本記事は、2017年に行ったヨーロッパ一人旅の記録を振り返るものであり、ルクセンブルクでの滞在を中心に、当時の思い出をゆるりと綴っていく。
さすが要塞の町、かっこよす
旅の期間は2017年初頭、およそ1か月。
東欧・バルト三国・アイスランドなど、これまで訪れたことのなかった国々を巡る冒険だった。
今回の旅には、
- 旅仲間(以下「エリ」)との同行
- 初めてのレンタカー運転
- 人生初のテント泊
という3つの大きな挑戦があり、まさに忘れがたい出来事の連続であった。
本記事では、その旅の始まりから順に振り返っていきたい。
要塞の街、ルクセンブルク
マーストリヒトでの川沿いテント泊を経て、ついにやってきた――
ルクセンブルク大公国。
↑ルクセンブルク大公国はご覧の通り、ベルギー・フランス・ドイツという「三国志みたいな並びの大国たち」にガッチリ囲まれている、
面積も控えめな小国である。
ルクセンブルク駅に着いたー
ルクセンブルクのスゴイところ9選
が、しかし。
侮るなかれ。
ルクセンブルク、実はめちゃくちゃスゴい。
➀国内総生産(GDP)が世界一
→国民一人あたりに換算すると世界トップ。全員ほぼ“富豪寄り”。
②2019年夏から公共交通機関を全面無料化した
→バスも電車もタダ。Suicaも切符もいらん。財布も出さない。(旅行者もタダ)
③大麻の合法化、祝日の増加も検討している
→働き方改革、じゃなくて「休み方改革」である。
④ルクセンブルクの人口はおよそ60万人だが、そのうちの18万人が通勤で国境を超えているという
→国境を毎日超える通勤って、アニメかよ。
⑤首都のルクセンブルク市には10万人しか住んでいないが、約40万人が通勤しているので世界最悪とも言える交通渋滞が頻繁に起こる
→もうキャパオーバー。よって世界最悪クラスの交通渋滞が頻発。
⑥公用語は3つ(ルクセンブルク語、ドイツ語、フランス語)
→切り替え自由すぎて、脳がパンクしそうである。
⑦世界で最も治安が良い国の一つ
→深夜でも余裕でアイス片手に散歩できる治安の良さ。
⑧フランス・ベルギー・ドイツからの越境労働者により国内の雇用の45%が占められている
→まさに多国籍軍。ルクセンブルク人が少数派になりかけている説も。
⑨1000㎢当たり58.77kmの高速道路があり、世界で最も高いレベルの普及率を誇る
→「面積の割に道路多すぎ問題」発生中。運転しやすいが、渋滞はする。
小国のくせに、なんか全部やたらとスケールがでかい国――それがルクセンブルクである。
このあと実際に街を歩いてみると、「中世×現代」が奇妙に共存する街並みが広がっていた。
観光客は少なめ、落ち着いた雰囲気、でも建物はやたらカッコイイ。
筆者「ヨーロッパの隠れ優等生って、たぶんココだ。」
ルクセンブルクは、さりげなくフランス語圏である
ルクセンブルク駅で、友人のエリと待ち合わせたのは午後3時か4時頃だった。
筆者は一足先にルクセンブルク駅に到着。
駅の看板に注目してほしい。
画像の中にうっすら見える「GARE DE LUXEMBOURG」という文字。
そう、フランス語である。
筆者「いや英語ちゃうんかい!!」
ルクセンブルクはご存知の通り、公用語が3つもある欲張り国家である。
- ルクセンブルク語(謎の独自語)
- ドイツ語(何かと出てくる)
- フランス語(駅名がこれ)
「じゃあどれが主流なんだ問題」が勃発するわけだが、実際は地域や場面でけっこうバラバラらしい。
…と、このタイミングで突然だが、ちょっとしたクイズ。
お隣スイス。
正解は…
4つ!
