マッターホルンを見ながら年越し、ツェルマット旅行記【10/16】

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2017年12月20日から2018年1月10日まで、カタール航空のモニター募集に合格し、ヨーロッパを無料で旅する機会を得た。

今回はその旅の中から、スイスのツェルマットでの滞在についてお伝えする。

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このモニター旅は、書類審査でヨーロッパ旅行にかける思いを綴るところから始まった。

そこから、カタール航空の関係者との面接までをクリアし、数々の制約もすべて了承した上で、ヨーロッパ行きが実現した。

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モニター募集 合格

最もつらかったのは何だったか。

正直に言えば、「1日2回、指定されたハッシュタグ付きでSNSに近況報告を投稿する」という義務だった。

しかし、そのおかげで、今回の旅では全ての滞在地に自分の正直な感想が残されている。

それらの記録も参照しながら、本記事を書き進めていくことにする。

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ということで、モニターとしてヨーロッパに入った。

それでは、ツェルマット滞在記をお楽しみいただきたい(∩´∀`)∩

マッターホルンを見ながら年越し

スロヴェニア人の友人モニとの楽しいミラノ生活も束の間、筆者は再び孤高の旅人モードへと戻った。

目指す先は、スイスが誇る山岳リゾート、ツェルマットである。

ミラノからツェルマットまではおよそ3時間半の電車旅。

途中、Brig(ブリーク)という町で乗り換えが必要だったのだが、ここがもうすでに絶景。

「ツェルマットの前座でこのレベルとは、やるじゃないか」と思わず唸るほどの美しさである。

いざツェルマット行きの列車に乗り込むと、筆者の予想に反して車内はまさかのガラ空き。

普段ならスキー板片手のリッチ層でギュウギュウのはずだが、どうやら本日12月31日、年越しスキーを敢行する者は少数派のようだ。

筆者「ふん、ミーハーどもが帰省してる間に、本物は山に登るんだよ」

などと誰に向けるでもないマウントを取りつつ、ガラガラの車内でのびのびと足を伸ばす。

車窓にはどこまでも続くアルプスの雪景色
――これはもう、映画『アナ雪』の撮影地ですって言ってもバレないレベルである。

ツェルマットで年越し、しかもマッターホルンを前に。

世間のカウントダウンイベントとは一線を画す、孤高かつ荘厳なる年越しの幕がいよいよ開くのであった。

マッターホルンのベストスポットへ

ツェルマットに降り立った瞬間、筆者は思った。

「…あれ?ここ、本当に地球か?」

どこを見ても絵本の中。

空気は澄みきり、雪はパウダー、テンションは最高潮。

ただし、目的はひとつ。そう、マッターホルンを最高に拝める場所を探すことである。

今でこそGoogleマップに「Zermatt Matterhorn Viewpoint」などと親切に記されているが、当時(2017年)はそんな気の利いたものはなかった。

あったのは筆者の野生の勘と、強靭なふくらはぎだけである。

筆者「見える…見えるぞ…!“高い方に行けば何かがある”という旅人の本能が…!」

とにかく標高が上がる方向へと突き進む。

地元のおばあちゃんに聞き込みをしつつ、スケートリンクかよってくらいツルッツルに凍った石階段を四つん這いでよじ登る。

手すり?ない。
スパイク?知らん。

情熱と根性だけが武器である。

途中、「これ滑ったら骨折どころか生き埋めやな…」という坂もあったが、そこは命よりマッターホルンを優先して突破。

そして、ようやく辿り着いた。

そう、伝説のビュースポットである。

目の前には神々しすぎるマッターホルンがドーン!!!

