本記事は、2017年に行ったヨーロッパ一人旅の記録を振り返るものであり、ハンガリーの首都ブダペストでの滞在を中心に、当時の思い出をゆるりと綴っていく。
ハンガリーの首都ブダペストの地下鉄
「なんじゃこりゃ、全く読めん(゚Д゚;)」と毎回心の中で叫んでいた、ハンガリー語のあの独特な文字列が妙にツボな筆者。
旅の期間は2017年初頭、およそ1か月。
東欧・バルト三国・アイスランドなど、これまで訪れたことのなかった国々を巡る冒険だった。
今回の旅には、
- 旅仲間(以下「エリ」)との同行
- 初めてのレンタカー運転
- 人生初のテント泊
という3つの大きな挑戦があり、まさに忘れがたい出来事の連続であった。
本記事では、その旅の始まりから順に振り返っていきたい。
- 1 ハンガリーの概要
- 2 機内食は本当にマズイのか?
- 3 ロシアの空港のトイレが汚すぎた
- 4 ロシアの通貨ルーブル
- 5 荷物のビニール巻きは、もはや「鎧」
- 6 ハンガリー到着
- 7 外国で言葉が通じないときの対処法
- 8 「地下鉄=危険」ではない
- 9 地下鉄名物「絶望的に長いエスカレーター」
- 10 無事、宿到着。そして風呂。
- 11 ブダペストの朝は脂とともに始まる
- 12 揚げ物ガチャ、大当たり!
- 13 寒い国の宿命、それは脂と氷
- 14 いかにもヨーロッパなビル
- 15 世界一美しいマクドナルド
- 16 ドナウ川が凍っている
- 17 ヨーロッパでは「公園で筋トレ」が普通
- 18 ブダ地区とペスト地区
- 19 ハンガリーの国会議事堂
- 20 セーチェーニ鎖橋
- 21 ハンガリー料理
- 22 金色の街「ブダペスト」
- 23 ブダペストのレンタカー屋「BeeRides」
- 24 レンタカーで一週間スロヴェニアへ
ハンガリーの概要
ハンガリー、そこは東欧の中心にドーンと構えた、ちょっと無口だけど情熱的な中年紳士のような国である。
周囲にはルーマニアやセルビア、クロアチア、スロヴェニアといったクセの強い隣人たちがぎゅうぎゅうに詰まっており、地理的には団地の中層階・内陸国の立場をキープしている。
そしてこの国の心臓部、いや、魂の拠点がブダペスト。
名前からしてすでに二人組のコメディアンみたいだが、実際はブダとペストという2つの都市がドナウ川をはさんで「今日こそお前が折れろ」と言い続けている、ツンデレ都市合体ユニットである。
2017年、筆者はついにこのブダペストの地に降り立った。
機内では「グヤーシュって何?」と検索していた筆者だが、現地では「グヤーシュこそ人生」と言い切るまでに成長することになろうとは、誰が想像しただろうか。
Ninaとの約束
というわけで、日本を出国する。
目的地のハンガリーはただの中継地、お飾りである。
本当に目指すのはスロヴェニア。
理由?たった一つ、Ninaに会うためである。
に会えるという理由だけでスロヴェニアを訪れました♡
彼女との出会いは、2016年のオーストリア・ハルシュタット。
美しい湖と可憐な出会いが交差した奇跡の地で、筆者は運命に打ち抜かれた。
詳細は長々とこちらに書いてある。
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スロヴェニアの天使・Ninaちゃんは、小柄でノリが良すぎて、笑顔が可愛すぎて、ついには筆者の理性と航空券を吹き飛ばした。
気づけば、ジャポンからスロヴェニアに飛ぶフライトを手配していた。
いやもう、目的地というより「目的そのもの」である。
ということで、テンション最高潮のまま飛行機に搭乗。
もうこの時点で完全に恋愛ファンタジー冒険譚 第2章の開幕である。
機内食は本当にマズイのか?
…が。
旅にはトラブルがつきもの。
最初に提供された機内食が、よりによって筆者の天敵・エビ入りの魚介料理だった。
おい、なんでよりによってエビなんだよ。
カタカナで書いても逃げられんぞ、エビ。
食べた瞬間、口の中が「ぷはっ」と拒絶反応フェスティバル。
だが安心してほしい。
第2ラウンドで、機内食界の救世主が降臨した。
そう、パスタ様である。
アルデンテかどうかなんて些細な話。
あのときのパスタは、まるで「エビの呪いを解く勇者」のように美味かった。
よく「機内食はマズイ」と言う人がいるが、筆者にはその感覚がまるでわからない。
むしろ「え、普通にウマくない?」とすら思っている。
2025年2月に利用した中国・四川航空の機内食、これは正直に言わせてくれ。
マジで不味かった。
その時のエピソードはこちらで紹介している。
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さらに言えば、入院中の病院食も「マズイ」と言われているが、筆者にとっては「いや、普通に旨いやん。量は少ないけど」と思っている人間である。
もしかして筆者の舌は何でも受け入れる仏の舌なのか?
