。

街を歩きながら感じたこと、出会った人々、そして忘れられない出来事を振り返りながら、あの日々の思い出をつづっていこうと思う。

前回の記事はこちら。

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旅行記 フランス パリ

モンサンミッシェル滞在記

干満差が激しいモンサンミッシェルのあるサン・マロ湾。

この地の特異な魅力は、何と言っても島が海に浮かぶ姿だ。この姿は、まるで時空を超えたかのような幻想的な風景で、古くから多くの人々を魅了してきた。干潮時には大地が現れ、歩いて島に渡ることができ、満潮時には一瞬で島が孤立したかのように浮かび上がる。その不思議な光景を目の当たりにすることで、この地の特別さを肌で感じることができる。

モンサンミッシェルは、その神秘的な立地と魅力的な歴史を誇りにし、時代を超えて訪れる者を引き寄せ続けている。それも、その風景が持つ不安定さゆえだろう。どんなに美しくても、やはり自然の力には勝てないのだという現実を思い知らされる。

モンサンミシェル手前の駅『レンヌ』

パリからレンヌ(Rennes)に到着したわけだが、ここから面白いことが起こる。

実は、この「レンヌ」という駅が、後々面白い伏線になるのだ。というのも、翌年の春にスイスのジュネーブからヨーロッパ入りすることになったのだが、空港から電車に乗り、レマン湖沿いを走るその車窓をぼーっと眺めていた時だ。ここまでは順調だったが、油断して寝過ごしてしまったのだ。

目が覚めた瞬間、目の前に広がった景色とその時に見えた停車駅の名前に、全身が硬直した。

停車駅は「Renens(ルナン)」。

筆者の脳内で「Rennes(レンヌ)」というフランスの駅名と、微妙に似た名前を見て、

「ヤバい!!スイスのジュネーブから寝過ごしてフランスのレンヌまで来てしまったぁぁぁ!」

と、心臓がバクバクし始める。

Rennesとは微妙にスペルが違うがパニックに陥っていた筆者は気付かない。

「うわぁぁぁ、初日からまた野宿かよ!?どうすんだよ!」

と、心の中で冷や汗が止まらなかった。

まあこの地図見たら寝過ごしたのレベルでは無い、寝ている間に乗り換えしないとたどり着けない距離である。

だが、何とか乗り換えを終えて、無事にジュネーブ駅に到着。その日予定していた宿にも無事にカムバックできたんだが、この一瞬の恐怖と焦りは、今でも鮮明に記憶に残っている。

その話はまた来年編で書こうと思っている。

国際電話はそんなに高くない!?

レンヌ駅からはバスでモンサンミッシェルへ向かうことにした。バスに揺られること約1時間、その間に親友が急に国際電話の料金について聞いてきた。

実は彼、㋐大学の卒業試験の結果㋑就職採用の結果という超重要なダブル結果待ち状態。つまり、結果発表を大学に問い合わせるために国際電話をかける必要があったのだ。

だが、筆者はあまりそういうことに詳しくない。そこで、適当に答えることにした。

「うーん、フランスから日本に電話するのって、5分で5,000円くらいするんちゃう?」

全く根拠もなく適当なことを言ったわけだ。

親友はというと、全く疑うことなく、筆者の言葉を信じて

「そっか、それくらいか。まあ、覚悟はできた、うん!」

と、完全にビビらせてしまったわけだ。
彼はその時、結果発表に対する緊張感もあって、どうしても国際電話をかけなければならない状況だった。

ところが、実際に彼がかけた国際電話は、5分ほどで数百円だったらしい。

「え、やっす!」

5分で数百円を安いと思ってしまう自分に気づいて、ちょっと変な感じだった。いや、でも実際、あんなにビビらせておいて、完全に知ったかぶりしたのがバレた。

「まあ安い方やったからええか」と心の中で納得しつつも若干の恥ずかしさが残る瞬間だった。

工事中のモンサンミシェル

モンサンミッシェルに到着したのは、バスに乗ってから約1時間後。目の前に広がるその姿に、思わず息を呑んだ。目の前の760mの橋を歩いて渡ると、あの有名なモンサンミッシェルの集落に辿り着く。