まるで「俺を撮れ」と言わんばかりにポージングしている。

筆者「…これ、グーグルマップに今後載るやつやん」

と思ったその場所こそ、今や「Zermatt Matterhorn Viewpoint」として世界に登録されている場所だったのである。

まさか筆者が時代を先取りしてたとは、自分でも驚きである。

年越しのマッターホルン

やるべきことはすべて終えた。

あとはテントを張って、夕暮れと初日の出を待つだけである。

テント越しに眺めるマッターホルン。

夕暮れ時に照らされたその姿はまさに氷の巨神。

筆者は街の明かりが一望できる、やや傾斜のある斜面にテントを張った。

斜面の背後には壁。
風除けにもなり、通報されにくいという一石二鳥の配置である。
(完全に合法かは知らん。だがロマンはあった)


画像右側の緑に光っているのが筆者のテント

黙って見てるだけで、人生の悩みが3つくらい吹き飛ぶ破壊力である。

そして、嬉しい誤算が起きた。

なんと、23時を過ぎたあたりから町で花火が打ち上がり始めたのだ。

さすが年越し。

こんな標高でもヨーロッパのパリピ魂は健在だった。

筆者「花火の撮影って、意外と難しいな…シャッターのタイミングが…」

などと凍えながら独り言をつぶやきつつ、シャッターを連打。

スマホには花火なのかノイズなのかわからんブレた写真が量産された。

それもまた一興である。

そんな中、空は静かに日付を跨いだ。

筆者はというと──0時前に力尽きて爆睡。

寒さと疲労と炭水化物不足で、年越しカウントダウンすら無視して就寝。

頭の中では「ゴーン…ゴーン…」と、どこからともなく除夜の鐘が鳴っていた。

筆者「年越しなのに、テントの中で1人でゴーンって…これはもう悟りの旅やな」

マッターホルンの初日の出

翌朝、2018年1月1日午前6時30分。

新年明けましておめでとうございます(∩´∀`)∩

スマホのアラームで目を覚まし、凍った寝袋の中でゴソゴソと動き出す。

意を決してテントのジッパーを開けると──

めっちゃ曇り。

空一面がどんよりグレー、雲のカーテンが完璧に太陽をブロックしている。

マッターホルンも、影も形も見えない。

筆者「は?初日の出、どこいった??」

思わず空に向かってクレームを入れたくなる天気である。

どうやら大自然は、筆者の熱意など微塵も考慮してくれないらしい。

7時30分発の電車に乗るため、泣く泣くテントを撤収し、ツェルマット駅へと下山。

筆者「いやほんと、何しにツェルマット来たん?って感じやな(笑)」

たしかに、筆者には忘れられない風景があった。

1年前、朝焼けに染まるマッターホルン。

赤く燃えるその稜線に、筆者の旅人魂は完全にやられていた。

今回も、あのときの記憶をなぞるように、タイムラプス動画まで撮る気満々だったのである。

──結果、重厚な曇天ショットのみ。

だが、それもまた旅。

やっぱり雪国は良い。

南国の蒸し暑さより、鼻毛が凍る寒さのほうが筆者にはしっくりくる。
(ただし指先の感覚は失われる)

ちなみにこのあと訪れたフィンランド・ロヴァニエミでは、なんと日照時間が1日わずか3時間という世界が待っていた。

筆者「太陽…いつ戻ってくるん…?」

北極圏の冬は、ロマンと共にメンタルも凍らせてくる。

旅人には試練が尽きない。

イタリア、水の都ベネツィアへ

マッターホルンはスイスとイタリアの国境近くにそびえ立つ巨峰である。

その麓にあるツェルマットも当然ながら国境のすぐそば。

ということで、ここから再びイタリアに戻り、水の都ベネツィアを目指す。

筆者
「うーむ、氷点下10℃の山奥からいきなり運河の町とは、なかなか気温差が激しい…」

ツェルマットを発ってから延々と揺られる電車旅。

途中、乗り換えや時刻表とのにらめっこに疲れ果て、ウトウトしていると──

無料でチョコが配られた。
しかも、笑顔付き。

このチョコ、普通に買えば200〜300円はしそうな代物である。

何せここは「物価が高すぎて笑えない国」スイスだ。
パン一つでコインが消し飛ぶ世界において、これは革命的サービスである。

筆者
「これはもう神対応と言っていい。スイスの鉄道、チョコで全てを許すぞ…」

この一粒で、心までとろける。

世界一高い国で世界一やさしい笑顔に出会った。

それだけで十分、スイス最後の思い出としては完璧であった。

さて、ベネツィア到着はおそらく午後3時ごろ。

再び「陽気でざわざわしたイタリア」に帰還する。

氷点下でテントを張っていた人間が、今度はゴンドラの町で迷子になるというのだから、人生とはなかなか忙しい。

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