それともただの味オンチか?(´・ω・`)
ロシアの空港のトイレが汚すぎた
ロシアの空港のトイレが、想像のはるか斜め上だった件について報告したい。
今回、東京からブダペストに向かう途中、経由地として立ち寄ったのがロシア連邦の誇る首都・モスクワ。
そしてその空港がこちら──
【Шереметьево】
カタカナで書くと「シュレメーチボ」となるが…
読めるか!(゚Д゚)
だが間違いなく、今ここはモスクワ。
ロシアの心臓部。スパシーバ!(←唯一知ってるロシア語)
そして事件は、空港のトイレで起きた。
日本の空港トイレといえば、もはや近未来。
便座は自動で開くし、水の音を出す機能までついている。
個室がまるでカプセルホテル並みに清潔なところもある。
ヨーロッパの空港トイレも、たいてい小ぎれいである。
ところがどっこい。
ロシアのハブ空港のトイレ、まさかの異世界転生レベル。
- トイレットペーパー、出ない
- 床、常に何かしらの液体で湿ってる
- 便座、謎の破壊
- 悪臭がヒドイ
- ドア、ギリギリ閉まらない(え、羞恥心の概念どこ行った?)
筆者、軽く文化ショックを受ける。
「空港のトイレ=安心の清潔空間」という筆者の中の常識が、便座ごと粉砕された瞬間であった。
ロシアの通貨ルーブル
そしてその混乱のさなか、筆者はなぜかテンションが上がってしまい、意味もなくロシアの通貨・ルーブルを換金。
その結果──
2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻。
筆者の持つルーブル資産、華麗に大暴落。
だが安心してほしい。
そのルーブル、たった800円分だったのである。
いやそれでもショック。
思い出の通貨が紙クズ化とか、通貨コレクター的に普通に泣ける。
荷物のビニール巻きは、もはや「鎧」
日本を出国する際、筆者のバックパックは、ビニールでグルグルグルグル…ギュッ!と完全防備仕様に変身した。
理由はただ一つ──盗難予防。
そして見た目のインパクト。
空港にはたいてい、1,000円前後でこの“ビニール・パッキング儀式”を執り行ってくれる業者が常駐している。
バックパッカー界では「お、やってるね」となる一種の意識高い系の旅人バロメーターでもある。
ただし注意が必要だ。
「この荷物、中身は完全に無害です!」という自信と共にぐるぐるにしよう。
中身に後ろめたさがある人にはオススメしない。ガムテも涙を流す切り裂き力だ。
ハンガリー到着
そんなこんなで到着したのが──
ハンガリーの首都ブダペスト、リスト・フェレンツ空港!
……リスト?フェレンツ?誰?( ˙-˙ )
と思った方、安心してほしい。
筆者も毎回忘れてる。
旅をする際にいつも思うのだが、
なぜ世界のハブ空港は、「都市名+国際空港」というシンプルな名前を避けて、やたらと歴史的かつ覚えにくい人物名を付けたがるのか?
これは旅人にとって永遠の謎である。
- シェレメーチエヴォ空港 → モスクワ国際空港
- 成田空港 → 千葉国際空港
- リスト・フェレンツ空港 → ブダペスト国際空港
- シャルルドゴール空港 → パリ国際空港
もう「○○国際空港」で統一してくれぇええ!!と叫びたくなる気持ちをぐっとこらえ、空港名と格闘しながら旅は続く。
外国で言葉が通じないときの対処法
ブダペスト空港に降り立った筆者を迎えたのは、もはや謎の暗号にしか見えないハンガリー語の標識たち。
アルファベットなのに読み方さえ一切わからない。
当時の雑魚スマホで撮った拡大写真なので画質が悪い
「ggy」ってなんだよ。「sz」ってどう読むのさ。
読めそうで読めないこの感じ、最高だヾ(≧▽≦)ノ
異国感フルスロットル。
ここから旅が本格的に幕を開ける──
言語の壁よ、かかってこい!
オレのGoogle翻訳が火を吹くぜ!
飛行機を降り、入国審査を突破し、預け荷物も無事にゲット!
テンションは最高潮!
さあ、ついに空港の外へ──
いよいよハンガリーの大地に、筆者が降り立ったッ!!!
