前回記事より
この記事は前回の「キューバ南端に到達するまで」の続編となっている。
もし前回の記事をまだお読みでなければ、ぜひそちらからどうぞ!
時は2019年5月。アメリカ大陸を渡り歩いた大冒険を終え、ついに3週間ぶりに祖国・日本の土を踏んだ。そして本日で帰国4日目。キューバ滞在に伴って野菜という文明の象徴が圧倒的に不足した結果、筆者の腸はストライキ[…]
まだ始まったばかりの珍道中、いきなり後半から読むと謎が多すぎてついてこれない可能性がある。
まずは前編から、ゆっくりお楽しみ頂きたい!
- 1 サンティアゴ・デ・クーバ到着
- 2 空港泊は無理だった
- 3 貴重品は必ず手元に置いておこう
- 4 ハバナへ向けて北上開始
- 5 動物虐待という概念もない?
- 6 バスの運賃は1CUP(約4円)
- 7 キューバでは2CUC(220円くらい)でも大金
- 8 キューバで最安の移動手段はトラック
- 9 キューバでは5kgの水がおすすめ
- 10 キューバにコーラが!!!??
- 11 キューバのトラックは神出鬼没
- 12 緑の上下はカストロファッション
- 13 キューバを南北に縦断する奇跡のトラック
- 14 いざ出発
- 15 トラックは窓際が正解!!
- 16 途中乗車
- 17 トラックでは窓から物が買える
- 18 にわか雨は地獄の始まり
- 19 小休止一回、大休止一回
- 20 🌙トラックで寝るときの注意点🌙
- 21 解散
- 22 ホステルへ
- 23 さいごに
サンティアゴ・デ・クーバ到着
さて、ついに到着した。
キューバの最南端、サンティアゴ・デ・クーバ空港。
時計の針は23時を少し前に指していた。
眠気と疲労をひきずりながら、まずは預けたバックパックの回収である。
例の黄色いバックパックだ。
あの空港職員により、理不尽にも「重すぎる」と宣告されたアレである。
写真右端、柱の近くでポニーテールを揺らす白い服の女性(+母親も)
実は彼女、チェックイン後に筆者の隣に座っていたのだが、そのとき少しだけ会話を交わしたのだ。
いや、厳密には「数字」と「5W1H」だけで構成された、疑似言語のようなエスパニョールだったが、どうやらその斬新な言語設計を気に入ってくれたようである。
「まさか、おれに惚れたのか?」
筆者のことを知っている人間には「鏡見てから言ったら?」と言われそうだ。
知り合いは誰もこのブログを読まないでくれ…
そして、到着後に荷物を手にしたとき、筆者の脳裏にはある淡い希望がふくらんでいた。
「今日はどこに泊まるの?うちで一泊していく?」
──そんな、心温まる申し出があるのではないか、と。
もちろん変な意味ではない。
この深夜の時間帯に慣れないキューバという国でテント場探しをしなくて済むかもしれないという現実的で切実な願いである。
しかし、人生そううまくはいかない。
現実は、「軽く挨拶して、あっさり解散」であった。
さらば、ポニーテールの天使よ……。
そして、ようこそ、深夜の宿無し旅人地獄へ。
空港泊は無理だった
あの子からのお誘いは、ついに最後まで届かなかった。
だが、筆者は決して挫けない。
なぜなら、空港内で上等なソファを発見したからである。
──このソファ、寝れる。間違いなく寝れる。
しかも、寝袋もある。もう完全に勝ちの布陣である。
「今日の宿、ここで決まりだな」
そう思いながら、バックパックから寝袋を取り出しはじめた、まさにその時である。
スタスタと空港職員が近づいてきた。
「We’ll close at 11 pm.(午後11時で閉まります)」
あっ、久々の英語だ♡
懐かしい響き。
…ん?
……って、23時に閉まるだとォ!?
おいおい、それはもっと早く言うべき情報だろう。
寝袋広げた瞬間にそれ言う?
もう半分入ってたぞ?
しかし、ここで嘆くのは筋違いである。
なぜならここはキューバ。
もはや何が起きても驚かない、という精神状態に達している筆者にとって、これは想定内の非常事態だ。
問題など何もない。
空港が閉まる?
ならば、外に出るまでだ。
そして──テントを張るまでだ。
予定調和などオレの人生にはいらない。
いざ空港外へ。
貴重品は必ず手元に置いておこう
ついに、旅の本格的なスタート地点「サンティアゴ・デ・クーバ」に到着した。
今夜の寝床を探すべく、気ままな夜の散歩を開始(現在時刻23時過ぎ)
せっかくだからBGMでも流して気分を盛り上げようとバックパックをまさぐった瞬間。
「うおおぉぉぉい!!!」
無い。
ドンキで買った愛用のBluetoothスピーカーが……見事に無い。
あ、サングラスも無い。
スピーカーとサングラスって、ちゃんと補償対象になるんやなと感動した。
だが現実として、カバンから「消えた」のは間違いない。
今思えば、「荷物を預けろ」と言われた時点で伏線は張られていたのかもしれない。
──あれ、実は盗るためだったのでは?
