ヨーロッパを旅する前に知っておくべき西洋建築の知識として、今回はゴシック建築について説明します。
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※明言しますが、西洋建築の勉強をしてからヨーロッパに行けば無学で行くより100倍楽しめます。
※「この部分がわかりにくいです」とか「これはどうなんですか?」などの質問やコメント等ありましたら遠慮なく下部のコメント欄からお問い合わせください!
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本記事は「ゴシック建築の3つの革新」を解説しています。
ゴシック建築の3つの革新
この章の特に重要な点を挙げると以下の4点になります↓
➀ゴシック建築の革新
②交差リヴヴォールト
③尖頭アーチ
④フライング・バットレス(飛び梁)
それぞれ解説します。
➀ゴシック建築の革新
ゴシック建築編では本記事の閲覧数が圧倒的最多で「あー読者の皆様はゴシック建築家が窮めた3つの革新に興味があるんだな~」と思う反面、ゴシック建築編の全ての記事を読まないと結局ゴシック建築の何がスゴイのかわからないでしょ?と思う筆者もいます。
余計なお世話ですが、できれば前記事やロマネスク建築編から読んで頂いた方がゴシック建築の本質を理解できると思います。
よろしくお願いします。
さて、今まで見てきたように、
ロマネスク建築の課題は
・重厚な外観
・背が低い
・窓が小さい
でした。
ゴシック建築の特徴でロマネスク建築に見られなかった外見的特徴として以下の3つ、
- 交差リブヴォールト
- 尖頭アーチ
- フライング・バットレス
が挙げられます。
➀交差リブヴォールト↓
②尖頭アーチ↓
③フライング・バットレス↓
世間ではこれら3つをただ挙げるブログや本が多いですが、(間違いではないにしろ)参考書の著者曰くそれは
「教科書的ではあるが、いささか時代遅れ」
とのことです。
本質を見ていないとの事なんです。
見分け方を知って「あーこれはロマネスク建築だな」とか「お、尖塔アーチがあるからゴシック建築か」などと、建築様式だけを見分けられても「だからなに?」って感じですよね。
あなた「へー、あの教会はゴシック建築だな(ボソッ+ドヤァ」
友達A「え、すげぇ、わかるんだ!?ゴシック建築って何がスゴイの?」
友達B「ゴシックって他の建築様式とはどう違うの?」
友達C「なんでアーチが尖ってんの?」
友達D「天井に付いてるやつは飾り?」
あなた「いや、うん。まあ、、、色んな理由が、ね?(´・ω・`)」←結局なにもわかってない
きっとこうなります(笑)
重要なのは、
➀ロマネスク建築からゴシック建築へはどういう技術革新があり
➁どういう表現に主眼を置き
③どういう過程でそうなったか
を知ることです。
上記の三つの特徴はあくまで結果であり、発明に至る過程を知ることがより重要です。
その中で、著者が挙げている革新の本質は
㋐線状要素と㋑重量感の排除
です。
せんじょーよーそ?
重量感はなんとなくわかるけども・・・
ロマネスク建築が部分と部分の組み合わせで構成されているのに対し、ゴシック建築は全体的に統一されているのが特徴です。
では
➀交差リブヴォールト
➁尖頭アーチ
③フライング・バットレス
のそれぞれの機能を見ていきましょう。
壁で支える方式を捨てて、骨組みで支える方式を得たことがゴシック建築完成の大きなポイントになります。
②交差リヴヴォールト
交差リブヴォールトは、交差ヴォールトの稜線上にリブを取り付けて補強したもので、ゴシック建築時代に発明されました。
まずはロマネスク時代のヴォールトを見てみましょう↓
↑ロマネスク時代の交差ヴォールトにはリブが無いので、石造天井の重さを支えるのは両側の壁と太い柱(ピア)になりますよね?
