2017年12月20日から2018年1月10日まで、カタール航空のモニター募集に合格し、ヨーロッパを無料で旅する機会を得た。
今回はその旅の中から、スウェーデンのオーロラの聖地キルナでの滞在についてお伝えする。
» モニターのお話(クリックで開く)
このモニター旅は、書類審査でヨーロッパ旅行にかける思いを綴るところから始まった。
そこから、カタール航空の関係者との面接までをクリアし、数々の制約もすべて了承した上で、ヨーロッパ行きが実現した。
さて今回のテーマはズバリこれだ!!!!!どうやったら海外にタダで行ける『モニター募集』を勝ち抜けるのか自慢だが、筆者は人生初のモニター募集に見事当選しタダでヨーロッパに行ってきたのである。今回はそんなモニター募集に挑[…]
最もつらかったのは何だったか。
正直に言えば、「1日2回、指定されたハッシュタグ付きでSNSに近況報告を投稿する」という義務だった。
しかし、そのおかげで、今回の旅では全ての滞在地に自分の正直な感想が残されている。
それらの記録も参照しながら、本記事を書き進めていくことにする。
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ということで、モニターとしてヨーロッパに入った。
それでは、キルナ滞在記をお楽しみいただきたい(∩´∀`)∩
オーロラの聖地、スウェーデンのキルナ旅行記
さあ、いよいよオーロラを追い求めてスウェーデン・キルナへ向かう。
出発地はフィンランドのロヴァニエミ。
午前9時30分
ここからキルナまでの道のりが、実にクセが強い。
ロヴァニエミ編でも触れたが、この移動、マジで一筋縄ではいかない。
列車とバスを何度も乗り継がねばならず、当時のGoogleマップでは経路すら出てこないという、まさかの情報空白地帯であった。
文明の進化、ありがたや。
筆者は、ネットの奥地に落ちていた旅人のブログ情報を手作業でつなぎ合わせ、まるでパズルのように組み立てて行程を完成させたのである。
当時の筆者にポケットWi-Fiなどという文明の利器は無い。
貧乏バッパーにとって、そんなものは幻想である。
ではどうするか?
- 紙にメモる
- とにかく人に訊きまくる
この、縄文時代ばりのアナログ戦術で旅を突破するのである。
もはやGPSもオフラインマップも関係ない。
頼れるのは自分の記憶力と、現地人の優しさだけ。
徒歩とバスと電車を使うハイブリッドな旅である。
よし、バスセンターに到着。
そこからはバス。
ルートも詳細も今となっては記憶が曖昧だが、とにかく夜にはスウェーデンのキルナに到着したという事実だけは間違いない。
世界最北のIKEA
スウェーデンがIKEAの母国であるというのは、もはや誰もが知っている事実である。
しかし、その世界最北のIKEAが「ハパランダ市」にあると知っている者は案外少ない。
ハパランダ市はスウェーデンとフィンランドの国境に位置する町で、ロヴァニエミからキルナへ公共交通機関で向かう者は、必ずここを通過することになる。
↑ハパランダのバスセンターにて撮影。
IKEA、こんな北の果てにも容赦なく存在している。
筆者はこの時、何も知らずに「へぇ〜、こんなとこにもIKEAあるんや」と、関西人的リアクションでスルーしていた。
しかし、後から調べて「えっ、世界最北のIKEAやったんかい!!」と、まさかの大発見であった。
国境付近では時差に要注意!!
上の写真でギリギリ"TORNIO HAPARANDA"という文字が見える。
さて、ここハパランダはスウェーデン。
バス停の情報が書かれている
まさに国境の町である。
川を渡ればフィンランド。
ということは、ハパランダは既にフィンランドとは時差が1時間ある。
この事実、意外と旅人を混乱に陥れる。
左がスウェーデン時間、右がフィンランド時間
先ほどの筆者自身が書いたメモにもある通り、
ハパランダ着は11:30、
ハパランダ発は1時間後の12:30
だがこれは一体どっちの国の時間なのか?
