今回は、筆者が勝手ながら「世界一美しい教会」に認定した場所、スロヴェニアのSt. Primoz(セイント・プリモス)教会について紹介したいと思う。
訪れたのは2017年1月29日。
時期が時期だけに寒さは刺すようだったが、筆者はこの教会の前でテントを張って宿泊という、ちょっと正気を疑われかねない行動に出た。
この教会、ほんとうに美しすぎて意味がわからないレベルである。
今まで数え切れないほどの教会に何となく入って、何となく手を合わせてきた筆者であるが、このセイント・プリモスだけは何かが違った。
空気、光、景色、そして教会そのものが放つ静けさと荘厳さ――
どこを切り取っても、ただただため息しか出ない。
特に、日没前の黄金色に染まる風景と教会のシルエットは、もはや絵画の世界そのものであった。
筆者はその瞬間、「あ、これはもう帰れん」と確信したのである。
読者諸氏にも、ぜひ一度この場所を訪れてほしい。
筆者のつたない文章でどれだけ伝わるかわからないが、本気で感動したこの体験を共有できれば、これに勝る喜びはない。
というわけで――
セイント・プリモス教会、堂々の世界一美しい教会に認定である。
スロヴェニア(Slovenia)
まずはスロヴェニアについてだが、おそらく多くの人にとって「どこそれ?」状態であろう。
スロベニア国旗
無理もない。筆者も初めて聞いた時は、
「え、スロヴァキア?それともサーモンの親戚?」
などと訳のわからぬことを口走った記憶がある。
というわけで、ここでスロヴェニアの基礎知識をざっくりまとめておく。
» クリックして続きを読めるが、長いのでスキップするのもあり
スロヴェニアの位置
スロヴェニアは、
- イタリアの東
- オーストリアの南
- ハンガリーの西
- クロアチアの北
に位置している。
つまり、あのヨーロッパの中でも「オシャレ寄り」の一帯にしれっと存在しているわけだ。
イタリアの隣と聞くと、なんとなく親近感が湧いてくる人も多いだろう。
パスタとピザの隣国である。
認知度の低さに驚け!
スロヴェニアの認知度は、はっきり言って壊滅的だ。
街で聞けばこのような反応が返ってくる。
- 「すろ…ヴぇ…にあ?…スロヴァキアちゃうの?」
- 「いや、スロバニアとかいうのもあったよな?」
- 「てか、ユーゴスラビアじゃなかったっけ?」
これ、あるあるである。
ついでによく混同される国一覧がこちら:
スロヴェニア(Slovenia)←今回の主役
スロヴァキア(Slovakia)←別の国
アルバニア(Albania)←もっと別の国
この3国が「スロ」「ヴァ」「ア」ゾーンとしてひとまとめにされがちなのは悲劇である。
ちなみに「スロバニア」なんて国は存在しない!
これは本当の話なのだが、「世界のふしぎを発見し紹介する」某有名全国放送の旅番組でも「スロバニア」とテロップが出たことがある。
筆者はそれを見て、一瞬テレビが壊れたかと思った。
ちなみに2025年5月現在、スロバニアという国はこの世には存在しない。
スロヴェニア共和国の基本情報
- 正式名称:スロヴェニア共和国
- 首都:リュブリャナ
2025年5月現在、アメリカ大統領夫人のトランプ・メラニア氏がスロヴェニア出身 - 人口:およそ200万人
だいたい大阪市の人口と同じ - 公用語:スロヴェニア語
(世界で最も難しい言語の一つ) - 建国:1991年6月25日
(旧ユーゴスラビアから独立)
特にスロベニア語は世界的にも稀な「双数形」をもち、小さな国の中に数多くの方言があり「世界で最も難しい言語の一つ」とも言われている。
初見では読めないし、聞いても意味がわからない。
だが、それがまた味である。
» 折りたたむ
St. Primoz (聖プリモス教会)
さて、では筆者が勝手に「世界一美しい教会」に認定した、スロヴェニアの聖プリモス教会(St. Primoz)の写真を何点か紹介する。
その他の写真は権利的な都合でここには載せられない。
画像検索で「St. Primoz Church Slovenia」と叩いてみてほしい。
できれば、飲み物など片手にゆっくり見てほしい。
息をのむような景色が待っているはずだ。
「丘の上の教会」はなぜこうも胸を打つのか
この教会は、標高800メートル近い丘の上にポツンと建っている。
それだけで反則級の美しさである。
しかも周囲は山に囲まれ、早朝や夕方には幻想的な雲海が出現することもある。
