【ヨーロッパ旅行記】スロヴァキアの首都ブラチスラバ【23/24】

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本記事は、2017年に行ったヨーロッパ一人旅の記録を振り返るものであり、スロヴァキアの首都ブラチスラバでの滞在を中心に、当時の思い出をゆるりと綴っていく。

スロヴァキア ブラチスラヴァ

旅の期間は2017年初頭、およそ1か月。

東欧・バルト三国・アイスランドなど、これまで訪れたことのなかった国々を巡る冒険だった。

今回の旅には、

  1. 旅仲間(以下「エリ」)との同行
  2. 初めてのレンタカー運転
  3. 人生初のテント泊

という3つの大きな挑戦があり、まさに忘れがたい出来事の連続であった。

本記事では、その旅の始まりから順に振り返っていきたい。

ブラチスラバ到着

ウィーンからバスに揺られること約2時間。

筆者は無事、スロヴァキアの首都ブラチスラバへ到着した。

いや、正確に言えば「ブラチスラバのどこか」へ到着した。

「え?ここ?どこ?なんか…普通の道路じゃね?」

そう、バスは特に説明もなく、なんかよう分からん場所で我々を下車させたのである。

観光客の心を全く配慮しないスタイル、嫌いじゃない。

スロヴァキアは1992年までチェコスロヴァキアとしてチェコと一緒にされていたが、ソ連崩壊のドサクサに紛れて(いや、真面目に)独立した国家である。

今では「スロヴァキア共和国」として堂々たる存在感を放っている……かどうかは微妙だが、実在するちゃんとした国である。

ちなみに「スロヴァキア」と「スロヴェニア」を間違える人が多い。

スロヴェニアはヨーロッパアルプスなどの大自然が広がる国、スロヴァキアはドナウ川が流れる静かな国である。


なんかようわからんところで降ろされた

現地の言語はもちろんスロヴァキア語。
英語は…正直、あまり通じない。
笑顔とジェスチャー、そして「なんとなくの勘」が重要になる。

行き先も分からぬまま、筆者はバックパックを背負い、直感だけを信じて歩き出す。

こういう時、旅人には二択がある。

  1. 地図を開く理性的な旅人
  2. 勘と野生だけで動く野良旅人

筆者はもちろん後者である。
結果、橋を渡らねばならないことが判明。

「ああ、橋ね。川ね。ドナウ川か。はいはい、風情あるやん」

徒歩10分ほどでショッピングモールのような建物が見えてくる。

が、用がないのでスルー。

華麗にスキップ。

目的は買い物ではない。
異国の風を感じることなのだ。

ドナウ川、ついにその姿を現す

おお……これが、あのドナウ川であるか↓

世界史や地理の教科書で名前だけ聞いたことがある、あのドナウ川。

今、目の前に広がるその雄大な流れを前にして、筆者は思わず呟く。

「ほんまに、あったんやな……」

ドナウ川はドイツの黒い森(シュヴァルツヴァルト)を源流とし、
なんと10カ国を縦断、最終的には黒海へと注ぐ、全長2,880kmのヨーロッパの大動脈である。

長さではロシアのヴォルガ川に次いでヨーロッパ第2位の名川。
流域面積もバカでかい。
川のスケール感で勝負してきた感じ、嫌いじゃない。

確かに、ハンガリーの首都ブダペストは「ドナウの真珠」と呼ばれている。

夜景がすごい、ライトアップがすごい、国会議事堂がゴージャス、確かに全部すごい。

ハンガリー ブダペスト
全てが金ぴかなブダペスト

だが筆者はあえて言いたい。

「ブラチスラバだって悪くないぞ!!!!」

いや、マジで。
空が澄んでる。
川沿いの風が気持ちいい。
観光客も少なくて静か。

金ピカの建物がないからって、見劣りするわけではないのだ。

むしろ素朴で自然体。

旅慣れた者ほど、こういう都市に惹かれるのかもしれない。

ヨーロッパの中華料理は美味い

旅も終盤。

あと2〜3日で帰国……頭ではそう理解している。

だが、胃袋は完全に反抗期である。

「ご飯と味噌汁と餃子が食いたい!!!」

そんな叫びを内に抱えながら街を歩いていると、見えてきた。

中華料理屋である。

スロヴァキア ブラチスラヴァ

看板には「城堡飯店」と書かれている。
中国語だ。

意味は「お城のレストラン」的なニュアンスだろう。

しかしそのお店の玄関には「JASMIN」の文字が。

おしゃれ欧風フォントで堂々と記されている。

「どっちやねん!!」

とツッコミを入れつつも、店内へ吸い込まれる筆者。

死ぬほどうまい酸辣湯、そしてダミー財布

一口すすって驚いた。