いや、たぶんそうだ。うん、きっとそう。
なぜなら、他の乗客は明らかに筆者よりも大きく重そうな荷物を普通に機内に持ち込んでいたのだ。
それも追加料金なしで。
筆者だけがなぜか特別待遇(?)で預け荷物扱い。
あれはもう狙われてたとしか思えない。
そんなモヤモヤを抱えながら、空港を出てから15分ほど歩いたところでようやく「テン場(テント張る場所)」を発見。
場所は、空港から街に向かって10分弱歩いた歩道の隣の草むら。
左右は林。
道端だが意外と人目につかない隠れ家的ロケーション。
「……ここでいくか」
若干ビビりながらも、バックパッカー魂を燃やし、ひっそりとテント設営。
キューバという国、マジで何が起こるか全く分からない。
だが、今夜はここがわたしの宿である。
では──おやすみなさい。
ハバナへ向けて北上開始
おはようございます!
いい朝ですね、スピーカーを盗られて半日、ようやく心も落ち着き、再び旅を続ける決心を致しました。
隠れ家的…とか言いながら普通にめちゃくちゃ目立っている
と、テント片づけてるときに早くも警察に見つかって職質開始。
「え、早っ」などと心の中でツッコミを入れつつも、彼らが発するスペイン語は当然ながらさっぱり理解不能。
だが、なんとなく「これからどこ行くの?」的な雰囲気を察知。
ここで筆者、満を持して堂々とひと言。
「は ヴぁ な !」
警察官たち、一瞬の間のあと「オーケー、エンジョイ」といった雰囲気でその場を去っていった。
……なるほど、どうやら野宿はOKらしい。
「きっと今から空港行って、飛行機でハバナへ行くと思われたんやろな」などと内心ほくそ笑みながら、片付けを終える。
だが、まさか筆者がここから10日かけて、バスやトラックを乗り継ぎ陸路でハバナを目指すとは、あの警官たちには知る由もない。
ああ、真実はいつもシュールである。
テントをたたみ、荷物をまとめ、朝焼けに染まる道を歩き出す。
ふと見上げると、看板の右側に「CENTRO」の文字。
……たぶんこれが市街地への道だろう。
そう信じて、とにかく歩く。
数分後──
バス停、発見!!
「ラッキー♡」
朝からちょっとしたご褒美。
11番 12番 13番のバスがそれぞれどこへ行くかは全くもってわからないが。
動物虐待という概念もない?
バス停で次のバスを待っていると、同じくバスを待っている3人組の男性たちがいた。
話しかけられたが、もちろん会話はすべてスペイン語。
筆者のエスパニョールレベルでは全く太刀打ちできず、それっぽく「ハバナに行く」とだけ伝えた。
すると、その時だった。
3人の男たちの元に、どこからともなくヨボヨボの野良犬が近づいてきた。
その目はこう語っていた。
「クウゥーン、お腹空いてるよー 何か食べ物が欲しいよー、キャイーン」
一目見て分かる、骨と皮ばかりの身体。
まさに飢えに苦しんでいる様子だった。
だが、次の瞬間である。
男の一人が突然「うぉらーーこっち来んなぁぁぁ!!」みたいに叫び、近くに落ちていた「枝というよりは武器のような、重そうな丸太のような棒」を思いきり犬に投げつけたのである。
さらに追い打ちをかけるように、犬の脇腹に鋭い蹴りを一発(ドンッ!!!
犬は痛みにうずくまりながらも、必死にトボトボとその場を去っていった。
命に別状は無さそうだったが、明らかにダメージは大きかった。
アーネスト・ホーストに左ボディをきかされ半泣きでうずくまったボブ・サップみたいな顔をしていた。
犬を蹴ったのはオレンジ帽のこの兄ちゃん
驚いたことに、他の2人は特に気にする様子もなく会話を続けていた。
笑い声さえ漏れる。
そうして彼らは何事もなかったかのようにそのままバスに乗り込んだ。
もちろん、すべてがそうというわけではないだろう。
優しい人もいる。
だが、犬に対する扱いのラフさには、毎回「嘘やろ……」と思わされる。
たとえ来世で犬に生まれ変わったとしても──
キューバだけはゴメンである。
バスの運賃は1CUP(約4円)
まあ、犬の件は一旦置いておくとしよう。
何を隠そう、この3人(さきほどの連中)は人間にはとても優しかったのである(笑)
特に何かをしてもらったわけではない。
だが、妙に色々と気を遣ってくれた。
極めつけは、一番右の陽気な白シャツおじさん。
なぜか筆者にマンゴーが2個入った袋をくれたのだ。
ありがたい。
しかし、どうやって食べるのかは誰も教えてくれなかった。
歯で割れとでも言うのか?
さて、キューバのローカルバス事情であるが、運賃は基本1CUPである。
「1CUP」とは日本円でおよそ4円程度。
日本なら「えっ、まだ存在したの?」と話題にされる1円玉レベルである。
しかもそのたった1CUPで、かなりの距離を乗せてくれるのだ。
なるほど、炎天下の中を歩いてる人間がいないわけだ。
そりゃ歩かん。バス代が1円なのだから。
さらに、筆者はその1CUPなどという小金を持っていなかった。
精算の際に代わりに5CUPコインを差し出すと、運転手がこう言った。
(もちろんスペイン語なので理解はしていない、あくまで筆者の推測である。)
「釣りが無いから、タダでいいよ」
えっ、ありがとうございます……!
