時は2019年5月。
アメリカ大陸を渡り歩いた大冒険を終え、ついに3週間ぶりに祖国・日本の土を踏んだ。
そして本日で帰国4日目。
キューバ滞在に伴って野菜という文明の象徴が圧倒的に不足した結果、筆者の腸はストライキ中。
便秘という名の内戦が絶賛勃発中である。
さて、本題に入ろう。
本来であれば、10日間かけてキューバを南端のサンティアゴ・デ・クーバから北端の首都ハバナまで、テント泊をしながら寄り道しまくりの優雅なキューバ縦断旅をする予定であった。
しかし、現実はフィクションを超える。
なんと、まさかの14時間で完走してしまったのである。
10日間の浪漫はどこへやら、気づいたらハバナの空気を吸っていた。
そんな怒涛の14時間、いや、予定を完全にぶち壊したキューバ縦断劇を、今ここに克明に記す。
- 1 キューバの位置
- 2 バハマからキューバへ
- 3 やはり中米は時間にルーズ?おおらか?
- 4 中米はルールにルーズ?おおらか?
- 5 キューバの主要産業はタクシー
- 6 ハバナのターミナルは非常にややこしい
- 7 【両替】USD➞CUCは最悪
- 8 ハバナから国内線でサンティアゴへ
- 9 これが国民性ってやつか…
- 10 キューバ国民には質問するな
- 11 目指すはターミナル トレス
- 12 キューバの物資不足
- 13 ついにターミナル1へ
- 14 キューバには「時間」という概念がない
- 15 キューバでは英語の本の持参が必須
- 16 愛情表現が豊かな国キューバ
- 17 数字と5W1Hくらいは知っておくべき
- 18 5kg以上の荷物は機内に持ち込めない
- 19 しかし追加料金はかからなかった
- 20 手書き搭乗券
- 21 国内線の搭乗ゲートは1つ
- 22 観光客に厳し過ぎひんか!!?
- 23 おわりに
キューバの位置
まず、キューバとは何者か。
地理の授業をさぼっていた諸君のために簡潔に説明しておこう。
キューバは、カリブ海に浮かぶ細長い島国であり、アメリカのフロリダ半島のすぐ下(南)に位置している。
目を細めて地図を見れば「あ、アメリカの足元にちょこんといるやつだ」と気づくだろう。
筆者は前年にもキューバを訪れたが、キューバはとにかくカオスの塊。
バスの乗客が鶏を抱えていたり、牛が高速道路を歩いていたり、ゴミのポイ捨てなんて日常茶飯事で、飛行機の時間さえ予告なく2時間遅くなったりする。
政治体制は社会主義。
だが、海は資本主義も裸足で逃げ出すほどの透明度を誇る。
三方を海に囲まれた日本と似た地形ながら、そのビーチの美しさと開放感は、ちょっとやそっとじゃ敵わない。
世界中からリゾート難民が殺到するのも納得である。
そんな楽園キューバを、筆者は縦にぶった斬るように南から北へ縦断しようとした。
Google mapで確認すると、キューバの南北縦断、最短距離で言うと878kmで車を飛ばせば12時間弱で到達可能だという。
「ふーん、日本でいえば宮城から大阪くらいの距離だな。行けなくは…ない」
と思ったのも束の間。
このルート上には、サンタ・クララ、トリニダード、そして革命の火種「グランマ号」上陸地点など、歴史マニアも歓喜する名所が目白押し。
これらを巡ろうとすれば、10日かけても間に合わないかもしれないという“旅の試練”が待ち受けていた。
私は旅人である。
そう、庶民中の庶民。
もちろんレンタカーという文明の利器など眼中にない。
免許証は財布に入っていたが、予算には入っていなかった。
というわけで、まずはバハマの首都ナッソー(カリブ海の夢の国)から、キューバの首都ハバナへ空路で到着。
さらに、そこから再度飛行機で南端のサンティアゴ・デ・クーバへと飛ぶ、という二段構えの移動を敢行した。
かくして、キューバ縦断の旅はこのサンティアゴ・デ・クーバという島の果て、南の玄関口からスタートしたのである。
そして私は叫んだ。
「では、行ってきまーす!(@^^)/~~~」
…数時間後に、あんなスピードでゴールしてしまうとも知らずに。
バハマからキューバへ
では、いよいよ本題に入る。
今回の旅は、バハマ国の首都ナッソーからキューバ入りするという、ちょっとオシャレなカリブ海スタートで幕を開けた。
ちなみにバハマ国とはどこかと申しますと、キューバのちょっと北に位置する…ちっちゃな島である。
地図で探すときは虫眼鏡を使うことを推奨するレベルのミニマムサイズ。
もし地球儀で指差そうものなら、誤って大西洋を突っつく可能性がある。
だが、世界中からセレブが集まる理由がある。
海がとにかくキレイなのだ。
下の地図、一部だけエメラルドブルーになっているのがわかるだろうか?
