2017年2月7日〜10日の4日間、筆者は火と氷の国・アイスランドを旅した。
そう、あのアイスランドである。
火山あり、氷河あり、温泉あり、物価バカ高し──という、
“絶景と絶望”が同居する北大西洋の孤島国家である。
アイスランドは「死ぬまでに行きたい国」ランキングで常に上位をキープしている。
筆者もまた、そんなアイスランドに胸をときめかせたひとりであった。
旅行者であれば誰しも一度は憧れる“地球の果て感”を味わいに行ったのだ。
が、現地で筆者を待っていたのは…
絶景ではなく絶不調。
癒しではなく病み。
そして、旅という名のサバイバルであった。
高熱と寒波と物価にボコボコにされた男。
今回はその涙と鼻水と湯気(熱)でできた、アイスランド4日間地獄のロードムービーをお届けする。
その前に、「アイスランドってどんな国?」という方のために、
地獄への導入資料(=基本情報)をこちらにまとめておいた。
※アイスランド国旗アイスランドでの思い出話を語る前に、まずはこの国の基本情報を押さえておこう。地理や気候を知っておけば、話の深みも増すというものだ。アイスランドの位置アイスランドは、北大西洋に浮かぶ孤高の島国であ[…]
準備はよいか?
心して読むべし。
筆者「この旅の犠牲者が自分だけであることを祈る」
- 1 史上最も過酷な旅になったアイスランド4日間
- 2 アイスランド1日目
- 3 PROCARでレンタカーを借りる
- 4 レンタカーはミッションが普通
- 5 ブタが特徴的なアイスランドの最安スーパー『BONUS』
- 6 セリャラントスフォスへ ~終わりの始まり~
- 7 アイスランド2日目
- 8 クレカ止めないの?
- 9 ガソリンスタンドで
- 10 250km運転した先に…
- 11 現地到着
- 12 ツアーに参加
- 13 オフロード車にて
- 14 英語の必要性を強く感じた
- 15 チェーンスパイクを装着
- 16 いざ、氷の洞窟へ
- 17 ツアー中止の場合は?
- 18 駐車場で車中泊
- 19 アイスランド3日目
- 20 捜索ついでの氷河見学
- 21 運命のイタズラ、滝つぼに舞い降りる
- 22 レンタカーが故障するとも知らずに…
- 23 アイスランド4日目
- 24 修理代20万円、そして希望の青空
- 25 空港での騒動─まさかの凶器持ち込み未遂
- 26 さいごに
史上最も過酷な旅になったアイスランド4日間
さて、今回のテーマは
「絶景」×「絶不調」
──そう、史上最も過酷だったアイスランド旅4日間の記録である。
あまりに壮絶だったため、当時つけていた謎テンションのメモも頼りにしながら振り返っていこうと思う。
まず、そもそもアイスランドってどこにあるの?という方へ
アイスランドはヨーロッパ大陸の北西、北大西洋にポツンと浮かぶ“火山と氷河と風と物価”の島国である。
ちなみに世界標準の地図ではヨーロッパが真ん中。
日本? 端っこ。
「極東」ってマジで“地の果て”の意味である。
では筆者が訪れたアイスランドの主な名所をざっとご紹介する👇
- レイキャビク(首都)
- イーサフィヨルズル(オーロラ)
- セリャラントスフォス(滝)
- ヨークルスアゥルロゥン(氷の洞窟)
各観光名所の特徴をザっと紹介するが、興味ない方はこちらをクリックして本題にジャンプして頂きたい。
➀レイキャビク
言わずと知れた、アイスランドの首都、それがレイキャビク(Reykjavik)。
②イーサフィヨルズル
エンヤの優しい音色とセットで体験したい、オーロラがこちら。
余談だが"Aurora"という名前(本名)のノルウェーの女性歌手がおり、ENYA同様に「大自然で聞きたいな~」と思わせる素敵な歌声である。
一度聴いてみて頂きたい。
③セリャラントスフォス
アイスランドの絶景の代表格とも呼べる、筆者がずっと行きたかった滝がこちら。
アイスランド語では「フォス」が滝を表すようだ。
④ヨークルスアゥルロゥン
氷の洞窟ツアーの待ち合わせ場所。
Jökulsárlón
(ヨークルスアゥルロゥン)
もはやカタカナでは表現できない発音である。
ちなみに各ポイント間の距離は下に示した通り。
また、出国前から楽しみにしていた今回のアイスランド旅で体験したかったことは以下の6つだった。
- セリャラントスフォスの絶景(豪雨と強風)
- 氷の洞窟(異常気象で中止)
- 氷河(天気悪すぎ)
- 間欠泉(時間無くて寄れんかった)
- ブルーラグーン(時間無くて寄れんかった)
- オーロラ(探しに行く途中で車が故障)
では本題に入らせて頂く。
アイスランド1日目
ヨーロッパを一緒に旅していた友人エリと別れ、筆者はついに単独行動へ。
舞台はエストニアの首都タリン(Tallinn)。
ここからアイスランドを目指すわけだが、そのルートがこちら。
「エストニアの首都タリン出発」
→「ノルウェーの首都オスロで乗継ぎ」
→「アイスランドの首都レイキャビク到着」
空港での乗り換え時間を利用しての空港泊は、いわば旅の醍醐味とも言える修行である。
ノルウェーの首都オスロ空港内で空港泊をする筆者
空港内のベンチを確保し、横一列に並べて寝床完成。
マフラーを枕に、身を縮こませて眠る。
筆者からのアドバイス「空港泊を恐れるな。ただし貴重品は身体の一部だと思え」
置き引きにあったら、泣いても笑っても遅い。
だが筆者の体調は最悪である
2017年2月初旬の北欧は、顔面に氷の刃が突き刺さる寒さである。
その真っ只中で筆者は激しい頭痛と寒気に襲われていた。
こちらをご覧頂こう。
余談だが北極圏に近いロシアのシベリア地域にある人口900人のオイミャコン村は、1933年に氷点下71.2度を記録した世界最凶寒村として有名だが、アイスランドの首都レイキャビクの緯度はそれに匹敵する。
まさに北極の洗礼を受けると言っても過言ではない。
そんな状況での筆者の心の叫び(メモより抜粋)はこうであった。
次回はついにアイスランド到着である。
だが筆者は、この先に「死ぬほど過酷な体験」が待っていることを知る由もなかった――。
PROCARでレンタカーを借りる
ついにアイスランドに降り立った。
頭痛は継続中であるが、心はドキドキとワクワクの大嵐であった。
オスロ空港での空港泊を経て、翌朝のフライトでアイスランドの首都レイキャビクに無事到着。
まず向かうは予約していたレンタカー屋だ。
空港からは、1時間に2〜3便のシャトルバスが出ているので、それに乗り込む。
乗り込んだ瞬間、旅のスイッチがカチッと入る感覚を覚えた。
レンタカー屋に到着し、受付カウンターに向かう。
PROCAR Reykjavik Keflavik International Airport [KEF], アイスラン…
だがここで、読者に一言注意しておく。
筆者が借りた「PROCAR」では、車の修理代で痛い目に遭った。
結論から言うと、PROCARでのレンタルはオススメできない。
レンタカーはミッションが普通
筆者は気合を入れてこう叫んだ。
「よし! ちょっと体調悪いが、これからレンタカーで最高のアイスランド旅を始めるぞーー!」
手に入れたのは赤いナイスな車。
教習所以来6年ぶりのミッション車運転に、血が騒ぐ。
ちなみに、この1〜2週間前にはスロベニアで1週間レンタカーを乗り回していたので、MT車の操作には自信あり(自称)。
スロベニアの話はこちら、参考までに。
本記事は、2017年に行ったヨーロッパ一人旅の記録を振り返るものであり、スロベニアでの滞在を中心に、当時の思い出をゆるりと綴っていく。世界最古のワインの木と呼ばれている旅の期間は2017年初頭、およそ1か月。東欧[…]
ヨーロッパのレンタカーは基本的にMT車オンリーである。
AT車を選ぶには高額な追加料金がかかるため、予算と相談のうえ検討すべし。