さて、モンサンミッシェルの歴史を詳細にしていくと長くなってしまうので、ここでは簡潔に要点だけをまとめてみる。

モンサンミッシェルは歴史的に世界情勢に翻弄されながら修道院、監獄、要塞を経て再び修道院に戻りました。

≫ モンサンミッシェルのゆるふわ歴史(クリックで開く)

➀ミカエル大天使のお告げで礼拝堂を建てる

歴史を遡ること実に1,300年以上、西暦708年に当時の司教(カトリックの聖職者)がミカエル大天使(=神)のお告げを聞いてまずは礼拝堂を建てる。

それ以降も増改築を繰り返し13世紀には現在の外観に落ち着く

②キリスト教の二大巡礼地の一つになる

その後、その礼拝堂はスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラと並んでキリスト教の二大巡礼地になる。

ヨーロッパ ブログ
筆者
巡礼者はいつの時代も、交通の便が悪い難路を頑張って歩ききった者のみが到達できるような、早い話へんぴな場所に行きたがるのである。

➂しかし、礼拝堂までたどり着けない巡礼者が続出

世界中から巡礼者が訪れるものの礼拝堂に辿り着けない者も大勢いた。

なぜならここサン・マロ湾は世界第2位の規模の大潮が起こる奇跡の土地だから。

湾を渡り始めても途中で満潮になればジ・エンド。

干満のタイミング次第では人生が終了する。

※世界で最も潮の満ち引きが大きいのがカナダのファンディ湾で、干満差は15mにも及ぶ(動画あり↓)

ヤバすぎる・・・。

➃安全対策による景観破壊

巡礼者が安全に礼拝堂までたどり着けるように堤防&道路を作り始める。

しかしその工事のせいで大量の土砂が溜まって世界遺産の美しい景観がぶち壊される。

ヨーロッパ ブログ
筆者
つまり、満潮でも完全な島にならないってことである。

➄再び元に戻すプロジェクト始動

そして逆にモンサを再び完全な孤島に戻すために工事を開始。

2015年に工事が完了し(橋の設営&堤防道路の撤去)、2015年3月21日に世紀の大潮と呼ばれるとんでもない干満があった。

え、筆者たちがモンサを訪れたのが2015年3月8~10日なので…世紀の大潮の10日前かい!!!

(いやいや、事前に知ってたら日程変えてたって。)

なんと次回は2033年でその次は2051年らしい。

前回は1997年と世紀の大潮は18年に一度発生するらしい。

その3月21日の夜の潮位はモンサンミッシェル周辺で14mを超え、理論的な最大値が120の潮位指数が119となる過去最大級の高さとなった。

≫ 折りたたむ

まあ、結論。

事前に下調べせずに行程組むのはやめておこう。

西洋の奇跡、モンサンミッシ・・・え?

モンサンミッシェルを目の前にした瞬間、親友とまず真顔で交わしたのが、「なんか、思ったより絶景ちゃうな」という言葉だった。

なぜなら事前に見ていた写真が神々しくて、これ以上ないくらい美しくて、まさか現実がこんなに地味に見えるなんて思わんやん!って感じである。

あれ、もうちょっと幻想的な景色を期待してたんやけど…ちょっと拍子抜け。

それだけじゃない、タイミングも最悪だった。

なんと、2週間後には1997年から18年ぶりに「世紀の大潮」が発生するという衝撃的事実。うん、たしかにモンサンミッシェルって言うと、海に浮かぶ孤島みたいなイメージやけど、あんた、18年ぶりに本当に孤島になるんかい!って。まじでタイミング悪すぎ!これも含めて、まさに運命のイタズラ。