フランス語、ドイツ語、イタリア語、ロマンシュ語という「RPGのパーティーか!」という構成である。
▼詳しくはこちらの記事を▼
スイスの公用語は4つある突然ですが、ぼくはスイスが大好きです。自然と言えばスイス、スイスと言えば山、山と言えばマッターホルン↓と、明らかに作為的にマッターホルンの名前を出してしまいました(笑)さて、問題で[…]
ヨーロッパ、語学のデパート過ぎてついていけない説。
ルクセンブルクの物価
とりあえず、駅の横にあった「express」というスーパーマーケットに入ってみた。
何を隠そう、筆者は旅先でスーパーマーケットに寄るのが趣味である。
その国のリアルな生活感がにじみ出ていて、意外と観光地より面白いのだ。
さて、肝心の物価である。
結論から言うと——
「ベルギーよりはちょっと安いかも。でも日本とトントン」といったところ。
例えば水やパンは安めだが、輸入菓子やチーズ類はまあまあする。
「ルクセンブルク=超金持ち国家=なんでも高そう」と思っていたが、スーパーの棚を見る限り、そんなにブルジョワ感はなかった。
全体的には「庶民も生きていける帝国」という印象である。
要塞の街
ルクセンブルク中央駅から15分ほど歩くと、突如として石の壁が姿を現す。
そう、要塞である。
少し歴史を紐解こう。
15世紀前半、ルクセンブルクはネーデルラントの支配下に入る。
その後、ブルゴーニュ公国→スペイン・ハプスブルク家→オーストリア・ハプスブルク家と、ヨーロッパ最強レベルの王朝たちにバトンリレーのごとく支配され続ける。
» 続きを読む
(当時のハプスブルク家は、ポケモンで言うところのミュウツーみたいな存在である。(←古い?))
それもそのはず、ルクセンブルクは地理的にちょうど欧州の真ん中。
この立地、軍事戦略上かなり都合が良い。
各国が「ここだけは抑えたい!」と血眼になって取り合うのも納得である。
その結果、この小国は次第に巨大な要塞都市へと進化していった。
だが時代は移り変わる。
1867年、ロンドン条約が締結され、ルクセンブルクは永世中立国としての地位を確立。
プロイセン部隊も撤退し、「もう要塞いらなくね?」という空気に。
結果…
要塞、解体される。
» 折りたたむ
先ほどの説明で「解体された」って書いたけど、どの辺が?
石も壁も砲台も、めっちゃ現役やんけ。
実際には、要塞の一部は取り壊されたが、構造上取り除けない部分も多かったらしく、現在も街のあちこちにその名残がしっかり残っている。
観光客にとってはそれがむしろありがたい。
要塞跡からはルクセンブルク市街の絶景が一望でき、「廃墟と景色の融合」という、写真好きにはたまらないロケーションである。
晴れてたら100点、曇ってても80点。
雨でも50点は出せる。
Moien! Welcome to Luxembourg!Discover the enchanting allure…
歴史の重みに触れつつ、観光も楽しめるこの要塞都市ルクセンブルク。
その石壁の一つひとつに、ヨーロッパの血と汗と欲望が染み込んでいるのだ。
エリと合流
集合場所はルクセンブルク中央駅横のマクドナルド。
時間は15時――ちゃんと時間通りにエリが現れた。
海外旅において「時間通り」はもはや美徳の域である。
この時点でちょっと感動したのは内緒。
とはいえ、こちらの心にはまだ昨日のモヤモヤが残っていた。
言い争いというほどではないが、心にうっすらとしたしこりがあったのは確かである。
そんな中、例の後輩Aと電話。
アイスランドで「アイスランド北西部のイーサフィヨルズルにオーロラが出てますよ。行ったらどうすか!!?」と日本から背中を押してくれた、あの頼れる後輩だ。
アイスランドのエピソードはこちらで。
2017年2月7日〜10日の4日間、筆者は火と氷の国・アイスランドを旅した。そう、あのアイスランドである。火山あり、氷河あり、温泉あり、物価バカ高し──という、“絶景と絶望”が同居する北大西洋の孤島国家である[…]
ちなみにその後輩Aも、この2週間後に彼氏とアイスランドへ行くらしい。
なんとも幸せな展開である。
筆者「そのままオーロラ婚でもしたらええやん。」
エリはというと、マクドナルドに荷物を預けた後、「少し散歩してきまーす」と言って1時間ほど街を歩きに出かけていたらしい。
その辺の距離感の取り方は、なかなか大人でクールだと思った。
スイスはレンタカー代まで高い
時刻は17時。
ルクセンブルク駅の前に集合。
そこへ現れたのは、相乗りアプリで見つけた中年ドライバー(見た目は完全に「平日休みのガソスタ店長」)。
我々はそのおじさんの車に乗せてもらい、一路ドイツのフライブルクを目指した。
え、ヨーロッパで相乗り?ヤバくない?