なお、ヨーロッパでレンタカーを借りる際のポイントはこちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてほしい。
はじめまして、RYOです。今回はヨーロッパでレンタカーを借りる方法、そして必ず知っておくべき注意点について詳しくまとめました。筆者は6年前(=2017年)にハンガリーで、フランスで、ドイツで、そしてアイスランドでレンタカーを[…]
ブタが特徴的なアイスランドの最安スーパー『BONUS』
レイキャビク周辺では、ブタがマスコットキャラクターとなっているBONUS(ボーナス)というスーパーマーケットをよく目にする。
アイスランド国内で最安値を誇るスーパーマーケットチェーンで、なんとアイスランド国内に33店舗存在する。
食料品から日用品、衣料品に家電、おもちゃまで扱っているという守備範囲の広さよ。
だが、驚くのはその値段だ。
どれくらい安いかというと・・・。
((;゚д゚)ゴクリ…
当時の為替で、「1ISK≒1円」の計算をすると、鶏肉がこの量でなんと2198円。
業務スーパーやラムーなら、同じ量で高くても500円だろうに。
調味料はまあ日本とあまり変わらない…と思いたい。
驚きのm&m(チョコレート)の値段がこれ。
このサイズで1袋1298円。
は!!!??1298円(゚Д゚;)
なるほど、アイスランドは世界でもトップクラスの物価高国家である。
アイスランドでは「最安」と言われても、筆者のように30年給料ほぼ据え置きの貧乏日本人には、生きるのがやっとである。
筆者からの忠告だ。
「筆者みたいな貧乏人はアイスランドに行くべからず!」と。
一応BONUSの公式ホームページのリンクを載せておきますね↓
セリャラントスフォスへ ~終わりの始まり~
①から③への移動編
買い物を終え、時刻はすでに夕方。
ここから150km先にある絶景「セリャラントスフォスの滝」へ向けて、いざ出発である。
愛車(レンタカー)もリアゲート全開で、どことなくテンションが上がっているように見える。
…気のせいか。
理想と現実のはざまで
さて、当初の予定はこうだった。
滝の前でテント泊して、朝日をバックに神がかった写真を撮る。
※参考写真(筆者撮影ではない)
なんという美しさ…地球って本当に素晴らしい。
これを自分の目で、レンズで、魂で感じられるなんて…楽しみすぎる。
だが、そんな筆者の期待を嘲笑うかのように、現実はいつも非情である。
150kmの長距離ドライブを終えて、夜中に滝の目の前の駐車場に到着。
当然だが真っ暗。
外に出てみると…
雨。しかも風、めちゃくちゃ強い。
絶景?どこ?これホラーじゃない?
とはいえ、筆者はこういう落差にも耐性がある。
なぜなら“写真で見た絶景=実物も必ず美しい”とは限らないことを、百戦錬磨の旅人は身をもって知っているからである。
よって文句ひとつ言わず、雨具を装着し、静かにカメラを構えた。
ちなみに昼間だとこんな感じ↓
※駐車場の様子(ストリートビューより)
絶景とはどこに。
滝の前には滝をライトアップするための強力なスポットライトがいくつも置いてあり、「真っ暗で何も見えない」というわけではない。
しかし夜と雨のWコンボの中、撮れた写真はどう見てもホラー。
「インスタに上げたら通報されそうだな」と思いつつ、約1時間の写真撮影後そそくさと車内に戻る。
とにかく腹が減った。
というわけで、極寒の車内で温かいスープと麺を作る。
テント設営
そしてついに、今夜のメインイベントテント設営である。
筆者は筋金入りの節約バッパー。
「宿代が浮く」というワードには、異常に反応する性質を持っている。
もちろん車中泊でも良かったのだが、「体を伸ばして寝たい」という人間らしい願望に抗えなかった。
だが、外は強風。
普通のテントならここで諦めるところだが、筆者が信じるのはあの天下のDUNLOP様のテント。
「フレームが強風で破損?ないない、絶対ない。DUNLOPだぞ?」
そう自分に言い聞かせながら、インナーテントにアルミポールを差し込み始めた、その瞬間——。
ビュオオオオオオッ!!!
テントが風をまともに受け、まるで巨大な凧状態に。
我ながら事実を忠実に再現したトンデモナイ描写力のイラストである
一歩間違えれば、「筆者 in テント」が空へ飛び立つところだった。
実写版「カールじいさんの空飛ぶ家」はマジで笑えない。
いやもう笑うしかない。
というか泣いた。
手を離せば間違いなく「バシュゥーー!!ヒラヒラ〜」の末に、アイスランドの空へ旅立っていたであろう。
テントはDUNLOP
ここで少し余談だが、筆者が愛してやまないテントについて語らせてほしい。
その名は――DUNLOP(ダンロップ)。
タイヤの会社?いや、テントも作っているのだ。
しかも、かなり優秀なやつを。
筆者が使っているDUNLOPのテントは、➀軽量②コンパクト➂設営簡単の三拍子がそろった旅人の味方。
おすすめリンク貼っておく(お布施感覚で見てくれ)
初めて触ったとき「テントってこんなに素直だったっけ…?」と感動した。
今まで3つか4つ、国内外の有名メーカーのテントを使ってきたが、結局このDUNLOPをリピート購入したほどだ。
そう、俺はコイツとは長い付き合いなのだ。
スロベニアのSt.Jamnik
ベルギーのグランプラス
スイスのマイエンフェルト
オランダのロッテルダム
スイスのツェルマット
スウェーデンのキルナ
その他多数…
ただし注意点もある。
逆に「旅は常に背中に詰め込むもの」と考える人には最高の相棒になる。
腹巻き最強説 ~命より大事なものを守るために~
さらにもうひとつ、旅人にとって命の次に大切なもの——それが貴重品である。
筆者が海外を旅する際、欠かさず装備しているものがある。
それが腹巻き型貴重品入れだ。
「なにそれダサ…」などと思ったそこの君、舐めてもらっては困る。
これは命綱だ。
旅人の聖具である。
筆者の装備はこうだ。
本気でヤバい貴重品(パスポート、大金、クレカ)
→腹巻きポケットに直収納
小額紙幣や日常用の現金
→安物の財布に分散して収納
このように、“盗られてもいい財布”と“絶対に死守する財布”を明確に分けるのが旅の鉄則である。
もし海外の裏路地でヤンキーに囲まれ「財布置いてけオラァ」とナイフで脅された時は、しぶしぶフェイクの財布を渡すのである。
しぶしぶというのがポイントである。
あっさり渡したら「ん、まだコイツ金持ってんじゃね?」と思われるからだ。
尻ポケットに財布?論外である。
それはもう「スられたい」と言ってるようなもの。
下手すりゃ盗られても気付かず、ATMで口座残高ゼロを確認して初めて泣く羽目になる。
事件が起こってからでは遅い。
旅において最も大事なのは「起きる前に防ぐ」ことなのだ。
筆者の旅人生は、腹巻きポケットに支えられてきたと言っても過言ではない。
ちなみに、「どの腹巻きが最強か?」という質問にはこう答えたい:
なんでもいい、とにかく使え。そして慣れろ。
話はそれからだ。
が、一応筆者が使っている商品はこちら。
参考までに。
貴重品、風となる。
セリャラントスフォス。
それは地球が作った天然のシャワーヘッドであり、絶景マニアたちの聖地でもある。
※ネットより引用
しかし筆者にとっては、「絶望の風洞実験場」と化した。
当時、風は滝へ向かって猛烈に吹いていた。
体感的には「お前、風速何メートルやねん」と突っ込みたくなる暴風である。
筆者は意気揚々と滝の近くにテントを広げた。
夜の帳が下り、辺りは闇。
風はビュービュー、目の前の滝はゴォォォ……という地獄のBGMが鳴り響く中、
テントを必死で押さえる筆者。
そんな極限状態の中――
両手を上げたせいで着ていたシャツがめくり上がり、隠していたはずの腹巻形貴重品入れが無情にも露わになってしまったのだ。
もっとも、チャックさえ閉まっていれば大事には至らなかっただろう。
だが、運命は無慈悲だった。
突風が吹き抜けたその瞬間――
ピリリッ……ッ!
