本記事は、2017年に行ったヨーロッパ一人旅の記録を振り返るものであり、スロベニアでの滞在を中心に、当時の思い出をゆるりと綴っていく。
旅の期間は2017年初頭、およそ1か月。
東欧・バルト三国・アイスランドなど、これまで訪れたことのなかった国々を巡る冒険だった。
今回の旅には、
- 旅仲間(以下「エリ」)との同行
- 初めてのレンタカー運転
- 人生初のテント泊
という3つの大きな挑戦があり、まさに忘れがたい出来事の連続であった。
本記事では、その旅の始まりから順に振り返っていきたい。
マリボル離脱、そして孤高のディナー
Ninaと結局会えず、少々肩を落としながらマリボルを後にした筆者。
しかし空腹は待ってくれない。
ということで、スーパーで購入しておいたステーキとスープの素でディナーを決行することにした。
「悲しみは胃袋で癒すしかない」
というわけで、豪華なディナー(in 車内)がこちらである。
筆者は筋金入りのレアステーキ信者である。
海外であろうと、寝床が車内であろうと、
「表面焼ければOK」という鋼のメンタルで、今回もバッチリ仕上げた。
食事のあとは、歯磨き&就寝準備。
当然、宿などという贅沢なものはない。
筆者の宿は、もはやおなじみ「ハウルの動く城号」(=レンタカー)である。
寝袋に潜り込み、顔はしっかり隠す。
理由は簡単。
顔が見えたら、何されるかわからないからである
(※誰に?とは訊かないでほしい)
夜は静かに過ぎ、無事に朝を迎える。
ヨーロッパの夜は案外安全…なのかもしれない(たぶん)
起床後、身支度を整え、いざリュブリャナへ!
改めてナビを見ると、マリボルからリュブリャナまではたったの120kmちょい、車で1時間強。
「昨日の移動時間、何やったんや…?」
などと軽くツッコミを入れつつ、現地へ向かう。
リュブリャナでオンラインフレンドだったKristinaと待ち合わせしていたのが、Atlantis(アトランティス)というサウナが併設するモールの大きな駐車場でした。
筆者はこの日、Kristinaとお昼の12時に会うつもりでいた。
…が、ここでとんでもない思い違いが発覚する。
サウナは素っ裸が基本
リュブリャナに到着したのは朝の9時頃。
ブダペストに着いてからというもの、【車中泊×2+移動日】ですでに3日間風呂なし。
このままでは“人間”ではなく“野生”に戻ってしまいそうだった。
サウナ施設「Atlantis」へ突入
向かった先は、サウナ・スパ・プールが揃った大型複合施設「Vodno Mesto Atlantis(アトランティス)」。
入場料は約2,000〜3,000円程度と記憶している。
アトランティスに入り、まずは利用する施設(コース)を選んでお金を払って、ロッカー室で普通に着替えてバスタオルを腰に巻いてシャンプー付きのシャワーで体を洗った。
めっちゃ気持ちいやん!!!??
長らく忘却の彼方に押し込まれていたシャワーの快感が再び蘇る。
気持ちよすぎるのだが。
ってことで、とりあえずリフレッシュはできた。
今からサウナで汗でもかこかな〜と、子供たちがプールで遊んでるのを横目に見ながら奥のサウナエリアに向かう。
(出典:Vodno Mesto Atlantis)
目の前には、日本と似たようなガラス扉のサウナが登場。
バスタオルを腰に巻いたまま入ろうとした瞬間、ドア横の案内板にバスタオル禁止のピクトグラムが…。
(。´・ω・)ん?
「バスタオル禁止」だと…?
ん、水着ってことか?
