【新約聖書➀】聖母マリアの処女懐胎

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ユダヤ教 旧約聖書 歴史

さて、本記事では、ユダヤ人の聖典である「旧約聖書」の続編――その名も新約聖書についてなるべく噛み砕いて解説していく。

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なにせ旧約の続きである。

いきなり続編から観るのはちょっと…という慎重派の読者諸君、まずは前作をざっくりチェックしてからのほうがいいかもしれない。

以下のリンクからどうぞ↓

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さて、本記事ではユダヤ人の聖書(=物語)である旧約聖書をなるべくわかりやすく解説してみました。大まかなお話は以下の記事で既に言及していますので、興味があればこちらからご覧ください↓[sitecard subtitle[…]

旧約聖書 まとめ わかりやすく
参考書は【眠れないほどおもしろい「聖書」の謎】【常識として知っておきたい世界の三大宗教】です。
ちなみに、本記事のビジュアル面はほぼ全て画像生成AIの力を借りている。
今回はちょっと趣向を変えて、漫画風のイラストで新約の世界を案内していくつもりだ。

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とりあえず堅苦しい話はナシ。

笑って読んで、ふと「へぇ~」とつぶやけたらそれで本望である。

では、いざ開幕。

新約の世界へレッツゴー٩( ”ω” )و

ユダ王国滅亡とバビロン捕囚

まずは前回までのおさらいである。

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旧約聖書 バビロン捕囚 ディアスポラ

もともとサウルを初代王とするヘブライ王国という統一国家が存在していた。

ところがこの王国、うっかり分裂してしまい、
北は「イスラエル王国」、南は「ユダ王国」と呼ばれるようになった。

その後、北のイスラエル王国は200年足らずであっさり滅亡。
南のユダ王国もアッシリアやエジプトといった大国に板挟みにされ、結局国家滅亡の道をたどる。


反乱を起こしたユダヤ人(結局返討ちに遭い国を失った)

反乱を起こしては返り討ちに遭い、ついには国を失ったユダヤ人。

そんな彼らを新バビロニア王国が捕虜・奴隷として大量に自国に連れ帰った事件をバビロン捕囚と呼ぶ、と説明した。

まさに人生ハードモード。


新バビロニア帝国に捕虜として連れ去られたユダヤ人たち

だが、そのまま終わらないのがユダヤ人のしぶとさだ。

アケメネス朝ペルシアの王キュロスの勅令により(←おもんない話が続くがしばしの我慢である)「ユダヤ人、もう解放してもよくね?」ということで、紀元前538年にユダヤ人たちは「バビロン捕囚」から解放された。

とはいえ、自由を得たと言っても、今度はペルシアの支配下での生活がスタート。

その後、ユダヤの民はギリシア、エジプト、シリアなど、時の大国の支配下に置かれながらも細々と、しかしガッツリ神の教えを守り続けていた。


隠れキリシタン的に密かにユダヤ教を信仰する人々

堂々とは信仰できずとも、「いや、神様との契約はマジで大事なんで…」と密かに律法を守り続けていた。

ユダ王国滅亡(紀元前587年)後、ユダヤ人は国を失い、差別と圧迫の中から国家再建を渇望し、過酷な日々の中で次第にこう確信し始める。

いつか我らを救ってくれる救世主(メシア)が現れるはずだ

と。


いつしか救世主の出現を確信するようになったユダヤ人たち

この思いは、次第に信仰の核心へと変化していった。

そう、もう願望というより「来る、絶対来る」と確信レベルである。


「いつか救世主が我々をお救いくださる」そう思って苦難の日々を耐えるユダヤ人

ユダヤ教の特徴とメシア熱望

ユダヤ教が成立したのは紀元前6世紀頃とされているが、その特徴として、国を失い迫害される中から増幅された「選民思想」と戒律をひたすら守る「形式主義」が挙げられる。

  • 選民思想:「ユダヤ人は特別な民族だ」という排他主義
  • 形式主義:「戒律は絶対に守らなくてはならない」という律法主義

こうしてユダヤ人たちは、民族としてのアイデンティティを保ちつつ、メシア(救世主)待望モードに突入する。

特にその熱が高まったのが、紀元前60年頃以降である。

つまり、「救世主、まだかな…」と待ち続けていた彼らの前に、ある日オギャアと突然爆誕したのが、あの聖母マリアとそのお腹に宿った赤ちゃん――というわけである。

さて、ここからが本番。

救世主の誕生劇、いよいよ開幕である。

分派するユダヤ教

当時ユダヤ地方は一時的に独立を果たしていたものの、結局はローマ帝国の属州へと逆戻りしていた。

結局、どこかの大国に支配されるという歴史の繰り返しである。


ローマ帝国民に虐げられていたユダヤの民

当然ながら、ローマ帝国民からの扱いはよろしくない。

支配というより、ほぼいじめである。

ユダヤの民はローマ人によって、あらゆる意味で踏みつけられていた。

当時、ユダヤ地方を支配していたのはイドマヤ人のヘロデ大王(在位紀元前37~後4年)である。


ヘロデ大王(ジョジョ風のタッチww)