まずは地下鉄で宿の最寄り駅へ向かおうじゃないか!
……が。
切符の買い方、全ッッ然わからん(゚Д゚)
実は国によって切符の買い方には様々な種類がある。
「○○駅へ」とか「△時間以内は乗り放題」とか「ゾーン□内なら一定料金」など、国によって違うので注意が必要だ。
え、なにこの券売機?
画面、全部ハンガリー語。
「Zóna1」「Jegy」「Érvényesség」って、もう見た目からして呪文。
ポケモンの技名じゃないのこれ。
え、早速ピンチじゃないのかって?
いやいや、ただの想定内の緊急事態である。
でも焦るな、落ち着け。
たいていこういう券売機には、「英語切替ボタン」があるはず!
どこだ…どこだ…ポチポチポチ……
…………
ない。(絶望)
嘘やん。え、令和よ?(当時は2017年1月だが)
英語モードない券売機とか逆にすごない?
ハンガリー、硬派すぎるでしょ。
でも大丈夫。
筆者には最終奥義がある。
その名も──
地元の人に声をかけ、目的地までの切符を買ってもらう作戦
驚くほど自己中心的なマインドだが、筆者の旅人生で何度となく炸裂してきた必殺技でもある。
言葉の壁?文化の壁?
現地人パワーで粉砕☆
よし、そこにいる親切そうな女性に声をかけよう!
筆者「ハロー イングリッシュOK?」
お姉さん「Ööö, én nem beszélek angolul.」
筆者「△△ステーション!!アイウォントゥゴー」
お姉さん「Egyáltalán nem értem, amit mondasz.」
……英語、全く通じないっぽいッ!(;゚Д゚)
いや、ここでひるんではいけない。
第二形態に移行だ!
筆者「ア、ワタシ ジャパンカラ キタヨ!
ジャパン!ユーノウ?ヤパーネー?ハポネ?
ダカラ ハンガリーゴ ゼンゼンワカラナイ
アンダスタン?」
お姉さん「Mondom, nem beszélek angolul!」
周りに日本語がわかる人が一人もいないと思えば、別になにを言っても恥ずかしくなんてない。
さすが母国語、スラスラと流暢に言葉が出てくる。
すると女性、突然周囲をキョロキョロ見回し、近くにいた男性に声をかけた。
その男性、なんと英語が少し話せるという神展開!!!
男性:「You want to go to ○○ station? This one, this ticket. Here, press this.」
YESSSS!!通じた!!!
ありがとう!ありがとう!世界の親切な人たち!!!
ということで、切符無事にゲット!
旅の出だしからハートフルイベント発生で、なんだかちょっと感動すらしている筆者であった。
「地下鉄=危険」ではない
かつて言われていた。
「ニューヨークで地下鉄に乗るのは自殺行為である」と。
だが、時代は変わった。
今や、女性でも、子供でも、あるいは見た目ちょっとヤバそうな筆者でも、地下鉄に単独乗車できる時代が訪れている。
そんな前時代的な偏見を払拭すべく、筆者は夜のハンガリー地下鉄に颯爽と乗車したのであった。
東欧の地下鉄、どこか物語の序盤で主人公が迷い込む異界の入口のような不穏さがある。
車内は、ガラ〜ン。
人がいない。音もしない。気配すらない。
ただし、筆者の妄想はフル稼働である。
「これは…ヤバいんじゃね?」
そう思った瞬間だった。
モヒカン、鼻ピアス、タトゥー、ジャージ、謎のエネルギーに満ちた、いかにも頭の悪そうな若者5人が、まるでストリートファイターの中ボス集団のように、筆者の車両に乗ってきたのだ。
筆者、思わず固まる。
一人の若者、筆者をチラ見して、ニヤリと笑う。
そして、もぐもぐしていたガムを…
プッ
え、こっちに向かって吐いた!?しかもノールックで!?
「終わった」と思った。
このあと財布を取られ、靴も取られ、駅構内でボコボコにされる未来が見えた(※完全なる妄想)。
だが、次の瞬間、向かいのシートに目をやると、女性が一人で読書をしていた。
…え、普通に安全じゃね?