いやどっちにしろ持ってきてないのだが。
「まあ思いっきり見た目アジア人やから大目に見てくれるやろ」
と、いつもの甘えた考えでバスタオルのまま中に入った。
ドアを開けると、そこにはまるで「Google画像検索 “sauna naked”」の世界。
全裸で談笑している男女の姿が目に入ってきた。
「おぉぉおーーーー……ソーーリーィィイ!!!」
と、条件反射で小声の謝罪。
慌てて退室し、再度看板を確認。
どう見ても「バスタオルNG」のマークがそこにある。
つまり…素っ裸が正装というわけだ。
勇気を出して再入室
再び中に入り、気配を消しながら端っこにちょこんと座る。
すると、スロヴェニア語で年配の男性が声をかけてくる。
「ここはバスタオル禁止だよ」
筆者(心の声)「ですよね〜…でも脱いだら素っ裸やで?ええの?どういうこと?」
だが周囲は至って自然。
最上段では女性が大の字で就寝しており、誰も動じない。
室内はやや暗め。
男女が共に全裸で過ごすには、照明を落とすのがマナーなのかもしれない。
とは言え、目が慣れてくると普通に見えるので注意が必要である(笑)
(出典:Getting naked with 40 strangers: the sauna culture of Austria)
とにかく全裸で体を温める。
周囲に馴染むように静かに座っていると、徐々に目が慣れてきた。
その時――
最上段の3段目で全裸の女性が大の字で寝ている光景が目に飛び込んできた。
思わず「おおっと」と心の中でつぶやく。
驚きつつも一度サウナを出て、別の部屋に移動する。
だが、そこでもバスタオル禁止の表示が掲げられていた。
欧米では、サウナにおける“全裸”が基本ルールらしい。
なるほど、これは貴重な経験になった。
文化の違いを肌で感じた瞬間であった。
余談だが、筆者は以前サウナの本場フィンランドを訪れ、「サウナに行く前に知っておきたかったこと」をまとめている。
興味があれば以下の記事も参考になるだろう。
突然ですが皆さん、サウナは好きですか? 筆者はというと、もう大・大・大好きです! できることなら「サウナ → 水風呂 → サウナ → 水風呂 → …」という無限ループに一生ハマっていたい。 むしろ、サウナに[…]
サウナを4~5箇所はしごし、最後に外のプールへ飛び込む。
外気温は-6〜-8℃。
当然ながら、地元の人は誰一人入っておらず、貸切状態である。
冷たい空気と温まった体のコントラストが心地よく、
「これぞサウナの醍醐味」と実感した瞬間だった。
サウナにいたのはみんなおじいちゃんおばあちゃんである。
一人だけブロンド美女がいたが、下心全開で期待はしない方が良い。
Kristinaとの約束、まさかの大勘違い
サウナを終え、脱衣所で着替えてからAtlantisのWi-Fiをつなぎ、スマホを確認すると、10:05にKristinaからのメッセージが届いていた。
"I’m here :)"
日本の(^_^)や(´ω`)に近いニュアンスだ。
(。´・ω・)ん?
「でも今はまだ11:15だぞ…」
メッセージを見返すと、集合時間は10時だった。
完全に時間を勘違いしていたようだ。
慌ててAtlantisを飛び出し、約束のゲーセンっぽい建物の入口に向かうと、Kristinaが笑顔で手を振っている姿が見えた。
「1時間30分も待ってくれていたのか……音信不通の相手を。」
申し訳なさと安堵が入り混じった瞬間だった。
だが、何はともあれ――ようやく会えたわけだ。
「:)」や「:-)」などの顔文字は、欧米ではカジュアルな好意やフレンドリーさを表す手段として非常に一般的である。
日本人にとってはやや無機質に見えるかもしれないが、現地ではむしろ温かい気持ちの表れと受け取るべきである。
早速ですが問題です。 まずはこちらの英文にある緑線の部分を解読してください↓ ⑴ Gruz got!!! :p oh thank you so so much(中略)and thank you so so so much M[…]