なにこのゆるさ、すごい。
愛おしい国、キューバ。
キューバでは2CUC(220円くらい)でも大金
結局タダでバスに乗せてもらい、揺られること約30分。
無事下車。
タダで乗せてくれてありがとう♡
「ありがとう~またね~」的なことを、伝わるかどうかも分からぬ笑顔で投げつつ、お別れである。
このありがたき無料バスにて、筆者はついにサンティアゴ・デ・クーバ市内へと辿り着いた。
正確な現在地はよく分からぬが、地図を見た感じでは「まあ大体この辺だろう」という曖昧な自己判断で納得する。
とりあえず歩いてみる。
徒歩20分の果てに、ようやくカフェ……らしき建物に到着した。
「か…ふぇ?ほんとに営業してるのか?」
そう疑いつつも、サンドイッチを注文。
すると不思議なことに、筆者の注文が合図かのように、次々と客が集まり始める。
まるで筆者が口コミサイトのインフルエンサーであるかのような混み具合である(事実無根)
注文したのはハムとチーズのサンドイッチ。
お値段、1.95CUC(≒約220円)。
……おいおい、こんなしょーもないサンドイッチに2CUC近くも出していては旅が破綻するぞ。
筆者、心の声で叫ぶ。
「キューバにおいて、2CUCは大金なのだ!!!」
何しろ、筆者の手持ちはわずか28CUC。
これではあと13個しかサンドイッチが食べられない。
いや、それ以前に宿代も交通費もあるわけで……これはまずい。
次からはもっと「予算に優しい食事」を探さねばならない。
キューバで最安の移動手段はトラック
カフェを出て散歩していると、奇跡的にトラック乗り場にたどり着いた。
キューバを旅する上で避けては通れぬ移動手段──
それがトラックである。
このトラック、いわばキューバ国内を都市間で結ぶ貧乏人専用シャトルとでも言うべき存在である。
とにかく安い。
その安さ、1〜4CUC(約110〜440円)で長距離移動が可能。
この価格帯を見た瞬間、日本の交通機関に慣れきった筆者の脳内では警報が鳴った。
「これは……夜逃げ用の車両ではないか?」
乗客の出で立ちはというと、大半が小さなカバンを背負って今にも親元から逃げ出してきた感すらある強者ばかり。
日本的に表現すれば「全員、リアルなバックレ感」に包まれていた。
切符売り場などという甘ったれたシステムは無い。
日本的に言えばトラックの運転手は個人事業主なのである。
つまり出発時刻もルートも、「ドライバーの気分次第」。
時刻表などという概念は存在しない。
無いものを探してはいけない。
筆者はトラックの運転手一人一人に、スマホのコンパスを見せながら「北に行く?」と聞いて回り、その中で北に行くっぽい一台のトラックに乗り込んだ。
そして降ろされたのが、「コントラマエ何とか」という謎の町だった。
距離にしておよそ80km。
運賃はたったの1CUC(約110円)。
これは安い。いや、安すぎる。
だが、代償もある。
その乗り心地は……揺れる地獄とでも言おうか。
舗装されていない道をゴトゴト揺れながら、座席というよりは板切れの上に座り、埃にまみれて風と戦う。
日本なら道交法違反になると思うが、シートベルトもないまま高速道路を爆走する。
乗り心地:最悪
爽快感:最強
このアンバランスさを楽しめる者だけが、トラックの真価を理解できるであろう。
ちなみに、筆者が住む京都の市バスは初乗りで230円。
つまりキューバでは京都バスの半額以下で80kmの旅ができる計算だ。
旅の世界は広くて深い。
そして、だいたい安い。
キューバでは5kgの水がおすすめ
旅における最重要アイテム、それは水である。
なにを差し置いても水。
キューバというこの湿度の暴力国家では、1日に水を3リットル飲まなければ人間でいることができない。
筆者はふと思い出した。
そういえば昨年(2018年)のキューバ旅では、5kgの水タンクを常に片手にぶら下げていたではないか。
まるで筋トレでもしているかのように、5kgの水を携え、汗だくで街を歩いたあの日々。
この旅でも再び「水タンク旅法」を採用するべく、まずはスーパー探しからスタートである。
しばらく歩くと、さっそくスーパーマーケット発見。
──助かった。
文明は、存在した。
中に入ると、棚に並ぶ商品たちの中にあの「5kg水タンク」を見つけてしまった筆者。
その瞬間、心が震えた。
「これや、これしかない!!」
値段を見ると、5kgで1.9CUC(≒220円)。
うむ、これは仕方のない出費である。
命の水に値切りは無粋というものだ。
うむ、この品揃えさすが!
店を出て、手に食い込む持ち手の痛みに耐えながら、
「これこれこれぇぇえええ!!!」
とテンション最高潮で旅を再開する筆者の姿がそこにあった。
──筋肉と水で、今日も旅は進む。
キューバにコーラが!!!??