さすがヨーロッパ。
危なそうで、意外と平和。
そうして無事に最寄り駅に到着し、車両から降りる筆者。
暗いホームに一人立ち、辺りを見渡し、静かに呟いた。
「ココハドコデスカ……(´・ω・`)」
急に不安になる筆者だった。
しかし旅はまだ始まったばかりである。
地下鉄名物「絶望的に長いエスカレーター」
地下鉄の車両を降り、地上を目指して歩き始めると、そこに立ちはだかるのが――
もはやアトラクションの域に達した長すぎるエスカレーターである。
筆者、覚悟を決めてこの「登竜門(物理)」に挑む。
見てほしい、この深淵から突き抜けるような”斜め”の異常さ。
地元民はこれを普通に乗っているが、筆者にとってはもはや人生の選択レベルである。
「これ、ほんとにエスカレーター?ケーブルカーじゃなくて?」
「いや、むしろロープウェイの方が良くない?」
「ていうか、なぜエレベーターを作らなかった!?」
などとブツブツ心の中でツッコミながら、静かに上昇を始める。
まるで地獄から天界への昇天の儀式。
おそらく乗車時間は1分以上。
そのうち、気圧で耳が詰まった(※これは気のせい)。
ちなみに、筆者の人生史上最も長いエスカレーターは、2025年2月初めに訪れたジョージアの首都トビリシのAvlabari駅である。
ジョージアの首都トビリシのAvlabari駅
見てくれ、この深さ。
永遠にエスカレーターから出れない気分にさえなったほどだ。
その時のエピソードはこちらで。
本記事では、筆者がジョージアの首都トビリシで見たこと、感じたことを忖度なしで存分にお届けする。 ジョージアなう トビリシへはアルメニアの首都エレバンからバスで約6時間。 エレバンを出発する直前の様子 運賃は4[…]
無事、宿到着。そして風呂。
長い長い「地上への試練」を終えた筆者は、
㋐Google Mapsの道案内のスクショ
㋑謎に信頼しているスマホのコンパス機能
をフル活用しながら、ひたすら歩く。
当然ながら、道を聞く勇気もなく、ここに暮らす人間たちの言語も理解できず、Google先生だけが唯一の友である。
奇跡的に迷うことなく、Airbnbで予約した宿に辿り着いた筆者。
この瞬間、筆者は思った。
「おれ、今日生きてた…!」
荷ほどきもそこそこに、まずはシャワー。
旅の疲れを流し、湯気に包まれながら心の中でこう叫ぶ。
「地球、ありがとう!!ハンガリー、ありがとーーー!!」
そして布団にダイブし、秒速で眠りに落ちる筆者であった。
おやすみ、異国。
おやすみ、自分。
ブダペストの朝は脂とともに始まる
前夜、筆者は無事に深い眠りへと落ちた。
何事もなく朝を迎え、身軽なうちに観光へ出ようと決意する。
なぜなら、チェックアウト後は地獄のWバックパック(前後ダブル装備)を背負ってレンタカーの貸出時刻である21時まで時間を潰すという過酷イベントが待っているからだ。
「体が軽い今のうちに、できる限り地球を満喫しておきたい」
しかし現実は厳しい。
朝のブダペスト――寒い。
なんじゃこりゃ、マジで寒い。
とにかく寒い。
そして筆者、健康志向を気取りつつも、まさかの遅寝遅起きで時間ギリギリモードに突入。
焦りながら、街角で適当に見つけたローカル感バリバリの飲食店に突撃する。
目の前に広がるのは、油光りする茶色い世界だった。
・・・。
筆者は心の中で叫ぶ。
「健康志向ってなんだっけ…?」
栄養が・・・?
あるもの・・・?
当然ながら、英語は通じない。
ハンガリー語なんて読めるわけがない。
訊きたいことも訊けない、こんな世の中はポイズン!
と某ロックバラードを口ずさみながら、筆者は 完全に日本語+ジェスチャーでオーダーを開始する。
「えーっと、これと、それと、あとこれもいっちゃうか。ついでにそれも!」
全部日本語である。
幸い、地元の優しそうなスタッフさんは驚きもせず、うっすら笑顔で対応してくれた。ありがとう、ブダペスト。
揚げ物ガチャ、大当たり!
注文を終え、料理をプレートに載せてテーブルに着く筆者。
が、問題がひとつ。
筆者は魚介類が一切食べられない体質である。
つまり「中身が見えない揚げ物」は命懸けのチャレンジなのだ。
一口パクリ…
「……!?これは……マッシュルームだーーーーーッ!!!!」
運命の女神が筆者に微笑んだ瞬間である。
大ぶりなマッシュルームをサクサクの衣で包んだ揚げ物。
体に良いのか悪いのかは知らないが、とにかく賭けには勝った。
カロリー?脂質?知らん。
そんなのドナウ川に流してしまえ!
