各建築様式の少し詳しい部分まで掘り下げようという狙いで、今回はドイツのロマネスク建築の特徴について説明します。
本記事を読まれる前にまず、ロマネスク建築についてまとめた以下の記事をある程度読んで頂いていることを前提に話を進める部分もあるので悪しからず。
ヨーロッパを旅する前に知っておくべき西洋建築の知識として、今回はロマネスク建築について説明します。[show_more more=恒例の挨拶(クリックで開きます) less=折りたたむ color=#0066cc list=[…]
では始めます。
ロマネスク建築は面白い!
まずは読者の方にクイズです。ババン!!
本書(参考書)によると、フランス中心部で生まれたゴシック建築は㋐イギリスからスペインまで地域性を超えて広がったのに対し、㋑ロマネスク建築は地方特有の材料と技術が優先されたとのことなんです。
- フランスにはフランスの、
- イタリアにはイタリアの、
- ドイツにはドイツの、
それぞれのロマネスク建築が存在するってことですね。
それはあたかも、ヨーロッパのどの地方に行っても味わうことができる、変化に富んだ郷土料理のようなものなのです!(と著者は言っている)
だからおもしろいんですって(´っ・ω・)っ
初期ロマネスク建築
初期ロマネスク建築編の記事でも書きましたが、
今回は、ゲルマン人が生み出したロマネスク建築発展の前段階「プレ・ロマネスク建築」についてお話します。「プレ」とは、英語"previous"の略で、主に接頭辞として使われます。意味は「前の、以前の」という感じで、プレ・[…]
ロマネスク建築の前段階である初期ロマネスク建築は、以下の2種類に大別されます↓
➀北方の伝統を受け継いでいる方
➁南方の伝統を受け継いでいる方
➀と➁を難しい言葉で「ゲルマン的オットー朝建築」と「ラテン的初期ロマネスク建築」と説明しました。
まあ要するに「ヨーロッパの北と南では気候が全然違うから、その地域的な差異によって全く異なる2つの建築様式がそれぞれ発展した」ってことなんです。
まあわかりますよね?
もっと極端なことを言えば、赤道直下の住宅と南極の住宅の構造が同じなわけありませんもんね。
まあ大体そんな感じで考えておいてください。
➀北方の伝統を受け継いでいる方:
→北方の日差しの弱い地域の伝統を基礎にしているので、なるべく日差しの入る明るい教会堂を目指した。
➁南方の伝統を受け継いでいる方:
→南方の日差しの強い地域の伝統を基礎にしているので、暗い静かな光を楽しめる教会堂を目指した。
以降、とりあえず前者(➀北方)をゲルマン的、後者(➁南方)をラテン的と略します。
ゲルマン的
ゲルマン的の特徴を超簡単に言うと、「木造天井」と「多塔構想」です。
木造天井は写真ではわかりにくいですが、
↑こんな感じです。
また、多塔構想とはこんな感じで↓
「塔をいっぱい建てたーい」ということですね。
北方の日差しの弱い地域の伝統を基礎にしているので、なるべく日差しの入る明るい教会堂を目指しました。
ラテン的
では続いてラテン的の特徴を超簡単に言うと、「石造天井」と「堂内が暗い」です。
天井は石造になり、
その重さを支えるために、採光のためのクリヤストリー(高窓)を大きくできなかったので堂内は暗めです。
まあ南方は日差しの強い地域の伝統を基礎にしているので、暗い静かな光を楽しめる教会となりました。
ドイツのロマネスク建築の特徴
では早速ドイツのロマネスク建築の特徴をお伝えしようと思います(・ω・)ノ
1080年代、ライン河沿岸の都市シュパイヤーとマインツで、神聖ローマ皇帝ハインリヒ四世によって、それぞれ大規模な教会堂の改築と新築が開始され、ドイツにロマネスク時代が到来します。
ドイツのロマネスク建築に大きな特徴はありませんが(←は!!?(゚Д゚;))、あえて言うなら
カロリング朝の伝統を強く受け継いでいる
と言えます。
カロリング朝建築について「( ゚д゚)ポカーン」の方は以下の記事を先にお読みください↓
ヨーロッパを旅する前に知っておくべき西洋建築の知識として、今回はビザンティン建築について説明します。[show_more more=恒例の挨拶(クリックで開きます) less=折りたたむ color=#0066cc list[…]
カロリング朝建築というと真っ先に八角形プランのアーヘンの王室礼拝堂が出てきますが、ここで言われている「カロリング朝の伝統」とはそういうことでは無さそうです。
アーヘンの王室礼拝堂(八角形プラン)
だって上は集中式プランですが、ロマネスク建築ではバシリカ式プランのはずなので。
とりあえず(本書で紹介されている)ドイツ・ロマネスクの三大聖堂をご紹介します。
それが
- シュパイヤー大聖堂
- マインツ大聖堂
- ヴォルムス大聖堂
です。
シュパイヤー大聖堂
ドイツのロマネスク建築三大聖堂の1つめ、それがシュパイヤー大聖堂です↓
本書にはシュパイヤー大聖堂の説明が長々とありますが、筆者を含め多くの方が「いや、重要なポイントだけでいいよ」と思ってるはずなのでポイントのみ抜粋してご説明します。
それが、
- 三廊式のバシリカ式平面
- 計6つの塔が立つ
- ヴォールト架構
- ロンバルディア帯
- 半円柱による補強
です。
では一つずつ見ていきましょう↓
三廊式のバシリカ式平面
三廊式(さんろうしき)ってわかりますか?
廊下が三つある形式ってことです。つまり・・・?