これはぜひ旅の猛者たちに問いたい。
「キューバに正規品コーラって、存在するんですか!!??」
今までも、コーラっぽいもの──ペプシ風とか、ラベルに勇気だけは感じる炭酸飲料はあった。
コカコーラならぬ、tuKola(トゥコーラ)
だが、"Coca-Cola"と堂々とロゴが印字された正規品ボトルに出会ったのは、これが初めてである。
フォントまで本物に見える。
驚いた。
いや、本当に驚いた。
マクドナルドもスタバもいまだ未上陸、資本主義の象徴たちは入国拒否状態である。
なのに、よりによって資本主義の炭酸水代表・コカ・コーラ様が、この国で堂々と冷えておられる。
「これは……まさか、バッタもんではあるまいな?」
疑いながらラベルを凝視する筆者。
そこには堂々と「SABOR ORIGINAL」の文字。
……いや、意味がわからぬ。
この「サボール・オリヒナール」が何を意味するかはわからないが、
なんとなくオリジナルの味ではなさそうな不安が喉を駆け抜ける。
どうやって入ってきたのか、誰が運んだのかは知らない。
CIAか?
一応ネットで調べてみたところ、どうやら本物らしい。
"Sabor Original"とはスペイン語で「昔ながらの味」という意味で、コカコーラ社のスペイン語圏向けのパッケージなどでよく見られるようだ。
つまり、正真正銘の本物…だということか。
いずれにせよ、「コーラがある」というだけで、文明に一歩近づいた気がする。
キューバのトラックは神出鬼没
コントラマエ何とかをブラブラ歩いていると、やたらと人が群がっている場所に行き着いた。
どうやらここがトラック・バスセンターらしい。
キューバでは、先述したトラックが都市間移動の重要インフラなのだが、最大の問題は「どこに停まって、どこに向かうのかが全く分からない」ことである。
現場には、手書きの行先・料金・出発時間らしきものが書かれたボードが設置されている。
──地元民はわかる、観光客は迷う、それがキューバ式。
「○○まで行きたい人は××CUCで□□時に△△集合で出発だぜ」
……たぶん、そんなニュアンスである。
そして大事なことは、Google Mapsで“Omnibus”と検索すると、こうした謎センターに高確率でたどり着けるということだ。
旅人にとっては数少ない命綱である。
特定の地点のビューはあるのだが、歩き回ることはできなかった。
そして当然、トラックの周囲には大荷物・大勢・大迫力の夜逃げ集団が形成されている。
筆者はその一員として、今日もキューバのどこかへ消えていくのであった。
緑の上下はカストロファッション
読者諸君、フィデル・カストロをご存じだろうか?
カストロ議長
キューバ革命を成功に導き、独裁者のバチスタ政権を倒したキューバの英雄である。
そして街中を歩けば、緑の上下を着た男たちにたびたび遭遇する。
これはただのファッションではない。
そう、カストロ議長のオマージュなのである。
ではこのカストロ議長、日本で言えば誰に相当するのか?
……伊藤博文だろうか。
いや、吉田茂だろうか。
あるいは坂本龍馬か?
──結論としては「知らんけど」だ。
そして今、街中の人々は全員日陰に集中している。
なぜか?
ひなたはもはや戦場レベルの灼熱地獄だからである。
体感気温、余裕で40度オーバー。
まさに、「歩くサウナ」キューバの本領発揮である。
(まだ4月21日なのに)
キューバ縦断トラックの噂
次の町を目指すべく、トラックに乗る必要があった。
とはいえ、どこで待てばよいのか、どこ行きがあるのか、まったく分からぬ。
なので、とりあえず人が多い場所に紛れ込み、「それっぽい顔」で立っていた。
そう、「トラック待ってます」顔である。
すると、運命の神は筆者に微笑んだ。
英語とスペイン語のバイリンガルを発見したのである!!!
これは大事件だ。
なにせ、キューバの地元民で英語話者に出会う確率は、飛行機事故に遭うレベルである。
(※エアライン研究会著『飛行機に乗るのがおもしろくなる本』P31より抜粋)
奇跡としか言いようがない。
このイケおじにトラックのことを色々と訊いてみた。
すると、なにやらキューバ縦断トラックなるロマンあふれる乗り物の存在を教えてくれた。
一応ここもバス乗り場
ただし、それは噂レベルの話で、詳細は不明。
「うんうん、なるほどね~」と分かったふりをしてその場を離れたが、結局どうすればいいのかは何も分かっていなかった。
…なので、とりあえずまたぶらぶらと歩く筆者であった。
キューバを南北に縦断する奇跡のトラック
というわけで、ついにここからが本題である。
キューバ南北縦断トラックの話に突入だ。
つい5分前まで「10日くらいかけてのんびり北上するか~」というユルい旅を構想していた筆者だったが、ある情報をきっかけに旅程を大幅変更することになる。
「えっ、キューバ縦断トラック!?何それ、絶対おもろいやつやん!!」
脳内で勝手に「トラックで行く縦断ツアー」をイメージしながら辺りを徘徊していたところ、ついにそれらしきトラックを発見したのである。
トラックの外観
まず見た目である。
青い車体。
だが、これは一例に過ぎず、別に青で統一されているわけではない。
トラックによって行き先も値段も違うのが常だが、筆者が見つけたこの一台には「HABANA」の文字がドンと書いてあった。
「これはもうハバナ行き確定やろ(確証ゼロ)」
出発まではまだ時間があるようだったので、車体をぐるりとチェック。
すると驚きの光景が目に飛び込んできた。
ガソリンタンクからオイルが漏れていたのである。
しかも、その下にプラスチックコップが置いてあり、オイルを回収しているのか何なのか、意味がまったく分からない。
筆者は車の構造についてはまるで無知である。
だがそれでも言わせてほしい。
「このトラック、事故ったらマジであかんやつやん……」
一抹どころか、一桶ぐらいの不安が頭をよぎった瞬間であった。
トラックの運賃
さて、何より気になるのはココだ。
運賃 !!!