日本の車はやはり綺麗
筆者のレンタカーは駐車場に置いたまま、Kristinaの車に同乗してリュブリャナ中心部の観光へ出発することになった。
以下の写真に写っている車が彼女のものである。
Kristinaの自動車
ぱっと見、日本人ならこう思うかもしれない。
「泥まみれやん、きったな……」
確かに日本の感覚では、
「いや、そこまで汚れる前に洗車するやろ」
「普通に週一で洗うやん」
と思ってしまうかもしれない。
だが欧米ではこれが普通である。
アメリカではもっと衝撃的な車を日常的に目にする。
- 割れたフロントガラスにサランラップや段ボールを貼って走行
- ドアが凹んだままでも気にせず使用
- ボンネットの色が部分的に剥げているのも日常茶飯事
このように、車の外見に対しては驚くほど無頓着である。
ちなみに2025年2月に旧ソ連構成国のアルメニアとジョージアに訪れた時に筆者が目にしたものがこちらだ。
(筆者撮影)
これらは自動車修理工場に入庫した修理待ちの自動車ではない。
普通に街中を走り回っている車たちだ。
まさに「自動車=走ればいい」を体現している。
当時のエピソードはこちらで紹介している。
日本の常識は世界の非常識である。 これは日本では非常に一般的な表現であり、概ね正しいと思う。 これから筆者がアルメニアで見たこと感じたことを紹介していこうと思う。 アルメニアについてより詳しく知りたい方は、一問一答[…]
本記事では、筆者がジョージアの首都トビリシで見たこと、感じたことを忖度なしで存分にお届けする。 ジョージアなう トビリシへはアルメニアの首都エレバンからバスで約6時間。 エレバンを出発する直前の様子 運賃は4[…]
よって、欧米で多少車が泥だらけでも、それを指摘したり嫌悪感を示したりしない方が無難である。
文化の違いとして受け入れた方が、気持ちよく旅を続けられる。
【方程式?】川に囲まれた街は美しい
スロヴェニアの首都リュブリャナは、リュブリャニツァ川が中心部をぐるりと囲むように流れている街である↓
このような構造の町はヨーロッパに多い。
例えば、「世界一美しい町」とも称されるチェコ・チェスキークルムロフも同様である↓
町をよく見ると、川が街を包み込むように流れているのが分かる。
このような「川に囲まれた街」は、例外なく美しい。
まるで建築や都市設計における黄金律のような存在である。
展示されていたリュブリャナの都市模型を見て、ふと思い出したのが映画『The Day After Tomorrow』だ。
首都リュブリャナの都市模型
氷河期に襲われた未来のリュブリャナ——すべての機能が麻痺し、静寂に包まれた街を想像してしまった。
このような都市のジオラマや模型には心を惹かれる。
その町の構造や歴史、息遣いが凝縮されており、見るたびに旅への興味が深まる。
模型好きな人間にとっては(←筆者のことではないが)、こうした展示はまさにご褒美である。
スロヴェニア料理を堪能する
腹が減っては楽しい会話もできず、どこかでスロヴェニア料理を味わいたいところだ。
そこで目に留まったのがこの看板。
レストランの名は「Gostilna Sokol」。
この看板が決め手となって中に入ってみた。
Restaurant Sokol (Gostilna Sokol) opened in 1870. Serving Sl…
「Gostilna Sokol」は直訳すると「鷹の食堂」となるが、実際のニュアンスは不明。
おそらく「食堂界の雄」といった意味合いか(※適当)。
謎のパンシチュー
メニューがよく分からなかったため、注文は彼女に一任。
そして頼んでくれたのがパンシチュー(正式名称はわからず)
パンを器にしたシチュー料理である。
パンは手の平よりも大きく、その中をくり抜いてシチューを注いでいる。
これ一品で十分なボリュームのある主菜級の一皿だった。
見た目は赤いミートソースやカレーのように見えるが、実際は薄茶色のクリーム系シチュー。