もっと拡大してみよう。
そう、バハマ国周辺の海だけ異次元に海がキレイなのである。
まあそのお話はまたいつか。
このナッソーにて、高校時代の友人と再会し、3日間にわたる謎のバカンスを満喫した。日差しは強烈、海はエメラルド、財布はどんどん軽くなる。
三拍子揃った完璧なトロピカル地獄である。
さて、出発当日の朝。
友人は朝8時台のフライト、私は11時台ということで、ふたりで仲良く宿を出たはいいが、こちらには時間があり余っていた。
余裕があるというか、むしろ時間を持て余すという贅沢な悩みである。
(バハマの空港の様子)
チェックイン開始までは、まだ2時間以上もあった。
さすがにこのまま突っ立っているわけにもいかないので、一度空港を出て朝食探しの旅に出る。
朝からプチ冒険である。
空港唯一の飲食店――その名も
DUNKIN’ DONUTS(ダンキンドーナッツ)
選択肢という概念が存在しない圧倒的な一択体制。
メニューには、見た目からして血糖値が跳ね上がりそうなドーナツたちがズラリ。
カロリーという名の凶器が私を待ち構えていた。
「日本人が朝からこんな甘いドーナツ食えるか!!!!」
別にドーナツを敵視するつもりは毛頭ない。
炊きたての白米、味噌汁、納豆……そんな夢の定食に思いを馳せたが、ここはカリブ海。
吉野家もなければ、松屋もなければ、マクドナルドすら見当たらない。
ここには「朝定食」という概念が存在しない。
結局、妥協に妥協を重ね、手にしたのは朝ベーグルであった。
砂糖まみれのリングたちの中にあって、唯一光り輝く“まともな食べ物”である。
ありがとう、ベーグル。
君が今日のMVPだ。
やはり中米は時間にルーズ?おおらか?
朝食(ベーグル)も無事に胃袋に収まり、「さて、そろそろチェックインの列に並ぶか」と軽い気持ちで再び空港へ戻った筆者。
空港は相変わらず南国ムード満載で、のんびりした空気が漂っていた。
「さっきはガラガラだったし、まだまだ余裕だろ」
そう思ってチェックインカウンターへ足を踏み入れた瞬間、
は?めちゃくちゃ混んでる!!!
「え、嘘だろ!!?さっきまであんなに静かだったじゃないか!?」
まるでビーチリゾートにいたはずが一瞬で満員電車にぶち込まれたような錯覚に陥る。
列がぐねぐねと折り返し、最後尾がもはや空港の別フロアに達しそうな勢いである。
筆者、ここでパニック。
「やばいやばいやばい。これ普通に間に合わんやつや」
気づけば出発30分前にやっとセキュリティゲートを通過。
航空業界の常識では、
出発1時間前 → チェックイン締切
出発45分前 → セキュリティゲート通過締切
となっているのが一般的である。
※この締切に遅れたら飛行機には乗れない。
つまり、これは完全に終了のお知らせ案件である。
「飛行機に乗れない…キューバに行けない…」
筆者、久々に大きくやらかした気がした。
が、焦っていたのは筆者だけだった。
誰も…焦っていない。
なんか知らんが全然セーフやった模様。
乗客もスタッフも、全員が「まぁなんとかなるっしょ」的な様子でのんびり過ごしている。
もはや異次元である。
しかも混雑の元凶は、受付カウンターの左側にいたおばちゃんである。
このおばちゃん、手続き中にもかかわらず、隣のおばちゃんと雑談をしながら大爆笑。
筆者のパスポート片手にゲラゲラ笑ってる姿を見て、思わず「早よしろやぁぁ!!!!」と心の中で絶叫したのは言うまでもない。
そのせいで大行列にもなっていた。
さらに態度も全力で塩対応。
おばちゃん「本当にフライト予約した?あんたの情報見つからへんねんけど。どうする?」
筆者「おふこーす。ディス イズ マイ チケットナンバー(キレ気味)」
中学英語の底力をぶつけた結果、ようやく検索が始まり、しぶしぶ発券された。
全力で心を込めた機械的なやる気ゼロ対応である。
ちなみにそのカウンターに置かれていた青い紙。
誰も何も言ってこないので、筆者はスルーしてそのまま飛行機に搭乗。
が――この紙、キューバ入国時に必要な書類だったのである!!
キューバ入国に必要な書類と言えば、
- 海外旅行保険の付保証明書
- ツーリストカード
ということになっている。
が、細かい規則は国によってバラバラ&現地判断らしい。
中米はルールにルーズ?おおらか?
さて、いよいよバハマの空港を飛び立ち、カリブ海を横断してキューバの首都ハバナへ向かうこととなった。
このとき筆者の背負っていたバックパック――
完全に手荷物規格オーバーだった。
小学生でも「それは預け荷物やろ」とツッコミを入れるレベルの巨大さ。
筆者のバックパック
アウトドアショップの壁にディスプレイされてる「登山家モデル」と言っても過言ではない、というかまさにそれである。
しかし、そんな爆弾級バックパックを背負った筆者がチェックインカウンターを通過しても、誰一人として何も言わなかった。
「これは荷物じゃなくて、お前の第二の背中や」と言わんばかりの空気で、係員もニコニコとスルー。
筆者、実に拍子抜けである。
そのまま機内に搭乗し、狭い通路をガサガサとぶつけながら着席。
足元にバックパックをズドンと収納……しようとしたが、当然ながら入りきらない。
※座席下に置くにはデカすぎるバックパック
結果、足元のスペースが完全に塞がり、非常時に緊急避難を妨害するほどになってしまった。
なぜこれが許されたのか、いまだに謎である。
日本なら確実にFA(フライトアテンダント)に呼び止められ、
「申し訳ございません、こちらの荷物は上の棚へお願いいたします」
とやんわり詰められる案件である。
誰も困っていない?だからOK?