腹巻き型の貴重品入れが突風に煽られ、まさかのチャックが勝手に自走し全開になってしまったのだ。
両手でテントを抑えている。
片手でも離せば、凧状態のテントは抑えきれずに飛んでいくだろう。
……その瞬間、筆者は悟った。
「あ、オワタ。」
そう思った瞬間、
ピヒューーーーバラバラバラ……シュウゥゥーーーッッ!!!
まさに風の妖精たちが、筆者の命(=貴重品)を「ありがとね~じゃあの」と言わんばかりに、闇の彼方へと吸い込んでいったのだ。
風に舞い、視界から消えていく物たち。
- クレカ
- パスポート
- 国際免許証
- 保険証
- 高額紙幣
- 海外専用プリカ
筆者の命よりも重い貴重品一式が、あっさりと、風と共に去りぬ。
ここで補足だが、この場所は滝に大量の水が落下することで瞬間的に付近が負圧になり、風が一方向(滝つぼ)へ吸い込まれるように吹いている。
この理屈は筆者の脳内妄想によるものだが、少なくとも「全部飛んでった方向=滝」であることは現場が証明している。
捜索開始!パスポートはどこだ
完全にアウトな状況である。
今までおれのバックパッカー人生を支えてくれてありがとう。
君たちと出会った日のことは一生忘れないよ。
が、筆者は終わってなどいない。
筆者、強風に煽られつつも、滝の前でヘッドライトを装着して出動。
幸いにもスロヴェニアの雪山登山用に高性能LEDライトを持っていた。
雪山での命を守る装備が、まさかアイスランドの滝で役立つとは思わなかった。
優先順位は以下の通りである。
- パスポート(国家の証明)
- 国際免許証(レンタカー旅の要)
- クレカ(生活線)
- 海外プリカ(次点)
- 保険証(まあ大事)
- 紙幣(ただの紙)
それから約1時間半、風雨に打たれながら、筆者は全力で地面を這った。
そして奇跡が起きた。
パスポート、発見。
その後も次々にアイテムを回収していく筆者。
最終的に国際免許証とクレカ以外は回収に成功した。
国際免許証が必要なわけ
アイスランド以降の予定は、正直かなり詰まっていた。
- パリで運転
- ルクセンブルクで運転
- ドイツとスイスでも運転
各国のレンタカーもすでに予約済み。
もちろん前払い。
今さらキャンセルすれば、料金だけ消えていく。
そして数日後には、タリンで別れた友人エリとの再合流も控えていた。
友人エリにも迷惑をかけてしまう。
なので必死で探した。
いや、もはや祈りながら這いつくばった。
深夜、ずぶ濡れ、気温一桁、全身が震える。
高熱でフラつく中、それでも歩みは止めなかった。
途中、何度も脳裏に浮かぶ。
「もう無理じゃないか?」
「朝にしようよ」
「明るくなってからの方が効率よくない?」
しかしその度に、自分で自分を叱りつける。
「なに寝ぼけたことぬかしとんじゃワレエェ!!!はよ探さんかい!!!おら、動けこのドアホ」
そうやって自分に言い聞かせ、ライトの灯りを頼りに、一つひとつ、何かを拾うたびに息をのんだ。
車中泊もツラい
車に戻る頃には、服は完全に濡れきっていた。
もちろん着替えなんて、そう何枚も持っていない。
バックパッカーの荷物はいつもギリギリなのだ。
運転席を倒して、寝袋を体にかける。
暖房も切った車内で、濡れた服のまま、じっと目を閉じた。
あれは……寒さというより「冷たさ」だった。
肌に染みるというか、心を削るというか。
筆者「……あ、これ、まだアイスランドの初日だったわ。」
まさに、地獄の序章。
アイスランド2日目
③から④への移動編
朝。
薄明るくなる空の下、筆者は無言で車のエンジンをかけた。
目指すのは、250km先にある「ヨークルスアゥルロゥン氷河湖」。
──あの、発音しづらすぎる場所である。
もはや口を動かすより、アクセルを踏む方が早い。
クレカ止めないの?
昨夜、命の一部が風に持っていかれたセリャラントスフォスを、静かにあとにした。
とりあえず、パスポートだけは回収できた。
この一点だけが、筆者を次の行動へと向かわせていた。
さて、旅慣れた皆さんならこう思ったはずだ。
「クレジットカード、止めないの?」
もちろん筆者も思った。
思ったうえで、こう考えた。
まずはカード会社に電話しなければ。
でも国際電話は高い。
ん、待てよ(´っ・ω・)っ
たぶんあいつは滝つぼに消えたよな…
悪用される危険性はほぼ無い、だよな?
よし、帰国してから再発行しよう。
まだ2週間ほどあるが…
ひとまず解決!♡
国際免許証については・・・今後どうするか考えよう。
国際免許証については……
見て見ぬふりをしていた。
厳密に言えば、免許証不携帯のまま、これからアイスランド数百キロを走破する予定の人間になった、ということだ。
想像してみてほしい。
その状態で(免許不携帯)交通事故でも起こしたら、どんな未来が待っているか──
いや、考えるのはやめよう。
先を急がなければならない。
ガソリンスタンドで
車を走らせる。
セリャラントスフォスを離れてから1時間ほど。
初めてのガソリンスタンドに立ち寄った。
ここで記録された映像が、ある意味「アイスランドらしさ」の真骨頂だった。
風が、とにかく、えげつない。
体がふわりと浮かぶ、
重力がどこかへ消えた午後。
声は宙に溶けていき、
言葉は誰にも届かない。
髪は風に逆らって、
真横に、静かに、泳いでいる。
この世界の理(ことわり)が、
ひととき、眠ったみたいに。
何もかもが「吹き飛ぶ前提」で設計されているのかと思うほどの爆風。
セリャラントスフォスだけの話じゃなかった。
アイスランドそのものが、ずっと暴風圏なのだ。
ちなみに、後日レンタカー屋でこのような看板を発見した。
Safetravel 警告!
