【旧約聖書④】なぜ「バベルの塔」は神の逆鱗に触れたのか?

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ユダヤ教 旧約聖書 歴史

さて、本記事では、ユダヤ人の“聖なる物語”――そう、旧約聖書という名の一大叙事詩を、なるべく分かりやすく、そしてちょっぴり笑える感じで解説していく所存である。

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全体のざっくりストーリーについては、すでに別記事で語り尽くしているので、「旧約って何だっけ?」という方は、まずはそちらをご一読あれ↓

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ユダヤ教 歴史
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旧約聖書 まとめ わかりやすく

本書では、その記事で触れた内容をさらに掘りに掘って、スコップが折れる寸前まで深掘りした構成となっている。

読む際には、その覚悟を持って臨んでいただきたい。

参考文献は『眠れないほどおもしろい「聖書」の謎』。タイトルだけでもう面白そうである。

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旧約聖書 ノアの箱舟 ノア

ではさっそく、神と人類の濃すぎる関係史をのぞいてみようではないか(”◇”)ゞ

※なお、本記事に登場する写真のほとんどは画像生成AIによる産物であり、「あれ?この人見たことある!」と思っても、たぶん気のせいである。
実在の人物とはほぼ無関係なので、そこんとこよろしく。

なぜ「バベルの塔」は神の逆鱗に触れたのか?

ノアの洪水の後にも、神は自分の力を誇示するかのように、おごり高ぶった人間たちに罰を与えている。

その一つが、下に載せたブリューゲルの絵画でも有名なバベルの塔だ。


ブリューゲル作「バベルの塔」

ノアの子孫たちは、東メソポタミア地方の平原にたどり着き、その地に「シンアル」と名付け定住した。

当時、世界中の人々は祖を同じくすることもあって、1つの共通言語を用いていた。

言語が同じということはお互いの認識を共有でき、農業や商業はもちろん、政治や文化も豊かになり、文明も高度なものに成長していった。

やがてシンアルの人々は自分たちの力を誇示しようと、天まで届くような塔を建てようと計画を練った。

シンアルの人々は盛り上がりまくりっている。

シンアル人A「おれらってもう神レベルじゃね?」

シンアル人B「もうすぐバベルの塔も完成か…おれら天才かよ」

シンアル人C「神も我ら人類の成長をお認めになるだろう…」


ザワザワ ガヤガヤ ワイワイ

…しかし、それを静かに見ていた神。

神「あかん、また調子乗っとるわコイツら」

そして、神は言った。

神「人類がひとつの言語を話しているから、こんなくだらんことを考えるのだ。ならば言語をバラバラにして、互いに会話できないようにしてくれるわ!」

かくして神は、人々の言語を分けた。

これが、「人類に複数の言語が生まれた起源」として語られる。

こうしてバベルの塔建設はあえなく中止。

人々はそれぞれ通じる言語を持つ仲間たちと集まり、世界各地へと散っていった。

そのためシンアルの地はヘブライ語で「混乱させる」という意味「バベル」と呼ばれるようになったそうな。

神「ほらな、調子に乗るとこうなるんよ。わかったか?」

いや、神も神で…ちょっと短気すぎないか?
“言語バラしの刑”ってなかなか重罪である。

快楽に溺れる「ソドムとゴモラ」の民に天からの制裁!

「バベルの塔」のお話の他に、神の怒りを買って焼き尽くされた町がある。

それが、あまりにも有名なソドムとゴモラのお話である。

この物語の主人公は、以前ノアが裸で酔いつぶれた際に「親父、全裸で寝てるぞw」と笑ってお仕置きをくらったハムの子孫たち。
彼らが住んでいたのが、このソドムとゴモラという町であった。