筆者はこれを前菜感覚で食べていたが、後から考えればしっかりメインである。
ブラック・ソーセージ
(ブラッド・ソーセージ)
Kristinaが半笑いで「まだ食べられる?」と尋ねてきた。
筆者は「普通に食べられるけど」と即答。
高校・大学時代に比べると30歳を超えて食事量は減ったが、それでも普段の食事量はうどん750g、ご飯なら650gが基準である。
未だにココイチのライス1300gを完食できる自信はあるほどである。
するとKristinaは、さらにもう一品注文。
料理はどれも美味しく、大満足…のはずが、ここで試練が訪れた。
ブラックソーセージ(ブラッドソーセージ)
豚肉の血をたっぷり混ぜて作ったソーセージ
血液以外にも内臓や舌、皮、脂肪などの赤身肉以外の部位を豊富に使っているソーセージ
噂では聞いていたが、まさかこのタイミングで出会うとは思わなかった。
正直なところ、筆者にはかなりハードルが高い味だった。
(出典:German Blutwurst (Blood Sausage) Recipe)
しかもKristina自身もそれほど好きではなかったらしく、皿には手つかずのソーセージが残り、そのまま下げてもらうことに。
頑張ってここまでは食べた…。
「…あー、残してしまった。ごめん豚さん(ブヒーー)」
Kristinaはメイン料理を2皿平らげた筆者の食欲に思わず笑いをこらえていた。
(´-`).。oO(いや、まだまだいけるけどね)
「クリちゃんよ、普段の筆者がどれだけ食べるか、わかっていないようだな(笑)」
そんなことを考えながら、スロヴェニアでの食体験を味わったのであった。
Slovenska Hišaでお茶を
昼食後は、ヨーロッパではおなじみの「食後のお茶 or コーヒータイム」。
訪れたのは、Slovenska Hiša(スロヴェンスカ・ヒーシャ)という店。
名前の意味は「スロヴェニアの家」。
V vsakem grižljaju se skriva del Slovenije – iz domače kuhin…
店名から察するに、スロヴェニア人にとっての“心の故郷”のような存在を目指しているのだろう(※完全に推測)。
てんとう虫、てんとう虫、またてんとう虫。
この店で使われているカップや皿には、なぜかてんとう虫のデザインが多用されている。
よく見ると、赤地に白玉模様。
「なぜスロヴェニア=てんとう虫なのか?」という疑問が湧く。
実は、京都・太秦にあるスロヴェニア料理店「ピカポロンツァ」でも同様のてんとう虫モチーフがあふれていた。
京都市太秦にあるスロベニア料理店
メニューにも可愛いテントウちゃんがいっぱい。
テーブルのインテリアも可愛いてんとう虫ちゃん。
などと思いながら、美味しいお茶を頂きます↓
またもやてんとう虫の柄です。
ChatGPTに「スロベニアとてんとう虫の関係は?」と訊くと、
と回答されたが、Googleで検索するとスロベニア国花は「コムギ」とのこと。
(出典:世界の国花 SI スロベニア)
「うそん?コムギ???」
と思って、英語で「Slonvenia national flower」と検索すると「レッドカーネーション」と回答された。
(出典:National symbols of Slovenia)
つまり、サイトによって記述がバラバラである。
国花が何なのかすら諸説あるスロヴェニア、実にミステリアスである。
いずれにせよ、美味しいお茶をいただきながら、てんとう虫の可愛らしい模様に囲まれ、スロヴェニアの空気を存分に味わうひとときであった。
リュブリャナ城
食後のティータイムを終え、次なる目的地はリュブリャナ城。
クリスティーナに「階段とケーブルカー、どっちがいい?」と訊かれたため、迷うことなく「Hiking!」と答え、自らの足で登ることにした。
リュブリャナ城の歴史は1144年まで遡る。
城の構造は、王族の居城というよりも要塞(フォートレス)に近い印象であり、第二次世界大戦中は刑務所としても使われていたという。