それは空気と同じで、あっても見えないのが中米スタイルらしい。
キューバの主要産業はタクシー
さて、ついにバハマの首都ナッソーを離陸し、筆者を乗せた飛行機はカリブの共産国・キューバへと突入した。
目的地はもちろん首都ハバナ。
飛行機が着陸すると、驚くほどあっさりとタラップが降ろされ、乗客は徒歩で空港建物へ入場。
「自由すぎる…町内会の運動場か?」
ターミナルビルに入った瞬間、またもや「中米の洗礼」が筆者を襲う。
そう、いきなり再・手荷物検査である。
飛行機を降りてすぐの手荷物検査にて、例の「青い紙」が必要になるのだが……
カウンターのおばちゃんが何の説明もせずにスルーしてくれたせいで、筆者は持っていない。
だがそこはキューバ。
「青い紙が必要です」→「ないです」→「じゃあ、今あげます」という、無敵の現地調達スタイルで即解決。
そんなこんなで手続きを終え、意気揚々と到着ゲートを抜けると…
大 混 雑 ‼
筆者、思わず心の中で叫ぶ。
「え、誰か有名人でも降りた!?俺じゃないよな!?」
写っていないが、後ろにもタクシードライバーがわんさかといる。
筆者みたいな旅行者丸出しの格好の場合、秒で
「タクシー?」「タクシス?」「タクシー、アミーゴ?」
と何十回も声をかけられる。
去年に続いてマジうんざりである。
ちなみに言っておくと、キューバの公用語はスペイン語である。
これは非常に重要な情報で、首都ハバナの空港ですら英語は一切通じない。
"Excuse me"は完全に無力。
"Disculpe!"が言えなければ、異国の迷子確定である。
ちなみに、空港の外にズラッと並ぶ美しいクラシックカーたち――
全部タクシーである。
ハバナ名物のクラシックカー、見た目はまるで映画のワンシーン。
キューバのタクシー代はめちゃくちゃ安いため、欧米のブロンド美女がオープンカーを貸し切ってインスタ映えする写真を撮ってる光景をよく見かける。
こんな感じで映える写真を撮ることに夢中なセレブたちがハバナ市内にはいっぱいいる。
セレブたちにとってはもはや、「乗り放題」と言っても差し支えない。
もしくは「値段の概念が破壊されている」と言ってもいい。
京都市バス運賃の半額以下で、クラシックカーの風を浴びながら街を走れるのだ。
どうかしている。
ハバナのターミナルは非常にややこしい
ここで、これからキューバへ飛ぶ旅人たちに全力で警告しておきたい。
「ハバナには空港が一つある」と、思っているそこの君。
甘い。
シュガーケーンより甘い。
ハバナ空港には、実はターミナルが3つ存在する。
しかもこの3つ、
「国際線用・国内線用でキッチリ分かれてるでしょ?」
「航空会社でターミナルが固定されてるんでしょ?」
と思った方も、またまた甘い。
コンデンスミルク並みに甘い。
今年:バハマからの到着ターミナル2
去年:パナマからの到着ターミナル3
どの便がどのターミナルに到着するか、キューバに訊いてもたぶん知らない。
これだけならまだしも、さらに恐ろしいのが「出発ターミナル問題」である。
到着ターミナルは正直どうでもいい。
荷物引き取って、ニコニコと"Hola!"と言ってればなんとか通れた。
だが出発時はそうはいかない。
これが筆者からの魂の叫びである。
「現地で空港職員に聞いたらわかるっしょ」と思うのは非常に甘い(←この日の筆者
2025年2月7日にイギリスの首都ロンドンの空港に降り立った時も同じことを言った。
つくづく反省しない男だ、おれは。
詳しくはこちらで。
さて、時は2025年2月上旬。トルコのイスタンブール空港を後にし、筆者は単身ロンドンへと飛び立った。イスタンブールはというと、とにかくカオスが詰まった街だった…。ルールがあってないような世界、[…]
【両替】USD➞CUCは最悪
空港に到着し、次は国内線に乗り継ぐわけだが――
その前に、どうしても必要なのがキューバの通貨「CUC(クック)」である。
両替手続きから2分後・・・
このCUC、米ドル(USD)と等価のはずなのに、両替所で手続きしてみると驚愕の結果が待っていた。
33USD → 28CUC
筆者のなけなしの33米ドルを差し出した挙句、両替手数料を5ドル取られてしまった。
33ドルのうち5ドル取られたってことは…手数料15.2%(笑)
いや、全く笑えない。
もはやこれは空港両替所という名の合法ぼったくりバーである。
リボ払いでもここまで取られない。
闇金だってもうちょい優しい。
実はこの現象、キューバの長年にわたるアメリカとの国交断絶に起因しているらしく、USDからCUCへの両替だけが異常に不利なレートになるという謎仕様。
噂では、日本円(JPY)から直接CUCに両替する方がマシという情報もあるが――
当然そんな準備はしていなかった、てへぺろである。
ともあれ、血と涙と33ドルを流して得た28CUC、つまり(クック28匹)が、筆者のこの10日間を支える全財産となった。
ここで試されるのは旅人のサバイバル能力。
ざっくり換算して1日あたり約400円。
カップ麺3つ買ったら終了の予算である。
果たして筆者はこの金融サバンナと化したキューバで、クックを守り抜けるのか?