時刻表は基本「現地時間」で書かれている。
が、筆者はこのあたりをよく理解していなかった。
フィンランド滞在中に時刻表を全て調べていたため、全てフィンランド時間で書いてしまっていたのである。
- つまり、ハパランダ着はフィンランド時間では11:30だがスウェーデン時間なら10:30である
- 加えて、ハパランダ発はフィンランド時間では12:30だがスウェーデン時間なら11:30である。
当時の筆者は時差のことなど何も気にせず「12時半出発ねー、おっけー」と漠然と思っていたが、これは大きな間違いだったのである。
フィンランド時間:
ハパランダ着11:30
ハパランダ発12:30
スウェーデン時間:
ハパランダ着10:30
ハパランダ発11:30
スウェーデンに入ったところでスマホの世界時計をスウェーデン時間に直していたので、手元の時計(スウェーデン時間)では10:30だが、出発の時間は12:30(フィンランド時間)だと勘違いしていた。
「へー12:30までまだ時間あるな、あと2時間か」と壮大な勘違いをしていたのである。
11:00ごろ(スウェーデン時間)に奇跡的にバスターミナルへ戻った筆者、バスセンターの時計を見て突然気づく。
筆者「ん?…今11時ってことは…出発11:30やん!!!」
危ない、完全にフィンランド時間で考えてた。
ハパランダにあったモール(特に見どころはない)
たまたまやることが無さ過ぎてバスセンターに戻ったが、もしゲーセンでもあれば筆者はスウェーデン時間で12:30ギリギリまで遊んでた可能性がある。
キルナ到着
ハパランダからバスに揺られ、「ルレオ」に到着。
この時点で、すでに道中の大半はクリアしたようなものだ。
が、ルレオ駅では例のごとく乗り換え待ちが異様に長い。
電車の本数が少ないというのは知っていたが、まさかここまで“無”な時間が与えられるとは。
筆者「いや、これは試されているな…」
とはいえ、目的地はオーロラの聖地「キルナ」である。
それを思えば、待ち時間も修行の一環に思えてくる。
さて、ルレオからキルナへ向かう電車に乗り込むと――
乗客がいない。
マジでいない。
ガラガラである。
「これ、ほんまに経営成り立ってんのか?」
これで事業が成り立っているのなら、北欧の補助金制度は相当手厚いと言える。
日本なら真っ先に廃線になっているタイプの路線である。
だが北極圏の僻地に暮らす人々の移動手段を確保することは、国家の責務とも言える。
「自己責任」「無駄」と切り捨てるのは容易だが、公共性と効率性の間で揺れる判断は実に難しい問題である。
日本食中毒
そんな医学用語が実在するかどうかは知らない。
だが、この際ハッキリ言わせてもらう。
北極圏をさまよう筆者は、この日ついにルレオ中央駅にて理性を失う。
Facebookで軽くブチ切れたのだ。
内容はこうである。
皆さん、Facebook及びInstagramで美味しそうなご飯の写真載せるのは
この世の中には日本食食べたくても食べれずに、終始目眩がしている人間がいることを自
あああぁぁぁぁぁーーーー
— at Luleå Central Station.
Ryo is at Luleå Central Station.
