『悪魔の詩』翻訳者殺人事件とは?

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1989年、イランの宗教指導者ホメイニ師が下した死刑宣告は、一冊の小説をめぐる世界的な衝突へと発展した。

対象となったのは、『悪魔の詩』の著者、そしてその翻訳者たちである。

言論と信仰が鋭くぶつかり合ったこの事件は、やがて日本でも現実の殺人事件として捜査が進むこととなった。

悪魔の詩 殺人事件

イラン=イラク戦争終結から一か月後の1988年9月、イギリス系インド人作家ラシュディの小説『悪魔の詩』が出版された。

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ペルシア語版「悪魔の詩」

本書は、イスラム教の預言者ムハンマドの生涯から着想を得ており、現実と妄想が混ざったかなり挑発的な宗教風刺小説であった。

(翌年、イランはイギリスと国交を断絶している)

2026年現在、日本語版もプレ値で取引されており、上下巻セットで一万円前後が相場となっている。
(高いのでわたしもまだ買えてない)

ということで、Wikipediaにてあらすじしか読んでいないが、一言でいうと、

イスラム教の預言者ムハンマドやイスラム教を強烈に皮肉ったストーリーの風刺小説

と言えるだろう。

例えば、

  1. 預言者ムハンマドをもじって、マハウンドという人物が登場する
  2. タイトル「悪魔の詩」は、一時的に預言者が悪魔の囁きを神の啓示と誤認したという異説を元にしている
  3. 敬虔な信者や宗教的指導者が、狂信的・滑稽・矛盾した存在として描かれる
  4. ムハンマドの12人の妻たち(※)と同じ名前を持つ12人の売春婦が登場する

など、アッラーのみならず預言者ムハンマドや彼の妻たち、敬虔なイスラム教徒なども風刺の対象としている。

※ムハンマドは50代の時に9歳の幼女(3番目の妻)と結婚(=セックス)をしており、児童性的虐待にあたるかどうかを「当時は普通」派と「当時でも異常」派が現在も論争中。

また、明らかにホメイニ師自信を風刺しているとみられる記述もある。

本書が出版されるや否や国内外のムスリムに大きな反発を生み、特にブチぎれたホメイニ師が1989年2月にファトワー(fatwa)を発動したのである。

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ファトワー発動

ファトワーとは、イスラム教の法学者が宗教的な立場から出す見解・判断であり、法的拘束力はないが心理面から信徒に多大な影響を及ぼす。

ファトワーの内容というのが、著者および発行に関わった者などに対する「死刑」の宣告であった。

ホメイニ師クラスの人間がファトワーを発動すると、世界中のムスリムたち(主にシーア派)が血眼になってファトワーを遂行しようとする。

イラン財団より、ファトワーの実行者に対する高額の懸賞金(日本円に換算して3億7000万円)が提示されたりもした。

そして、1991年7月「悪魔の詩」を日本語に翻訳した筑波大学助教授・五十嵐一氏が同キャンパス内で殺害され、犯人は消息不明のまま2006年に時効を迎えたのである。

治安当局は、筑波大学に通うバングラデシュ人の学生をマークしていたものの、日本政府がイスラム諸国との関係悪化を恐れて捜査を打ち切り、その学生は遺体発見当日の昼過ぎに成田空港から帰国している。

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日本語版「悪魔の詩」

五十嵐氏だけでなく、本書の翻訳者は世界中で命を狙われ、時には重傷を負ったり、時には殺害されたりもした。

イタリアやノルウェーでは訳者が何者かに襲われ重傷を負っていたり、1993年トルコ語翻訳者が参加した集会のホテルが襲撃され、37人が死亡したりしている。

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命を狙われる翻訳者たち

しかもしかも、である。

ファトワーは発動した本人しか撤回できないので、ホメイニ師の死後「死刑」は永久に撤回できなくなってしまったのである。

そして誰もが気になるのがこれだろう。

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著者のラシュディ

「え、著者はどうなったの?」

当然のことながら、この騒動の張本人「悪魔の詩」著者のラシュディ暗殺未遂は何度も起こっており、出版から34年経った2022年8月にもラシュディ暗殺未遂事件が起きている。

ファトワーを発動した本人が死去した今、「悪魔の詩」著者や翻訳者は死ぬまで命を狙われ続けるだろう。

いやはや、恐ろしい話である。

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