という不安な声が聞こえてきそうだが、安心してほしい。
筆者も同じことを思った。
そもそも、初対面の中年男性と4時間ドライブ(休憩含めて)というシチュエーションが安心であるはずがない。
だが、それを乗り越える価値がこのアプリにはある。
このアプリ、控えめに言っても 神である。
「○○から△△まで」と打ち込むだけで、電車・バス・飛行機・相乗りと、あらゆる移動手段を一括検索・比較・予約できる。
初心者は電車で優雅に、
中級者はバスで節約しながら、
上級者は知らんおっさんの助手席に乗り込めばよい。
筆者は毎回これで旅を回している。
もはや「旅のGoogleマップ」、いや「旅の人生ナビ」と言っても過言ではない。
話を元に戻しそう。
で、なぜドイツの町フライブルクに向かっているのか。
それは、レンタカーをフライブルクで予約していたからである。
この街はスイスとの国境からすぐ。
そこから車でスイス旅をスタートするには理想的なロケーションなのだ。
「え?スイス旅するならスイスで借りりゃいいじゃん」
という声、届いてます。
でもね…
スイスでレンタカー借りたら、同じ条件でも価格が倍。
下手したら2.5倍。
スイスは景色も物価も標高も、すべてが高いのだ!
アルプスだけではない。
レンタカー代まで高山病レベルである。
だから筆者は考えた。
「ドイツで借りて、スイス走って、ドイツで返せばいいじゃん」と。
これぞ庶民の知恵である。
浮いたお金でチーズフォンデュでも食べた方が、よほどスイスを感じられるってもんだ。
というわけで、フライブルク行きの車内で、筆者は静かに思った。
「ケチったわけじゃない、戦略的判断である」と。
ドイツのフライブルクへ
ルクセンブルクからフライブルクへ――。
正直、最初はどうやって行こうかと頭を悩ませていた。
電車にするか、バスにするか、それともヒッチハイクか…?
(いや、さすがにそれはヤバい)
そんな時に登場したのが、旅人の救世主アプリ「Omio」である。
このOmioで「ルクセンブルク → フライブルク」と検索したところ、
なんと「俺、ちょうどルクセンブルクからフライブルク行くで」という知らんおっちゃんがヒット。
かなり迷ったが、
“Please give us a ride”
と、お願いしてみたところ、まさかの快諾。
しかもお値段なんと15ユーロ。
いやいや、どう考えても爆安である。
知らんおっちゃんの車に、知らん旅人が二人乗って、
知らん道をフライブルクまで4時間――
なんともスリリングなロードムービーのはじまりである。
本記事は、2017年に行ったヨーロッパ一人旅の記録を振り返るものであり、ドイツの都市フライブルクでの滞在を中心に、当時の思い出をゆるりと綴っていく。アウトバーンで爆走旅の期間は2017年初頭、およそ1か月。東欧・[…]