【旧約聖書⑤】アブラハムが"信仰の父"と呼ばれる理由

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ユダヤ教 旧約聖書 歴史

さて、本記事では、ユダヤ人の“聖なる物語”――そう、旧約聖書という名の一大叙事詩を、なるべく分かりやすく、そしてちょっぴり笑える感じで解説していく所存である。

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全体のざっくりストーリーについては、すでに別記事で語り尽くしているので、「旧約って何だっけ?」という方は、まずはそちらをご一読あれ↓

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旧約聖書 まとめ わかりやすく

本書では、その記事で触れた内容をさらに掘りに掘って、スコップが折れる寸前まで深掘りした構成となっている。

読む際には、その覚悟を持って臨んでいただきたい。

参考文献は『眠れないほどおもしろい「聖書」の謎』。タイトルだけでもう面白そうである。

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旧約聖書 バベルの塔 ソドム ゴモラ

ではさっそく、神と人類の濃すぎる関係史をのぞいてみようではないか(”◇”)ゞ

※なお、本記事に登場する写真のほとんどは画像生成AIによる産物であり、「あれ?この人見たことある!」と思っても、たぶん気のせいである。
実在の人物とはほぼ無関係なので、そこんとこよろしく。

アブラハムが"信仰の父"と呼ばれる理由

旧約聖書を語るうえで、絶対に欠かせない人物がいる。

それが、先に紹介した「ソドムとゴモラ」の物語にも登場したアブラハムである。

そう、あのロトの叔父である。

ノアの後、神が人類救済の出発点として選び祝福した最初の預言者、それがアブラハムである。

神の声を聞きカナンからエジプトへ移住するアブラハム

旧約聖書 わかりやすく ユダヤ人

アブラハムはユーフラテス川下流の町ウル(現在のイラク南部)に生まれたが、父のテラと妻のサラ、甥のロトとともにウルを離れ、ハランの地(現在のトルコ南東部)に移り住んでいた。

