2017年12月20日から2018年1月10日まで、カタール航空のモニター募集に合格し、ヨーロッパを無料で旅する機会を得た。
今回はその旅の中から、スイスの首都ベルンでの滞在についてお伝えする。
» モニターのお話(クリックで開く)
このモニター旅は、書類審査でヨーロッパ旅行にかける思いを綴るところから始まった。
そこから、カタール航空の関係者との面接までをクリアし、数々の制約もすべて了承した上で、ヨーロッパ行きが実現した。
さて今回のテーマはズバリこれだ!!!!!どうやったら海外にタダで行ける『モニター募集』を勝ち抜けるのか自慢だが、筆者は人生初のモニター募集に見事当選しタダでヨーロッパに行ってきたのである。今回はそんなモニター募集に挑[…]
最もつらかったのは何だったか。
正直に言えば、「1日2回、指定されたハッシュタグ付きでSNSに近況報告を投稿する」という義務だった。
しかし、そのおかげで、今回の旅では全ての滞在地に自分の正直な感想が残されている。
それらの記録も参照しながら、本記事を書き進めていくことにする。
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ということで、モニターとしてヨーロッパに入った。
それでは、ベルン滞在記をお楽しみいただきたい(∩´∀`)∩
スイスの首都ベルン
コルマールの美しい街並みに別れを告げ、次なる目的地はスイスの首都ベルン。
距離にしてわずか2時間。
フランスから国境を越えてあっという間にアルプスの国へ突入である。
それにしても、「えっ、スイスの首都ってジュネーヴじゃないの?」と今でも真顔で言う人が後を絶たない。
違う、ベルンである。
これはテストに出るレベルの話だ。
そして到着。
空気が違う。水が違う。物価も違う。
すべてが高品質(特に物価)。
駅のキオスクでペットボトルの水を買おうとしたら、思わず手が震えた。
筆者「え、水って…無色透明のアレですよね?それがこの値段…?」
とりあえず、心を落ち着けるためにもベルンの街を歩いてみることにした。
スイスの首都ベルンの基本情報
ベルン(Bern)は、スイスの首都でありながら、なぜか他の都市(ジュネーヴやチューリッヒ)ほど知名度が高くない不思議な存在である。
だが、侮るなかれ。
伝統と歴史に満ちた、非常に格式ある都市である。
まず、この街の景観に対するこだわりは筋金入りだ。
なんと屋根が外壁や窓の格子にまでルールがある。
観光客に優しいどころか、家の屋根にまで中世スタイルを強いるストイックさ。
まるでスイス版・京都である。
ベルンの創建は1191年。
だがその後、1405年に街は大火でほぼ全焼。
それでもめげずに、今度は全部石で作り直すという堅牢思考。
そうして誕生した旧市街は、中世の面影を色濃く残し、1983年にユネスコの世界遺産に登録された。
なるほど、耐火・耐歴史。
ちなみに「ベルン」の語源は『熊(Bär)』である。
創建時に熊を仕留めたから、という説もあるが、要は初手から野生とのバトルで幕を開けた街なのだ。
そして現在も、本物の熊が飼育されている公園(ベーレングラーベン)が存在する。
教育面も抜かりはない。
1834年創立のベルン大学は、80万冊以上の蔵書を誇り、さらに市内には100万冊超の国立図書館まで完備。
人文知の守護神のような街である。
ベルンのランドマーク『時計塔』
ベルンの時計塔
ベルンのど真ん中に堂々とそびえ立つのが、時計塔(ツィットグロッゲ)である。
スイスで最も有名な時計塔のひとつにして、待ち合わせスポットとしての実力も相当なもの。
京都で言えば四条河原町のディズニーストア前、滋賀なら草津のドンキ前に相当する。
もちろん、例えはテキトーである。
この時計塔、1218年から時を刻み続けるという老舗中の老舗。
正面(東面)にある天文時計は1530年製で、なんと今でも正確に動いている。
スマホすら時々狂うこの時代に(いやそれは言い過ぎか)、約500年前の機械仕掛けが秒単位で現役なのは、もはやオーパーツの域である。
そしてこの時計塔、ただ時間を教えるだけではない。毎時56分から正時の4分間にかけて、からくり劇場が開演される。
順序としてはこうだ。
- 鶏が鳴く(なぜか毎時鳴く)
- 道化師が鐘を鳴らす(仕事熱心)
- 熊がぞろぞろと行進(可愛い)
…と、見どころ満載の寸劇が始まるので、見逃してはならない。
さらに伝説によれば、若かりし日のアインシュタインがこの時計塔の横を走るバスを見て、相対性理論を思いついたとか。
時間と空間が交差する場所、それがベルンの時計塔なのである。
地下室が多い
ベルンの町を歩いていて気づくのは、高層ビルがほとんど見当たらないということだ。
東京のようにビルが林立している風景は、ここにはない。
では、そのぶんどこに空間があるのか?