寒い国の宿命、それは脂と氷
ヨーロッパの料理が脂っこいのは、この寒さ対策のためだと筆者は結論づけた。
なにせ、後述するがドナウ川の一部が凍っていたのである。
ブダペスト、恐るべし。
北海道より北という事実に戦慄しつつも、朝食で得たマッシュルームパワーで本日も全力で旅を楽しむ所存である。
いかにもヨーロッパなビル
さあ、アパートに帰って来た。
昨日の夜、疲労困憊の身を引きずりながらも、似たようなビルが無数に林立するジャングルのような街で、一棟の建物の入り口にたどり着いた。
ここでパスワードを入力するという、まるでスパイ映画の主人公のような任務を遂行したのである。
だが、それは始まりに過ぎなかった。
エレベーターとも言い難い、謎の「昇降装置」に乗り込み、まるで異世界への扉を開けるかの如く、意味不明な廊下を彷徨い続けた。
そして、もう一度パスワードを入力し、秘密の部屋の扉をこじ開けた瞬間、我が心は高鳴った。
「オレ、結構やるじゃないか」と、自画自賛するしかなかったのである。
世界一美しいマクドナルド
チェックアウト完了。
いよいよ筆者、過酷なバックパックW装備状態で街をさまようフリータイムに突入する。
肩と腰に全体重の半分くらいの荷物を食い込ませながら、目指すはブダ城。
地図上では大した距離に見えないが、リアルでは徒歩&荷物込みでほぼ拷問である。
推定1時間。
歩き始めて数分、異国の駅舎らしきものを発見。
「お、ブダペスト西駅(Nyugati pályaudvar)発見」
そしてその西駅の中にあるのが、かの有名な――
世界一美しいマクドナルド
である。
ここはただのマックではない。
19世紀に建てられた歴史的建築、ガラスの天井と装飾美に包まれた奇跡のハンバーガー空間。
ここで、筆者は1週間後の運命的な再会を約束していた。
その相手とは――20歳になりたての旅仲間、エリ。
モデル級の美貌を誇るエリ(←これは言い過ぎか…?)
筆者の人生に登場した女性の中でもトップクラスの美人(←これは本当)
しかし彼女のヨーロッパ渡航計画は、ご両親の猛反対によりガチの未定だった。
母「ヨーロッパ?危ない!絶対だめ!」
父「娘を一人でなんて絶対に行かせん!ましてや彼氏でもない男と同行するなんてもってのほかだ!!!」
筆者(心の声)
「その反応、親として100点…!!」
エリ「RYOさん、わたしが両親を説得するので必ずブダペストで会いましょうね」
筆者「2017年1月31日(火)、ブダペスト西駅のマクドナルドで昼の12時に待ってる。30分待っても来なかったら、”両親を説得できなかった”と判断して一人で出発するわ」
エリ「(;゚д゚)ゴクリ…了解しました!」
今のようにどこでもWi-Fiが飛んでいる時代ではない。
バックパッカーにとって、通信環境とは天候と同じで運任せ。LINE?メッセンジャー?そんなの通じない場所も多々ある。
これはロマンか、それともただの賭けか。
筆者とエリ、再会なるか?
乞うご期待。
ドナウ川が凍っている
筆者、ブダペスト西駅にある世界一美しいマクドナルドを──
素通り。
ええ、素通りです。
荷物が重すぎて座ると立ち上がれなくなる恐れあり。
それに、エリとの「伝説の再会」は来週。
今はただの前フリに過ぎない。
ということで、背中と腰に爆弾(バックパック✕2)を抱えながら、駅を離脱。
目指すは、ブダ城のある「丘の向こう側」
──つまりドナウ川を渡る必要があります。
橋の途中で、筆者、ふと立ち止まる。
おーーーーー!!!!
ドナウ川の一部が凍ってる!!!!
しかも、ただの静止した氷じゃない。
流れてる。
ゆっくりと、氷の“島”が、川の上を漂っている(;゚Д゚)
どこかで聞いた「美しき青きドナウ」。
その名に恥じない景色が、目の前に広がっていました。
そしてその流れる氷の島の上には──
なんと、小鳥がちょこんと休んでる。
エンジンもブレーキもない天然の流氷ベッドに、羽を休める数羽の鳥。
筆者、思わずほっこり。
ヨーロッパの寒さを改めて実感しつつ、ほんの一瞬、小さな癒しに包まれたのだった。
ヨーロッパでは「公園で筋トレ」が普通
ドナウ川にかかる立派な橋、マーガレット橋を渡っていると──
橋の下に、なにやら広がる緑の空間を発見。
「おっ……あれは……公園では!?」
荷物の重みで崩壊寸前の背骨にムチ打ちつつ、橋を下りてみると──
あった、公園!