なんせ、878kmの移動である。
そう、はち・なな・はち・キロメートル。
これは日本でいうところの、福岡県博多市から静岡県浜松市くらいに相当する。
つまりまあまあな長距離移動である。
というかほぼ大移動である。
日本の夜行バスで福岡ー静岡間を調べてみると、
乗車時間:17時間
最安運賃:8,000円
である。
筆者の手持ちは、残り26CUC。
その程度の所持金で、異国の地で九州から東海までの距離を横断しようとしている。
完全に無謀な挑戦だ。
というか、ただの無計画旅である。
内心、震えていた。
「……いや、いくらかかんねんこれ。払えるんかオレ?」
キューバのことだ、きっと運賃も適当である。
もしかしたら、乗車後に「やっぱ倍ね」なんてことも十分にありうる。
そう思いながら、おそるおそる料金を訊いてみた――。
結果、
たったの12CUC!!(約1,320円)
耳を疑った。
「いやいや、それほんまにハバナまで? 途中で降ろされたりせーへん?」
しかし、これは現実であった。
ちなみに、その後ハバナのホステルで出会ったドイツ人女性は、14CUCでハバナ→サンティアゴ間を移動したとのこと。
つまり――
「この国、やっぱぶっ壊れてる(※ほめてます)」
である。
トラックのタイムスケジュール
とりあえず、12CUCでハバナまで行けるということは確実のようである。
ここまで安いと、もはや逆に不安すら覚える価格設定だ。
問題は次だ。
スケジュールである。
なんせ878kmの大移動。
まさかぶっ通しで行くなんて、そんな元気なトラックドライバーがキューバにいるとは思えない。
しかも日本の夜行バスと違って運転手はおっさん一人、交代制でもない。
筆者としては、
・途中、何回トイレ休憩があるのか?
・何時間で着くのか?はたまた何泊するのか?
・食事はどうするのか?
などなど、気になることは山ほどあった。
しかしここはキューバ。
スケジュールという概念がほぼ機能していない国である。
だが、ここまでのキューバ旅で筆者もだいぶ鍛えられてきた。
スペイン語力もゼロから0.8くらいには上昇している。
ということで、運転手に質問を試みた。
スパッと質問する方が良い。
筆者はここで、独自に編み出した万能会話術を発動。
英語&スペイン語&日本語のハイブリッド、もはや言語のフランケンシュタインとも呼ぶべきその技法で、全力の質問タイムである。
「オーラ ドンデ ディス カミーヨ トゥ ウェア? ハバナまで?」
(こんちは、このトラックはどこまでですか?ハバナまでですか?)
「レアリー? ソロ ドーセ クックすか?」
(本当に12CUCですか?)
「クアントス トイレット バーニョ アンティル ゲッティング ゼア?」
(トイレ休憩は到着までに何回ありますか?)
旅の途中でかき集めたスペイン単語を総動員しての渾身の一撃。
- ドンデ:どこ
- カミーヨ:トラック
- ソロ:だけ
- ドーセ:12
- クック:CUC
- クアントス:何回、どれくらい
- バーニョ:トイレ
まさに警官に教えてもらった5W1Hと旅の途中で仕入れた単語をフルで駆使した名文である。
で、結果はどうなったかというと――
「うん、何も分からなかった。」
何時間かかる予定かも、もしくは一泊するのかどうかも、食事の回数もトイレの回数もわからなかった。
ただひとつ、12CUCでOK!だけはしっかり確認できた。
それだけで十分だと思った。
──旅とは、言葉ではなく、魂で通じ合うものなのだ。
座席を選ぶときは慎重に
料金を支払うと、運転手らしき人物が「好きなところに乗れ」とでも言いたげに、トラックを指差した。
筆者が乗り込んだ時点でのトラックはかなり空いていたが、その後ぎゅうぎゅう詰めになることをこの時の筆者は知る由もなかった。
ふと口から「ふっ、のんびりできそうだぜ」などという余裕の言葉が漏れる。(←大間違い)
しかし見たところ、快適性などという概念はそもそもこの乗り物には搭載されていない。
筆者が確保したのは、青いシートの窓側。
進行方向左側の席であった。
割と急かされたので深く考える前に「あ、はいっっ!!汗」と座ってしまったのだが…
これが今旅最大のミステイクであった。
- まずシートは倒れない、固定式である。
- 前の座席はガンガン倒れてくる。
- シート間隔は極小。
- 182cm 80kgの筋肉室な男性が(途中休憩はあるが)14時間座りっぱなし。
- 足は伸ばせない、もちろん。
特にこの前の座席との幅を見てくれ。
身長182cm、体重80kg弱のマッチョな男性が選ぶ席では無い。
とはいえ、人間は適応する生き物である。
筆者もまた例外ではなく、この環境でのベストな立ち回りを瞬時に模索した。
