今回はサバイバルで使われる、水の重要性を紹介します。
ナショナルジオグラフィック監修の「世界のどこでも生き残る完全サバイバル術」という本の一節から抜粋しました。
水
本書では、サバイバルの基礎中の基礎として水の重要性について語っています。少々長いので、読みたくなければ最悪読まなくても結構です↓
水が生命に欠かせないというのは、控えめな表現だろう。水は命そのものだ。水を飲まなければ2~3日で死に至り、飲む量を控えるだけでも体に異常をきたす。アーネスト・シャクルトンは、「水の不足は常に、人を最も厳しい苦難に追い込む」と記している。
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発汗によって体から急速に水分が失われる気温の高い場所では、水分の必要性はさらに高まる。身体活動や高度、ストレス、病気、ケガなどによっても水分は早く失われるため、日常に比べ、補給を急ぐ必要がある。
しかし、たとえあなたが極寒の地のシェルター内で静かに座っているだけだとしても、効率的に体を機能させるためには、毎日最低2~3Ⅼの水分を取らなくてはならない。仮に水が不足している場合は、エネルギーを使わないようにすることだ。タバコを吸ったりお酒を飲んだりしてはいけない。
気温の高い場所では、夜間に行動する。呼吸は鼻で行うようにし、食事は最小限に留める。水分がなければ、人間の体は急速に衰える。血液がドロドロになるため、血液を送り出す心臓に負担がかかり、血液の循環が悪くなる。循環が悪くなると、体内の余分な熱を発散させる能力が弱まり、寒冷地では体温を保つ能力が弱まる。脱水症状が進行すると、体内に血液を巡らせるために細胞から水分を取り出す。その際、細胞膜を傷つけ細胞の塩分濃度が高くなるのだ。
サバイバルでの最大の難関は、飲用に値する十分に清潔な水を見つけることかもしれない。地球の表面は、ほぼ飲用に適さない海水で覆われ、池や湖、小川、川などに蓄えられた水の多くは、微生物や化学物質によって汚染されている。そこで、未開の地で生き抜くためには、水を浄化するためのスキルを磨いておく必要があるだろう。
荒野の中でやっと得た水を浄化する手段がない場合、そこであなたは、大きな選択を迫られることになるだろう。水なしで進めば、命を脅かす危険にさらされる。しかし、一方で飲用に適さない水を飲むことで短期的には生き延びるかもしれないが、後に病気になり、命を落とす可能性もある。水を浄化する知識やスキルは普段から備えるべきだ。
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水の携行に関する基礎知識
大切なのは、自然の中で生き延びるために1日約4ℓの水を確保することだ。これは、万が一に備えて家庭に常備しておくべき水の量と同じで、乾燥した砂漠であれば必要な水の量は増える。
自然の中に足を踏み入れる場合は、負担にならない範囲で、できる限りの水を持って行かなければいけない。また、飲み水がない場所では、携帯浄水器が必携だ。長期間のハイキングでは、必要な水をすべて携行するのは不可能で、かさばるうえに4ℓで約4kgにもなる水は重すぎる。そのため、長距離を移動する予定のハイカーや遭難者は、水を確保し保存する方法、そして、浄化方法を知らなければならない。短期間のハイキングであれば、さまざまな容器に入れて水を持ち運ぶことができるだろう。
・金属製の魔法瓶の場合、割れる恐れはほとんどない。しかし、重いのが難点だ。
・プラスチック容器は軽くて丈夫だが、火の近くに置くと溶けてしまう恐れがある。
・ベルト装着や背中に背負うポーチ式の容器であれば、水分補給が容易に行えるだけでなく、歩きながら水分を補給し、両手を使うことができる。
・大きなプラスチック容器であれば、大人数でのキャンプの共有水として木の枝にかけておく使い方もある。
ポリプロピレン製のプラティパスやキャメルバック社の製品(バックパックからチューブで水分補給が可能なタイプ)は非常に軽く、空になれば容器はつぶれて平たくなるため負担にならない。浄水器が装着できるものもある。
脱水症状とは