続く。
ハバナから国内線でサンティアゴへ
さあ、とりあえず無事(?)にキューバの首都ハバナへと降り立った筆者。
ここからが本番である。
何を隠そう、この旅の目的はキューバ縦断。
「のんびり10日間かけて南から北へ旅してやろうじゃないか」という壮大な計画だった…はずなのだ。
だがそのためには、まず逆に一旦、南端の街サンティアゴ・デ・クーバへ飛ばなければならないという謎のプロローグが待っている。

↑北西のハバナから南東のサンティアゴ・デ・クーバへ、まずはキューバを飛行機で縦断する。
「普通、縦断って南から北へ移動するんちゃうんか?」
と、読者の皆さんは思うかもしれない。
筆者もそう思った。
だがなぜか「まずは北から南へ移動してから南北縦断する」という、ドラゴンボールを探しながらサイヤ人と戦うような二重構造になってしまったのである。
というわけで、まずはハバナ空港内で、サンティアゴ・デ・クーバ行き国内線のターミナルを特定しなければならない。
筆者のキューバ縦断、ここからスタートである。
これが国民性ってやつか…
しかし、どのターミナルから出発するのかがまったくわからない。
途方に暮れつつも、ふと目に入ったのは、空港内でだるそうに座っているインフォメーションのお姉さん。
※筆者を対応したのは写真に写っている女性ではない
筆者「おっ、インフォメーション…情報の泉…救世主…!」
期待を込めて近づき、英語でフライト情報を見せながら聞いてみた。
これから両者の壮絶な矛盾バトルが始まるのだった。
「絶対に情報を得たい観光客」 VS 「絶対にめんどくさいことをしたくないインフォお姉さん」である。
筆者「(…このやる気のない見た目、逆にプロなのでは?)」
筆者「Excuse me…(すみません)」
お姉さん「………」←スマホ凝視中。反応なし。
筆者「HELLO??」
お姉さん(渋々顔を上げて)「……What?」
筆者(笑顔を忘れずに)「I have a domestic flight to Santiago de Cuba. Which terminal do I go to?」
お姉さん「……Hmm… I don’t know. You should ask a taxi driver outside.」
(ん?なんか思てたんと違う)
筆者「I think you know it.」
お姉さん「NO. Ask them.」
(えっ……いや、おまえインフォメーションやろ?情報カウンターやろ???なにを情報放棄しとんねん!!!)
筆者「Umm… So… You’re working here, right? You don’t know the terminal…?」
お姉さん「No idea. Just ask outside.」
(秒で放棄しよった…!!!!!)
筆者「wait…which…terminal…?」
彼女はスマホに視線を戻し、ガムをくちゃくちゃしながら
お姉さん「……Next.(次の人どーぞ的な手のひらパタパタ)」
もう一度粘ってみようとするも、お姉さんは完全にこちらを空気と化し、まるで「これ以上話しかけたらセキュリティ呼ぶぞ」的な雰囲気を醸し出してきた。
筆者「ぐむぅ(……敗北を認めざるを得ない)」
こうして筆者は、インフォメーション史上最も無責任な無情報インフォお姉さんとのバトルに敗れ、外の世界――つまりタクシードライバーの王国へと旅立つことになるのであった。
キューバ国民には質問するな
仕方なく、灼熱の太陽が照りつける外へ出て、タクシードライバーの群れに突入。
とにかく外にうじゃうじゃ溢れているタクシードライバーに聞くと、
「ノー エスタ アキー!ターミナル トレス!」
よくわからんが、トレスはスペイン語で3を表す。
つまりターミナル3に向かえばいいのだな。
タクシー運転手、めちゃくちゃ親切じゃないか。
インフォには金輪際近寄らないことにしよう。
「5kmあるから絶対タクシーがいいよ」と念を押してくる。
今すぐ商売に繋げようという意志が眩しい。
筆者は丁寧に、英語でふんわり断ろうとしたが、相手は全く理解していない模様。
それでも「このアジア人は金を落とさないタイプだ」と悟ったのか、あっさり引き下がってくれた。
そして筆者は決断する。
「よし、歩いてやる。徒歩で制覇してやる。次のフライトまで6時間あるし余裕っしょ!」
灼熱のキューバ。
舗装の甘い道路。
空港から空港まで、ただのバックパッカーが、巨大バックパックを背負って徒歩移動を決意した瞬間である。
なお、この後甘すぎた見積もりを地獄のように後悔することになる。
結果的にはターミナル2→ターミナル3→ターミナル1まで空港をグルーっと周って7.5km歩き、水不足で死にかけた。
目指すはターミナル トレス
さて、ターミナル2に見切りをつけた筆者。
Wi-Fiもなく、頼れるのはGoogleマップのオフライン版のみ。
地図によると…次のターミナルはどうやらこっちらしい!