結果、「横に人が来なければ、この席はワンチャン当たり席では?」という仮説にたどり着く。
先に筆者が座っていれば
「は、あんなデカいやつの横は狭そうだから他の席にしよう」
と皆が思い、結果的に誰も隣に座らず一人で2席使えるという計算である。
その読みは的中した。
誰も来ない♡
周囲の乗客も「うわ、あんな大男の横とか絶対イヤやん…」という目をしていた(ような気がした)。
──が、平和な時間はそう長く続かない。
出発してすぐ、おじさんが無言で筆者の横にドスンッッ‼︎と座ってきた。
筆者は一言「オワタ…」とつぶやき、深呼吸をした。
これから重力と狭さと汗の三重苦が14時間にわたって筆者の肉体を蝕んでいくのであった。
いざ出発
午後2時。
ついに筆者を乗せたトラックが、コントラマエ何とかを出発した。
行き先はハバナ。
距離にして878km。
気合と根性の旅がここに始まった。
沿道には、腹をすかせた野犬たちがゴロゴロしている。
しかし、キューバにおいてはこれが「通常営業」である。
驚いてはいけない。
さらに視界に飛び込んでくるのは──馬車。
「馬車か……文明開化前の日本かここは」
だが、キューバではこれまた普通の光景である。
豆知識だが、日本の公道で馬車を走らせる場合は小型車両として扱われる。
馬に乗る人がお酒を飲んでいたら飲酒運転、馬にお酒を飲ませた場合は整備不良になるそうだ。
そんな景色をぼんやり眺めていると、前の席の地元の女の子が話しかけてくれた。
名前はエリカ。
「え、エリカ? なんでそんな日本人ぽい名前なん? キューバにもあるん?」
聞いてみたかった。
心の底から聞いてみたかった。
だが──万能会話術をもってしても通じなかった。
ちなみに万能会話術を使うとこうなる。
「ユアネーム ノーメ エリカ コモン イン キューバ? ジャポーネ セイム エリカ イェアー」
(あなたの名前、エリカ。キューバでは一般的なの?日本にもエリカって名前あるんだよー)
万能会話術と言いながらほぼ英語で構成されていることは無視してくれ。
筆者のスペイン語は5W1Hに毛が生えた程度、エリカの英語は「Hello」止まり、意思疎通は表情筋に託された。
それでも、なぜか不思議と盛り上がった。
言葉は通じなくても、笑い合えた。
コミュニケーションというものが言語だけで成り立っているわけではないことを、身をもって実感した瞬間である。
しかも、エリカには弟も同行していた。
笑顔とジェスチャーだけで成立する時間。
この時間こそが、旅の醍醐味である。
このとき筆者は現地語を勉強する必要性を強く感じたのだった。
言葉が全く通じない相手と友達になり、14時間も同行するのがどれほど冷や汗ものだったか想像してもらいたい。
そしてこの時筆者は空腹で倒れそうになっていた。
「腹減った……やばい……なんか、意識が飛びそう……」
そんな筆者の瀕死状態を察したのか──
エリカがそっと差し出してくれたのは、飴3つ。
たった3つの飴。されど3つの飴。
このときの筆者にとっては、まさに命のリレーだった。
舌に触れた瞬間、エリカの優しさと砂糖の甘さが、五臓六腑に染み渡った。
「ありがとう、エリカ……この恩、一生忘れない……たぶん……」
トラックは窓際が正解!!
乗車時、ドライバーに急かされて「えー、どこ座ろう…あ、ここでええか」と、深く考えずに選んだ座席。
前述した通り後に地獄を見るハメになったが、窓際を選んだのは正解だった。
風はビュンビュン入ってくるし、車窓から見えるキューバの田舎風景も旅情たっぷり。
エアコン? そんな高級品は存在しない。
「天然クーラー=窓の風」
これに勝るものなし。
もし通路側を選んでいたら、筆者は今ごろ干からびていた可能性が高い。
「通路側やったら確実に死んでた。いやマジで」
さらに幸運なことに、筆者の隣には誰も座ってこなかった。
つまり、実質2席独占。
背中は痛い、膝は曲がらない、でも横に誰もいない。
この自由度が、旅の快適度を大きく左右するのだ。
「結果論やけど、あの青い窓側シート、旅の中でも屈指のナイスジャッジだったと思う(なお、たまたま)」
途中乗車
出発して15分ほど経った頃だろうか。
突如としてトラックが停車した。
何事かと窓の外を覗くと、そこには――
4~5人の夜逃げ風乗客が立っていた。
(現地人はどうやって、この何もない田舎道のこの地点をバス乗り場だと認識しているのだろうか。)
(;゚д゚)ゴクリ…
「これは、ヤバいやつかもしれない…」
根拠は無い、だが旅の経験が告げていた。
このパターン、絶対に誰かが隣に来るやつだ、と。
咄嗟に筆者は股をやや広げ、「この席かなり狭いですよー別の席行った方がいいですよー」感を全身でアピールした。
しかし、それすら無意味であった。
ドスンッ!!!