2017年2月8日(水)
明日、西アイスランドで非常に強い嵐が予想されています。
時間:午前7時〜午後3時
ハリケーン並みの突風が吹く見込みです!
以下の地域は旅行不可:
レイキャネス半島
スナイフェルスネス半島
レイキャビクからブロンダゥオスまで
レイキャビクからスコゥガフォスまで
最新情報は www.safetravel.is をご確認ください!
250km運転した先に…
アイスランド2日目、午後。
この日はついに──「Ice Cave Tour」
つまり、氷の洞窟ツアーがあった。
筆者(朝からずっとテンション高め)
「氷の洞窟~♪ アイスケイブ~♬」
氷の洞窟とは、氷河の内部に自然に生まれた空洞であり、そこには青く澄んだ世界が広がっているという。
※参考写真
まさに地球上の異世界。
ネットで見かける絶景写真に心を打たれた筆者は、それをこの目で見るため、片道250kmの道のりを運転してきたのである。
※参考写真
天気は相変わらずどんより。
雲の厚さは尋常ではなく、常に爆風。
まるで空が一日中「ごめん、今日も休むわ」と言い続けているかのような天候であった。
しかし、そんなことにはもう慣れていた。
この国では青空など都市伝説である。
問題は風である。
筆者の車は強風で何度も車線を越えそうになった。
しかも国際免許証は無い。
これは完全なる免許不携帯ドライブ旅。
合法ギリギリ、いやアウトである。
現地到着
250km運転して昼過ぎに現地(集合場所)に到着。

免許不携帯のまま。
しかし、昼とは名ばかりで、空は灰色、光もなく、気温も低い。
カメラのホワイトバランスをいじっていないにもかかわらず、画面は夕方のような暗さであった。
「これでも昼か」と誰かに問い詰めたくなる。
このヨークなんとかって場所は、オーロラも氷河も流氷も楽しめるという場所である、本当は!
※ネットより引用
※ネットより引用
※ネットより引用
理想と現実のはざまでもだえ苦しむ筆者。
そうだ、いつだって絶景とはそんなものだ(再び)
ネット上の写真がどれだけ美しくても、実際に自分の目で見てみると「なんだ、こんなものか…」と感じることは往々にしてあるのだ。
ツアーに参加
到着後、筆者はまず車内で濡れてもよい服に着替えることにした。
もっとも、その服もまだ乾いていなかったので「着替えた」というより「水分の種類を変更した」程度の効果しかなかった。
それでも氷の洞窟ツアーへ参加する準備は完了である。
アイスランドの“アイスケーブツアー”に興味のある諸氏は、「Guide to Iceland」の公式HPをチェックしてみるとよい。
リンクも載せておく。
アイスランドの氷の洞窟ツアー掲載数最多。氷河の中の美しい青色と模様が作り出す息を呑むような世界を体験しませんか。…
日本語対応もあるようで、語学力に自信のない者でも予約ハードルは比較的低めである。
オフロード車にて
さて、集合場所にはすでに何台もの巨大なオフロードトラックが並んでいた。
どれも戦車と見紛うほどのサイズであり、一般道にいたら職質を食らうレベルの威圧感である。
雰囲気的にはこんな感じだ。
(出典:54 inch tires… Wow)
これらの車両には荷台が無く、その代わりに人間を10人以上は収容できる設計となっていた。
受付小屋で手続きを済ませ、指定された車に乗り込むと、すでに8人ほどのツアー参加者が集まっていた。
軽く挨拶を交わし、いよいよ出発である。
英語の必要性を強く感じた
筆者は「おお、これが氷の洞窟ツアーか……」と胸を高鳴らせつつ、乗り込んだトラックの中で周囲の雰囲気を観察していた。
車内では参加者たちが軽快な英語で笑い合い、冗談を飛ばし合っている。
楽しそうではあるが、彼らの喋るスピードが音速である。
正直、ほとんど何を言っているのか分からなかった。
そこで筆者は方針を決めた。
「無理に会話には入らず、窓の外を真剣な顔で見つめている謎のジャパニーズ」という立ち位置を確保することにした。
おそらく周囲には、「あいつは自然を深く味わうタイプなのだ」と思われていたに違いない。
しばらくして「ジャパン」という単語が聞こえてきた。
視線を感じて顔を上げると、どうやら筆者について話しているらしい。
何やら質問されているようだが、よく分からない。
「え?俺?いや、うん、たぶん、そーだよね?……HAHAHA~(遠い目)」
曖昧な笑顔とジェスチャーでやり過ごし、再び窓の外を凝視する筆者。
だが、言わせてほしい。
「英語さえペラペラなら、めっちゃ喋ってたからなコラ!!!!」
と、心の中で強く叫んだのだった。
ツアーリーダーの陽気さは尋常でなかった。
まるでフェスのMCのごとくテンション高く、
「今日はジャパンからも一人参加者がいるんだぜぃ(∩´∀`)∩もっとテンション上げろよぉ、オメエらぁぁぁ!!」
みたいな感じだった、
筆者はただひたすら「oh yeah…( ˘ω˘ )」とぼそぼそニコニコしているヤツを演じた。
この時筆者は英語の必要性を強く感じた(←え、いまさら!!!??)
チェーンスパイクを装着
そして、トラックはついに舗装路を離れた。
ここから先は氷河エリア、まさに未知との遭遇ゾーンである。
車両は右へ左へ、大きく上下に揺れた。
乗馬より荒々しく、ジェットコースターより予測不可能。
筆者の背骨は音を立てて笑っていた。
車酔いに弱い者は注意が必要である。(本気で酔う)
車で行けるところまで進むと、そこから先は徒歩移動である。
ツアー会社より「アイゼン」と呼ばれるスパイクを靴に装着するよう指示される。
要するに、氷の上を歩くためのチェーン付きシューズ・アクセサリーである。
※アイゼン(これは支給される)
(見た目はやや武器っぽいが、実際には足元の命綱である)
目の前に広がるのは、これぞアイスランドの名に恥じぬ、まごうことなき氷河。
果てしなく広がる青白い世界に、筆者はひとり佇む。
……そう、筆者は英語が話せない。
誰とも言葉を交わせない。
つまり常にソロプレイヤーである。
集団ツアーに参加しているはずなのに、心は単独登山の気分である。
アイゼンが無ければ?
ちなみに、アイゼンを付けずに氷上を歩こうなどという無謀は厳禁だ。
例えるならば、スケートリンクの上を革靴で全力疾走するようなものである。
結果は火を見るより明らかである。
もし調子に乗ってツルッと滑った日には、そこから滑走が始まり、ゴール地点は氷河の下にある暗黒の河である。
文字通り、氷にのまれてさようならである。
地球がくれた天然のトラップ、それが氷河というステージである。
一歩一歩を慎重に、アイゼンをギリギリと氷に食い込ませながら進んでいく。
凹凸に富んだ地形と傾斜が容赦なく迫ってくるが、それでも列は進む。
そしてその先頭を行くのが、我らがツアーリーダー。
その背中はとにかく大きい。
そして頼もしい。
筆者は心の中でこう叫ぶのであった。
「どこまでもついていきます、リーダー!! あなたの判断に、すべてを預けます!!!」
まさに精神的支柱。英語が通じずとも、リーダーの背中だけは全世界共通語である。
雪ではない。
これはガチガチに固まった氷の道である。
その上を歩くというのはつまり、氷上サバイバルゲームへの参加を意味する。
足を滑らせた瞬間、近くを流れる灰色の濁流(氷河の融水)へと一直線に落下する可能性があるのだ。
落ちたら最後、観光どころか人生もエンディングを迎えることになる。
しかも、風が強い。
いや、爆風である。
氷河地帯において、無風という現象はどうやら都市伝説のようであった。
耳がちぎれそうになりながらも、車を降りて5~10分ほど歩いた頃、目的地らしき地点に到着する。
いざ、氷の洞窟へ
辺りには他の氷の洞窟ツアーの集団もいて、リーダーたちがなにやら神妙な顔で情報交換をしている。
そんな中、我々の一つ前のグループが洞窟から戻ってきた。
筆者(心の声)
「おっしゃー、いよいよ我々の番かッッ!!テンションMAXや!」
と思った、その瞬間である。
他グループのリーダーが叫ぶように言う(ように聞こえた)。
「気温が上がって氷が溶けて川が激流になってるぞ!!今は無理だ、危険すぎる!!」
えっ?
