さて、本記事では、ユダヤ人の“聖なる物語”――そう、旧約聖書という名の一大叙事詩を、なるべく分かりやすく、そしてちょっぴり笑える感じで解説していく所存である。
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さて、遂にこの単元にやってきたかという感じです。世界を周るうえで必ず知っておくべき知識の一つ、それは宗教の基礎知識で宗教上のルール違反等を勉強せずに世界を旅することは危ないし勿体ないです。今回はユダヤ教の歴史をわかり[…]
さて、本記事ではユダヤ人の聖書(=物語)である旧約聖書をなるべくわかりやすく解説してみました。大まかなお話は以下の記事で既に言及していますので、興味があればこちらからご覧ください↓[sitecard subtitle[…]
本書では、その記事で触れた内容をさらに掘りに掘って、スコップが折れる寸前まで深掘りした構成となっている。
読む際には、その覚悟を持って臨んでいただきたい。
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さて、本記事では、ユダヤ人の“聖なる物語”――そう、旧約聖書という名の一大叙事詩を、なるべく分かりやすく、そしてちょっぴり笑える感じで解説していく所存である。[show_more more=前置き(クリックで開く) less[…]
ではさっそく、神と人類の濃すぎる関係史をのぞいてみようではないか(”◇”)ゞ
※なお、本記事に登場する写真のほとんどは画像生成AIによる産物であり、「あれ?この人見たことある!」と思っても、たぶん気のせいである。
実在の人物とは無関係なので、そこんとこよろしく。
人類初の殺人~カインとアベルの悲劇~
エデンの園を追放された後、アダムとエヴァは人間としての新たな人生を歩み始めた。
そして間もなく、彼らのもとにふたりの息子が誕生する――
兄カインと弟アベルである。
このカイン&アベル兄弟が人類最初の殺人を起こすことになる。
アダム一家は、地からの恵みを受け取りながら、自給自足の暮らしを選んだ。
そして時が流れ、兄弟はそれぞれの道を歩み始める。
カインとアベルの兄弟
アダムの息子らは成長し、兄カインは畑を耕し実りを得る者に、弟アベルは羊を飼う者となった。
遠回りな表現だな…
- カイン:農業担当。土を耕して作物を育てる農夫。
- アベル:畜産担当。羊を飼って乳や肉を得る牧羊者。
…こう書くと仲良さそうに聞こえるが、現実はそんなに甘くなかった。
互いに自分の仕事こそが尊く立派だと主張し合い、口論が絶えない。
人類最初の兄弟にして、すでに仲が悪い。
これが人類の未来を暗示しているとしたら、なかなかに業が深い。
人類最初の兄弟が既に仲が悪い(笑)
そんな時、兄弟は神に自分たちの収穫物を捧げることになった。
いわば「感謝の供物タイム」である。
兄カインは土から採れた農作物を持ち、弟アベルはよく肥えた最良の羊の初子を用意した。
手前が弟アベル(羊)、奥が兄カイン(農作物)
ところがである。
神はアベルの羊には目を留め、喜びを示したが、カインの作物はスルー。
まさかの兄をガン無視である。
(※以下、筆者の脳内イメージ)
神「おおおぉぉ!!これはこれは最良の羊じゃな!」
「おぬし、礼儀をわきまえておるようじゃな、気に入ったぞ。」
アベル「ははっ!光栄でございます。」
|д゚)チラッ
神「ふんっ、おまえは農作物か。気に食わん。」
「弟のアベルは最良の羊を用意したと言うのに。ワシをなめておるのか?」
「いつの時代もできそこないはおるもんじゃな。」
「貴様はもうよい。あっちでゴボウでも洗っておれ。」
カイン「………………(目線、伏せる)」
そのショックたるや、想像に難くない。
この「評価されなかった怒り」が、後の最悪の悲劇へとつながっていくのである…。
「いやいやいや、神よ!!!
農業って、地道で大変な仕事ですよ!?