と、重量感たっぷりのキューバンおじいが筆者の隣に座ってきたのだ。
こうして、
筆者の左膝と窓枠が、
筆者の右膝とおじいの左膝が、
筆者の右肩とおじいの左腕が、
常に密着している地獄モードが発動。
筆者は体を小さく折りたたむようにしながら、こう思った。
これが…
座るだけで試される旅人の覚悟か…。
まさに、ここからが本当の地獄の始まりであった――。
トラックでは窓から物が買える
いざ出発すると、これがなかなか悪くない。
まるでキューバ縦断のローカル版ツアーといった趣きだ。
走り出してから2時間ほど経過。
風は心地よく、景色も雄大。
「うーーーん、きもちいいなーーー」
・・・と言いたいところだが、
トイレに行きたくなってきた。
この時点で筆者はまだ知らなかった。
- ハバナまで何時間かかるのか?
- もしくは宿泊か?
- トイレ休憩はあるのか?
- 食事のタイミングは?
そのすべてが「完全不明」という、まさにミステリーツアー状態である。
ただ、ありがたいことに道中では移動販売の人々が多く見受けられる。
窓を開けてお金を渡すだけで、ローカルスイーツや軽食をゲットできる。
筆者が買ったのは、中にジャムのようなものが入った甘いパン菓子。
しめて5CUP(=約20円)。
安いが美味とは言えない、しかし空腹の身には十分すぎるほどありがたい。
とはいえ、本格的な食事は一体いつになるのか?
この先、空腹との戦いが始まることだけは間違いない――。
にわか雨は地獄の始まり
気持ちよく風を浴びながら進んでいた我らのトラック。
その時は突然やってきた。
ドドドドドドドドドド!!!!!
その平和は、突如として襲来したスコールによって打ち砕かれた。
突然の大雨である。
バスの全ての窓が開いていたので、車内はスペイン語の絶叫が飛び交うパニック状態に。
「ヤ、ヤバい…窓を閉めろおおぉぉぉぉ」
「うぉぉぉおおお!!濡れる濡れる濡れるーっ!!」
「おいそこのアジア人、早く窓を閉めろおおおお!!」
誰からともなくそんな叫び声が聞こえ、閉めるのが少し遅かった筆者は周りから「早く閉めろよおぉぉぉ!みんな濡れるだろ!!」とめちゃくちゃ怒鳴られた。
(いやいや、ちょっと待ってくれ。そもそも乗ったときから窓が開いていたから、どうやって閉めるのかもよくわからないんだが。)
パニックのなか、ようやく窓をバタンと閉めた頃には――
筆者の全身、完全なる湿地帯化。
「おれ、ついに水になったのか?」と疑うレベルのずぶ濡れ。
だが、悲劇はここで終わらなかった。
窓を閉め切った結果、トラックの車内は一気に蒸し蒸しサウナモードへ突入。
体感湿度98%、体感温度38℃、逃げ場ゼロ。
ただ座っているだけで、汗が毛穴から勢いよく飛び出す。
まるで「お湯の中の餃子」のような蒸されっぷりである。
そこへ加わる、乗客たちの情熱的な体臭アンサンブル。
(↑耐えられない臭い)
もうこれは、トラックではない。
動くスメル地獄である。
筆者は手ぬぐいで鼻と口を覆いながら、こう思った。
「…この車内、新型ウイルスがいたら3秒でクラスターやな(知らんけど)」
こうして、キューバ縦断の夢は一瞬にして、汗と匂いと怒号にまみれた修羅道へと変貌したのだった。
小休止一回、大休止一回
かれこれ5〜6時間、拷問…いや、ロングライド継続中。
一度だけ訪れた「奇跡の休憩タイム」。
やっとトラックを降りて、全身をグーーーンと伸ばして深呼吸。
「うぉぉぉ、やっと空気吸えるううぅ!!!」
(座りすぎてお尻が四角くなった気がする)
……と思ったのも束の間。
休憩時間、まさかの5分。
トイレ休憩のみ。
「え?ちょ、もう出発?まだ太ももほぐしてないんですけど!?」
とにかく再び地獄の青い鉄の檻(トラック)に舞い戻る。
さあ、出発だ。
でも空を見上げると、やたら広い。
星も結構見えてぷち感動。
早い話、爽快感はかなりある!
「うん、でもロマンより腰が痛い。」
ちなみにこの時点で20時。
4月21日のキューバ(20時過ぎ)
まだまだ空は明るく、「さすがキューバ!」という陽の長さ。
そして夜10時。
どこかの謎カフェに立ち寄り「ディナータイム」らしきイベント発生。
カフェで優雅にディナーを…と行きたいが、何分休憩なのか誰も教えてくれない。
もういま、自分が地図上のどこにいるのか、全くわからない。
おれいまどこにいるの?(゜.゜)
置いていかれるリスクを天秤にかけ、レストランでの食事は断念。
筆者は乾パン味のビスケットを買ってトラックの中で食べることにした。
20CUP(約1ドル)のビスケット、ほんとに美味しくない。
だがこれが、旅だ。
自由すぎるトラック、予定未定の休憩時間、不味いビスケット──
まさに、魂のバックパッカー縦断ライド。
🌙トラックで寝るときの注意点🌙
ようやく就寝時間、トラックで寝るときの注意点をご紹介する。
是非参考にして頂きたい!!
窓際はすきま風が寒い
昼間は「オーブンかな?」と思うくらいの灼熱だったが、夜になると一転して極寒。
地元民たちは迷わずブランケットを着用、さすが。
え、筆者?