酸辣湯(サンラータン)がガチで美味い。

「え?ここ中国?」と脳が混乱するレベル。

酸味、辛味、旨味の三重奏で胃袋が一気に歓喜に包まれる。

その奥に見える黒い財布が100均で買ったダミー財布である。

ヨーロッパではスリ対策として、この「偽の財布」がめちゃくちゃ役に立つのだ。

ヨーロッパ旅の鉄則、それは

本物の財布は腹に巻く。

表に出すのはダミー財布。

特にスリ大国と名高いパリ、ローマ、バルセロナではこの装備が命を守る。

ポイントは以下の2点。

  • 分厚すぎないこと(客観的に見た時に腹部が不自然に膨らんでいないこと)
  • ゴム紐がしっかりしていること(貴重品を支えるのに100均クオリティは心もとない)
※マジな貴重品とは、パスポートや高額紙幣、クレジットカードなどを指す。
次に頼んだのは酢豚っぽい何かである。
名前は不明だがうまい。

しかもデザート付きで12〜15€(約1,800円)

筆者、脳内で自問自答を繰り返す。

「た、高い……!でも中西欧(ドイツ・オーストリア)に比べればはるかに安い……!?」

という謎の心理戦の末、完食。

なんでだろうか。
ヨーロッパで食べる中華料理は、日本で食べるより3割増で美味い気がする。

長旅の疲れか?ノスタルジーか?それとも、ただ単に日本人の口に合ってるだけなのか?

まあ、理由なんてどうでもいい。
うまければ正義。

ちなみに、この中華料理屋「JASMIN」、
まさかの超オシャレな公式HPを発見してしまった。

ブラチスラヴァ城

これがブラチスラヴァ城である。

なんとも堂々たる姿だが、実はこの場所、紀元前3500年頃から何かしら建っていたというのだから驚きだ。

歴史が深すぎて、途中の1000年くらいスルーしても誰にも怒られないレベルである。

ヨーロッパの北西部を回っていた頃は、空はどんより、雨はぽつぽつ。

まるで心が灰色になるような天気が続いていた。

だが、ここブラチスラバは違う。

空の青さとの対比で非常に美しく見える真っ白な壁面。

青い空に白い城、空気はカラッと爽やか。

城がまるで、漂白剤で洗われたように映えている。

風土が建築に与える影響というのは本当に侮れない。

湿度が低くて日差しが強いからこそ、こうした「反射を活かす建築」が映えるのだろう。

建築の知識は旅のスパイスである

筆者は声を大にして言いたい。

「ヨーロッパ行くなら、西洋建築の基礎はマジで勉強してから行け!!!」

これを知らずに行くと、何を見ても

「おー、でっかい建物〜」

で終わってしまう。
だが少しでも勉強しておけば、

「これはゴシック建築…いや違う、バロックだな。む?屋根の曲線がロココか!?」

などと謎の中世貴族ごっこが可能になる

旅の深みが10倍になること間違いなしである。

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ヨーロッパ建築 わかりやすく

ちなみに、ハンガリーのブダペストではドナウ川を挟んで「ブダ地区」と「ペスト地区」に分かれているが、ここブラチスラバでは「ブラチ地区」と「スラバ地区」には分かれていない。

残念ながらそんな名前の区分は存在しない。
語感はそれっぽいのに、実態は違うのだ。

ではどう区切られているかというと、
「旧市街(Staré Mesto)」と「新市街(Nové Mesto)」の2エリアにざっくり分かれている。

旧市街:古い教会や石畳の路地が残る、中世ヨーロッパ感マシマシのエリア

新市街:近代的なビルやモールが立ち並ぶ、普通に現代都市っぽい場所

言うなれば、「RPGのセーブポイントが多い街」と「ラスボス戦の準備する街」くらいの違いである。


旧市街


川の向こうは新市街

スロヴァキアの伝統料理

少し歩くと、また腹が減る。

これは人類が狩猟採集をしていた時代からの宿命である。

というわけで、またしても食事タイムである。

今回はブラチスラバの名物料理にチャレンジしてみた。

筆者はこの旅で痛感している。

「旅先のグルメ、名前をメモしないと後で地獄」

そう、今回は店名も料理名もすべて吹き飛んでいる。

記憶にあるのは、

「なんかドイツのザウワークラウトっぽかった」

という曖昧すぎる食感だけである。

ChatGPTに画像を解析させたところ、これは「Zemiakové knedle s kyslou kapustou a opekanou cibuľkou」という、スロヴァキアの伝統的な国民料理だと判明。