なのになぜそこまで露骨に差をつけるのですか!!!??(´゚д゚`)」
↑これは筆者のコメントである。
兄カインが弟アベルを手にかけた
「アベル逃げてえぇぇぇぇ」
――という声も届かぬまま、物語はついに人類史上初の悲劇へと突入する。
㋐毎日コツコツと同じ場所の土を耕し、作物を育て、収穫をする毎日を送るカインにとって、
㋑笛を吹きながら愛らしい羊の群れとともに牧草地に出かけ、毛を刈り、ミルクを絞る毎日を送る弟アベルの仕事ぶりは、さぞや呑気なものに見えたのだろう。
さらに、神への供物をめぐる事件もカインの感情を爆発させた。
自分の収穫物が“当然”神に喜ばれると信じていたにもかかわらず、選ばれたのはアベルの羊。
嫉妬、屈辱、怒り――それらが複雑に混ざり合い、カインの心を暗く染めていった。
供物の件だけじゃなく、きっと積年の恨みもあったのだろう…
ある日、カインはアベルを野原へと連れ出す。
「ちょっと話でもしようや」とでも言ったのだろうか。
だがその裏には、恐ろしい殺意が込められていた。
こうして、兄カインは弟アベルを手にかけた。
これが人類初めての殺人、そして兄弟殺しの瞬間である。
大地に流されたアベルの血の訴えを聞いた神はカインに問い質す。
神「お前の弟アベルは、どこにいるのだ?」
カイン「知りません、私は弟の番人でしょうか?」
(内心)「おまえ神だからオレに聞かんでもわかれよwww」
カイン言ったあぁぁぁぁ、全知全能の神に対して!!!!!!!!
これが人類が最初についた嘘だと言われている。
が、当然ながら神はそんな小手先の嘘に騙されるようなお方ではない。
神は、アベルを殺したカインに厳しく語りかける。
神「お前は呪われた。もはや、大地はお前のために作物をもたらしはしない!!!!」
カイン「チッ、ヘイヘイ。」
(内心)「元はと言えばオマエがアベルばかりえこひいきしたからだろ」
こうしてカインは、農夫としての生き方すら奪われ、永遠の放浪者となった。
放浪者となったカイン、さらばじゃ…
彼が向かった先は、エデンの東にある「ノドの地」。
筆者「ノドの地てどこやねん……(;゚Д゚)」
こうしてアダムとエヴァは、一人の息子を殺され、一人は放浪者となり、ふたりの息子を同時に失った。
だがアダムとエヴァは再び愛を育み、新たな息子セトを授かった。
このセトの系譜から、後にノアの箱舟でおなじみの「ノア」が誕生することとなる。
神は農耕民より遊牧民が好き?
ところで、、、なぜ神はカインの作物を喜ばなかったのか。
もし神が、アベルとカインの両者から捧げ物を笑顔で受け取っていれば、このような悲劇は起きなかったかもしれない。
アベルがかわいそうな気もする…
この「カインのアベル殺し」は、長きにわたり多くの神学者・研究者の間で議論され続けている。
そしてその理由には、実にさまざまな説が存在する。
- 「アベルは単なる羊ではなく、『最良』の羊を自ら選んだからだ」
- 「アベルは初物を選んだのに対し、カインは初物を選ばなかった」
- 「捧げものは『血を流すものであるべき』だった」
- 「カインは自分の努力の成果を神に認めてもらおうとしたのに対し、アベルは神の恵みに対する感謝を率直に表したから」
などなど。
このドラマチックな物語は、多くの作家や芸術家の想像力を刺激し、絵画や彫刻、小説など、数々の創作を生み出してきた。
また、この愛憎劇は定住生活を送る農耕民族と遊牧生活を営む人々の対立を象徴しているとも言われている。
弟アベルは遊牧民(牧畜)、兄カインは農耕民。
そして神が選んだのはアベルであり、カインには放浪という罰を与えた――。
この点からも、「創世記」を編纂した人々は、農耕民よりも遊牧民に対して親近感や敬意を抱いていたのではないか、という見方もある。
このように、「神はなぜアベルを選んだのか?」という問いは、宗教・倫理・文化・人類学の分野をまたいで今もなお多くの人々の関心を集めている。
さて、物語はさらに波乱を迎える。
次ページでは、ついに神の怒りが爆発する――
「神による怒りの制裁~ノアの箱舟伝説~」に続く!
さて、本記事では、ユダヤ人の“聖なる物語”――そう、旧約聖書という名の一大叙事詩を、なるべく分かりやすく、そしてちょっぴり笑える感じで解説していく所存である。[show_more more=前置き(クリックで開く) less[…]
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