もちろん半袖半パン&装備ゼロ。
昼間の灼熱地獄から一転、4月半ばのキューバの夜は寒い。
しかも肝心のブランケットは、対面の通路上の網棚に眠るバックパックの中。
隣のおっさんもグッスリで動けない。
「か、かばん…取りに行けねぇ……:(;゙゚’ω゚’):」
結果、全身ガクブルで夜を迎えるハメに。
トラックが異常に揺れる
キューバの道路、まず日本とは全く別物である。
舗装?なにそれ?
という状態。
日本の道路のようにきっちりアスファルト舗装されていないため、
デコボコ、穴ぼこ、砂利、全部セットでお届け。
にもかかわらず、にもかかわらず、である。
トラックは時速130~150kmくらいで爆走する。
なので80kgの筆者の体がたまにお尻からふわっと浮くくらい揺れる、というか本当に浮いたのだが。
「……お、お尻が……浮いた!?いや、今、確実に浮いた!!」
これはもう移動という名のアトラクション。
キューバ縦断ジェットコースターと呼びたい。
寝方の正解がわからず、とりあえず…
授業中の学生居眠りスタイル=前の座席のヘッド部分に頭をつけて突っ伏してみた。
…が、ここで想定外の悲劇。
ドンッ!! ガンッ!! グハァ!!!!!
振動の落差で鼻・頬骨を超硬いヘッドに強打してしまった。
解散
そして夜中の4時頃――
突如としてハバナ到着&強制解散のお知らせ。
\(゜ロ\)え!?(/ロ゜)/
なんの前触れもなく「着いたから降りろ」スタイル。
もはや夢か現実かも分からない状態で荷物を抱え、謎の駐車場に放り出された筆者。
だが幸い、駐車場にはタクシーがわんさかいるので心配はなさそうだ。
「深夜4時の客引き合戦」開幕である。
↑住所的には首都ハバナのここら辺に降ろされたと思われる。
とりあえず野宿スポットを探し始める筆者。
Googleマップもオフライン、頼れるのは己の嗅覚と星の位置(←関係ない)。
目に留まったのは――謎の城跡。
「……いけるんじゃね?」
丘の窪地に入り、木の陰にこっそりテントを設営。
元・要塞っぽい場所だから、木の陰に隠れれば一晩ぐらい平気だろうと判断。
「オレって……サバイバル適性Sかも?」
が、しかし。
薄暗い中、ふと顔を上げると――

…あ、あかり、ついてるやん。
警備室っぽい部屋からぼんやりと灯る白い光。
これは…やばい気がする。
いや、絶対やばいやつや。
巡回中の警備員に見つかる→警察に通報される→職質開始。
「きみ、ここはキャンプ場ないよ?パスポート見せて」
さすがにスペイン語で説明不能→留置所コース確定。
というわけで筆者、光の速さでテントをたたみ、静かに退城。
ホステルへ
その後もテントを張れる安全そうな場所を探してウロウロしていたが、
街中での野宿、ほぼ無理ゲー説。
城も無理、草むらも無理、パークも人がウロウロ…。
選択肢はただ一つ…歩く。
途中、地面の石を枕にしようかと3回くらい迷う。
何度も誘惑に負けそうになったが、それでも歩いて歩いて…
足を引きずるゾンビ状態で、記憶を頼りに向かったのは――
“Enzo’s Backpackers Hostel”。
そう、1年前に泊まった思い出の宿だ。
建物を見つけた瞬間、涙が出そうでした(出ないけど)。
しかし、問題は…まだ朝7時前。
玄関、開いてない。
ということで、ベンチに座って2時間ほどひたすら待機。
そしてようやく朝7時。
ドアが開き、出てきたのは――去年にも会ったあのおばちゃん。
筆者のベッド
余談だが、午前7時に扉が開き「今日から2日ほど泊まりたいんすけど」と言ったところ、
「ああああ!あなた去年も来てくれたよね!!オーーラーーRYOOOO!!!」
と名前を名乗る前に筆者のことを思い出してくれたのである。
(おばちゃんは英語が話せないので息子が英語担当)
「どっからその記憶引っ張り出した?」
去年2~3泊しただけの、筆者を覚えてくれていたということか?
そんなことあり得るか、普通?
筆者はふと思った。
- その記憶力で神経衰弱とかやったら無双できるな。
- ゲスト名簿を心で管理してるタイプか。
- キューバのホステルで燻らせていい才能ではない。
- あなたの脳、クラウドサーバーですか?
- AIも嫉妬するレベルの記憶力かよ。
- もはや記憶力じゃなくて記録装置。
だが口から出たのはこの言葉だった。
「あれ?宿代払い忘れてた…とかじゃないですよね?」
さいごに
キューバに行くなら、確かにタクシーは便利だ。
しかし、もし「ちょっとだけディープな旅がしたい」なら、トラックという選択肢もめちゃくちゃアリである。
ただし!
体力・精神力・ケツの耐久力に自信のある方に限る(笑)
次回、あなたがキューバを旅するときには、ぜひ「あえて」のトラック移動もご検討あれ。
それでは、次の冒険でお会いしましょう!
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ありがとうございました~(@^^)/~~~