これは、やるしかない。
もちろん、ここで筋トレしましたよ(ドヤァ)
旅の途中でも筋トレは欠かさない。
筋肉は裏切らない。
プロテインは水に溶けづらい。
それが我々、ボディビルダーの宿命。
……え?
筆者、別にボディビルダーじゃない??
そんな細かいことはどうでもいいんです( ゚Д゚)
筋トレできる環境があったらやる。
そしてまさかの未来予告──
実は…
1ヶ月後、ここでテント張って寝る。
ええ、あの橋の下で。
テント張って、ガチで一泊する。
覚えておいて頂きたい。
このマーガレット橋下公園、ただの公園じゃなかった──
そう、筆者の“人生イベント会場”だったのだ。
つづく──。
ブダ地区とペスト地区
「ブダペスト」という地名は、「ブダ地区」と「ペスト地区」が合体してできた都市名である。
これはすでに多くの人が知っている基本知識の一つである。
筆者は「この線より北は○○、南は△△」といった、エリアの境目に異様なロマンを感じるタイプである。
国境、県境、都市の分かれ目──
そういった人為的・地理的な線を越える瞬間に、妙な高揚感を覚えるのだ。
誰も止めてはいない。
だが、筆者の中ではいつも一大イベントである。
先ほどまでいたのはペスト地区。
そして今、筆者はドナウ川を越え、ブダ地区へと突入した。
これにて正式に「ペスト側の人間」から「ブダ側の人間」へジョブチェンジ完了である。
ハンガリーの国会議事堂
先ほどのマーガレット橋からブダ城まで、ドナウ川沿いをゆっくりと散策した。
…とは言っても、これは「散策」などという優雅な言葉で表現してよいものではなかった。
その実態は、荷物地獄の苦行である。
距離にして約2.7km。
だが、筆者の背負っていたバックパックは、前後あわせて40kgを超えていた。
そりゃあ、しんどいはずである。
地獄の荷物内訳
では、その重さの内訳を公開する。
想像以上に「ガチ」だ。
- 野宿のためのテント
- 寝袋✕2
- マットレス✕2
- 調理用器具一式
- 厳冬期登山用の登山靴
- 地ならし用の折りたたみスコップ(鉄製)
- アイゼン
- カメラ装備一式
- 湯たんぽ✕2
- その他着替えや一般的な持ち物
まさに、旅人というよりも小型の探検隊である。
街歩き用の装備では決してない。
歩き出してすぐにこう思った。
「もう日本帰っていい?」
国会議事堂が見えた瞬間、それを口実に再び休憩を取った。
実際にはそれまでに何度も小休止している。にもかかわらず、だ。
バックパックが重すぎるということは、それだけで「やる気」や「テンション」を確実に削ってくる。
先輩バッパーからの忠告
ヨーロッパ旅行を考えている人間に対して、ここで一つ強く言いたい。
西洋建築の知識は絶対に勉強しておくべし。
美しい建築群を目の前にして、何も知らずに通り過ぎるのは本当にもったいない。
筆者は事前にしっかり学んだおかげで、建物一つひとつに物語や歴史を感じることができ、旅の充実度が段違いであった。
興味のある方は、こちらの記事にて詳しく解説しているので参考にしてほしい:
ヨーロッパ約30ヵ国をバックパッカーとして旅をしていたある男がいた。 帰国後、その男は徐々にある大きな後悔に頭を抱えるようになった。 なんで西洋建築を勉強して行かなかったんだ と。 西洋建築を勉強した[…]
セーチェーニ鎖橋
ブダペストで特に有名な橋といえば、やはりセーチェーニ鎖橋であろう。
この壮麗な橋のブダ側に位置するのが、クラーク・アーダーム広場。
ここはなんと、ハンガリー国内すべての道路の起点「0キロメートル地点」とされている。
まさに、ハンガリーの「道のはじまり」がここにあるのだ。
そして橋の向こうに、目的地であるブダ城が姿を現し始めた。
「お、見えてきた。」
だが、いったん冷静に考えてみたい。
ブダ城は当然ながら、小高い丘の上に築かれている。
アクセスには階段や斜面を上らなければならない。
そして筆者の現在の状況は──
- 背中には計40kgのバックパック
- 朝食は正体不明の揚げ物
- 昼食、まだ
つまり、もう限界である。
「うん、これはもう先に食事にしよう(笑)」
空腹と重荷と坂道。
この三重苦の状態でブダ城に突入するのは無謀というものである。
腹が減っては戦ができぬ──
まさにそのとおりである。
ハンガリー料理
ハンガリー料理で特に有名なのが「グヤーシュ」と「ジプシーステーキ」である。