えっっっ?????
こちらは洞窟の入り口さえまだ見ていないのだが?
一方で、すでにツアーを終えて戻ってきた他の観光客たちはニコニコ笑顔。
「いやー最高だったよ♪」みたいな雰囲気をかもし出していた。
その様子を見た筆者、悟る。
「コイツら……!自分たちが楽しんだからって、あとは知ったこっちゃない感じだな……!」
まさに、「俺たちは既に楽しんだからあとは知らん」理論である。
我がグループのリーダーが、険しい顔で現場確認に向かう。
そして数分後──リーダーがとても申し訳なさそうな顔で戻ってきた。
筆者(心の叫び)
「リーダー、まさか…まさかキャンセルとか言わんよね!?」
「だって一つ前までは…!」
しかし、無情にも告げられる真実。
「すまない……氷の溶解が進みすぎていて、もう誰も中には入れられない……」
筆者、ここで妄想劇場モードに入る。
筆者「リーダー…おれたち、中に入れますよね!!?」
リーダー「すまない!!!みんなを危険な目に遭わせるわけにはいかないんだよおぉぉぉ」
筆者「リーダー、行きましょう!たとえ命を落としたとしても後悔しません!!」
リーダー「な、何を言ってんだ!!!バシッ(ビンタ)」
「お前には去年生まれたばかりの娘もいるじゃないか。氷河は逃げやしないんだから..」
筆者「・・・。クッソおぉぉぉぉ( ノД`)シクシク…」
そんな脳内劇場を繰り広げつつ、誰も声を荒げることはなかった。
※なんかここから氷の洞窟に入れるっぽい、そんなルート全く確認できひんけど
リーダーの判断は正しい。
正しいが、ツラい。
ここ数日急に気温が上がったことで氷河が融け始めて濁流になっていることが原因のようだった。
ツアー中止の場合は?
結果的に、ツアーはその場で中止となり、半額返金という救済措置が取られた。
リー、リーダアァァァァァァァァァァァ!!!!
それから、ツアーの代わりに安全な場所で「氷河のうんちく」を聞くという謎の時間が発生する。
- 氷河はなぜ青く見えるのか
- どれくらいの重さなのか
- 1日にどれだけ動いているか
内容は興味深い……のだが、全部英語なので、筆者の理解は半分以下であった。
まあ、安全第一である。
ツアー代金に2万円以上払った中で、1万円ほど戻ってきただけでも良しとすべきか。
ちなみに、今回参加した氷の洞窟ツアーはこちら。
Jökulsárlón Glacier Lagoon in Iceland is a must visit destin…
駐車場で車中泊
その後、駐車場に戻り解散。筆者はあまりの精神的・肉体的疲労により、そのまま運転せず車内で睡眠を取ることにした。
時刻は18時──アイスランドの一日は長いのに、筆者の気力はここで完全終了。
そして気づく。
「……あれ?もう乾いてる服、無いやん……」
暗い、寒い、風強い、そして濡れている。
気候に完全敗北した一日であった。
アイスランド3日目
④から➀への移動編
翌朝未明、車内で目を覚ました筆者はこれからどうするか考えた。
体は重い、服は冷たい、心は折れている。
思い返せば、
1日目:150km運転&強風で貴重品が吹き飛ぶ&高熱&ずぶ濡れのまま車中泊
2日目:250km運転&強風と小雨&氷の洞窟ツアー中止&生乾きのまま車中泊
3日目:最後の丸一日、どうするべ?←今ここ
4日目:昼一くらいで出国
そして今──3日目。
アイスランド滞在最後の丸一日である。
翌日は昼の便で出国。
筆者(脳内会議)
「で?何するよ、おれ?」
何も思い浮かばない。
というか、天気がずっと曇天+霧+雨。
地獄である。
それに、忘れてはいけない。
「そうだ……国際免許証とクレカ、まだ失くしたままだった……。」
ということで、筆者、旅程を変更。
3日目のテーマは「落とし物再捜索」に決定。
目指すは③セリャラントスフォスの滝。
初日に絶望とともに立ち寄った、あの滝である。
捜索ついでの氷河見学
再び250kmを運転する。
すると、そこかしこに見える氷河に目を奪われる。
舗装されていない泥道を、普通の乗用車で突っ込んでいく筆者。
氷河が視界に入ったときは思わず声が出る。
うおおぉぉぉぉ(*’ω’*)
──が、近づくと、こう思う。
「……これ、晴れてたら美しいやつや。」
というか、晴れていれば全ての景色が神々しく見えるのがアイスランドのポテンシャルである。
だが現実は曇天・霧・雨の三重苦。
さながら北欧の修行僧ルートである。
途中、SNSでよく見る「墜落した飛行機の残骸(Sólheimasandur)」にも立ち寄る。
墜落した飛行機の残骸?
が、天候が悪すぎてテンションも上がらず。
ちなみにネットで写真を探すとこれ。
(出典:Sólheimasandur Black Sand Beach)
(出典:https://jp.pinterest.com/pin/538602436671663055/)
理想と現実のはざまでもだえる筆者。
早い話、ネットに転がっている絶景はほぼ盛っている!!!!!!
そう確信した。
霧、霧、そして霧。
幻想的どころか、視界不良で何も見えない。
我が愛車(※レンタカー)は泥まみれ。筆者の心も同様である。
※我が愛車(←レンタカー)
曇天と小雨、さらに霧がスゴイ!!!!
筆者(心の声)
「……精神的に限界です。晴天が一度もないって、拷問かよ。」
天候は最悪だったが、さすがに「氷河すげぇ(゜.゜)」とは思ったことを付け加えておく。
※ネットより引用
そう、絶景とはいつもそういうものである。
ネットの写真に騙され、
旅ガイドに煽られ、
インフルエンサーの「最高すぎる旅」に釣られて異国へと飛ぶ我々。
だが現実は、こうだ。
絶景は、天気の気まぐれにすべてを左右される悲しい存在。
筆者、やや自暴自棄モード突入。
運命のイタズラ、滝つぼに舞い降りる
そうして霧と雨と泥の中、筆者はハンドルを握りしめる。
まるで何かから逃げるように、
あるいは何かを取り戻そうとするように。
感情ゼロの顔で、ただアクセルを踏む。
「……帰ろう、あの滝へ」
そして、自分を取り戻すために──
250km運転し、ようやくの思いで③セリャラントスフォスに戻ってきた筆者。
相変わらず天気は微妙だが、今回は昼間で視界良好。
傘もささずに、びしょ濡れ上等で捜索スタート。
もう服なんて乾くことはないと悟った。
そして、捜索から約1時間後。
その時は突然訪れた──
「……え?」
「なんかあるぞ、水際に……」
「ま、まさか……」
「うおおぉぉぉーーーーーーーー!!!!!」
そう、そこにはまさかの国際免許証があったのである。
神はいた、水際に。
まさに奇跡。
捨てる神あれば拾う神あり。
ずぶ濡れ状態ながら、なんとか判読可能。
しかも無傷に近い!
