皆さんはご存じだろうか?
キューバがWi-Fi砂漠であるという事実を…。
筆者は現地に降り立って初めて思い知らされた。
「フリーWi-Fi? なにそれ美味しいの?」と。
そう、キューバには無料Wi-Fiという概念自体が存在していないのである。
スタバでMacBookを広げてカフェラテをすすりながらInstagramを更新するような生活は、ここでは夢物語である。
理由はシンプル──国が全部管理しているからである。
おそらくは社会主義国家ゆえの仕組みなのだろうが、旅行者にとってはなかなかに手強い現実である。
ここで声を大にして言いたい。
それは─
➀クッカー
②テント
➂Wi-Fiである!
(異論は認める)
そんな中、筆者は文明への最後の望みをかけてキューバWi-Fiサバイバルに挑んだ。
以下では、どうすればキューバでWi-Fiを使えるのか?を、魂の叫びと共に紹介する。
「ETECSA(エテクサ)」を探せ!
キューバでWi-Fiを使いたいなら、まずやるべきことはひとつ。
ETECSA(エテクサ)を見つけることである。
この名前、耳慣れないが、キューバ旅行者にとってはもはや神殿のような存在だ。
というのも、キューバにおけるすべてのWi-FiはETECSAが握っているからである。
民間企業?ない。
スタバのフリーWi-Fi?当然ない。
コンビニの接続サービス?それどころじゃない。
すべては国家がガッチリ管理している。
ETECSAとは、簡単に言えば国営の通信局のようなもので、全国各地にぽつぽつと存在している。
だが油断するな。
見た目は何の変哲もないただの建物である。
筆者が言いたいのはただ一つ。
しかもこの神殿、大都市にしかないという絶望的な仕様である。
小さな町やビーチリゾートにふらりと立ち寄って「あれ、ETECSAどこ?」と尋ねれば
地元の人「アミーゴ、それは都市の話だ」
で終了である。
よって、ハバナやトリニダ、サンティアゴ・デ・クーバなどの大都市にいる間に探し当て、Wi-Fiカードを確保することが旅の命運を左右する。
ここを逃すと、SNS断ち&Google禁断症状に陥る可能性が非常に高い。
まずはカードを買う必要がある
キューバでWi-Fiを使うには、まずETECSAのカードを手に入れなければならない。
Wi-Fi界の独裁者、それがETECSA(エテクサ)である。
日本でいうところのドコモ・au・ソフトバンクが合体して国有化されたような怪物通信体。
ETECSAは町中のあちこちに存在している……と信じたいところだが、現実は甘くない。
首都ハバナや有名な観光都市には存在するが、地方都市ではまず見つからない。
筆者は最初、何の変哲もない小さな建物の前に謎の長蛇の列を見て「ここ、タピオカ屋か?」と思った。
ETECSAの建物
違う、それがETECSAだ。
そしてここがWi-Fiカード唯一の正規販売所である。
このカードがなければ、キューバではインターネット界の絶滅危惧種と化す。
まずはカードを買う必要がある
筆者のときは、たった8人待ちにも関わらず、1時間並んだ。
しかしいざ自分の番になると、所要時間はまさかの「2分」。
単純計算で待ち時間は16分のはずだが、なぜか1時間もかかった。
この謎の時空の歪みは、ETECSA七不思議のひとつかもしれない。
wi-fiのカード
また、列に並んでいても、油断してはいけない。
地元民による自然な割り込みが頻発する。
筆者も最初は「えっ?」と目を疑ったが、次第にそれが文化なのだと理解し、「割り込まれる → イラッとする → 無の境地に達する」という精神修行のプロセスを経て、仏の顔を手に入れたのである。
Wi-Fiカードの値段
ETECSAのWi-Fiカードには主に2種類ある。
1時間:1CUC
5時間:5CUC
2時間使いたければ、1時間カードを2枚買えばいいだけだ。
支払いはCUC(※現在は統一されたCUPに切り替わりつつある)なので、事前に現地通貨を持っておく必要がある。
カードの見た目と使い方
カードの表面には、ヨガっぽいポーズをした女性が印刷されている。
