熱交換(=損失)が大きい箇所
さて質問です。
一般的な日本の住宅において、外部との熱交換が最も大きい箇所(つまり断熱ガバガバな部分=バケツでいう穴が空いてる場所)は以下のうちどこでしょうか?
夏と冬で少し比率(%)は違いますが、頭の中で順位を想像してみてください。
予想する筆者
さて、答えがこちらです↓
(出典:窓が住まいの中で熱の出入りが一番大きい)
ということで、真っ先に対策しないといけない断熱の穴、夏部門も冬部門も制した堂々の第一位は窓でした。
ちょっと表にまとめました↓
夏の場合 | 冬の場合 |
1.窓(74%) | 1.窓(50%) |
2.外壁(12%) | 2.外壁(20%) |
3.換気(6%) | 3.換気(16%) |
4.屋根・床(4%) | 4.床(10%) |
5.屋根(4%) |
なんと、夏も冬も熱損失が大きい箇所は同じなのです。
ってことで、ようやくバケツに空いた穴の位置がわかりました!
あとはこの穴を塞ぐ作業に入りましょう!
ここまでの話を一度まとめます↓
①高断熱住宅は穴を塞いだバケツと同じ
②低断熱住宅は穴が空いたままのバケツと同じ
③特に大きな穴は「窓、外壁、換気」とわかった
④こいつらをとりあえずなんとかしよう
断熱性能と光熱費
では「断熱性能が低いとなぜ光熱費が高くなるのか?」について見ていきましょう!
と言っても、ここまで読んで頂いた方ならもうわかりますよね?
窓や壁、天井などの断熱性能が低いと、
(冬の場合)屋内の暖かい空気が屋外に逃げて、屋外の冷たい空気が屋内に入ってくる
(夏の場合)屋内の涼しい空気が屋外に逃げて、屋外の蒸し暑い空気が屋内に入ってくる
からです。
なので一向に屋内が快適な温度になりません。
そんな時、だいたいは知識のない我々のような一般人はエアコンちゃんのせいにしてしまいます。
なんと可哀そうなエアコンちゃんなのでしょう(T . T)アーメン
こうして、設定温度をガンガン上げたり下げたりするから必然的に光熱費が高くなるのです!
(冬の場合)一方では「部屋が暖かくならない(ㆀ˘・з・˘)」と言いながら室内の暖かい空気を外に捨ててるくせに、他方では「寒いぃぃぃ」と言いながら暖房をフル稼働させて室内を暖かくしようとしているんです。
つまり、莫大な光熱費を払って外に暖かい空気(=お金)を放出しているんです(;゚Д゚)
これは、バケツに穴が空いているのを知らずに「蛇口から出る水量が足りない」と思って蛇口をひねって水量を増やすのと全く同じ行為ですよね?
まずはバケツの穴を塞げばいいのに、穴を塞がずにエアコンをフル稼働させるから「そらあ光熱費高くなるわ」って感じです。
こちらの動画も参考になる内容なので是非ご覧ください↓
よくある勘違い
これは筆者自身が勘違いしていたことですが、「高断熱住宅にすると光熱費が安くなる」と漠然と思っているといざ高性能住宅に住み始めてから「ん、思ったより光熱費が安くない」ということが起きるようです。
一体なぜでしょうか?
この謎にはこういったカラクリがあるんです。
1つお話を聞いてください( ˘ω˘ )
滋賀県大津市のとある賃貸物件に住む筆者夫婦は、夏暑くても冬寒くても年間でエアコンを動かすのは数日しかありませんでした。
寒ければ筋トレと厚着で暖をとり、暑ければ保冷剤と扇風機で涼をとる。
それが筆者夫婦の一年を通しての日常になっていました。
一条工務店でのマイホームが建つまでは頑張ろうと決めた筆者夫婦でした。
そんな筆者夫婦の年間の光熱費は大体30,000円です(月2,500円平均)
しかし筆者はある夢を抱いていたのです。
冬期は数カ月間暖房を付けっぱなし、
夏期は数カ月間冷房を付けっぱなしにしよう‼
と。
そうです、「年中ずーっと快適」な家にするために、今後は遠慮なくエアコンを付けっぱなしにするつもりなんです。
すると、おやおや(;・∀・)
年間の光熱費が40,000円になり、結果として低断熱住宅に比べて年間10,000円の光熱費アップになってしまいましたとさ。
もうわかりますよね?
こういった理由で「高断熱住宅=光熱費が安い」とはならない可能性もあるのです!
筆者のように、低断熱住宅に住みながらも変温動物のように気温の変化に身を任せる生活スタイルの人は、いざ高断熱住宅に住み始めて全館空調などを採用すると(元々がドケチ生活のために)結果的に光熱費が高くなる可能性があるのです(笑)
まあその我慢強さがあれば、いざ高断熱住宅に住み始めるとエアコン付けなくても十分快適だと感じると思うので、光熱費が変わらず大きな快適さがプラスされると考えることもできます。
ちなみに、室温と健康には非常に大きな関係があるようで、光熱費以外にも高断熱住宅のメリットは非常に大きいらしいです↓
断熱性能とは
では断熱性能値をもう少し掘り下げてお勉強しましょう!