そもそも工事中なんて知らんかったし、

世紀の大潮が10日後に来るとかも全く知らんかったし、

「橋なんてあるん?」って感じやったし、

毎日孤島になると思ってたし。

結局、ほぼ何も調べずに来たってことやな(笑)←いや、笑えん。

フランス、モンサンミッシェル

まあ、でも歩いて渡る橋は思ったより悪くなかったけど、結構長いし、バックパック背負って往復するのはなかなかの地獄だった。

疲れがどんどん溜まっていく感じ、まじで。

で、帰る頃には島内をちょっと歩いて、ちょっとだけモンサンミッシェルを楽しんだって感じ。

最後には馬車もあるけど、それに乗るには有料なので当然無視。

結局、カモメと一緒に歩いて帰ることにした。

カモメの無駄な高飛車感がもう、心の中でツッコミ入れまくりであった。

長年の親友でも一緒の旅はご用心

長年の親友といえども、24時間一緒に過ごしていると、ストレスが溜まるのは否めない。これから家族や友人、恋人と旅行を計画している人、絶対に気をつけた方がいい。

特にイラついたのが、親友の「ちょっと一服」と言ってタバコを吸うあの数分間。ほんの2~3分だが、あれが地味にストレスだった。

草むらで待望のはぐれメタルに遭遇し「キターーー」と思ったものの、一撃くらわす前に一瞬で戦線離脱された時くらいのストレスである。

筆者、待ってる間に何もできん。

たとえば「明日は9時に出発な」と言った翌朝のことである。

筆者:1時間前にアラームかけてうだうだしながらも完全に起きて顔洗って歯磨いて全てを用意したうえで出発前にはちょっとのんびりしたい。

親友:約束の時間5分くらい前に起きて全てを超高速で済ましてちょっとだけ、微妙に1分くらいだけ遅れて準備完了

筆者 「く、くじ出発って、言ってたよな?」と言いたくてしょうがなかったが、まあ、旅行中やし、あんまりシリアスにはしたくなかった。でも腹が立った。こういう細かいところでイライラするもんだ。

親友と言えども、やっぱり24時間一緒にいると、こういう小さな違いがジワジワ来るものである。

皆さんも、旅行中は気をつけるように。

広大な工事現場にしか見えない

翌朝、再びあの760メートルの橋を渡っていると、ふと足元に広がる景色が目に飛び込んできた。湿地帯のような泥の海と、干上がってひび割れた大地。

そのコントラストが織りなす幾何学模様は、どこか気持ち悪いようで、でもなぜか胸に迫るものがあった。理屈ではない。
感情が勝手に動いてしまう、あの不思議な感覚である。

しかし、である。

おい、誰だ。
「絶景」って言ったのは。

思わずラインのトーク履歴を遡って犯人捜しをしてやろうかと思うくらい、「え、これが絶景…?」と目を疑った。いや、確かに悪くはない。

だが、ユンボが堂々と風景の一部として入り込んでるこの景色に、「絶景」なんて称号を与えていいのか?ユンボ映え?ないない。

島の入り口には満潮時刻が表示されていた。おそらく、「この時間以降、橋は水没するかもしれませんよ〜」という、それとなく恐怖を煽る優しい警告である。

この日は、大聖堂内のパイプオルガンをどうしても見たいという親友の一言で、内部に入ることとなった。個人的には外観だけでお腹いっぱいだったのだが、まあ仕方ない。

友情とは、時に無償のパイプオルガン鑑賞を意味するものなのである(知らんけど)。

やはり欧米はフライドポテトとソーセージ

モンサンミッシェルでの昼食タイム。

筆者が選んだのは、フランクフルトとフライドポテトの鉄板コンビ。たしか合わせて4ユーロ程度だったはずである。

観光地価格を考えれば、まあ妥当なところだろう。

すると隣の親友がぼそっとひと言──

「お前、リッチやな……」

彼が手にしていたのは、1個1ユーロくらいの簡素なハンバーガー。それも2つ。

コスパ重視の完全節約モードである。

いや、旅の途中とはいえ、そこまで削る?