↑そう、身廊1つと側廊2つのことプランのことですよね。
上の平面形式を見ただけで画像左側が西正面で画像右側が東側のアプスだとわかりましたか?
初期キリスト教建築以降、バシリカ式は東西に長く西側に玄関入口を東側に聖なる空間アプスを配置していたんですよね?
↑これ復習です(´っ・ω・)っ
わからない人はこちらの記事で復習を!
ヨーロッパを旅する前に知っておくべき西洋建築の知識として、今回はロマネスク建築について説明します。[show_more more=恒例の挨拶(クリックで開きます) less=折りたたむ color=#0066cc list=[…]
まあ普通のバシリカ式プランは三廊式ですが、初期キリスト教建築では五廊式の教会堂がありました↓
上の場合、身廊1つに側廊4つの五廊式ですね。
計6つの塔が立つ
ではシュパイヤー大聖堂の外観にいきます↓
シュパイヤー大聖堂には「6つの塔」がありますね、これも多塔構想の表れです。
ヴォールト架構
初期ロマネスク建築編でも話しましたが、もともとは木造天井の教会堂をこの時代に一気に石造天井に改築しました。
木造から石造に替わったことで、天井の重さは急激に重くなり、ヴォールト架構が用いられました↓
半円柱による補強
また、天井の石造化に伴って柱に大きな荷重がかかったので、もともとの柱に1本おきに半円柱を加えるという補強がなされました↓
このことにより、堂内には柱の突出による強弱が生まれるとともに、その半円柱が天井の横断アーチに達することで垂直性が獲得されました。
その結果、身廊の柱は強弱のリズムを繰り返します(これを強弱交替と呼ぶ)
ロンバルディア帯
ロンバルディア帯の説明は不要だと思いますので、シュパイヤー大聖堂正面の画像だけ載せておきます↓
↑他にもいっぱい見つかりますよね。
初期ロマネスク建築編でも説明しましたが、このロンバルディア帯は北イタリアの石工たちが発明したものなので、このシュパイヤー大聖堂の建築には彼らが関与していたのがわかります。
マインツ大聖堂
ドイツのロマネスク建築三大聖堂の2つめ、それがマインツ大聖堂です↓
本書にはマインツ大聖堂の説明が長々とありますが、シュパイヤー大聖堂と同じくポイントのみ抜粋してご説明します。
それが、
- 三廊式のバシリカ式平面
- 二重内陣式
- 計6つの塔が立つ
- 半円柱による補強
です。
今回は一括で紹介していきたいと思います。
まずはプラン(平面形式)をみていきましょう↓
三廊式で東西にアプスをもつ二重内陣式で、外観には6つの塔が立っています↓
シュパイヤー大聖堂と同じく、堂内において大きな荷重を受ける柱は補強されています↓
しかし!!!
ヴォールト架構に関しては、これが違うんです。
天井に関しては、ロマネスク建築よりも後に発明された交差リヴヴォールトという技術が使われています。
交差ヴォールトよりも、より立体的になっていますよね↓
「なんでおまえがここにいるんだ!!!??(゚Д゚;)」状態です。
交差リブヴォールトはゴシック建築家が編み出した必殺技のはずなのに・・・。
デジタル大辞泉によると、マインツ大聖堂は975年に着工されたが、度重なる増改築を経てロマネスク、ゴシック、バロック様式が混在する姿になったらしいです。
ちなみに建物正面にもロンバルディア帯が多く見られます。
マインツから南に約40キロ離れたヴォルムスに、1171年司教コンラート2世により大聖堂が起工されました。
それが次で説明するヴォルムス大聖堂です。
ヴォルムス大聖堂
ドイツのロマネスク建築三大聖堂の3つめ、それがヴォルムス大聖堂です↓
こちらも三廊式の二重内陣式で、1181年に東内陣が献堂され、身廊と西内陣は1210~1230年頃に完成しました。
同聖堂の東内陣を建造したのは、アルザス地方(ドイツ西部との国境くらい)から来た工匠たちで、彼らは1159年のシュパイヤー大聖堂の火災後、同聖堂の交差廊の天井をリヴ・ヴォールトで架け直したらしいです。
平面形式がこちらです↓
もはや説明はしませんが、東西にアプスをもつ二重内陣式で三廊式です。
天井は交差リヴヴォールトがあり、半円柱が一本ごとに付けられています↓
柱形、ジグザグならびにアーチ型の装飾による壁面の分節、石造の尖り屋根、豊かな彫刻装飾などは、アルザス地方の範例に倣っています。
他方、大八角塔(下図参照)、内陣と交差部の塔に見られる軒周りの優美な装飾、そして堂内の強弱交替はシュパイヤー大聖堂にも見られます。
この三大聖堂の他にも、マリア・ラーハ聖堂とバンベルク大聖堂も紹介されていますが、少し疲れたので今回は言及せずに終わります(←完全に筆者の都合( ˘•ω•˘ ))
まとめ
ちょっとだいぶ混乱してきたので、最後にまとめを載せておきますね。
シュパイヤー大聖堂、マインツ大聖堂、ヴォルムス大聖堂の全てに共通するのは、
・東西にアプスをもつ二重内陣式
・多塔構想(6本)
・交差ヴォールト
・ロンバルディア帯
くらいですかね。
特に二重内陣式に至っては、イタリアやフランスのロマネスク建築には見られない非常に珍しいドイツ特有の特徴に思えます。
おわりに
さて、ということでドイツ式ロマネスク建築の特徴をみてきました。
それでは他の国のロマネスク様式の違いもみていきましょう!!!
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