筆者は2017年1月29日、この地を訪れ、なんと教会のすぐ前でテント泊を敢行した。
寒さ? そんなもんどうでもよくなるレベルの絶景である。
以下の3本の動画は、筆者がそのとき撮影したものである。
映像から、あの丘の静けさや空気の冷たさ、教会の静かな力強さが少しでも伝われば本望である。
聖プリモス教会は、派手な観光地ではない。
だが、本物の旅人にこそ届いてほしい場所である。
スロヴェニアに行く予定があるなら、いや、予定がなくても行ってみる価値はある。
心が洗われるとか、人生が変わるとか、そういう言葉を軽々しく使いたくはないが——
この教会の前では、言葉がいらなくなる。
行き方/アクセス
筆者は、ハンガリーの首都ブダペストからレンタカーをぶいーんと借りて、スロヴェニアをダァァーーっと走破したクチである。
レンタカーで行く場合
レンタカーが使える人ならば、これは圧倒的にオススメである。
リュブリャナからであれば、たったの約1時間で聖プリモス教会に到着できる。
ちなみにスロヴェニアの有名観光地「ブレッド湖」からも約40分。
つまり、教会のアクセスはかなり良好ということだ。
- リュブリャナに寄ったついでにブレッド湖、
- ブレッド湖に寄ったついでに聖プリモス教会、
- 聖プリモスに寄ったついでに人生の美しさに目覚める。
というのが理想的なコースである。
電車で行く場合
残念ながら、電車は通っていない。
神は与えて奪う。
ヨーロッパ鉄道の神はこのエリアに鉄路を引かなかったようだ。
バスで行く場合
バスでも行けるが、やや乗り継ぎが必要になる。
以下に、リュブリャナからのアクセスルートを詳述する。
- リュブリャナ市内「Tivoli(ティヴォリ)」バス停から、
「Tržič(トルジーチュ)行き」のバスに乗車(約30分) - 「Avtobusna postaja Kranj(クラーニュ中央バスターミナル)」で下車
- 徒歩1分で近くのバス停へ移動
- 「Jamnik(ヤムニク)行き」のバスに乗車(約30分)
- 15番目の「Jamnik」バス停で下車
Jamnik(ヤムニク)がたぶん終点……だと思う。
ただし、Jamnikのバス停から教会まではかなり近い。
降りた瞬間、「あ、あれやん!」とわかるレベルである。
失敗写真集(という名の味わい深い記録)
聖プリモス教会前でのテント泊中、筆者は気合い十分でミラーレス一眼を手に撮影に挑んでいた。
「この感動を、一枚でも多く記録に残したい!」という気持ちは本物であった。
…が、しかし。
ここで一つ、弁解をさせていただきたい。
まだカメラに慣れていなかった!!!
露出?なにそれ?
手ブレ?まぁ、味ってことで!
夜景モード?どこにあるんですかそれ。
と、まさに素人感満載の写真の数々ではあるが、現地の雰囲気や空気感は意外と伝わるのではないかと自負している。
完璧な写真はインスタに任せる。
それではどうぞ、筆者の黒歴史……もとい、味わい深き“失敗写真集”をご覧ください。
さいごに
今回は「世界一美しい教会」として、聖プリモス教会をご紹介した。
あなたのお気に入りの教会はどこだろうか?
筆者は別にキリスト教徒ではない。
しかし旅の途中に出会う教会には、ついつい吸い寄せられてしまうクセがある。
ステンドグラスの煌めき、荘厳な祭壇、ぴんと張り詰めた静寂。
どれもが旅の中で一瞬立ち止まる理由には十分である。
十字架の前では、なんとなく真剣な顔で色々と考えている風を装ってみる。
実際に何を考えていたかは内緒だが、雰囲気は味わっていたつもりだ。
とはいえ。
やはり、大自然の中にポツンと佇む教会。
そんな場所にある建物こそ、人の心をぐわっと掴む力がある。
聖プリモス教会はまさにその典型だった。
山に囲まれ、雲に包まれ、光に照らされるその姿に、筆者のような無宗教者ですら、何か神聖なものに触れたような気持ちになった。
スロヴェニアに訪れる機会があるなら、どうかこの場所を思い出してほしい。
人生の旅路に、静かで美しい一頁を添えてくれるはずだ。
そして、そんな感動を味わった筆者の旅の全記録はこちら。
本記事は、2017年に行ったヨーロッパ一人旅の記録を振り返るものであり、スロベニアでの滞在を中心に、当時の思い出をゆるりと綴っていく。世界最古のワインの木と呼ばれている旅の期間は2017年初頭、およそ1か月。東欧[…]