人間の体は体内の水分を5%まで失うと、のどが渇いたり、力が入らなかったり、吐き気をもよおし、イライラするなどの症状が出てくる。脈が速くなり、肌が赤くなることもある。
2%水分を失うだけで、判断力が著しく低下する可能性もある。
体の水分を10%まで失うと、頭痛やめまいを感じ、手足が痛み始める。歩行困難になり、はっきりと話せなくなることもあるのだ。また、肌は血の気がうせ、視界がぼやけてくることもある。
さらに、体の水分を15%まで失うと、目がかすみ、音が聞こえなくなり、舌がはれて、排尿時に痛みを感じるようになる。また、物を飲み込むことができなくなり、幻覚症状が出る可能性もある。
そして、体の水分の15%以上を失うと、一般的には死に至るのだ。
脱水症状は、恐怖やパニックによってもたらされる症状と類似している。この2つを同時に経験することは、体にとって2重の負荷がかかることを意味する。
水分補給の方法とタイミング
脱水症状を起こさないためには1時間ごとなど、定期的に少量の水を摂取するのが望ましい。
自分だけでなく、周囲の人にも脱水症状が現れていないかを、注意深く観察することも必要だ。暗くくぼんだ目や色が濃く匂いがキツイ尿、体の疲労感、肌の張りがなくなりシワの増加などの症状があるときは、直ちに水分補給を行う。
すでに脱水症状を起こしている場合、最適な飲み物は水。スポーツドリンクに含まれる塩分やミネラルは、体の水分吸収の妨げになる可能性がある。
のどの渇きを感じる前から飲み物を確保し、こまめに水分補給を行うことだ。のどが渇いたと感じた時点で、水分の2%がすでに失われている。
1回の水分補給で無理せずに摂取できるのはせいぜい1ℓ。一度脱水症状を起こすと、元の状態に戻すには数時間かかってしまう。
浄水器と殺菌剤
・ポンプ浄水器
手押し式で水をフィルターに通し、科学的に微生物を殺し浄化する。
・浄水ボトル
ボトルに水を入れると、フィルターでろ過し浄化される。
・塩素減菌
密封した容器に水と指定量の塩素を加え、3分放置してから振り、30分置いてから飲む。
・ヨウ素
指定量の錠剤や液体を水と混ぜ、30分間放置する。
・煮沸処理
靴下などで濾した水を数分間沸騰させる。微生物を殺すことはできるが、化学的不純物を取り除くことはできない。
動物からとれる水分
基本的にのどが渇いたからといって、動物の肉から水分を吸ったり、血を飲んではいけない。肉にはタンパク質が多く含まれているため、消化のために体内の水分が消費されるからだ。血も同様で、さらに塩分を多く含む。
しかし、なかには飲用可能な水分を含む動物もいる。魚の脊柱や目には摂取可能な水分が含まれている。健康であれば魚の身を食べ、脱水症状気味の人に優先して骨を折って吸わせ、目を口にふくませるようにしよう。
また、オーストラリアのアボリジニは、砂漠の穴に生息するカエルを掘り返して、貴重な水を搾りとる。また、ラクダのコブの中には美味しいとは言えないが、飲用可能な水分が含まれている。
飲用可能な水
私たちの周りでも水分を見つけることができる。しかし、浄化が必要な場合が多い。
・真水の川:見た目はきれいだが浄化が必要
・真水の湖:浄化が必要
・露(つゆ):降りたばかりの露は浄化不要
・雨:地面に落ちる前の雨は浄化不要
・雪や氷:煮沸して溶かせば飲める
・地面の水:砂丘のふもとの穴などに溜まった水は、飲む前に浄化が必要
・つる植物やタマサボテン、バナナの木などから採れる水分はそのまま飲める
飲用不可な水
脱水症状を起こすと体を水分を欲する。しかし、どんなにのどが渇いて飲みたくても、以下の水分は飲んではいけない。
・尿:体に害のある排出物を含み、さらに脱水を加速させる塩分を含んでいる
・血;病気に感染する可能性がある。また、食料同様に胃で燃やされるため、体内の水分を消費する。さらに塩分も多く含んでいる
・海水:飲めば脱水症状が加速する
・アルコール・カフェイン飲料:脱水症状を加速させる。アルコールは判断力を鈍らせる
・水たまり:化学物質を含んで光っている場合やにおいがする場合は、汚染されている可能性が高いので避ける
・水の流れがない湖:砂漠の盆地にあるような湖は、アルカリ塩を多く含む可能性が高い