このフェンスの外側の土の歩道をずっと歩く
ハアハア
フウフウ(*´Д`)
フェンスの外、砂利混じりの土の歩道。
アスファルトなんて洒落たもんは無い。
道沿いにはまばらなヤシの木と、ひたすら広がる灼熱の空気…。
5月初旬のキューバ、笑えないレベルで暑い。
まるで、日差しというより熱線。
たぶんサウナの中より暑い。
で、最初にタクシードライバーから聞かされた「5~6kmあるよー」というセリフ。
→ 結果:徒歩2.1kmだった。
ターミナルトレスと教えてくれたタクシー運転手に一抹の殺意を感じた。
「完全に騙す気やったやろお前ら…(゜-゜)」
およそ30分炎天下の中を歩いて、ようやく辿り着いた。
うーん気持ちいい!
日差しは強いがなかなか気持ちいいぞ(^ω^)
なんとか汗だくでたどり着いた先には――
\ドーン!/
「AEROPUERTO INTERNACIONAL」(=国際空港)
ハアハア、フウフウ
なかなかいい汗をかいた、水風呂に入れないのが極めて残念である。
いやーやっと到着したぜ~。
・・・。
ん、ちょっと待て。
「……インターナショナル…?え、オレこれから国内線なんだが??」
空港内のスタッフに聞いてみた。
「To Santiago, here? No? Yes? SANTIAGO!!!」
スペイン語は全く話せないが、なるべくわかりやすい単語を並べてみた。
なんか違うっぽい。
はぁ?(・д・)
どゆこと?タクシードライバーがそう言っていたのだが…。
ここで筆者、IQ爆上がりの天才的名推理を見せる。
到着 → ターミナル2
国際線 → ターミナル3(違った)
残る選択肢はひとつ → ターミナル1
「……そうか、ターミナル1か!今、オレ、完全にホームズ超えたわ」
というわけで――
また来た道を、逆戻り。
炎天下、再びスタート地点に戻る旅が始まったのであった…。
灼熱のキューバ空港敷地内を徒歩でさまよう筆者。
足元には、かかとのない800円クロックスもどき。
「くそ、なめてた……完全になめてた。こんな長距離歩くとは思ってなかった……」
ハアハア…
フウフウ…
くそっ!!こんな長距離を歩くとは思わなかったぜ…
歩道は砂とホコリ、そして強烈な日差し。
それを無抵抗に受け止めるサンダルと素足。
地獄のタッグ。
道すがらようやく看板発見!
"Aeropuerto Internacional"は"International airport"っぽいことはわかる。
ハアハア、フウフウ(;´Д`)
「……また国際線!?お前じゃねえ!!」
もうターミナル3じゃないことは明白。
残るはTerminal 1のみ。
それにしても――
「Terminal 1、どこやねん」問題。
とりあえず歩き続ける。ハアハア
視界には滑走路しかないし、建物も遠くてよく分からん。
地図は大雑把、暑さは本気。
ハアハア、フウフウ
ターミナル1・・・どこ?(;´Д`)
喉がカラカラ、マジで今すぐにでも倒れそうだ。
まじで足が棒である。ハアハア
気持ちが折れそうになっていたところにやっとTerminal 1の看板を発見した!
やっと、やっとである(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
実を言うと、この看板を発見するまでに10人以上に声をかけていた。
またターミナル2とか3まで引き返すのはかなりツラいので、ただ自分の判断が間違っていないかの確認のために声をかけまくったのだ。
「あえろぷえると うーの(1) どっち?」
「うーの!あっち?」
「さっきの人と真逆の方やんけ、んもーーーーー!!!」
これが結果である。
キューバ人は自分の利益にならない事には本当に無関心である。
タクシーに乗る気ないのにタクシードライバーに道を聞きでもしたら、まあ返ってくる答えは超適当。
あっちですか?と指差して聞けばそうだと言う。
こっちですか?と違う方向を指差して聞けばやはりそうだと言う。
間違った道を教えるという罪悪感は彼らには無いようである。
観光客が道に迷おうが彼らにはどうでもいいのである。
しかし、奇跡が起きて「Terminal 1」の看板を発見!