さらに追い打ちをかけるように、スイーツも頼んだのだが――

  • 見た目:黒い
  • 食感:モチモチ
  • 味:うまい
  • 名前:不明

である。

Googleで検索しても、「黒ゴマ モチモチ スロヴァキア」と打っても、まるで引っかからない。
一体あれは幻だったのか?
筆者は、未だに答えを見つけられていない。

ChatGPTに画像を解析させたところ、これは「sladké pirohy s makom(甘いケシの実入りピロヒ)」というデザートだと判明。

しかし人間の執念とは恐ろしい。
筆者は記憶の断片を頼りに、Googleストリートビューで店を捜索。

見つけた。お前だったのか。

Bratislavský Meštiansky Pivovar Dunajská

だが、メニューを開いてもあの料理の名前だけはわからない。

というのも、頼み方が悪かった。

筆者「スロヴァキアの伝統料理おなしゃす!(ドヤ顔)」

店員「オーケー!」

このように、完全なる「おまかせスタイル」で突入してしまったのである。

そりゃあ、料理名なんて知るわけがない。

Bratislavský Meštiansky Pivovar Dunajská

この記事が「スロヴァキア料理解説記事」としてはまったく無価値であることは重々承知している。

だが、旅というものは情報ではなく体験である。

味は覚えている。空気も、雰囲気も、胃袋に残っている。

それで十分なのだ。

ブラチスラバで死す~3回目の捻挫~

※完全にどうでもいい話である。
だが、書かずにはいられない。

旅というのは、予測不可能な出来事に満ちている。

美しい景色との出会い、美味なる現地メシ、現地民との触れ合い…

そして、足首の捻挫。

事件はブラチスラバの、あまりにも普通すぎる電信柱の横で起こった。

筆者がその柱の横を何気なく歩いていたところ――

グギリッッッ

という鈍く、イヤすぎる音とともに、足首が異次元へとねじ曲がった。

その瞬間、脳内には黒背景に白い骨、そこに走る亀裂のエフェクトが走った。

これはもうアニメの世界ではなく、ガチ骨折の予兆である。

あまりの激痛に、その場から15分間動けず。
あまりにも哀れな姿に、通りすがる現地民から

「Are you okay…??」
「Bist du verletzt??」

と、優しい言葉を何度も投げかけられたが――

返せたのは「サンキュー…バットノー…」という呂律の怪しい英語のみであった。

実はこれが今旅の3回目の捻挫である。

一度目:オランダのロッテルダム

二度目:覚えてない

三度目:スロヴァキア、ただの道端でグギリッ

この旅で筆者の足首は、もはや精密機械のような脆さを誇っている。

旅行中、調子に乗ってどんどん歩き回ると、知らぬ間に足首が疲弊している。

とくに石畳の多いヨーロッパではスニーカーでも不十分なことがある。

筆者のようになりたくなければ、以下を肝に銘じてほしい。

  1. 適切な靴を選べ(底が厚く、足首をホールドするもの)
  2. 疲れたら座れ(根性ではどうにもならん)
  3. そして…電信柱には近づくな。

ハンガリーの首都、ブダペストへ

さて、いよいよ旅も終盤。
最終目的地は――ハンガリーの首都ブダペスト

長かったようで短かったような、いや足首には確実に長かった旅路も、ここでラストスパートを迎えるわけである。


ブラチスラバのバス停(ここからブダペストに向かう)

だがしかし。

今夜の宿は――無い。

いや正確には、「予約していない」のであって、「存在しない」わけではない。

つまり、宿が俺を待っていないのだ。

というわけで、一か月前にこの街を通過したときに目をつけていたあの橋の下にて、まさかのホームレス生活

これはもう旅というより、もはや修行。
いや、なんならサバイバル番組の後半フェーズである。

「ブダペスト、黄金の街…だが俺はその片隅で野宿中。」

そうつぶやきながら、バックパックを枕にしてドナウ川の風に吹かれる予定である。

とはいえ、本気でホームレスになる気はない。
タイミングと価格が合えば、どこかしらのホステルに転がり込む予定である。

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