下である。
地下である。
ベルンの通り沿いをよく見ると、あちこちに地下へと続く階段がある。
しかもそれが店や住居につながっていたりするから驚きだ。
まるでRPGの町のようである。
思わず宝箱を探したくなる。
なぜそうなっているかは定かでないが、おそらく景観を守るために高さ制限が設けられているのだろう。
京都のように「街の風情を壊すなよ条例」があるに違いない。
見た目は中世、構造はダンジョン。
それがベルンの真の姿である。
理想と現実
今回のベルン訪問の最大の目的は、ただひとつ。
「夜景の撮影」である。
ネットで見た一枚の写真。
雪に覆われた旧市街がライトアップされ、まるでおとぎ話のような幻想的な風景。
それを見た瞬間、筆者は心に決めた。
「ベルンでテント泊して、この絶景をカメラに収めよう」
と。
というわけで、Googleマップとストリートビューを駆使して現地を特定。
ベルンが小さくて本当に助かった。
ついに目的の場所を発見。
が――
雪が、ない。
どこにも、ない。
あの「白銀の世界」はネットの向こう側にしか存在していなかった。
予定を変更し、より人のいないスポットに移動して撮影を試みるが、どうにもこうにも構図が決まらない。
シャッターを切ってはため息をつき、また切っては首をかしげる。
最終的に出た結論はこうである。
「撮影技術のなさを、これほどまでに痛感した夜はなかった…。」
ベルンの夜景は、筆者の腕ではなく、プロの手によって完成するものであることを学んだ。
ヨーロッパの警察は人情がある
さて、結局テントを張ったのは、こんな感じの場所であった。
もちろん、地元住民の迷惑にならぬよう最大限の配慮をしている。
これはテンター(=テントを張る者)に課された暗黙の義務であり我々はその責任を果たすプロフェッショナルなのである。
三脚をテント前にセットすることで、ただの野宿者が「孤高のカメラマン」へと一気に昇華される。
なんか通報される確率が減りそう…
こうなると不審者として通報される確率は激減するという、統計にはないが筆者の頭の中で裏付けられた戦略だ。
テントの中から望むベルンの町並みは、それはもう絵画のごとし。
眠る前に少し得をした気分になる。
ところがである。
就寝直前、テントの外で誰かがこう言った。
「ポリス。ヘーイ、ポリース。」
キターーーーーーーー。
だがもう慣れた。
こちらも慌てず騒がず、にこやかにテントから顔を出し、パスポートを手渡す。
笑顔は国境を越える。
これだけで警戒心はスッと解けるのである。
警官「ふむ、日本人か。どうしたんだ?」
筆者「実は夜景が撮りたくて、この場所にテントを張りました。明け方には撤収しますので。」
この「明け方には撤収する」という一言が、全体の中で最も重要な情報である。
旅人に必要なのは荷物よりも、こうした決め台詞である。
ちなみに、列車の予約画面をスマホでサッと見せると、信頼度はうなぎ上り。
寝起きでも口が回る程度には準備しておくとよい。
↑寝起きの一発。
やはりこれ(↓)とは雲泥の差である。
雪さえあれば…。
スイス国内の噴水は全て飲めます
この朝、筆者が目を奪われたのは、陽の当たっている場所と当たっていない場所の明暗比。
光と影が織りなすコントラストが実に美しい。
まるで風景が光の筆で描かれているようで、カメラを向けずにはいられなかった。
さて、スイスといえばベルンに限らず、全国津々浦々に噴水がある。
しかもこの噴水、ただの装飾ではない。
なんと、飲めるのである。
筆者「実はですね、スイスでは水を買う必要が無いんです!!(ドヤ顔)」
アニメ版ハイジでペーターが噴水から出る水を頭を傾けてがぶ飲みしているシーンがあるが、まさにあれがリアル。
なぜなら、噴水の水がそのまま湧き水。
少し違うかもしれないが、噴水の水が既に「アルプスの天然水」と呼べるのである。
自然の恵みを直接ゴクリといただける仕様になっている。
まさに大自然と共存する国、スイス。
実際、朝の散歩中に、マイボトル片手に噴水へ水を汲みに来る地元民を目撃。
観光客ではない、完璧な地元の人である。
つまりこれは、観光用のおしゃれ噴水ではなく、リアル生活インフラというわけだ。
スイス、さすがである。
あっぱれである。
信号のいらない交差点「ラウンドアバウト」
ヨーロッパで運転をしていると、日本との違いに何度も驚かされる。
まず、車は右側通行。
右折はスムーズだが、左折は対向車を待たねばならない。
これは慣れるまでに少々時間がかかる。
また信号の挙動にも独特のクセがある。
日本では「青→黄→赤→青…」というシンプルな循環だが、ヨーロッパでは「青→青+黄→赤→赤+黄→青…」や「青→黄→赤→赤+黄→青…」という、
まるで信号機が色遊びでもしているかのような動きを見せる。
慣れないうちは「今どの色!?」と軽くパニックになる。
そんな中で、筆者が一目惚れしたのが信号のいらない交差点「ラウンドアバウト」である。
なにせ、ガラガラの道路で無意味に赤信号に止められることが無い。
車が来なければそのまま通過、来ていてもクルクル回っていればチャンスは巡ってくる。
まるで人生のようである(?)。
ベルンにも立派なラウンドアバウトが存在していた。
実際の様子はぜひ動画でご覧いただきたい↓
(信号機はないが問題なく通行できている)
信号のいらない交差点、それが「ラウンド・アバウト」突然だが、下のような標識を見たことがあるだろうか?これは、この先にラウンドアバウト(円形交差点)があるよという標識である。筆者がヨーロッパ12ヵ国で計6,500k[…]
イタリアのミラノへ
さて、次なる目的地はイタリア・ミラノである。
ミラノでは、友人モニと合流し、Airbnbで借りたアパートにて3日間の同棲生活を送った。
ホテルでは味わえない、まるで現地住民になったかのような感覚。
冷蔵庫の中に自分の水があるだけでテンションが上がるのは、旅人あるあるである。
イタリア語は挨拶程度しか分からぬが、モニちゃんの存在があれば無敵である。
スーパーでハムを買うにも、バールでカフェを頼むにも、「モニ・オン・ザ・フロント」である。
3日間、実に濃密な時間であった。
2017年12月20日から2018年1月10日まで、カタール航空のモニター募集に合格し、ヨーロッパを無料で旅する機会を得た。今回はその旅の中から、イタリアの都市ミラノでの滞在についてお伝えする。[show_more more[…]