もう足は棒。サンダルはズタボロ。
でも心には「この旅、勝った」という達成感があった。
キューバの物資不足
ターミナルを求めて歩き続けていると、喉がカラッカラ。
「ノドガ…モウシニソウ…ナニカ…ノミタイ…」
正直、限界が近かった。
そんな時に見つけたのがこちら。
キューバ初心者にはわからないだろうが、筆者はキューバ二回目である。
この奇妙なピンクの建物が「ショップ」であることを知っている。
とりあえず中へ。
しかし問題が一つ。
「水ってスペイン語で何て言うん!?」
わからん。
WATER?いや、たぶん通じない。
「店内を捜索して、水のボトルがあれば指差して買う作戦」
店内を見回してみる。
なんでもかんでもばら売り↓
↑物資の限られたキューバではどこもかしこもこんな感じ↓
・・・。
水、置いてねぇぇぇぇぇぇ!!!!(;゚Д゚)
酒はあるのに水が無いって、どんな世界線やねん。
もう、空港まで行かないと水にはありつけないと悟った筆者。
喉の渇きを抱えたまま、再び炎天下を歩き始めるのであった。
ついにターミナル1へ
後述するが、キューバのバスは約4円で結構な距離乗れるのでこの時も本当はバスに乗りたかったのだが、どっちに行くかが全くわからなかったためスルーした。
160,450,P12,P16ってなに?どこ行くの?
というわけで、泣く泣く徒歩継続。
ハアハア…
フウフウ…
まだ・・・?
「いつ・・・着くの・・・?」
線路発見。
「この国、電車あったんか・・・(゜.゜)」
誰が電車通ってると思う?誰も思わんよ!?
線路もボロボロ、風景も荒れ地。夢か現実か。
そしてついに…
おおおおおおおおおおお!!!
空港着いたーーーーーーーー!!!
ということで、まずは空港前の売店で水を購入。
「ミズヲ クダシャイ…(涙目)」
→ 写真撮るの忘れるくらいがぶ飲みしたった。
「水って、こんなにうまかったっけ…」
振り返るとターミナル1の入り口も心なしか輝いている。
サバイバル旅のまとめがこちら。
- Terminal 2→3→2→1
- 合計7.2km
- 12kgのバックパック
- かかとのない800円サンダル
- 高温多湿&直射日光&水なし
正直、本当に熱中症になる直前だったと思われる。
キューバには「時間」という概念がない
ようやくたどり着いたターミナル1。
チェックインカウンターは完全にクローズ。
さすがに早く着き過ぎた様子
現在14時40分、出発まであと4時間もある。
つまり筆者が乗るフライトは18時40分発である。
普通なら2時間前にはチェックインが始まるはず。
ということは2時間後の16時40分にもう一度ここに帰って来ればいいはず。
しかし不安は尽きない、なぜならここは混沌の国キューバだから。
なんせ「混沌」と書いて「キューバ」と読むのだから。
一応書類の整理をしているっぽい職員の女性に「16時40分に戻って来ればいいよね?」という確証を得るために(フライトナンバーを見せながら)質問してみた。
「まい ふらいと ちぇっくいん すたーと クアトロ フォーティー ね?」
(身振り手振りも全力で)
英語スペイン語日本語をミックスさせた最強の万能会話術が筆者の武器である。
それに筆者は知っている、クアトロはスペイン語で4を表すのだ。
また、クアトロ・フォルマッジは「4種のチーズ」という意味である。
スタッフは無愛想にボソッと答えた。
「……アラスシエス」
ん、筆者の万能言語はマジで通じたってことなのか?
もしくは「アイドンノウ」をスペイン語では「アラスシエス」と言うのか?
サッパリ意味が分からん。
アラスシエス?
そもそもどこで切るんだ、これ。
アラ・ス・シエス?
ア・ラス・シエス?
アラス・シエス?
全くわからん。
が、完全に理解不能な筆者を見て親切にも指で教えてくれた。
それがどう見ても6を表している。
「え、18時?」
出発40分前にチェックインをスタートしても大丈夫なのか・・・?(゜.゜)
まあここは時間という概念を置き忘れた世界キューバである。
- 理由もなく遅れる
- 決まってないのに「決まってる」と言う
- なんならゲート変更もアナウンスしない
- チェックイン開始40分前とかもフツー
そんな国なのだ。
この国では、「時間どおり」は都市伝説。
「不安になるほどのギリギリ」こそがリアル。
「じゃあ18時にまた来るよ(震え声)」
→ 内心めちゃくちゃ不安だった。
キューバでは英語の本の持参が必須
ともあれ、まだ出発までにはかなりの時間がある。
というわけで、いったん空港の外に出て、財布と胃袋とで緊急三者面談を開催。
議題はもちろん「この国での生き延び方」である。
結論として、財布は沈黙し、胃は泣いた。
そして手に取ったのがこれだ。
フィットネスという名の、乾いたジョーク。
なんじゃこれ。
パッケージには「フィットネス」と書いてあるが、正体はどう見てもキューバ式乾パン。
食べるたびに口内の水分が消し飛び、顎に筋肉痛を呼び込む仕組みだ。
まあ腹が減っては戦はできぬということで、とりあえず胃袋にぶち込んでおく。
そして、おもむろにカバンから取り出したのが、わざわざキューバまで持ち込んだ分厚い英語小説『Me Before You』である。