(出典:湿気から家を守り、耐久性を維持する高遮熱・高断熱性能)
高断熱とは、断熱性能が高いことを表し、単位はUa値です。
Ua値は日本語で「外皮平均熱貫流率(がいひへいきんねつかんりゅうりつ)」という、マジで意味不明な漢字の組み合わせになるんですが、一つ一つバラして考えれば簡単に理解できますd( ̄  ̄)
とは言え、ここからの説明は「Ua値をもっと深く理解したい」という人向けなので、興味のない人は飛ばしてください↓
» 続きを読む(クリックで開く)
Ua値の単位は「W/㎡・K」(ワット パー ヘイベイ ケルビン)です・・・。
もう少し掘り下げて考えていきましょう!
外皮平均熱貫流率とは?
ではこの漢字たちを分解してみます↓
①外皮②平均③熱貫流率
①外皮とは、建物の表面のことです!
②平均はそのまんまの意味です。
③熱貫流率とは、どれだけの熱が通過するかといった熱量のことを指します。
Ua値の単位からもわかる通り(理系の人はわかると思います)、「W/㎡・K」は
「室内外で1℃の温度差(K)がある場合、外皮1㎡あたり何ワット(W)の熱が通過するか」
という意味になります。
これ以上説明するのもしんどいので、「最低限これくらいは理解しておけば」というくらいの豆知識でした。
» 折りたたむ
さて、次は断熱材のお話です!
断熱性能と断熱材
断熱性能Ua値は、窓や壁、床、天井などに充填されている➀断熱材の種類と②その厚みで決まります。
誤解が多いのでもう一度言いますね。
断熱性能は断熱材の種類とその厚みで決まります。
グラスウールはダメだとかフェノールフォームはいいだとか、セルロースファイバーはこうとかEPSはこうとか、まあ色々言われますが、断熱性能が低い(=熱伝導率が高い)断熱材でも厚みを増せばいいだけなんです↓
(出典:「UA値0.4」の高断熱仕様)
にわか断熱マニアがグラスウールで断熱施工を行なっている住宅を見て「グラスウールかよwww」と勘違いマウントを取ることもありますが、別に厚みさえ確保できればグラスウールの方が他の断熱材よりはるかに安価に購入できるので、グラスウールも結構人気があるのです。
つまりフェノールフォーム50mmとグラスウール(16K)95mmは同じ断熱性能なので、どちらを採用してもいいんです。
断熱材を選ぶ際は、熱伝導率以外にも以下の様々な要因を考慮して選びましょう。
㋑防火性
㋒透湿抵抗
㋽価格
㋔耐久性
断熱材の種類等についてはこちらの動画がわかりやすかったです↓
繰り返しになりますが、住宅の断熱性能は、どの断熱材が何ミリ入っているかで決まります↓
「うちは最高級のフェノールフォームを使ってます(*´ω`*)」
と断熱材だけアピールして厚みを隠す住宅営業マンに騙されないようにしましょう!
どれくらいの断熱性能が必要?
実は断熱性能を示すUa値は数値で表すことができ、鹿児島には鹿児島の気候に合わせたUa値が、南極には南極の気候に合わせたUa値があります。
まあ「鹿児島市の建物と南極の建物を同じ断熱基準で比較するのっておかしいよね」って話です。
「鹿児島の冬には十分な断熱性能ですよー」というダウンジャケットが南極でもそのまま使えるわけじゃないですよね。
つまりそういうことです。
省エネ基準には「長期優良」とか「ZEH」とか「HEAT20 G1」とかありますが、詳しくは次のページで解説します。
まずはこちらの表をご覧ください↓
上画像で右に行くほど(=Ua値が低いほど)高断熱なお家ってことだけ覚えておいてください。
日本は南北に細長く四季の違いもあるため、「省エネルギー基準地域区分」として日本全土を「1~8」の8つの地域に分け、「断熱性能の基準値」が地域ごとに設定されています↓
(出典:初めての方へ 窓選びのポイント)
まあ言われたら当たり前ですが、北海道と沖縄が同じ断熱性能で良いわけ無いですもんね(笑)
ちなみに、この地域区分は国土交通省が公式資料として公表しています↓
もしリンクが切れていた場合は「地域区分新旧表 国土交通省」くらいで検索すればヒットしますので是非(^ω^)
つまり、同じ断熱性能G3レベルと言えども、北海道と京都では断熱材の種類や厚みを変えないと同じ断熱性能と呼べないってことですな。
こちらの今泉先生の動画内でひっじょーに詳しく解説されていますが↓
「家に帰ったらエアコン付けて、外出するときに消して」というような間欠運転(かんけつうんてん)の場合、30年後の総額はUa値0.4くらいが費用対効果(=コスパ)が最も高いらしいです。
間欠運転の場合、G3レベル(6~7地域でUa値0.26以下)だとオーバースペック過ぎるということでした。
間欠運転じゃなく一日中エアコンを連続運転する場合に初めてG3レベルの断熱性能が活きるってことですね!!!
いや、実はそれも違うんです。
エアコンを付けっぱなし(全館空調)の場合もまだUA値0.4くらいがコスパが最も良いらしいのです。
と思いますよね?
それがまたまた違うんです。
どうかあと2行だけ説明を聞いてください。
①Ua値0.4は、36年後にUa値0.26に抜かれます。
②その後はUa値0.26がひたすら走り去っていきます。
前述しましたように、「夏暑くても冬寒くても、エアコンなんて付けねードケチ生活をこれからも一生していくんだ」という方の光熱費が一番安くなります(笑)
あくまで「人間にとって最も快適な空間を24時間365日持続する」という観点でのお話でした。
また、電気代の値上げ率も加味したら、26年で0.26が0.4を追い抜きます。
何となくわかりましたか?
では最後に日本の断熱等級のお話に移ります。