January 5, 2018 · Luleå, Sweden ·
この世界には、“日本食を食べたくても食べられず、常に幻覚と目眩に襲われている旅人”が存在する。
そんな旅人の心を容赦なく抉るのが、SNSに突如現れるトンカツの断面である。
見たくもないのに目に飛び込んでくる唐揚げ定食。
画像なのになぜか香ってくる麻婆豆腐。
これはもう、「飯テロ」ではない。
純然たるテロ行為である。
世界をバックパッカーとして旅する中で、最も静かに、そして確実に筆者を追い詰めるのが「食」の問題である。
こと日本食に関しては、海外では高価・少量・別物の三重苦に見舞われる。
- 「寿司? あるけど、サーモンにチョコかかってるぞ」
- 「味噌汁? それ、スープにパン浮いてないか?」
- 「ワサビ? 水で薄めたけどなにか?」
日本を出て数日、ふと脳裏に浮かぶのは、
㋐炊き立てのご飯
㋑湯気の立つ味噌汁
㋒そして自宅で揚げた鶏天。
それらの幻覚と戦いながら、筆者は本日も北の地で耐えているのだ。
北極圏にはそれなりの装備が無いとヤバい
キルナ駅に着くやいなや、筆者がまず行うのは――寝床の確保である。
なんせこの晩が今回の旅、最後のテント泊。
「最後くらいは気合い入れてぐっすり寝てやる」という気概だけは満タンである。
橋の下でテント泊
選んだ物件は、
- 駅から徒歩3分
- ガス・水道・トイレ完備
- 1DK
- 家賃ゼロ
もちろんテントである。
筆者のテント泊人生において、最も過酷な夜であったことをここに記す。
寒すぎて寝れん。
どれだけ高級な寝袋を持っていても、下に敷くマットレスが貧弱だとすべてが台無しになるという、「快眠の教訓 in 北極圏」を身体で学ばされる羽目となった。
ここでもう一度お伝えしたい。
「エアマットレスこそが命。背中が冷えたら終わり。」
つまり、いくら寝袋が分厚くても、下からの冷気には勝てない。
筆者おすすめの「本気マットレス」についてはこちら。
ダウンシュラフの欠点は、背中と地面の間のダウンは押し潰されて空気の層を維持できないので地面の冷たさが直で来ることだ。
詳しくはこちらをご確認あれ。
こんにちは、マットレス研究家(自称)のRYOです。さて、現在6種類のマットレスを保有する筆者がその中で最も愛用しているエアマットレス、「GEAR DOCTORS」社の Apollo Air (アポロ・エアー)を紹介させて頂きます。[…]
もう一つ余談だが、こちらで寝袋の選び方も紹介している。
こんにちは、寝袋に関しては自称プロであるRYOです。今回は"人生の良き友"である、寝袋のお話をします。寝袋を購入する際、理解できないくせに一応スペック表に目を通しますよね(笑) 表面はボックス構造採用 […]
ここに衝撃の事実を記す。
サーマレストは北極圏では“おもちゃ”である。
あの登山界のド定番サーマレストも、北の大地では通用しない。
地面から伝わる冷気は、あらゆる文明の利器を無効化してくる。
「北極圏をなめるな。R値を見ろ。」
そう、R値が4以上。
これが“生き延びるライン”である。
食事について補足
食事について補足しておこう。
「食事」と言えば聞こえはいいが、要するに――缶詰を温めただけである。
北極圏において「ディナー」という概念は存在しない。
重要なのは温かさであって、味は二の次。いや三の次かもしれない。
こういう状況に長く身を置いていると、筆者がSNSで「日本食食べたい症候群」を爆発させた気持ちも、少しは理解してもらえるだろう。
オーロラの聖地にて、オーロラ見れず
翌朝、テントから這い出して荷物をまとめ、キルナ駅の暖房が効いたありがたい休憩所のコインロッカーへザックを預けた。
キルナ駅の駅舎(暖かい♡)
身軽になった筆者は、キルナ市内へと徒歩で繰り出す。
だがキルナは、ロヴァニエミと同様、超がつくほどのコンパクトシティである。
徒歩30分も歩けば、街の見どころはほぼ終了する。
キルナはロヴァニエミと同様に超小さな町で、ものの30分も歩けば見どころが無くなります↓