念のため言っておくが、これは「オレ、英語の本読めちゃうんだぜ?」という言語力マウントではない。
まったく違う、実に戦略的な理由がある。
その点、英語の小説なら「読むのに時間がかかる=時間つぶしに最適」という完璧なロジックである。
筆者のどんな注文にも文句を言わず淡々と仕事をこなす優秀な秘書(私は彼女のことをGPTと呼んでいる)に、本書の内容をわかりやすく要約させてみた。
筆者「おいGPT!”me before you”の内容をわかりやすく簡潔にまとめろ、今すぐにだ!」
秘書(ロボットの声で)「カシコマリマシタ、ゴシュジンサマ。ピッ」
物語は、主人公ルー・クラークが、車椅子生活を送る裕福な青年ウィル・トレイナーとの出会いから始まります。
ルーは失業中で、新たな仕事を探していたところ、ウィルの介助の仕事を引き受けることになります。
ウィルは以前は裕福で活動的な人物でしたが、事故によって車椅子生活を余儀なくされ、人生に対する意欲をなくしていました。
彼の家族は、ウィルに新しい意味や喜びを見つけるようにルーに頼みます。
ルーとウィルは最初は対立することが多いものの、次第にお互いに心を開き、深い絆で結ばれていきます。
しかし、物語はウィルが自らの未来についての決断を下す過程や、それに伴う感情の葛藤を描いています。
小説は愛と喪失、人生の意味について深いテーマを扱っており、感動的で心に残る物語となっています。
筆者もキューバのホステルでめちゃくちゃ泣いてしまった。
愛情表現が豊かな国キューバ
……と、読書に没頭していたところ、ふと横を見ると、隣のテーブルではカップルが激しいキスを繰り広げていた。
ぶっちゅーである。
フルスロットルのぶっちゅー。
まるで世界に二人しかいないかのように、空港出てすぐ外という公共の場で濃厚に愛を育んでいる。
いやはや、海外ではこれがスタンダードらしい。
人目なんてどこ吹く風。ディープキスもハグもお手の物。
だが筆者はこう思う。
画像生成AIにて作成(別にこの女性が筆者の理想というわけではない)
「やっぱり日本人女性の“控えめな照れ笑い”が最強では?」
筆者の大学時代の口癖は「おれは黒髪ロングの大和撫子と結婚する」である。いや、であった。
そんな筆者が最終的に結婚したのはイタリア人女性である。
人生とは、まことに不思議な方向へ進むものだ。
数字と5W1Hくらいは知っておくべき
乾パンをポリポリかじりながら分厚い小説を読んでいると、ふと視界の端に制服姿の警官が通りかかった。
その姿を見た瞬間、脳裏をよぎったのは「首都なのに英語が全く通じない」という冷厳なる事実。
これは由々しき事態である。
英語が通じない国での旅は、「剣のないRPG」と同義。
言葉は最強の装備である。
ということで、持ち前の無計画突撃型コミュ力を発動。
なんとなくの笑顔と大げさなジェスチャーで警官に話しかけ、最低限のスペイン語レッスンを申し込んだ。
英語が全く通じなかったので宇宙人と意思疎通をしているような気分だったが、なにはともあれ伝わったようだ。
なんと警官氏、ノリノリで付き合ってくれたのである。
よほど暇だったのだろう、5分間の即席語学講座、開講。
その場で教わった語彙たちがこちら。
- どこ→ドンデ
- いつ→クアンド
- なに→クエ
- 1→うの
- 2→どす
- 3→とれす
- 4→くわとろ
- 5→しんこ
いやはや、これらの言葉がわかるだけで旅の難易度はぐっと下がる。
世界は20までの数字と5W1Hでまわっている
と言っても過言ではない。
「ウノ、ドス、トレス、クアトロ……」と乾パンをかじりながら反復練習する姿は、もはや悟りを開いた旅人そのものであった。
ここで突然、2013年1月の記憶がフラッシュバックする。
あの極寒のポーランド、クラクフ国際バスセンターにて…。
目的地はチェコの首都プラハ。
夜行バスに乗らなければならないというのに、バス停がどこかまるでわからない!
深夜、無機質なバスターミナルのポーランド人職員に尋ねると、こう返された。
「スタノヴィスコ オシェム」
え、スタノヴィ…何?
とりあえずリピートアフターミー。
「スタノヴィスコ オシェム」
「スタノヴィスコ オシェム」
「スタノヴィスコ オシェム」
……呪文のように繰り返しながら、広大なターミナルを彷徨い続けた。
その甲斐あってか、奇跡的にバスを発見し、無事プラハ行きに乗車成功。
後に調べたところ「スタノヴィスコ」は「バス乗り場」、「オシェム」は「8」だったらしい。
つまり彼は、「8番乗り場で待て」と言っていたのだ。
数字を知らぬ者、バスに乗れず——
そのとき筆者は、数字の偉大さを骨の髄まで叩き込まれたのであった。
5kg以上の荷物は機内に持ち込めない
トイレに行き、本を読み、ウトウトし、空港内を彷徨い歩くこと数時間。
現在時刻18時過ぎ。
「40分後には離陸してるはずだが…マジで間に合うのか?」という不安を胸に抱きつつも、一番乗りでチェックインカウンターに突撃した。
ようやくSantiago De Cubaへの国内線出発チェックイン開始である!!!