ちなみにウルからハランまでの距離はざっと徒歩で240時間。

毎日12時間歩いて20日、現代なら完全に登山遠征レベルの長旅である。

↑ウル(Ulu)からハラン(Harran)までの道のりをGoogle mapsで調べてみた。

そんなある日、アブラハムは神の声を耳にする。

あなたは生まれ故郷、父の家を離れて、わたしが示す地へ行きなさい。

わたしはあなたを大いなる国民にし、あなたを祝福し、あなたの名を高める、祝福の源となるように。

アブラハムはなんのためらいもなく神の声に従い、妻サラと甥ロト、そして召使いハガルを連れてカナン(地中海とヨルダン川、死海に挟まれた地域)の地にたどり着いた。

この「カナン」の地はのちにとてつもなく重要な舞台となる。


ウル→ハラン→カナンと移動してきた

こうして、神の命を受けてカナンにたどり着いたアブラハム。

だが、それは同時に数々の試練の幕開けでもあった。

これから彼は、

  1. 飢饉に見舞われ、
  2. 異国エジプトでの試練に遭い、
  3. さらには子を授かれぬ苦悩、
  4. 甥ロトとの別離など、

幾度となく信仰を試される出来事に向き合うこととなる。


アブラハムのイメージを画像生成AIで作成してみた
→結果、渋すぎた…

エジプトに移住するアブラハム

神の導きに従って、カナンの地へたどり着いたアブラハム一行であったが、そこに待っていたのは、いきなりの飢饉(ききん)であった。

やむなく彼らは、食料を求めてエジプトへと避難することにした。

エジプトに到着したアブラハムを、別の悩みが襲う。

それは──
妻サラがとんでもない絶世の美女だったことである。


美人過ぎるアブラハムの嫁

※中国の古いことわざに「傾国の美女」「傾城の美女」という諺がある。

君主がその美しさに夢中になって、国や城を傾けて(滅ぼして)しまうことに由来する、絶世の美女を表す言葉。

サラはそんな感じだったのだろう。

アブラハムはこう考えた。

「こんな美人を“妻”と名乗ったら、俺、エジプトの男たちに殺されて妻を奪われるのでは…?」

そこで彼は、苦肉の策としてサラを「妹」と偽って紹介する。

そこから偽りの日々が始まる。

案の定、サラの美貌はエジプト中の男たちを虜にし、ついには王家から召し入れの声がかかった。

こうしてサラは王宮へ。
アブラハムも、王家の「義理の兄」的なポジションで一時は手厚い保護を受けるようになる。

が――

このままうまくいくはずもなかった。

やがてサラがアブラハムの妻であるという事実が露見すると、王宮は激怒。

アブラハム一家はエジプトを追放される形で、元のカナンの地へと引き返すことになった。


カナンへと戻るアブラハム一行

さらにその道中、家畜のための水をめぐってアブラハムとロトの従者の間に争いが勃発した。

その結果、アブラハムとロトは袂(たもと)を分かつことになる。

こうしてロトは肥沃な低地ソドムへ移住、アブラハムは荒地に残ることになったのである。

ロトはその後、先述したように男色家に囲まれたり町が焼き滅ぼされたりと、まあなんやかんやあったわけだ。

アブラハム夫妻の悩み

カナンの地で信仰と忍耐の日々を送っていたアブラハム夫妻には、深刻な悩みがあった。

子に恵まれなかったのである。

妻のサラはすでに八十歳に近く、どう考えても自然妊娠は不可能と思われた。

そこでサラはエジプト人の侍女ハガルにアブラハムの子どもを産ませようとしたのだ。


アブラハム夫婦と侍女のハガル

まさに妻公認の子作りタイムが始まった。


侍女ハガルと子作りを行うアブラハム

やがてハガルは身ごもる。

兎にも角にもこれで「子どもができてアブラハム夫婦もハッピー♡」かと思いきや、事件が!!!

妊娠を機に彼女の態度は一変。

アブラハムとの子作りで権力を得たハガルの態度が一変、傾国の美女サラを軽んじ始めたのである。


サラを見下し始めた侍女のハガル

ハガル「ちょっとどいてよオバチャン。わたしアブラハム様の子を宿してるんだから?(笑)」

サラ、激怒。

サラ「クッッ、このクソビッチがあぁ」

2人の対立は深まり、サラは精神的に追い詰められていく。

そんな中、ハガルは男児を出産。

名はイシュマエル

アブラハムにとって待望の息子だった。

しかしその数年後にさらに事件が起きた。

サラが九十歳という高齢でありながら息子イサクを産んだのだ。

さて、自分の子を持ったサラにとって、ハガルとイシュマエルの存在価値は?

この瞬間、サラにとってハガル&イシュマエルは――

もう不要どころか邪魔な存在でしかなかった。

サラはアブラハムに二人を追い出すよう懇願した。

サラ「ねぇあなた、ハガルとイシュマエルはもう、、、ね?わかるわよね?」

アブラハム「え、あ、、うむ。ほら、とは言えまぁ一応わしの子じゃから…うほん、うむ。こほん」

ハガル「・・・(わたしたち殺されるかもしれない…)