と、その時だった。ふと目の前に小鳥が一羽、ちょこんと佇んでいた。見上げるようにこちらを見つめている。

すると急に優しさスイッチONの親友。

「そうか、お前も腹減ってんのか……」

自分のハンバーガーの端っこをちぎって、そっと差し出す。小鳥と目を合わせながら、こんなセリフを放った。

「お金ない者同士、仲良くしよーぜ」

いや、知らんけどな。小鳥はお金とかそういう概念持ってへんから。

とはいえ、旅先でのこういう無駄に人間くさい瞬間が、あとでじわじわ記憶に残ったりするものである。

非日常 VS 質

ヨーロッパのアイス、あれはもう別格である。

何なんだあの美味さは。非日常の中にいる高揚感のせいなのか、それとも本当に素材から製法まで全てが違うのか…

いや、たぶん両方だ。
口に入れた瞬間、空気の軽さからして違う。舌触りもまろやかで、ミルクと素材の主張が絶妙に調和している。

日本のアイスも確かに美味しい。でもヨーロッパのそれは「これはもはや芸術か」と思わされる瞬間がある。

この「ヨーロッパのアイス最強説」に並ぶのが、密かに提唱したい「ヨーロッパの中華料理、日本より美味い説」である。

いや、ほんと冗談抜きで。過去に何度もヨーロッパ各地の中華料理屋に入っているが、どこもハズレがない。
なんなら「え、なんでこんなに美味いの?」と驚くレベルである。

炒飯ひとつにしても香りの立ち方が段違いで、餃子もサクッとモチッと、そしてジューシー。

料理が来る前の期待値が低い分、初手で裏切られた時のインパクトがすごいのだ。

「ごちそうさまでした……」の口が「もう一皿いけるかも」に変わったことが一度や二度ではない。

アイスと中華、なぜかヨーロッパで花開く謎のグルメ二大巨頭である。

モンサンミッシェルの渦巻きの意味

モンサンミッシェルを歩いていると、そこかしこで目に飛び込んでくるのがこの渦巻き模様。

筆者はというと、意味もわからぬまま勢いでこの形のネックレスを購入。

「なんか旅っぽいし、なんか神秘的やし、よーわからんけどとりあえずこれ買っとこ!」

みたいなノリで買った。

だが、後に現地の人に聞いて驚いた。

「その渦巻きは、かつてここ(モンサ)を目指した巡礼者たちを呑み込んだ大潮の流れ。モンサンミッシェルを象徴する形なんですよ」

え、マジか。

この優雅な曲線には、そんな禍々しい背景があったとは…。

「軽い気持ちで首にかけてたが、そんなドラマ背負ってたんかお前…!」

ネット情報ではなく、生の声でそう言われたのがまたリアルで重たい。
たしかにあのサン・マロ湾の大潮、干満差が激しすぎて海そのものが生き物みたいに見えた(←見てないけど)

モンサンミッシェルが「自然の驚異と信仰の融合」なんて呼ばれる理由が、こういうところにあるのかもしれない。

モンサンミッシェルのふわふわオムレツ

モンサンミッシェルに来たなら、絶対に外せない名物がある。

そう、それがふわっふわのオムレツである。

そして筆者は声を大にして言いたい。

これは、人生トップレベルで美味かった。

いや、もう先に結論を言っておくが――
食べて後悔ゼロ、むしろ一口で天に昇る系の旨さだった。

外側は軽く焼き目がついてしっとり、ナイフを入れた瞬間にふわっと崩れる中身は、まさにメレンゲそのもの。
そこに火が通って、卵本来の甘みと香ばしさが立ちのぼる。
鼻腔をくすぐる芳香、口内で溶ける食感、もはや料理ではなくアートの領域である。

「んん~~っ…これは…幸せという名のオムレツ…」

お値段はコースで確か25ユーロ…いや30やったか…もしかすると35?
すまん、ちょっと記憶がポンコツで曖昧だが、そのどれであっても文句なしに価値アリだったのは間違いない。

その伝説のオムレツを食べられるのがこちら↓

LA MERE POULARD CAFE(ラ・メール・プラール・カフェ)

「La」は英語の “The”、「Mere」は「母」や「婦人」、「Poulard」は人名なので、つまり「プラールおばさんのカフェ」という意味になる。

…どこかビアードパパ的な雰囲気を感じるのは気のせいか?