しかしここで問題が一つ。
実は筆者の荷物、大きさも重さも共に機内に持ち込める程度を堂々と超えていたのだ。
この大きさでさらに12kgの重さである…絶望的だ。
これが日本なら、即「受託荷物+追加料金」という刑が執行されるのは確実。
だがしかし、ここはキューバである。
常識など通じぬ。
ルール?
そんなものは砂糖と一緒にカリブの風に飛ばされてしまっている。
そう思い、胸を張って堂々とチェックインを終わらせた。
空港職員「Ven acá, que quiero preguntarte algo. ¡RYO」
(ん、なんかおれの名前呼ばれた?)
筆者「おーら!」
空港職員「はい、ここに荷物置いて」
筆者「ふぁっっ!!???」
空港職員「はい荷物12kgありますねー。5kg以上の荷物は受託荷物にしないと飛行機乗れませーん」
筆者「う、うそだろ・・・」
キューバ、普通に厳しかった。
しかし追加料金はかからなかった
とはいえ絶望しかけたその瞬間、奇跡が起きた。
追加料金、ナシ。
え?なにこれ?
払う気満々だったのに、なんでタダなん?
もしかして筆者の人相が良かった?
それともラテンのノリで「ま、ええか」で済まされた?
理由は不明だが、筆者の黄色いバックパックは無事にベルトコンベアにてチェックインカウンターの裏へと吸い込まれていった。
手書き搭乗券
ついに搭乗券を手渡された。
これがその実物である。
驚くほどの手作り感。
まるで小学校の工作の時間に作った「飛行機ごっこ」の道具のようだ。
ここはやはりキューバ、斜め上の方向で期待を裏切らない。
国内線の搭乗ゲートは1つ
そして、おもちゃかと思うようなセキュリティゲートを通る。
セキュリティチェック
だが、あれをくぐれば、もう待合室なのである。
待合室では、水や軽食が売られていた。
昼間に水を探して歩き回っていた筆者にとっては、まるでオアシスのような光景であった。
0.45CUCとはつまり、0.45ドルと同義である。
キューバの通貨CUCとCUPについてはこちらで解説している。
キューバ政府は2021年1月1日に「通貨統一」という改革を行い、CUCを廃止し、CUPに一本化した。
これにより正式な法定通貨はCUPのみとなった。
参考までに。
ちなみに小規模ではあるがカフェもある。
ハム入りの小サンドイッチが1ドルである。
質は保証できないが
なお、ターミナル1には搭乗ゲートが1つしか存在しない。
1つだけである。
もう一度言う、「1つ」だけ。
搭乗口はここしかないので迷いようが無い
どう転んでも、間違えようがない。
シンプル・イズ・ベストを地で行く設計だ。
さて、そんな風に余裕を持ってスタンバイしていた筆者であるが、ふと気付いてしまった。
「・・・あれ、もうとっくに出発時刻を過ぎているのだが?」
まさかのスケジュール大幅遅延である。
ふと電光掲示板を見てみると、いつの間にか出発時間が20時40分に書き換えられている。
こちらがご飯も食べず、いつ呼ばれるかとスタンバっていたのに、知らぬ間に2時間も遅れていたのである。
せめて、言ってくれ。
いやほんとに、言ってくれ。
時間という概念を置き忘れた国、やるな。
観光客に厳し過ぎひんか!!?
時間になり、ようやく搭乗口が開いた。
その扉を抜けた瞬間、目の前に飛行機がどーんと登場。
滑走路直結スタイルである。
ターミナルと機体の間には、ボーディングブリッジなんて洒落たものは存在しない。
乗客たちは列を成して、タラップを自分の足で上るのである。
古き良きスタイル、いや、単に設備が無いだけか。
機内に入り、ふと周囲を見回したそのとき、筆者はある違和感に気がついた。
ん、おい待てよ!
明らかに筆者のバックパックよりもデカく重そうな荷物が積んであるではないか。
なぜだ。なぜ筆者だけが厳格に「5kgルール」を適用されたのか。
「5kg以上の荷物は受託荷物にしないと飛行機乗れませーん」って誰かイキって言ってたよな?
公平性という概念が蒸発しているのだろうか。
あるいは、スタッフの気まぐれだろうか。
しかし、その理由は──
2時間後に明らかになるのであった。
おわりに
というわけで、長〜いキューバ旅の序章がようやく終了。
飛行機に乗れただけでもう感動だが、実はその先にはもっと怖くて危険でカオスな体験が待っていた。
とにもかくにも、これでようやく飛行機に乗って南端のサンティアゴへ!
ここから先は、地獄のトラック旅編に突入である。
お楽しみの(?)後編はこちらからどうぞ。
この記事は前回の「キューバ南端に到達するまで」の続編となっている。もし前回の記事をまだお読みでなければ、ぜひそちらからどうぞ![sitecard subtitle=関連記事 url=https://ryo-yasuk[…]