遭難や事故現場、キャンプを去るときは信号を残す
助けを呼ぶためにキャンプや飛行機、車の事故現場を後にする場合は、救助隊が到着したときのために、情報を残さなくてはならない。
メッセージは上空から見えやすい形、地上から見えやすい形の両方を残す。地面と違う色の布やほかの材料を使って、キャンプを後にして進む方向に大きな矢印を作る。
矢印やほかの目印を地面に残しながら進めば、救助隊が見つけてくれる可能性が高まり、道に迷った時やキャンプに戻らなければならないときも役に立つ。
キャンプを去る場合は、わかりやすい場所に雨が降っても消えないメッセージを残す。メッセージに残す情報は、今後のプランやグループについての具体的な内容にする。グループは何人か、これからどこに向かうのか、ケガ人はいるのか、十分な食料と水はあるのかなど。それらのメッセージを木に貼る、三脚につるす、道標の一番上の石の下に置くなどして残す。さらにメッセージの場所を示す目印も置き、見落とされないことが肝心だ。
シグナルミラーを使って航空機に信号を送る方法
➀:シグナルミラーを太陽に向け、照準窓を通して裏側から太陽を見る。網状の光の輪が見えるはずだ。
➁:その光の輪の中に点が現れるように、鏡を前後に少しずつ動かす。
③:点を見失わないようにしながら、照準窓の中に航空機の姿がおさまるようにする。
④:点が航空機と重なるまで、慎重に鏡を傾け調整する。
⑤:航空機のパイロットがまぶしくないように、向けた光を前後に揺らす。
おわん状のドングリを使ったホイッスルの作り方
➀:内側が滑らかで穴が開いていたり破れたりしていない、へたの取れたおわん状のドングリを見つける。
➁:両手の親指でVの形を作り、親指と人差し指でドングリを挟む。
③:親指のVの部分に息を吹き込む。かん高い音が出るまで少しずつ位置を調節する。
視覚的な信号
火と煙は、遠く離れた場所まで広く救助サインを伝えることができる。特に、山火事を見張る監視員が常駐する地域では有効だ。
煙は60km離れた場所からでも見えるといわれる。夜間であれば、炎がヒマワリの花のようにはっきり見えるだろう。火、煙、光による信号は、尾根や丘でより効果を発揮する。
救助隊が来る可能性があれば、そのときにすぐ合図ができるよう、燃やせる物を集めて火をつける準備をしておこう。そして、エンジンの音が聞こえたらすぐに火をつける。生木は水分があり、白い煙を多く出すので役に立つ。濡れた毛布で煙を包んで、3回に分けて煙を空中に放つと緊急信号になる。木や草のない場所に1本だけ立っている枯れ木を燃やしても、効果的な信号になる。
大切なことは、その場所が空中からどのように見えるかをイメージすることだ。地面に土などを積み上げて影を作る。あるいは、石、低木、雪、土などを利用した3つの塊といった、一般的に遭難信号を意味する形に影を作る。または、サバイバルブランケットや防水シートを使って、SOSや国際的に採用されている対空信号を書くことも有効だ。
火による救難信号
・火を3つおこすと遭難信号を意味する
・何もない場所にぽつんと立つ木を燃やしても遭難信号になる
・火に生木をくべるか油を注ぐと、煙をたくさん出すことができる
国際対空信号
できるだけ高く、木に覆われていない場所に行き、石、枝、目立つ色の物、衣服などを使って地面、砂、または雪の上に次の文字を記そう。
F:食料と水が必要
I:深刻なケガがあり、医師の診察または救助が必要
X:動けない
→:この方向に進んでる
Ⅱ:医薬品が必要
LL:異常なし
対空信号の出し方は正確に
体を使って救助パイロットに簡単なメッセージを送ることができる。
たとえば、重要なメッセージ「救助してください」は、立ったまま両手を真っ直ぐ上に伸ばすことで伝えることができる。基本のボディ・シグナルを覚えておくか、この本のように信号が載っているガイドブックを携帯することで、緊急時でもパイロットへ正確なメッセージを伝えることができる。それによって、命が助かる可能性も高くなるのだ。また、間違った体の動きや形は、致命的な結果を導く可能性があるということも覚えておこう。
テキサスの写真家カール・マッカンは、間違ったタイミングで間違った信号を送ったために、1981年アラスカで死亡してしまった。
マッカンは辺境地を飛ぶパイロットに、500本のフィルムと数ヶ月分の食糧と一緒に、自分を原野で降ろしてもらった。しかし、冬が来る前に迎えに来てもらう手配をしていなかった。ハンティング用の弾薬が底を尽きかけた頃、飛行機が上空を飛んできたので「助けが必要」という信号を送ろうとした。しかし、不幸にも彼がとったジェスチャーは、片手の拳を空中高く突き出すポーズ(ガッツポーズ)だった。パイロットは、この信号を世界共通のメッセージ「大丈夫です。助けは不要」という意味に解釈したのだ。