ちなみに2年後にまたモンサを訪れ、別の店でふわふわオムレツを頼んでみたが――

全ッッ然おいしくなかった(涙)

よって、この店以外はおすすめしない。
もう一度言うが、「ラ・メール・プラール・カフェ」で食べるべし。

「ちなみに、ステマでも案件でもない。ただのオムレツファンである。」

再び訪れたラ・メール・プラール

初日に親友と2人で食べたあの伝説のふわふわオムレツ。
…はい、最終日にもう一度来てしまった。
しかも今度は――ひとりで。

25~35ユーロのコース料理を再び頼みに、目的はただひとつ。
そう、ふわっふわのオムレツである。

フランス、モンサンミッシェル

その朝のこと、昼食の話題が口火を切った。

親友「え、もっかいオムレツ?まじで?」

筆者「うん、おれ普通にもっかい食べたいわ。もう2度と食べれへんかもよ?」

親友「でもあの値段、おれ出せへんわ。めっちゃ美味しかったけど。なら…行くなら一人で行けよ。おれは1ユーロの絶品ハンバーガーあるし。」

—————— つ か の 間 の 沈 黙 ——————

筆者「・・・。悪いな!!」

親友「え?マジで一人で行くんかよ・・・」

という、ちょっと険悪なラリーの末に友情よりオムレツを選んだ筆者であった。

「あのときは……すまん。いや、すまんけど後悔はしてない。」

だって美味しかったんやもん。

ちなみにこの日もパンはおかわりし放題だった。
まわりのテーブルの雰囲気を読みながら、ちょっとビビり気味に英語を発した筆者。

「Can I have one more bread…?」

すると店員さん、

「Of course!」

爽やかな笑顔でパンを追加してくれた。

やっぱりここは観光地の聖地でもある。
外国人の片言英語にも優しい、良いお店だ。

↓ふわふわオムレツ以外のコースメニュー

コースは当然ながらオムレツ以外も充実しており、前菜からデザートまで抜かりなし。

ひとりで来たことに若干の罪悪感はあったが、それ以上に胃袋が歓喜していた。

筆者「友情にヒビが入っていないか不安になりつつ、パン3つ食べました。」

駅にピアノ

ヨーロッパの主要駅では、あちこちで自由に弾けるピアノを目にする。
ふと足を止めて、その場に響く生演奏の音色に耳を傾けるひととき。
これがたまらなく、旅の疲れをほぐしてくれるのだ。

この日も、どこかの駅で出会った見知らぬ奏者が、人々のざわめきを一瞬で音の世界に変えていた。


立ち居振る舞いからしてガチ勢

まず、後ろに立つ人々の姿勢と表情がすべてを物語っている。

「この人、ただ者じゃないぞ」と。

確かに非常に上手だった。

そして次に座ったのはなんとなくイタリア人っぽい若い男性。

手元を見ると…手首が踊っている。
明らかに鍵盤を叩く以上の動き、もはや「弾く」というより「演じている」。

完全に上げんでもいい高さにまで手を上げてクネっとさせて鍵盤を連続で叩く。
その余計な動きが不思議と音に色気を加える。

筆者は思った。

「いやいや、おまえらガチ勢が続いたら相当ハードル上がってもう誰も弾けへんやんけ。空気読めや~」

しかし、次は純真無垢な少年がなにも気にせず椅子に座った。

いやもう、可愛い、ほんまに。
ぎこちなく音色を奏でているのもまた一興。

こんな風に、旅の途中で偶然出会う才能。
無償のパフォーマンス。
それにじっと耳を傾ける知らない誰かたち。

こういう瞬間が、ヨーロッパの旅にはあふれている。

※ちなみにこの駅ピアノ、コロナ禍では当然ながら封印されていたと思われる。
再開された今こそ、またこの文化が息を吹き返しているのだと信じたい。

ツェルマットへ

スイス、ツェルマット

さあ、次なる目的地は、山を愛してやまない親友がずっと楽しみにしていたスイスのツェルマット。

言わずと知れた、あの名峰マッターホルンの麓の町である。

そしてもうひとつ衝撃が。

筆者、現地の人に一目惚れし、その後1年間も片思いし続けることになる。

まじでやばい。空気も景色も人も美しすぎるとか、なにこの町、反則。

次回、ツェルマット滞在記スタートです。

※恋の行方はご想像にお任せします(←何も起きてへん)

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