ただし、筆者は油断しなかった。
という慎重な姿勢。
旅先のテンションに流されず、冷静に顔写真を照合する自分を褒めたい。
結果、本物だった。
濡れた免許と濡れた心
車に戻り、即座に乾燥作業に入る筆者。
ページを一枚ずつ開いては、広げて干す。
なんだこの光景は。
これでもう、これからもレンタカーを借りられる。
それだけで人生の安定度が10上がった気分である。
国際免許証を見つけてすぐのメモがこちらである。
(前略)
今年のアイスランド:ガイドさん曰く、
まあまあ寒い夏レベル(異常気象)
→常に気温5℃前後
→雪でなく雨が降る
→Forever見た事ないくらい分厚い雲
→気温高いから氷河の中は濁流でツアー中止
→そして何より毎日ハリケーン並みの超強い風(瞬間最大風速50m/sらしい←本気で車ごと飛ばされへんか心配)
→滝の近くでクレカ、国際免許証からパスポートまでほぼ全ての必需品が吹き飛ばされる
→熱でしんどいのに(この時点では完治)夜中土砂降り爆風の中登山用ヘッドランプ付けて広大な大地を探し回る
→絶望の中2日かけてクレカ以外、奇跡的に発見
→乾かしてます←今ここ
言いたい事多過ぎ。こんなんじゃ全然足りんけどもう疲れた。早くパリに行こう。
(後略)
(2017年2月10日午後7時前)
アイスランド旅の次はフランスの首都パリ。
そしてその経由地として、
- ノルウェーの首都オスロ
- デンマークの首都コペンハーゲン
の2都市に立ち寄る予定であった。
頭の中はもう
「ムンク!人魚姫!クロワッサン!」
でいっぱいだった。
ノルウェーの首都オスロ
ムンク美術館に行くも、代表作「叫び」は別の美術館に展示されているというあるある罠に引っかかる。
ムンク美術館
筆者「なんでやねん……」
デンマークの首都コペンハーゲン
美しい港町ニューハウンと世界三大がっかり名所のひとつ「人魚姫像」を拝む。
※ニューハウン
※世界三大がっかり「人魚姫」
「は?これ?」と全員が思うサイズ感。
でもそれでいいのだ。
がっかりするという体験も、また旅の醍醐味である。
フランスの首都パリ
約1週間ぶりに友人のエリと合流する。
そしてパリから北に走ってモンサンミッシェルを見に行く予定。
モンサンミッシェル
アイスランド、もうええわ
筆者が恋焦がれ思い描いていた美しい風景は、アイスランドには無いことがわかった。
もうこれ以上アイスランドに滞在する理由はない。
筆者「……アイスランドはもうええわ。寒いし、暗いし、濡れるし、風うるさいし、なんも見えんし。」
それでも、奇跡はあった。
クレカは結局見つからなかったが、国際免許証が戻ってきたことで、旅は続けられる。
レンタカーが故障するとも知らずに…
翌日の昼にはアイスランドを発つという最終日。
これ以上「余計な冒険」は避けたい、心と体は正直もうボロボロ。
筆者、決意。
「もう変なことはやめよう。カフェで静かに終わりたい。」
そしてレイキャビク近郊のガソスタ併設カフェへ。
欧米ではガソリンスタンドとカフェが一緒になっているところが多い。
車も自分も燃料補給。
にしても高い。
コーヒー一杯が戦闘機の燃費レベル。
その時、LINEが光った
久々につないだWi-Fiで、LINEがバイブった。
送り主は、旅好きの後輩女子。
「せんぱーい!オーロラ予報見てチャンスあるなら行ったらどうですかああぁぁぁ?」
──天使、ここに降臨。
オーロラ予報という存在
初めて知る「オーロラ予報」の存在。
スマホ画面に表示されたその情報には、「現在オーロラ出てます」の文字。
しかも場所は……
「おいおい、あの②イーサフィヨルズルやんか!!」
しかも今夜は快晴、雲ゼロ。
月も見えてる。
「これは…勝った。」
これは、行くしかない
筆者、再び立ち上がる。
「人生初のオーロラ、見るためなら……もう一度だけ走る!!」
ありがとう、後輩女子。
君のLINEがなければ、今日このままカフェの駐車場で車中泊していたよ。
※ネットより引用
人生初のオーロラが見えるかもしれないのだぁぁぁ!!!
現在地はレイキャビク周辺。
そして目的地は西の果て「イーサフィヨルズル」。
約450kmの山道ルート、悪天候と疲労に満ちた悪夢ルート再び。
でも、今は違う。
「今回は希望がある」
「あの空に、オーロラが舞っているかもしれない」
──奇跡目前にして、再び絶望へ──
人生初オーロラの希望に胸躍らせ、夜のアイスランドを爆走中。
レイキャビクから200kmほど走っていたそのとき、レンタカーが突如「クラッチ滑り」現象を起こす
「……あれ? アクセル踏んでるのに……進まない……?」
クラッチが空回りして徐々に減速、減速、減速、そしてストップ。
(。´・ω・)ん?
真っ暗闇のド田舎、周りに民家も何もない一本道。
トロトロの惰性運転でなんとか右側の空き地に車を寄せて停車。
当然、外は漆黒&極寒&爆風。
アイスランドのど田舎のど真ん中で、まさかの走行不能。
とりあえず、ハザードランプ点滅。
燃える希望は、冷えきったクラッチに打ち砕かれる。
見えるのは草、地面、そして絶望──。
人の優しさに触れる旅
しばらくすると、数台の車が筆者の車の横を通過していく。
彼らはわざわざ止まって、窓を開けて声をかけてくれた。
欧米人A「Hey buddy, you okay? Need help?」
欧米人B「What’s wrong? You stuck?」
やはり欧米人はピンチの時は頼りになる。
「おい兄ちゃん大丈夫か?」
「何か手伝えることあるか?」
ありがとう……
アイスランド……優しい国だ……。
そりゃそうである。
こんな真っ暗闇の中、周りに何にもないド田舎の直線道路の路肩でハザードランプ付けて停まっているのだ、何もないわけがない。
優しい♡ありがとう!
はい、私はとても困っています。
車はもはやピクリとも動かない。
しかし、しかしである。
休んでるだけですので
おれの馬鹿。
すると、「あ、そうなん?(笑)そうは見えへんけど、それなら行くな!ブォォォォン」とみんなスルー…。
「いやあああああああ!!! 何で今“平気”って言ったオレぇぇぇ!!」
「あれ絶対助けてって言うタイミングやったやろ!!!」
当然である、運転手自身が「大丈夫です(∩´∀`)∩」と言っているのだ。
もうだめだ。からの「神、降臨」
しかし結局どうにもならないので、高額な国際電話代覚悟でアイスランド警察に電話をかけてみた。
プルルルル…
プルルルル…
プルル ガチャッ!!