時代は下り、ノアのずっと後のこと。

「すべての民族の祖」と称されるアブラハムの甥にあたるロトが(←強そうな名前)、ソドムの町に移り住むところから始まる。


ロト夫婦と二人の娘

※アブラハムについては次章でじっくり解説予定なので、今回はロトに集中。

このソドムとゴモラは、現代でいうところのイスラエルとヨルダンの国境、死海周辺にあったとされている。

ユダヤ教 旧約聖書 歴史

土地は肥沃で、農作物は豊か、生活は安定していた――が、それゆえに人々の心は堕落し、悪事にふけり、快楽に溺れきっていた。

ちなみに余談だが、男色行為を意味する英単語「sodomy(ソドミー)」の語源は、この「ソドム」から来ている。
文化的影響、地味にデカい。

そんな町に住む中で、ただ一人まともだったのがロトである。

「収穫はみんなで平等に分けよう!」

「暴力じゃなく、話し合いで解決しよう!」

「サボりはやめて、ちゃんと働こう!」

ただ一人ロトのみが善良で町を正しく導こうとしていたが、誰もロトの言うことを聞く者はいなかった。

ソドムの住民は…

住民A「え、何?おっさんがおれに意見しちゃってんの?」

住民B「はぁ?てめぇ生意気なんだよ!!外来種が調子乗んな!」

\ボッコボコ/

もはやロトの正義感は時代錯誤レベル。

町の道徳は完全に崩壊していた。

この様子を見ていた神は、静かに――しかし確実に怒りを溜め込んでいた。

神「なぜ人類はこうもクズばかり生まれるのじゃ。まったく…ブツブツ」

ついに決断を下す。

神「ソドムとゴモラの町を滅ぼす、か。」

完全に“町ごと消し炭にする”方向で話が進む。

ところが神は、その計画を最初にアブラハムに漏らす。

神「ソドムはもうダメじゃ。ワシの手で浄化することにした。」

アブラハム「待ってください、神よ!あの町には甥のロトが住んでいます!」

アブラハムは懸命に神に直談判を始めた。

「決して振り返るな」天使の忠告を無視して「塩の柱」に!

神の決意はもはや揺るがなかった。

そしてついに、神の使いである二人の天使がソドムの町に降り立ったのである。


二人の天使がソドムの町に降臨

天使「ここがソドムか。ふん、堕落と悪意に満ち満ちておるわ。」

そのただならぬ気配を敏感に察知したロトは、天使たちを無理やり自宅へと招待し、もてなそうとした。

町の男たちは、美しい旅人が町に来たという噂を聞きつけ、ロトの家の前に押しかけてきた。

男たち「お前のところに来た連中をおれたちに引き渡せーー!!!」

こう騒ぎ始めたのだ。

完全に“その目的”が見え透いているこの要求に対し、ロトは驚くべき行動に出た。


ロトと二人の娘

ロト「私にはまだ嫁がせていない娘が二人います。娘たちを差し出しますから好きにして下さい。その代わり、どうかこの方たちには手を出さないでください。」

──まさかの娘身代わり提案。

ロトは娘を売って天使を見逃すよう男たちに懇願したのである。

筆者「いやロトさん、神の使者を守るためとはいえ、それはあかんやろ…」

しかし男たちは耳を貸さず戸口をこじ開けようとしたその瞬間、天使たちは男どもを打ち倒しロトに命じた。

天使「一刻も早く、命懸けで逃げなさい。決して後ろを振り返ってはいけません。低地に留まらず、山中に逃れなさい」

神がロト一家を除く町の全てを滅ぼすことに決めたことを天使は知らせたのだった。

ロト一家は、天使の言葉に従い大急ぎで町を脱出。

その直後、逃げるロト一家の背後で天から怒りの炎と硫黄が放たれた。


全速力で逃げろぉぉ

まばゆい閃光と大音響が鳴り響き、町もろとも生息する全ての生きとし生けるものが抹消されたのである。

全速力で逃げるロトたちの背後から、破壊の光が追いかけてくる。

だがそのとき──

ロトの妻が、ふと後ろを振り返ってしまった。

それは天使が唯一禁じた行為だった。

残してきた家、財産、思い出…
様々な未練が、彼女を振り返らせたのかもしれない。

しかしその一瞬の迷いが、彼女の人生を永遠に止めた。

振り向いたその瞬間、ロトの妻の身体は硬直し、塩の柱と化してしまったのである。

この伝承に基づいたとされる岩塩の柱が、今なお死海周辺に存在する。


(出典:Wikipedia「ロトの妻の塩柱」)

人々はそれを「ロトの妻」と呼び、神の裁きと人間の弱さを伝えるモニュメントとしている。


ところで、、、娘2人を野獣どもに差し出すロトも、それはそれで非人道的だと思うのは筆者だけだろうか…?

ロトの人間性にもちょっと疑問符が残る。

後でも触れるが、旧約聖書では「家族を犠牲にしてでも神への忠誠を誓え」的なエピソードがたまに出てくるのだ( ゚д゚)

「神は家族以上の存在」と植え付けたかったのかもしれない。

では次ページでは「アブラハムが"信仰の父"と呼ばれる理由」について詳しくご紹介する。

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旧約聖書 信仰の父 アブラハム

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旧約聖書 ノアの箱舟 ノア
旧約聖書 バベルの塔 ソドム ゴモラ
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