いわゆる「中世の華やかな宮殿」とは異なる、実用的な設計が特徴である。
ケーブルカーの利用も可能だが、今回は階段ルートを選択。
氷で滑りやすい坂道を慎重に登ることおよそ15分。
それほど時間をかけず、あっという間に頂上へと到達。
展望台からはリュブリャナの街並みが360度見渡せるが、当日はあいにくの悪天候。
せっかくのパノラマビューも霞んでおり、写真すら撮らずに終了した(笑)
駐車場をバックに、リュブリャナ城の頂上で1枚だけパシャリ。
その後、城を下ってプレシェーレン広場と龍の橋を見学し、最後にクリスティーナが経営するビューティーサロンへと向かう。
ちなみに…天気が悪いとテンションもやや下がり気味である(;^ω^)
Kristinaが運営するビューティーサロン
もうすっかり夜。
周りは真っ暗で、目を開けてても何も見えない状態である。
そんな暗闇の中、Kristinaが運営するビューティーサロンへ突撃した。
ちなみにKristina、筆者と同い年の24歳。
若さ溢れるのに個人事業主としてバリバリ自分でビューティーサロンを切り盛りしているらしい。
ここで「若いのにスゲーな」と心の中で10回は言った。
それに、
筆者の人生でビューティーサロンと触れ合う機会なんて絶対にないと思っていた。
だって男だし、化粧品のCM見て「ふーん」ってなるだけだし、そもそもビューティーさ0で24年間やってきた筆者である。
だが、この日Kristinaはなんと、筆者と会うためにわざわざサロンを休業し、一日中ガイドをしてくれたのだ。神か。
Kristinaは大の日本ファンで、まだ日本に来たことはないが、もうすぐ日本を訪れるとの連絡を受けている(※コロナ騒動で中止)
サロンの名前は超シンプル、「KRISTINA」。
KRISTINA(クリスティーナ)
自分の名前をそのまま店名にしてしまう潔さよ。
看板や内装は「竹=日本」をイメージしたデザインで、友人のデザイナーにお願いしたらしいが、その看板が予想以上にカッコよくて「竹ってこんなにイケてるのか」と思った。
店に入ると竹が至るところに使われていて、まるで竹林の中にいるかのよう。
だが目に入ったのは、見たこともない美容器具たち。
筆者はずっと「これ何?どうやって使うの?」を連発。
まるで異世界に迷い込んだ気分。
デザインセンスも感じられるKristina
竹ってこんなにオシャレだったのか
「せっかくだし30分のマッサージでもやろっか」と言われ、半信半疑ながらパンツ一丁でベッドに横になる。
緊張したが、数時間前にサウナで裸になっていたので「まあ、いっか」と思い脱ぐ。
すると、超いい匂いのオイルを背中に塗りたくられ、リンパ?流れ?に沿ってマッサージが始まる。
店内にはヒーリングミュージックが流れ、気づけば筆者は爆睡。
自分がいつ寝たのかもわからなかった。
「めっちゃ気持ちいい!」と感動し、なんか高級なアロマオイルとかも使ってもらったっぽいので、「お金払わせて!」と言ったが「大丈夫大丈夫」の一点張り。
お金の話は謎のまま終了した。
リュブリャナに行くなら、Kristinaのビューティーサロンはマスト訪問だ。
ウェブサイトもクールで見てるだけでテンションがぶち上がる。
なんでこんなにオシャレなのだ。
サロンを出た後は、Kristinaが近場の観光地まで案内してくれた。
ガイドから施術まで、もはや一人で何役こなすのかというレベル。
しかも終始にこやかで、気配りも完璧。
こんな人が24歳でサロンを一人で立ち上げ、経営してるなんて本当に尊敬しかない。
プロフェッショナルとはこういう人を指すのだな、と痛感した。
彼女の働きぶりと人柄に、心から拍手を送りたい。
いや本当に、人生には思いがけない素敵な出会いがあるものである。
KristinaのHiša
そうそう、覚えているだろうか。
「hiša(ヒーシャ)」とはスロヴェニア語で「家」を意味する単語である。