圧政や重税はもちろん、町をローマ風にする改修や、異民族の王を掲げるという屈辱はユダヤ人にとって耐え難いものだった。

「神殿よりも噴水と競技場が好きな男」――これではユダヤ教徒がキレないわけがない。

しかも、異民族である彼を“ユダヤの王”とされるという屈辱付きである。
もはや神の怒りを買うレベルの状況だ。

神は事あるごとに不真面目な民を粛清してきた歴史がある。

記憶に新しいところで言えば、金の子牛の偶像を崇める人々3,000人を神が処刑するシーンがあった。

神「また偶像崇拝じゃとぉ?ふん、人間というのはつくづく成長せんわい。バカどもが!!!!!ピッシー」

ユダヤ教の神、怒らせるとマジで怖い。

そんな背景もあり、ローマ風建築や異教文化の流入は、ユダヤ人にとって悪夢の再来だった。

また、様々な文化が流入したことにより、それまで比較的一枚岩のようにまとまっていたユダヤ教も解釈の違いによって分裂の兆しを見せ始めた。


ユダヤ教の解釈について議論する人々

「律法は命より重い!」と、律法を厳格に遵守することを強制する派閥も登場し、こうした宗教版マウント合戦が繰り広げられる中で人々は自分たちを解放してくれる「神の使い」、すなわち救世主を待ち望むようになったのだ。

なお、旧約聖書には救世主登場のシーンはない。
しかし、新約聖書では「その待ち望まれた救世主こそ、ナザレのイエスである」という流れでお話が進んでいく。

ここから先は、そのイエス・キリストの誕生から復活までを描いた“福音書”の物語に突入する。

さあ、歴史の舞台は整った。

救世主伝説、開幕である――!
(なんかさっきも同じフリをやったような…)

大天使ガブリエルからマリアへの「受胎告知」

さて、ここで舞台はガラリと変わる。

ガリラヤ地方のナザレという、わりと地味めな町。

そこにいたのが、まだ若干14歳(諸説あり)のマリアだった。

年齢的には中二病発症の頃だが、彼女は聖殿で真面目に神を拝む超優等生だった。

新約聖書の外典「ヤコブ原福音書」によると、マリアはナザレのヨキアムとアンナの間に生まれた子である。


父ヨキアムと母アンナに抱かれる子マリア

長い間、夫婦は子宝に恵まれなかったが、神のお告げでようやく授かったのがマリアだった。

※もちろんマリアもユダヤ人である。
ユダヤ人率が高すぎて、出演者ほぼユダヤ人で構成されている。

喜んだ母アンナは神への奉仕として「我が子を生涯神に捧げよう」と決意し、マリアは13歳で神殿にブチ込まれた。

ちなみに画像生成AIの"Stable Diffusion"に「新約聖書に登場する、13歳の聖母マリアを描いて」と命令したら、、、

新約聖書 聖母マリア 救世主 イエスキリスト

新約聖書 聖母マリア 救世主 イエスキリスト

こんな美少女が生成された。
リアル過ぎてコワイ…

さて、両親と離れたマリアは14歳になるまで神殿の中で神を賛美しながら日々を過ごしたという。

SNSもスマホもない時代、かなりのストイック生活である。

新約聖書 聖母マリア 救世主 イエスキリスト

やがてマリアが年頃になると、祭司たちはマリアにふさわしい男性を探して結婚させようと決めた。

「そろそろええお婿さん、探そか」といったノリで、いわば神殿主催の婚活イベントが開催されたのだ。

ちなみに「新約聖書に登場する、18歳の聖母マリアを描いて」と命令したら、、、

少し大人っぽくなった美女マリアが生成された。
遊びはこれで終わりにする…申し訳ない。


さて、一説によると、マリアのために大勢の独身男性が国中から集められたとされているが、その中でマリアの許嫁と認められたのがヨセフだった。

マリアはダビデの血を継ぐ大工のヨセフと婚約し、結婚を控えていた。


大工のヨセフと小娘マリアの歳の差婚

そんなある日、マリアの元に大天使ガブリエルが現れる。

ガブリエルとは一言で言えば『天界の広報担当』、あるいは超ブラック企業「天国株式会社」の中間管理職である。

そして厳かにマリアに告知したのだった。

あなたは神から恵みをいただきました。

あなたは身ごもり、男の子を産みます。

その子をイエスと名づけなさい。

しかし当時マリアは処女、男性を知らなかった少女なので恐れおののいた。

……おいガブリエル、ちょっと待て。

いきなりそんな話、処女の14歳にぶつける話か!