日常的な言葉に置き換えれば、いわば「ビーフシチュー」と「ポークステーキ」と言えるだろう。
グヤーシュ
グヤーシュとは、ハンガリー風のスパイシーなシチュー料理である。
パプリカの粉末をベースに、牛肉・玉ねぎ・じゃが芋・人参などを煮込み、さらに「タルホーニャ」と呼ばれる粒状のパスタ(団子状の穀類)も加えられる。
これが実に体を温めてくれる。
写真からも美味しさが伝わってくるだろう。
実際、筆者もこの瞬間からグヤーシュをヨーロッパ料理の中で最も好きな料理と認定した。
しかも、パン付きで約590円という破格の安さである。
この価格でこの味、そして観光地という立地を考慮すれば、まさに驚異的としか言いようがない。
ジプシーステーキ
次に紹介するのが、ハンガリー名物とされる「ジプシーステーキ」である。
ステーキの上には脂身のついた豚肉の薄切りが数枚、焼かれて乗っていた。
見た目はなかなかワイルドで迫力があるが、肝心の味はというと──
「(小声)……正直、まったく美味しくなかった。」
ジプシー
ヨーロッパ各地を転々とし点在する民族。
そこから差別的に浮浪者という意味もある。
※イタリア人の奥様曰く「ジプシーは浮浪者という意味やから別に特定の民族を差別しているわけではない」との事である。
※イタリア人奥様はたまに「汗臭い」ことを「ジプシーみたいな臭い」と表現する。
マイノリティに対する差別的な言動を嫌う奥様なので、「ジプシー=差別的」という意味でもないのだろう。
さて、どうでもいい話で盛り上がり過ぎてしまった。
ジプシーステーキの話に戻そう。
まず脂身が主張しすぎており、肉は完全にパサパサ。
味付けもされておらず、脂そのものを食べているような感覚だった。
咀嚼するごとに広がる豚脂の生々しい味。
だがこれで価格は1,000円未満。
観光地のレストランとしては、依然として「安い」と言えるだろう。
ちなみに参考までに、過去にフランス・パリのシャンゼリゼ通りで食べた「普通のカルボナーラ」は27ユーロ(約4,300円)であった。
パスタ一皿4,300円!!!!
パスタ一皿にしては常軌を逸した価格である。
子どもが冗談で付けたような値段だ…。
食後の紅茶
食後は温かい紅茶を注文した。
提供されたのは、普通のティーバッグにレモンスライスを添えただけの一杯である。
見た目は上品に見えるが、内容は極めて質素。
わざわざお金を払って飲むほどのものではなかった。
金色の街「ブダペスト」
実のところ、あれこれしているうちに夕暮れが近づいていた。
とはいえ、レンタカーのピックアップ時間である午後9時までは、まだかなり余裕がある。
というわけで、ブダ城へ少しずつ登ることにした。
ヨーロッパでは日が傾いてから暗くなるまでが非常に早い。
気が付けば、辺りはすっかりこんな暗さである。
※すでに薄暗く、街灯が灯り始めるブダペストの風景
のんびりしすぎていると予定に遅れる可能性があるため、写真を撮ったら足早にレンタカー屋へ向かう。
筆者はもともと「金ぴかの街」にはあまり好感を持っていない。
とはいえ、ブダペストの夜景には思わず感嘆した。
「ドナウの真珠」と称される街だけあり、ライトアップされた街並みは確かに美しい。
金ぴかピンとは、街全体が宝石のように光り輝く夜景の状態を指す、筆者なりの表現である。
ブダペストは確かに「映える」街であり、夜景が映える都市景観の代表格といっても過言ではない。
とは言え、やはり筆者は人工的な夜景よりも、山とか海の自然が作り出す景色の方が断然好き、ということを再確認したうえでレンタカー屋に向かう。
夜景に見とれつつも、レンタカー屋へ向かう時間が近づく。
最寄り駅の名前は相変わらず読めなかったが(笑)、駅からは徒歩でレンタカー屋へ向かうこととした。
街のあちこちで金色に光る建物を横目に、筆者は静かにブダペストの夜と別れを告げたのである。
ブダペストのレンタカー屋「BeeRides」
ブダペストで訪れたレンタカー屋の名前はBeeRides(ビーライズ)であった。
初めはブダペストでのレンタカー屋を適当に探していたが、その中に圧倒的な安さと条件の良さを誇るこのBeeRidesがあり次第に心惹かれ始め、結局は予約に至ったというわけだ。
実際に借りた車はSkoda Fabia(シュコダ・ファビア)というモデルで、それまで一度も聞いたことのない車種であり、レンタカー屋の前で車を見た瞬間、
「なんだこの車…?」
と、正直なところ軽く戸惑ったのを覚えている。