サラ「あなた!!!!さっさと決めてちょうだい!!!!!」

アブラハム「う、うーむ、うむむ…。」

思い悩むアブラハムに対し、神はこう告げた。

サラの言うことに聞き従いなさい。

イシュマエルもまた、国民の父となる。

彼もあなたの子であるからだ。

こうして――

ハガルとイシュマエルは、わずかな食糧だけ渡されて荒野へ追放される。


放逐されたハガルとイシュマエル

一時は死を覚悟した二人だったが、神の加護により一命を取り留めたかたちとなった。

生き延びたイシュマエルはその後、母と出身を同じくするエジプト人と結婚し、子孫を増やした。

その子孫が、今日「アラブ人」と呼ばれる人々だと言われている。

旧約聖書がイスラム教の母体と言われるのは、アラブの民の祖がイシュマエルとアブラハムだとされているから。

ユダヤ人(イサクの子孫)とアラブ人(イシュマエルの子孫)が「カナン=パレスチナ」をめぐって争う構図は、ここから既に始まっていたとも言われている。

ユダヤ人とアラブ人の対立の"根"はここにあった

またアブラハムは神と契約を交わし、彼と彼の子孫が祝福を受け、カナンの全ての土地を永久に与えられると告げられた。

神「お前とお前の子孫に、カナンの地を永久に与えよう」

神からすれば、これは超重大プロジェクトの始動宣言である。

この神から与えられた「カナンの地」というのが現在の「パレスチナ地域」である。

アラブ人とユダヤ人の対立はここから始まったのだ。

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中東戦争 わかりやすく

「パレスチナ地域はユダヤ人が神から与えられた土地である」

というユダヤ人側の主張と、

「パレスチナ地域に先祖代々住み続け、土地を守ってきたのはアラブ人である」

というアラブ人側の主張に折り合いがつかず、イスラエルとアラブ諸国が長年もめているのだ。

「神の権利」と「歴史的居住」の衝突が始まり、イスラエル・パレスチナ問題の地雷原が出現する。
なんとこの火種、紀元前から続いていたわけだ。

詳しくはこちらの記事で↓

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そしてその「カナンを与えられる」という契約のしるしとして、生後八日目の男子に割礼(男性器の先端の皮を切り取ること)を施すことを約束したのだ。


※つまりユダヤ人に真性包茎はいない

神「わしは包茎が嫌いじゃ。ずる剥けにするのじゃ!!!!」

割礼(かつれい)とはつまり、包茎手術のことである。

余談だが、「アブラハム」「サラ」という名前はこの時に神から授かったもので、それ以前の二人は「アブラム」「サライ」と名乗っていた。

アブラハム、苦渋の決断

イサク。

それはアブラハムが百歳にしてようやく授かった、宝物のような息子である。

長年「子どもがいない問題」でメンタルをゴリゴリに削られていたアブラハム夫妻にとって、イサクの誕生は奇跡そのものだった。

…だが、ある日、またしても神がやってくる。

神「イサクを山に連れて行け。そんで、祭壇でワシにささげろ。そう、生け贄としてな。」

「は?神、正気か?」と思った者も多いだろう。
だがアブラハム、全くひるまない。

というか、もうすでに信仰が極まって、常識がフルで上書きされていたのかもしれない。

イサク「お父さん、木とナイフはあるけど、羊がいないよ?」

ユダヤ教 旧約聖書 歴史

天真爛漫な息子の問いかけに、アブラハムは言葉を詰まらせる。

アブラハム「……神が用意してくださるのだ」

だがその“羊”とは――
まさか、自分自身であるとは、イサク本人は知る由もなかった。

山頂に到着したアブラハム父子。

イサクは縄で縛られ、祭壇に寝かされる。

イサク「やめてぇ、やめてよお父さん!!こわい、こわいよぉ」

アブラハム「グッ(大号泣)、神が、神が仰っているのじゃ…すまぬイサクよぉぉぉ」

アブラハムはイサクを山に連れ、祭壇にのせ、涙をこらえながらのど元にナイフを突き立てた。

アブラハム「すまぬイサク、わしを許してくれ(大号泣)うおおぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」

ナイフがイサクの喉に食い込み血が滲む。

とその瞬間、神の使いが声をかけた。


天使がギリギリで止めてくれたあぁぁ

天使「その子に手をかけてはいけません。お前が神を畏れる者だということは、よくわかりました。」

セーフ。

歴史上最もヒヤヒヤする「ギリギリストップ案件」である。

神に対する信仰の篤さを証明したアブラハムとイサクは、

  • 子孫が星の数ほど増えること
  • 地上の全ての民の勝利者となること

を告げられたのだった。

アブラハム、「信仰の父」の称号はここで確定である。


では次ページでは「"神との戦い"に勝利!『イスラエルの祖』になったヤコブ」についてご紹介する。

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旧約聖書 信仰の父 アブラハム
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