正直、Wi-Fiとどう関係あるのかは一切わからない。
さらに拡大したのがこちら。
裏面には2つの情報が書かれている。
「181031266265」
→これがユーザー名(Usuario)
「Raspe con cuidado」
→一見パスワードっぽいが、実は「やさしく削ってください」というスペイン語の注意書きである。
筆者はこの「Raspe con cuidado」を「パスワードだ!」と信じ込み、そのまま入力して30分格闘。
何度やっても接続されないので、かなりキレ気味でETECSAのおばさんにカードを差し出すと、
おばちゃん
(無言でコインを取り出し、しゃっしゃっ…と削る)
筆者「あっ……パスワードって、ここに埋まってたんか……」
そう、スクラッチ式だったのだ。
この小さな失敗のおかげで、スペイン語の語彙がひとつ増えたので良しとしよう。
注意してほしいこと
ここでは、キューバでWi-Fiを利用する際に気をつけるべきポイントをいくつか挙げておく。
行ってから後悔しないために、ぜひ目を通して頂きたい。
「FREE Wi-Fiあります!」の看板は信用しない
カフェやレストラン、ホステルなどで「FREE WiFi」「WiFi available」などと書かれた看板をよく見かける。
が、ほぼ確実に使い物にならないと思っておいた方が良い。
実際に筆者が訪れた店でも、実際は「考えられないくらい弱いか全く使えない」のどちらかだった。
そもそも国営のETECSAが全てのWi-Fiを牛耳っている社会主義国家において、一レストランが独自にWi-Fi提供できるなどあり得ないのである。
地元の人もETECSAのカードを買っているのをみても、フリーWiFiのレストランなんて誇大広告以外の何物でもない。
※ホステルについては規模によって千差万別だと思われるが、基本的に安宿(ホステル)には期待しない方が良い。
ちなみに筆者が宿泊していたホステルでもWi-Fiは使えなかったが、Booking.comのサイトにはしっかりと [Free Wi-Fi] の文字があった。
騙されないでくれ。
ETECSAカードの購入にはパスポートが必要
これは意外と知られていないが、Wi-Fiカードを購入する際にはパスポートの提示が必要である。
筆者はたまたま貴重品をすべて携帯していたためセーフだったが、これはラッキーに過ぎない。
ETECSAでカードを買う=パスポート必携
これは鉄則である。
使用中の「残り時間」が一切わからない
これが一番のストレスだった。
ETECSAカードで接続を始めると、そこから利用時間が自動でカウントされる。
しかし、残りの利用時間は画面に一切表示されない。
筆者は毎回時計を見ながら、
「よし、今回は5分以内で使おう」
と慎重に管理していたが、それでも予期せぬタイミングでブツっと切断された。
「あれ、急に接続切れた・・・」とただただ哀しい気持ちになる。
自分で時間管理をしっかりしておかないと使いたいときに使えない。
「おい!絶対まだ10分は残ってたやろがー!!」と叫ぶことも多々ある。
あまりにも唐突に切れるので、
「あれ?1時間って言いながら、実際には50分で切ってんちゃうん?」
という疑念まで湧いてきたほどである。
おわりに
キューバではネット環境が非常に限定されており、日本での感覚は完全に通用しない。
「通信が貴重な資源」であることを、現地に行くと否応なしに思い知らされる。
だがその不便さも含めて、キューバらしさと言えるのかもしれない。
むしろスマホを一度置いて、古いアメ車の音と、陽気な音楽と、人懐っこい笑顔にどっぷり浸かってみてはどうだろうか。
キューバには、ネットよりも濃密なリアルがある。
そんな言葉で締めたくなる、不思議な国だった。
もし他にもキューバの面白エピソードや、現地の驚きカルチャーに興味がある方は…
どうぞ遠慮なく、下の記事も読んでみてほしい(笑)
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我ながら面白いと思います、なんせキューバという国自体が面白いですからね(^ω^)