つ、繋がった!!!!
ここで筆者、現状を必死に伝えてみた。
「マイ レンタルカー ダズント ムーブ」
「ビコーズオブ クラッチ メイビー」
「タスケテ」
相手は筆者が言いたいことを理解していたようだったが、相手からの返事が全く聞き取れず10分ほど話して勝手に切れてしまった。
電話越しの英語の会話は難易度が跳ね上がると改めて実感した。
まーーったく会話にならなかった。
またもや英語の必要性を強く感じた筆者であった←(゚Д゚;)イマサラ
絶望MAXで動かぬ車内。
不安と恐怖に苛まれながら時は経ち(約30分くらい?)、再び通りかかった人(後の恩人)に停まってもらった。
降りてきたのは、黒パーカーのフード被った青年。
光に照らされ神々しいシルエット。
事情を説明すると、彼はゆっくりとした英語で優しく語りかけてくれた。
うむ、うむ、わかるよ。
大変だったんだね、わかるよ。
うんうん、もうぼくがいるから安心して
彼は筆者の代わりにすべての手続きをやってくれた。
この右端のフード被ったお兄さんが命の恩人
- アイスランド警察に連絡(アイスランド語)
- レンタカー会社に状況報告(アイスランド語)
- レッカー手配(神語)
筆者、もう何もすることなし。
ただただ震える指で、さりげなく動画を撮る(笑)
そして全ての手続きを済ませた後、筆者に向かってこう言った。
つらかったやろ?
初めての土地でこんなトラブルに遭って英語もろくに通じない。
ツラいときはお互い様だよ!
あとはおれに任せて。
3時間後にレッカー車が来るって言ってるからそれまで暖房を付けっぱなしにして風邪を引かんようにしとき!
せっかく遠路はるばるこんな島国まで来てくれたのに散々やったね。
しっかり休むんだよ!
筆者「うわああああああああん!!!!(心の叫び)」
神か?
神の化身か?
捨てる神あれば拾う神あり(再)か?
こうして、彼の神ムーブによって筆者は窮地を脱した。
え、オーロラ?
その話はもうやめて。
人間誰だって思い出したくないことがあるものさ。
アイスランド4日目
ちょうど日付が変わったくらいの時間帯。
暗闇にぼんやり浮かぶレッカー車。
その荷台に静かに乗せられる我が愛車(クラッチが死んだレンタカー)。
「……ありがとう。いろいろあったけど、君と過ごした日々は忘れないよ(泣)」
…と、感傷にひたる暇もなく、レッカー車は無情にもゴウンゴウンとレイキャビク方面へ発進。
レッカー車の中、ただひたすら震える
結局なんやかんやでレッカー車に乗せられてレンタカー屋に到着したのが夜中の3時か4時くらい。
筆者、運転手の横でカチンコチン。
感謝と不安で頭がぐるぐる。
レンタカー破壊してもーたあぁぁぁ
ひたすら恐怖に慄いていた。
「いや、ホンマにどうなるんコレ…? オレ、保険入ってたっけ…?」
震える手でスマホを取り出し、ローミングON。
そして現代人の最終手段=検索
「レンタカー クラッチ 故障 料金」
とググる。
\ 検索結果 /
「だいたい4〜5万円くらい」
筆者(心の声)
「おっ、意外と安い!うん十万覚悟してたけど、なんかイケそう!」
「っていうか、もしかして保険効くんじゃね?」
「これ…もしかして……チャラ?」
完全に前向きモード突入!
人はなぜ検索結果に一喜一憂するのか?
筆者の脳内ではもう、
- クラッチ修理費 ⇒ “まあ勉強代や!”
- 修理代請求 ⇒ “来るなら来いや!”
- 保険で全額カバー ⇒ “神展開くるか!?”
という具合に勝手にポジティブ変換祭り開催中。
でも、まだこの時は知らなかった…
「本当の試練はこれからだ」
ということを──。
修理代20万円、そして希望の青空
夜明け前、PRO CARのレンタカー屋に無事到着。
冷えきった車内、眠気MAX、心は半壊。
そこへ現れたのは、にこやかなおっちゃんスタッフ。
「ハロー!代車準備しといたよ〜(ニコニコ)」
ああ……神よ、ありがとう……(泣)
修理費20万円の衝撃
その後、新たな契約書が差し出された。
筆者(チラ見)
「ふむふむ、新しい契約書ね……」
「……ん?」
"repair fee 206,500ISK"
え????????
「ちょっっっっ!!!!!!!💢」
「修理費20万ってどういうこっちゃあああ!!!!」
即、おっちゃんに食い下がる筆者。
神対応なのか?言いくるめなのか?
先ほども言った通り1ISKは1JPYくらいである。
ってことは、修理費が206,500円!!!?(゜.゜)
おいおいおいおい!!!!!!!!!!!!
クタクタで元気が無かった筆者もさすがに目が覚めておっちゃんに問い質す。
スタッフおっちゃん(満面の笑み)
「あ〜これはね、安心して!先に多めに請求しとくだけやから」
「これは多めにもらっといて後で返すシステムやから」
「あとで工場でチェックして、車の不具合だったら全額返金するよ!」
「だ〜いじょうぶ、たぶんそうなると思うよ」
とまんまと口車に乗せられてしまった。
疲労困憊だったこともあり「まあ、そんなもんか。」とサインして代車のレンタカーで車中泊をする筆者。
自動車工場で検査して・・・。
車側が原因なら・・・。
全額返金・・・。
たぶんそうなると思う・・・。
完全に脳内変換フィルター作動中。
いや~、こういう時の人間ってほんとに自分に都合の良いことだけが耳に入ってしまうものなんですね~。
大いに反省しました(´・ω・`)
そして空港へ──青空の裏切り
翌朝、そのまま代車にて空港近くのPRO CAR支店へ移動し、手続き完了。
最後はシャトルバスに乗って空港へGO!