そしてこの日はその名の通り、Kristinaの“ヒーシャ”にて夕食をご馳走になるという、まさかの超VIPホームステイイベントが発生した。
しかも、筆者は堂々の1時間半遅刻。
普段「筆者は世界一時刻に厳しい国ジャポンから来た、その中でも時刻に厳しい方の人間である。遅刻などあり得ない。」などとほざき、海外の時間のルーズさにぶちギレていたほどだが…。
今回は日本人としてあるまじき失態である。
だがKristinaとその家族は温かく迎えてくれた。
どうやらKristinaのお母さんが、筆者のためにせっせと食事を準備してくれていたらしい。
なんて優しさ……遅れて行った筆者の顔には「感動」と「申し訳なさ」が8:2の割合で浮かんでいた。
そしてこの家には、もう一つの主役がいた。
Kristinaの飼っているアラスカン・マラムート、名はAres(アレス)。
もはや犬というより毛むくじゃらの中型グリズリーである。
でも、人懐っこくて、めちゃくちゃ可愛い。
筆者は「ほんまにこのサイズの動物、本気出せば人間1人くらい余裕で仕留められるやろ」と思いながら、Aresの頭を撫でていた。
興味あれば以下の記事もお読み頂きたい。
(オオカミが大きくて悪い動物ではない理由)
Here’s Why Wolves Are Not Big and Bad At All
筆者もオオカミが飼いたい。
さて、もともと宿泊する予定は微塵もなかった筆者。
だからビールを飲むつもりもなかったのだが、お父さんから「ビール飲もうよ!!!」とテンションMAXで誘われ、もうこれは断れない空気。
というか断ったら国際問題になるレベルの圧だったので、ありがたく頂戴した。
そして、自然な流れでそのまま泊まることとなった。
食後には、Kristinaがクレープを焼いてくれたのだが、これがまたうまい!
そして驚いたのが「クレープって家で作れるんや…!」という事実。
粉と愛情さえあれば何でもできるんだな、と知った瞬間である。
Kristinaの家は、首都リュブリャナの中心地から車で20分ほど離れた、のどかで自然あふれる場所にある。
筆者の寝床
そのぶん家がめちゃくちゃ広い!
筆者には赤いソファーに布団を敷いてもらい、まるで「田舎のおばあちゃん家に来た孫」状態で寝かせてもらった。
ブレッド湖へ
翌朝、目を覚ますとKristinaはすでにお仕事モード。
なんと朝6時ごろには筆者を車で例の巨大駐車場まで送ってくれるというではないか。
どこまでホスピタリティに全振りした人なのか。
こっちは寝ぼけ眼で「えっ、もう朝……?」とか言ってる場合ではなかった。
朝食にはパンと目玉焼きが登場。
これがスロヴェニアの伝統的な朝食かどうかは筆者にも判断がつかないが、「たぶん毎日こんな感じなんだろうな」と勝手に納得して食べた。
素朴で温かく、胃にやさしい朝の始まりであった。
そして家を出る直前、Kristinaのお母さんがそっとワインを持たせてくれた。
「あなたに」と言わんばかりのやさしい笑顔付きである。
筆者、正直言って一人でワインを開けるタイプの人間ではない。
しかしこの一本には、もはや液体というより“人情”が詰まっているように感じた。
ありがたく、しっかり受け取った。
駐車場に到着すると、Kristinaとは熱いハグでお別れ。
ここまで面倒を見てくれる人間が世界に何人いるのだろうか。
感謝しかない。
「ありがとう」の気持ちは、もう一度ワインに詰めて返したいくらいである。
そして、筆者はついにブレッド湖へ向かう。
あの有名な「絵本から飛び出したような湖」である。
その道中、寄り道したのがこちら──
「世界一美しい教会」と称されるサン・プリモス教会。
その絶景と静けさは、まるで別世界だった。
詳細はこちらの記事にて。
本記事は、2017年に行ったヨーロッパ一人旅の記録を振り返るものであり、スロベニアでの滞在を中心に、当時の思い出をゆるりと綴っていく。 旅の期間は2017年初頭、およそ1か月。 東欧・バルト三国・アイスランドなど、これま[…]