修学旅行のバスで初恋の話してる最中に「はい妊娠してます」と言われたようなものである。

当然、マリアはこう返す。

マリア「わたし、男というものを知らないんですが!?」

これは現代においても最高レベルの「聞いてないんですけど」案件である。

だがガブリエルはめげずにこう言い放つ。

これは「聖霊のなせる業」で、産まれてくる子どもは後に「神の子」と呼ばれるであろう

と告げた。

大天使ガブリエル「マリアよ、お前のお腹に神の子を宿した。その子を産みなさい」

マリア「え、わたしはまだ処女なのですが…?なぜ急に子どもを!!?」

大天使ガブリエル「神の子だからです。」

この時の様子を描いたのが、レオナルドダヴィンチのあの「受胎告知」だ。

ユダヤ教 旧約聖書 歴史
めちゃくちゃ有名な宗教画【受胎告知】

大天使ガブリエルがマリアに妊娠していることを告げている。

大工のヨセフ、人生最大の冷や汗

さあ、ここで登場するのがマリアの婚約者・大工のヨセフ。

この男、真面目で堅物。
恋愛経験ゼロのこじらせ系オヤジ(知らんけど)

もちろん婚前交渉なんて一切ナシ。
チューどころか肩に触れてすらいない。

そこに「マリア、妊娠したってよ」という報告が飛び込む。


マリアと縁を切ろうか悩んでいるヨセフ

ヨセフ「…………は?」

完全にフリーズである。

わかる。
混乱するのも無理はない。

当時のユダヤの婚姻法では、婚約期間の1年間は性交をしてはいけないと定められており、ヨセフはそれを忠実に守っていたからである。

しかしマリアが妊娠したとなると、マリアが「婚約者がいながら他の男性と関係を持った」と姦淫の汚名を着せられてしまう。


男をたぶらかすマリア(仮)

もしくは、実際にほかの男性と関係を持ったことを隠していた男たらしなマリアが自身の妊娠に気付き、「もはやこれ以上は隠し通せない」と悟って神からお告げを頂いたとウソをついたと邪推することもできるかもしれない。

筆者は処女のまま懐妊したという聖母マリア様の奇跡のエピソードも100%嘘とは言えないと考えている。
実際に男子禁制の女性用監獄に収監されていた囚人女性がなぜか牢獄で妊娠したという話も聞いたことがある。

ここで神、強硬手段に出る。

ヨセフの夢にまで天使を送り込み、直談判である。

マリアの妊娠は聖霊の力によるものであるから、結婚を恐れてはいけない

夢に天使が出てきて結婚を勧めるって、もはや宗教的マッチングアプリである。

目を覚ましたヨセフは、天使の言葉を受け入れ、マリアと結婚した。

ヨセフ!マリア!
おめでとう!

宿なし出産ミッション

ヨセフは身重のマリアを伴って、すぐに生まれ故郷ベツレヘムへと向かった。

当時、ガリラヤ地方はローマ帝国の統治下にあった。

そして皇帝の命令でそれぞれの出身地で出産をし、新生児はその地で戸籍の登録をする必要があったのだ。

ヨセフとマリアはようやくベツレヘムの地を踏んだが、あいにく宿屋は全て満員。

「満室です」「また満室」「無理っす」
まるで年末の箱根温泉旅館状態。

そこで町中を探し回った結果、一軒の馬小屋を見つけた。

筆者「なんかチョメチョメする場所を必死に探す若いカップルみたいだな~」

そこでマリアは無事に男の子を出産した。

生まれた子はヨセフによって、イエスと名付けられた。
まあ神がそう名付けろと命じたのだが…

イエスとは「神は救いである」という意味を持つのである。


さて、次ページではこのイエス様が、誕生した瞬間から命を狙われるというドタバタサスペンスが始まる。

登場するのは、例のヘロデ大王。ジョジョ風ビジュアルの圧政野郎である。

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新約聖書 聖母マリア 救世主 イエスキリスト

神の子も、聖母も、大工も、全員バタバタ。聖なる世界は予想以上に忙しい。

次回、「赤ちゃんVS暴君」お楽しみに。

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