そして、ふと外を見れば……。
「青空……だと……?」
今になってようやく晴れるアイスランドの空
筆者(心の声)
「おい!!!!!」
「おれがいる時ずっと曇ってたやんけ!!!!」
「いやもう晴れてええけど、タイミングおかしすぎんか!!!!」
アイスランドっぽいこと、最終日に詰め込んでみた件
旅の最終日、ふと我に返る。
「そういえば、アイスランドらしいこと、何もしていないのでは?」
レンタカーは壊れるし、オーロラも見逃した。
アイスランドの自然はほぼ素通りだ。
残ったのは、大量のアイスランド・クローナと、やり場のないもやもやだけである。
火山も氷河もオーロラも味わう暇なかったこの旅。
せめて最後に「アイスランドらしい経験」を、と考え、空港内のレストランで名産のサーモンを注文することにした。アイスランド産サーモンは世界的にも評価が高いらしい。
ただし──自分は魚介類が苦手である。
完全に矛盾した選択だったが、それには明確な目的があった。
いわば、「サーモン経験値マウント」のための投資である。
ちなみにこの4日間、筆者は毎日3食コーンフレークとラーメンだけを食べていた。
肉類・野菜類は高くて買えなかったので、どうしても貧乏飯にならざるを得なかったのだ。
ちなみに貧乏バッパー(バックパッカー)の三大貧乏飯がこちら。
- パン
- ヨーグルト
- コーンフレーク
コイツらは物価鬼のヨーロッパでも安い。
筆者はこの3種類のスーパーヘビーローテーションで何週間も生き延びた実績がある。
運ばれてきたサーモンは見た目は美しく、さすが本場の風格を感じさせた。
しかし実際に食べてみると──
「うん、不味くはない。が、別格かどうかは判断しかねる」
おそらく、サーモン好きからすれば怒り心頭のコメントだろう。
これが筆者にとって、最初で最後の“アイスランドっぽいこと”となった。
空港での騒動─まさかの凶器持ち込み未遂
そして数日後に書いたメモがこちらでである。
まだ余力ある人は読んで頂きたい。
結局、最後の最後まで最悪なアイスランド旅でした
国際免許証乾かしながら、可愛い後輩の助言で西部フィヨルド地区へオーロラを探す旅に。
200km走ったところで、クラッチに問題が…やばいくらいのど田舎でレンタカー全く動かなくなった(^ω^)親切な人めっちゃ巻き込んでいく人生。
全て手配してくれて最後に熱い握手を交わした四枚目のこのお兄さんおらんかったら、俺は当分アイスランドから出れんかった
そして最後→手荷物にナイフとアイゼン持ってて没収。されかけて一旦預け荷物を取り返して詰めてもっかい預けるという時間ギリギリの作業。
#最寄りの町まで50km
#とりあえずめちゃくちゃ人の優しさに触れた
#通る車のほとんどが声かけてくれた
#修理代20万円とられた
#システムは全くわからんけど保険で全額返ってくるらしい
#車側の問題ならね
#風呂は4日入ってない
(2017年2月12日午後11時くらい)
食事を終え、出国手続きも順調……かと思いきや、荷物検査で事件は起きた。
係員の表情が一変する。
「ナイフと……アイゼン? 機内持ち込みはできません」
まさかの凶器認定である。
完全に失念していたが、登山用の金属製アイゼンと折りたたみナイフを手荷物に入れていたのだった。
すでに預け荷物はベルトコンベアーの先へと流れている。
係員は没収の一点張り。
パニックに陥った筆者は、声を張り上げた。
「ぷりぃぃぃぃぃぃず!!! STOOOOOOP!!!!」
これが奇跡を起こす。係員がなんとかコンベアーを止め、預け荷物を取り戻させてくれたのである。
アイゼンとナイフを詰め直し、再預け入れに成功。
トラブルだらけの旅は、最後の最後まで気を抜けなかった。
無駄なあがき ~See you 206,500円~
帰国してしばらく経ったある日、PRO CARからメールが届いた。
当社の工場にて厳密に検査いたしましたところ、クラッチの破損はお客様のご使用方法に問題があったと判明しました。
ですので事前に引き落としさせて頂いた20万円をそのまま受け取らせて頂きます。
この度は当社をお使い頂き誠にあり・・・
と。
……。
いや、ちょっと待て。
なんで修理前に概算で請求した金額がピッタリそのまま請求額として確定してるんや。
誤差ゼロ。
なにその超絶精密な見積もり精度。プロか。
いや、プロか──いや、PRO CARか!!!!(笑)
当然、筆者は黙っていなかった。
抗議のメール、そして沈黙
もちろんダメもとで抗議しました。
「普通なら4~5万円で交換できるはず。」
「かかった料金の内訳を見せてください。」
「工賃、部品代、その他諸経費…」
「いくらずつですか?」
こんな感じで、やや丁寧だが明確に不信感を込めたメールをPRO CARへ送った。
しかし──
音沙汰なし。
1ヶ月…2ヶ月……3ヶ月が過ぎた。
何も返ってこない。
筆者
あ、これ……
無視しよったな。
無視されたら本気出す系日本人、発動
ここから筆者の「無駄なあがき」が始まる。
「無視か? 無視ね? ほなこっちもいくとこまでいくぞコラ」
と、やや高圧的な文面で再度メールを送信。
「貴社の対応には重大な問題がある。
このまま放置するなら、法的措置も検討する。
在アイスランド日本大使館とも相談させていただく可能性がある。
これは明確な不当請求である」
などと、「法的」「大使館」「不当請求」など重めのワードをちらつかせて圧をかけた。
数日後、ようやく返事が届いた。
そのメールにはやたらと低姿勢な謝罪文とともに、請求明細らしき謎のExcel風表記が添付されていた。
内訳は──やはり総額きっちり206,500ISK。
笑ってしまうほど綺麗に合わせてある。
いや、だからそれ「先に決めた数字に合わせて作った明細」やん!!!!!!
どう考えても、逆やろ!!!
最後の項目にはしっかり「VSK 24.0%」と記されていた。アイスランドの消費税、24%。いや、高っ!!
こうして、筆者の206,500円は正式にお別れとなった。
さいごに
この4日間の出来事は、8年経った今でも驚くほど鮮明に脳裏に焼きついている。
太陽の光など一切差し込まないアイスランドの冬。強風、豪雨、偏頭痛、生乾きの車中泊。
氷の洞窟ツアーは異常気象で中止。
クレジットカードは紛失。
レンタカーはぶっ壊れ、20万円を持っていかれる。4日間風呂にも入れず、食事はコーンフレークとラーメンのみ。
まさに、サバイバルの4日間だった。
筆者としては、正直なところ──
かなりキツかった。
太陽の無い生活は、心に直接ダメージを与えてくる。
「イギリスもあまり晴れない国だ」とは聞いていたが、なるほど確かに鬱屈とした気分になる。
ロンドンの話はこちらを参考にしてくれ。
さて、時は2025年2月上旬。トルコのイスタンブール空港を後にし、筆者は単身ロンドンへと飛び立った。イスタンブールはというと、とにかくカオスが詰まった街だった…。ルールがあってないような世界、[…]
だがそんな中でも、人の優しさには本当に救われた。
言葉が通じなくても、見ず知らずの外国人にここまでしてくれるのかと、何度も胸が熱くなった。
あの時の彼の、「もうぼくがいるから安心して」という言葉。
きっと、一生忘れない。
アイスランドは本来、世界屈指の絶景を誇る美しい国である。
だが、ひとたび運が悪い方向に傾けば、ただただ心が削られる北の地獄にもなりうる。
筆者にとっては、まさにそれを体験した4日間だった。
それでも、である。
旅とは、トラブルの連続だ。
しかしそのトラブルこそが、旅を物語に変えてくれる。
順調なだけの旅なんて、あとから思い返すこともないだろう。
「死ぬ以外はかすり傷」の精神で、これからも旅を続けていきたい。
そして──
次に筆者が降り立ったのは、ノルウェーの首都オスロ。
氷と嵐の国アイスランドを後にして、新たな物語が、そこから始まる。
本記事は、2017年に行ったヨーロッパ一人旅の記録を振り返るものであり、ノルウェーの首都オスロでの滞在を中心に、当時の思い出をゆるりと綴っていく。「叫び」を見たいがために入ったオスロのムンク美術館、実は叫びは違う場所に展示されて[…]
はじめまして、RYOです。今回はヨーロッパでレンタカーを借りる方法、そして必ず知っておくべき注意点について詳しくまとめました。筆者は6年前(=2017年)にハンガリーで、フランスで、ドイツで、そしてアイスランドでレンタカーを[…]
2022年7月末、我々は3週間にわたりイタリアへと旅立った。目的地は、フランスとスイスの国境にも近い、イタリア北部の歴史ある古都――トリノである。この旅の主目的は、ズバリ「結婚式の打ち合わせ」であった。元々我々夫婦[…]