マッカンは信号を送った後で、アラスカ狩猟免許証の裏に張られている印刷物を見て、正しい信号を知ったようだった。そこには、最も基本的な救難信号が棒線画で書かれていた。「彼らが通り過ぎてからもう一度戻って来たのに、救助してくれなかった原因は、その時、僕が何も信号を送らなかったからだろう(飛行機が通った時、僕は背を向けていたかもしれない)。きっと、変なやつだと思われて無視されたのだ」と、彼の日記には記されていた。
救助パイロットのボディ・シグナル
以下の信号を送ることは、地上に文字や矢印を書いて作る簡単なメッセージの捕捉になる。
・両手を真っ直ぐ上に伸ばす=「こちらへ飛んでほしい。または、救助が必要だ」
・両手を地面と水平に真横に伸ばす=「上空にいてほしい。または、手当てが必要」
・両手をバタバタさせる=「着陸して欲しい」
・両手を真横に伸ばしてから、ひじを曲げて両手を頭の横に当てる=「こちらへ飛んできてほしい」
・示したい方向を向き、ひざを曲げて腰を落とし、両手を前に伸ばす=「私が示している方向に着陸して欲しい」
・両手を頭の上で左右に振る=「ここには着陸して欲しい」
・地面に仰向けに寝て、両手を頭上に伸ばす=「手当てが必要」
・片手を頭上に伸ばし、もう一方のては下ろす=「問題なし」
音による合図と信号
音を使った信号は狭い範囲での合図に適している。音は水の上では遠くまで伝わるが、森林の中や地形、天候状態によっては地上で吸収されたり、ゆがんだりしてしまうからだ。広い平原では、救助員が叫び声やホイッスルの音を聞いた場合、そのほとんどが180m範囲内で最初の被災者を発見している。音は、遮蔽物の少ない砂漠や海、極地でより有効ということだ。
高音を出す車のクラクションや銃声は、かなり遠距離からでも注意を引くことができる。遭難信号として2つの金属や棒で丸太や木を叩いても、人の叫び声より遠くへ届く。また、ホイッスルは狭い範囲では、音声信号発信機として適している。ホイッスルの高音は低温よりも居場所を正確に示すことができ、声をからす心配もないからだ。
峡谷や樹木にぶつかると弱まってしまう光と同様、遮らなければ、音の合図は最も効果を発揮する。遭難を知らせるには、3つのアルファベットを組み合わせて音声信号を送る。モールス信号で「SOS」と送る時は「トントントン・ツーツーツー・トントントン」と叩く。モールス信号は使われなくなってきているが、3文字の「SOS」という救難信号は現在でも広く知られている。
無線や電話、緊急ビーコンで救難信号を送ろうとする場合は、バッテリーの消耗を抑えよう。メッセージの返事がすぐにこないようであれば、電源を切って数時間待ってから、再び試してみることだ。または、航空機のエンジン音が聞こえたら再度、電源を入れ信号を発信する。
短波ラジオを使う
・携行するラジオは、特定の周波に合わせやすい短波ラジオを選ぶ。
・弱い信号もキャッチし、不要な信号ははじく製品を探す。
・すでに持っているなら最高の受信環境になるよう、屋外にアンテナ線を張ろう。
・雷雨の時は、アンテナの接続を切る。
・周波数を7~9MHzにする。この周波数はリスナーも多く最も一般的。そのほか、12~16MHz、日本国内では3~10Hzが一般的だ。
・大気が安定しない時は19~23MHzは避ける。
・毎時15分と45分に遭難信号を発信する。この時間帯は国際的に指定されており、最も信号が受信されやすい。
携帯電話と無線
携帯電話や無線を上手に使用することで、遭難者の発見と救助につながる。
推奨事項
・携帯電話や無線機は、できるだけ高台で使う。
・峡谷で電波が届かない場合、山の尾根まで移動する。
・VHF(超短波)無線の救助信号はチャンネル16に周波数を合わせる。
・最大限に受信できるよう、VHF無線のアンテナを航空機の飛行経路へ向ける。
・「メーデー」や「SOS」の救難信号を定期的に送る。
・外部アンテナを設置することで、送受信状態が良くなる。
・無線や信号機器のための予備バッテリーを必ず用意する。
禁止事項
・電子通信機器のバッテリーは無駄遣いをしない。
・峡谷では電波状況が悪いので、無線機や携帯電話は使わない。
・無線機や携帯電話を水や風、砂などにさらさない。
・応答がないからといって、継続して信号を送らない。
・信号を送るのをあきらめず、時間帯やチャンネルを変えて試す。
おわりに
さて、これで「心と体の備え」および「技術と道具の備え」というサバイバル知識の基礎編が終わりました。
ここからは、温帯林や高山、砂漠、水上などの各条件に特化したサバイバル知識を紹介します。
皆さんもサバイバル、楽しんでください!
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