しかしながら、走行性能や燃費に特別な問題はなく、旅の相棒としては必要十分な一台であったと言える。
※2025年5月現在、BeeRidesは完全に廃業してしまった模様。
ミッション車コワイ
BeeRidesに到着後、レンタカーの借入手続きを終えた筆者は、スタッフに連れられて駐車場へと案内された。
そこには数多くの車が並んでおり、その中の一台、白くてスタイリッシュな車が筆者の車両であると告げられた。
車の前に立ち、思わずこう呟いた。
「なんやこの車」
自動車大国ジャポン出身の筆者にとって、大した車ではないとすぐにわかった。
スタッフは一通りの説明を済ませると、車のカギを筆者に手渡し、事務所へと戻って行った。
筆者はというと、その瞬間からパニック状態であった。
理由は二つ。
- 教習所以来、約6年ぶりのマニュアル操作(MT)
- 運転席が左、シフトが右といった、日本とは逆の配置
結果――。
何度もエンストを繰り返し、5分間で1ミリも動けなかった。
その光景を見かねたスタッフが、不思議そうな表情を浮かべながら戻ってきた。
そして筆者に向かってこう言った。
「ぼくが横に乗って教えてあげるから、時間あるなら10分くらい練習する?」
まさに神対応。筆者は即座にこう返答した。
「お願いしますうぅぅぅぅぅ…」
こうして、BeeRidesの兄ちゃんから直々にマニュアル車の運転レクチャーを受けるという、想定外の展開に突入した。
エンジンのかけ方、クラッチのタイミング、坂道発進のコツまで、いろいろと操作を教えてもらいながら実際の車道へ出た。
するとスタッフが言った。
「とりあえず大丈夫そうだね。じゃあ、レンタカー屋に帰ろうか」
そうして一度レンタカー屋に戻り、ここから――
筆者の人生初となる、レンタカー旅が始まった。
後日談になるが。
1週間後、筆者は見違えるような運転技術でBeeRidesへ戻ってきた。
しかし、車両にはホイールカバーが一枚欠けているという、ささやかな異変があった。
右側前輪のホイールカバーが無くなっていた(笑)
それを見たスタッフは、半ばニヤけながら筆者を出迎えた。
その表情は明らかにこう語っていた。
「お前、絶対なんかやったやろ(笑)」
しかしそれはまた別のお話である。
レンタカーで一週間スロヴェニアへ
さて、これよりレンタカーでスロヴェニアへ向かう。
滞在期間は1週間。
筆者の次なる目的地であり、今回の旅で最も楽しみにしていた場所の一つでもある。
スロヴェニアでは、筆者を待っている人物が3人いる。
友人のニーナ
オンラインフレンドのクリスティーナ(初対面)
オンラインフレンドのモニカ(初対面)
いずれも女性であり、筆者にとっては“可愛い女の子リレー”とでも呼ぶべき展開が待っている。
ヨーロッパの名前にまつわる豆知識
豆知識として記しておくと、ヨーロッパの女性名は「-a」で終わるものが非常に多い。
以下にその一部を挙げておく。
Nina, Kristina, Monica, Julia, Anna, Elenoa, Lea, Bianca, Laura, Crysta, Anja, Sophia, Clara, Flora, Cecilia, Fana, etc…
この中には、筆者の妻の名前、そして将来もし娘が生まれたら名づけたいと考えている名前(2025年現在では実際に名付けた名前)も含まれている。
どの名前かはあえて伏せるが、どれも響きが柔らかく美しい。
この3人のうち、結局1人とは会えずに終わることを――。
そしてドライブすること約1時間半。
ホワイトバランスの関係で黄色く見えるが紛れもなく筆者の白いレンタカー
そしてこの日の夜は、よくわからん駐車場で恐怖心を抱いたまま車中泊をする筆者であった。
おわり。
本記事は、2017年に行ったヨーロッパ一人旅の記録を振り返るものであり、スロベニアでの滞在を中心に、当時の思い出をゆるりと綴っていく。 世界最古のワインの木と呼ばれている 旅の期間は2017年初頭、およそ1か月。 東欧[…]
また、ヨーロッパでレンタカーを借りる際に気を付けるべきことをまとめたので、興味がある方は是非。
はじめまして、RYOです。 今回はヨーロッパでレンタカーを借りる方法、そして必ず知っておくべき注意点について詳しくまとめました。 筆者は6年前(=2017年)にハンガリーで、フランスで、ドイツで、そしてアイスランドでレンタカーを[…]