駅を出てわずか5分――
ポケットの中のスマホを見ると、バッテリー残量が5%になっていた。
筆者「……え?さっき100%やったやん?」
説明しよう。
寒冷地では、スマホに限らず全てのバッテリーが秒速で死ぬ。
北極圏の冷気は、文明の利器すら容赦なく葬る。
「充電してあるから安心」と思っていた過去の自分をぶん殴りたい気持ちになる。
この時期のキルナは、日照時間がわずか2~3時間程度。
ロヴァニエミ編を読んだ方はご存知かと思うが、あちらではなんと
日照時間:3時間2分(公式)
という信じがたい数字を叩き出していた。
キルナも大差ない。
市内には小さなショッピングモールなども点在していたが、正直そこまで魅力的なものはなかった。
そんな中、突然、空が真っ赤に染まりだした。
筆者「おぉぉぉーーーー!!赤いオーロラ!!?」
……と思ったが、多分ただの夕焼けである。
オーロラとは少し違うようだったが、それでもとにかくめっちゃ赤かった。
この日のキルナでは、オーロラらしいオーロラは見られなかった。
だが、真っ赤に染まった空のインパクトは、いまも記憶に残っている。
北極圏では、何が起こるかわからない。
寒さと、偶然と、缶詰と、そしてたまの赤い空。
それが、キルナでの日常である。
寒過ぎた北極圏
北欧といえば――やはりサウナである。
特にフィンランドはサウナの本場。
フィンランドはサウナの聖地であり、サウナはフィンランド語であり、サウナはフィンランド人の生活そのものである。
詳しくはこちらで。
そんなわけで、道すがら偶然見つけたサウナに吸い込まれるように入場。
体を芯からポカポカに温めてから、再びキルナ駅へと戻った。
ここで北海道の皆さんには共感していただけるかもしれない。
北極圏、マジで寒過ぎる。
筆者のような“なんちゃってアウトドア人間”でも元気が出ないレベルの寒さ。
どれくらいかというと――
以上である。
もはやギャグのようだが事実だ。
当時のSNSのメモがこちら。
北極圏…寒過ぎます。さすがの僕も元気が無くなるくらい寒い。
どれくらい寒いかと言いますと、、、
シャワー浴びた後のやや湿ってるくらいの髪で外に
今朝のでテン泊最後やったけど、さすがに終始寒くて寝れんかった。
なかなか良い教訓で
Ryo Yasukawa is in Kiruna Lapponia.
January 6, 2018
上に書いてあるように、今朝が最後のテント泊であった。
しかしこの北極圏の冷気の前では、筆者の気合もエアマットレスもあまり効果を発揮せず。
終始、寒さに震えながらほぼ一睡もできなかった。
とはいえ、良い教訓にはなった。
「R値が低いマットはただの敷物」
――これを身をもって学んだ。
参考までに、以下の地図を見てほしい。
- 下の黒線 → 沖縄の緯度
- 上の黒線 → 北海道の緯度
- 青点 → 筆者がいた場所(キルナ)
この位置関係を見れば、北極圏の寒さが常軌を逸していることが容易に想像できるだろう(笑)
スウェーデンの首都、ストックホルムへ
そんなネガティブ思考のまま、筆者はスウェーデンの首都ストックホルムへと向かう。
移動の準備を整えた後、駅の待合スペースで食事をとることに。
実は駅に戻る前にアジアンスーパーマーケットで買っておいたのである。
※アジアンスーパーマーケット
日本人の心の友「インスタントラーメン」を。
具なし、ダシも薄め。
それでも驚異の6袋分を一気食いし、涙が出るほど美味かった。
「ああ、やっぱり俺は日本人だな」
そう感じた瞬間であった。
このあと、筆者はストックホルムに到着し、ノーベル博物館を訪れることとなる。
その様子については、以下の記事で詳しく紹介している。
2017年12月20日から2018年1月10日まで、カタール航空のモニター募集に合格し、ヨーロッパを無料で旅する機会を得た。今回はその旅の中から、スウェーデンの首都ストックホルムでの滞在についてお伝えする。[show_mor[…]