天井を高くしたければ、それに比例して柱や壁の厚みも太くしていかなければなりません。
ローマ建築編で紹介したこれですよね↓
また、先程の写真の天井の黄色い点線の✕になっている部分に重さが集中するので、ここを補強する必要もありました。
ここまでがロマネスク建築の限界でした。
ロマネスク先輩「ぐっ、これがおれらの限界か…次に続く者たちよ、石造天井の補強方法をなんとしても発明するのじゃ…バタン」
ゴシック後輩「石造天井の補強方法…補強方法…補強、補強…」
そうしてゴシック時代に発明された交差リヴヴォールトを見てください↓
リブとは「肋骨」を意味する英語ですが、このリブを取り付けた交差ヴォールトを交差リヴヴォールトと呼ぶんです。
↑この写真の天井を見てください。
「このリブがなんで天井を補強できるの?」と思いますよね。
リブを取り付けると、リブが繋がっている柱で重さをもたせることができるので、そのぶん壁を薄くすることができるんです。
サラっと非常に重要なことを言いましたので、もう一度言いますね!
柱さえ頑丈なら壁は薄くてもいいのです。
極端な話、柱さえ頑丈なら壁なんて無くてもいいんです↓
壁で天井の重さを受けるのではなく、リブが繋がっている柱で重さを受けるようにしたのです。
③尖頭アーチ
交差リブヴォールトによって天井の強度を上げることができました。
しかしその柱にアーチを付けようと思うと、重さがアーチの柱にかかって(推力によって)再び倒壊する可能性がありましたよね?
推力についてはこちらでお話しましたが↓
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早い話が、こーゆーことです。
柱が細いと、天井の重さに負けて柱が折れるかもしれません↓
もしくはそのまま柱が横に押し倒されるかもしれません↓
この問題を解決したのが尖頭アーチです↓
さあイメージしてください!
普通のアーチだと上から力がかかると推力(柱を横に押し倒そうとする力)が増すので倒壊の危険性があります(先ほどの図の通り)
しかし尖頭アーチにすると、推力が弱くなり上からの力がそのまま黒い柱の足元にかかります↓
大地なら別に10トンの重さがかかっても大丈夫ですもんね。
なので、柱さえ頑丈なら天井を高くしても壁に大きな窓を開けても大丈夫!
徐々に壁の重要性が無くなってきていますね。
④フライング・バットレス(飛び梁)
そしてゴシック建築の最も重要な革新がこのフライング・バットレスです。
通常、塔が高くなればなるほど推力は増し、建築物として不安定になっていきます。(ですよね?)
しかし塔を高くしても柱を横から支えるものがあれば安定しますよね。
それがフライング・バットレス(別名「飛び梁」)なんです↓
フライング・バットレスは、ヴォールトの横圧を受け止めそれを控え壁へと流します。
※矢印は力の流れ
このフライング・バットレスの発明により、身廊壁(←教会内部のお話)は荷重支持機能から解放され、薄くて高い、しかも大きな開口部のある身廊壁が可能となりました。
教会堂の外周部には、ピナクルと呼ばれる小尖塔をいただいた控え壁が、フライング・バットレスを受けるために林立しています。
あたかも針葉樹の森のような外観ですが、これは内部空間を実現するために、構造の仕組みを全て建物の外部に露出させた結果なんです。
外からの見た目はイカツ過ぎる!!!!!!
ロマネスク建築編でも書きましたが、基本的に教会の装飾で大事なのは信者がお祈りをする『内部』です。
内部の不安定さを全て外部のフライング・バットレスで受けているので、外から見たらあまり軽やかには見えませんよね。
むしろ、「軽やか」とは正反対で「ゴリッゴリにサイボーグされている」ともとれる外観です。
でもそれでいいんです。
↑内部はこんなにも軽やかで優美に見えるんですから。
なので外部はゴリッゴリにサイボーグされててOKなんです٩( ”ω” )و
ということで、
➀交差リブヴォールト
➁尖頭アーチ
③フライング・バットレス
について紹介しましたが、最後にもう一度まとめてから次にいきたいと思います。
➀交差リブヴォールト →天井の強度を上げると同時に屋根の重量を柱に受け流す。
➁尖頭アーチ →アーチにかかる荷重を柱の足元に受け流し、柱が横に倒れる力(推力)を弱くする。
③フライング・バットレス →屋根や天井の重さが生み出す柱の推力を教会外部でガッチリ受け止める。
これらの技術革新により壁を極限まで薄くできたのです。
では次に、ゴシック建築の無重量性についてお話したいと思います↓
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